スーツvsギークはもう古い!? 「稼ぐプロフィール族」が持つ3つの共通項【ギークなままで、食っていく】
【スーツvsギーク】
IT業界では、古今東西これをネタにした話題に事欠かない。この対立軸の根源にあるものは何なのか。おそらく、その一つには「お金を稼ぐこと」に対する考え方の違いがあるだろう。
商売を成立させるのが最優先で、交渉ごとや人間関係、ビジネス習慣を重視する営業と経営陣(スーツ)に対し、すごいモノを作って世の中を変えることこそがビジネスと考えるエンジニア(ギーク)たち。一般的には、こんなイメージで語られがちだ。
こう指摘するのは、iPhone/Androidアプリ開発スクール『RainbowAppスクール』の運営などを行っている、ジークラウドの渡部薫氏だ。これまで、インターネットにまつわるさまざまな新規事業立ち上げやベンチャー支援を手がけてきた経験から、孫正義氏など国内外の著名な経営者や、数々の有名エンジニアとの交遊がある。
そんな渡部氏が考える、近年エンジニアとして大成している人の共通項とは何か。浮かび上がってきたのは、「プロフィール族」というキーワードだ。
もはや「ギーク=優れたコードが書ける人」ではなくなる
「プロフィール族」の土台となるのは、『LinkedIn』や『Facebook』のプロフィールや、『Twitter』のタイムライン、Googleでの検索結果など。つまり、ソーシャル上のアクティビティが、自分の経歴や人となりをPRする役割を果たすようになったということだ。
「すでに欧米では、エンジニアはもちろん、経営者やベンチャーキャピタル、ヘッドハンターなども、必要なリソースや人材を探す上で、ソーシャルメディアはなくてはならないものになっています。日本では多少事情は異なるにせよ、同じ傾向が出始めているのは確かでしょう」
一介のプログラマーであっても、自らのソーシャルアクティビティをブログや各種ソーシャルメディア、『Github』で積極的に公開していけば、国内外を問わず仕事や採用のオファーが来る可能性があるわけだ。実際に、こうしたきっかけから企業の重要ポジションに迎えられる、またはフリーランスとして活躍し始めるエンジニアも、少なからず出てきている。
加えて、そもそも「優れたソフトウエアを開発できる人=ギーク」という認識は、もう定義が狭過ぎるのかもしれないと渡部氏は言う。中高生がアプリ開発で実績を上げるようになっている中、今後10年も経てば「コードを書くこと自体は読み・書き・そろばんレベルにまで一般化するだろう」と予測しているからだ。その上、最近はIT業界以外に身を置く非エンジニア職の中にも、新手のギークが生まれている。
「彼らはコードこそ書かないかもしれませんが、先端ITを理解し、駆使しながら、ソーシャル上で自由に新しいビジネスを創出している。わたしは既存のビジネスプロセスを軽やかに刷新している彼らこそが、次世代のギークになっていくと思っています」
ソーシャル時代の「稼ぐ技術屋」になるための必要条件
では、ギークの定義が「優れたコードを書ける人」から「うまくITを使いこなす人」へと変わろうとしている今、どんな人であれば、技術力を武器に稼ぎ続けることができるのだろうか。渡部氏は、これからの「稼ぐギーク」の条件を、以下の3つにまとめる。
新しい技術や情報をいち早くキャッチアップすることに加えて、リアル&ソーシャルの世界で分かりやすく世間に広めるプレゼン能力を持っている人は、当然ながら周囲に一目置かれることになる。
ポイントは、新技術を習得したり、フレームワークやサービスを構築するまでのプロセスも、ネット上に晒すことだ。その思考錯誤の様子から、独力で学習していける素養や、原理原則を押さえていることを第三者が垣間見ることができるからだ。
ここで言う「エッジ力」とは、ある分野と別分野が接する「際(きわ)」の領域で存在感を発揮し、他人と差別化できる力を指す。
具体的には、ソフトウエア開発をアートやクリエイティブ、電子工学、ハードウエアといった他分野と融合して、新領域を開拓していくような力だ。チームラボ代表の猪子寿之氏や、面白法人カヤックCEOの柳澤大輔氏がその好例だと渡部氏は言う。
また、この力が「開拓すること」を前提としている以上、挑戦の過程で見られる類まれな行動力も、人を魅了するエッジとなるだろう。
「メッセージ性の高いサービスを構築できたり、組み合わせの妙によってユーザーや関係者たちに新鮮な印象を与えられるカリスマ的な人物が、これからのギークの象徴になるはずです」(渡部氏)。
上の①、②を実践している人の特徴として、
・前例はないけれどちょっと先を行く取り組みに着手し、
・周囲の人・ユーザーの反応を見ながら”進化のきっかけ”を探し、
・その都度、発想を形にしながら、その過程でまた新しい価値を生んでいく
という行動習慣があると渡部氏。つまり、変わり続ける技術トレンドに即応するため、「常に発展途上」という状態を受け入れ、ブラッシュアップを怠らない姿勢があるのだ。これも、ギークなままで稼ぎ続ける上で必須条件の一つとなる。
「最高のパートナー探し」でも必要になるソーシャルアクティビティ
これらの条件を満たした上で、エンジニアがさらに大きく稼ごうとすると、起業・独立が一つの選択肢になるのは容易に想像がつく。受託グループに居続けては、”稼ぎの天井”がおのずと決まってしまうからだ。
「それに、最近盛り上がりを見せるアプリ市場でも、すでに技術そのものの価値は下がり始めています。よりクリエーター的なエンジニアが活躍している現状から察するに、将来的に稼ぎ続けるには、やはりビジネスモデルまで構築できる能力が求められるようになるでしょう」
ならば、技術屋が起業する場合、気をつけるべきポイントとはいったい何だろうか?
「わたし自身、何人ものエンジニア出身の経営者にお会いしていますが、すべてを一人で担って大成功を収めている方にはほとんどお会いしたことはありません。たいていの場合は、経営やファイナンスの専門家が、サポーターとして補佐役を務めているものです」
ただし、理想を追い求めがちなエンジニアと、経営・ファイナンス分野の専門家は、往々にして志向性が異なるもの。 ホンダにおける本田宗一郎氏と藤澤武夫氏の関係や、Facebookにおけるマーク・ザッカーバーグ氏とショーン・パーカー氏のようなチームをつくるためには、ごく限られた出会いのチャンスを活かすほかない。
「そのわずかな幸運を逃さないためにも、これからはよりソーシャル上のアクティビティや情報発信が重要になります。大きく稼ぐギークになろうとするなら、ソーシャルの世界で出会いの可能性を極大化して積極的にコミュニケーションを取ること、そして自分のプロフィールが先に挙げた3要素を満たせるよう、努力を怠らずキャリアを積んでいくしかないでしょうね」
では、その具体的なキャリア形成のコツを学ぶべく、次ページでは株式会社ミクシィの田中 洋一郎氏の事例を紹介しよう。
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