転職Vol.215

受講者の9割以上がPMPを取得、あるSIerの「PM塾」がすごい

よく知られているように、PMI認定資格であるPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)を取得していることはすなわち、プロジェクトマネジャーに必要とされる資質を持つことの証である。

PMPに関する参考書は多く市販されているが、独学で取得するにはハードルが高い
From ElBosco
PMPに関する参考書は多く市販されているが、独学で取得するにはハードルが高い

人気があり、評価も高い資格だが、受験に際し、35時間におよぶ研修を受けることやPMとしての実務経験が求められ、受験料も5万円以上と決して安くないことなどから、個人の努力で取得するのは難しい存在でもある。

そこで、金融や介護など幅広い業界に顧客を持ち、各種システムの開発やERP導入支援などを行う日本コンピュータシステムでは、社を挙げて社員のPMP取得を後押ししている。

社員数約380人のうち、PMP取得者は26人というから、およそ14人に1人がPMP習得者ということになる。合格率も、トータルで9割超。直近の試験では100%を誇っている。

一般に「合格率は6割」とも噂される試験なのに、なぜ驚異的数字をたたき出せるのか。

その秘けつは「PM塾」にある。これは、外部の研修会社との共同企画で同社のためにカスタマイズされたPM理論研修とPMP取得プログラムだ。

「PM塾」には次のような特徴がある。

・研修初日にはキックオフパーティが開催される
・土日を使い、月に2回~3回の講義が半年間、開講される
・傾向と対策がまとめられた独自のテキストが配布される
・オンラインで受講生全員の習熟度・模試の点数などがわかる
・e-learningによる学習が可能
・教室にはキャンディーバー、ドリンクバー、ランチはイタリアン
・受講者の研修費用・受験費は会社負担(2回目以降の受験は実費)

特筆すべきは、受講者の費用負担は受験料を含めてゼロなこと。ただし、受講できるのは、各部門から受講の推薦を受け、講師による1時間近い面接を突破した中堅クラスの10人前後だけという仕組みになっている。

では、どんな人が受講し、試験を突破したのか。本人たちに話を聞いてみた。

あとに引けない環境づくりで合格への覚悟が生まれる

(写真左から)日本コンピュータシステム株式会社のE.K氏、K.M氏、K.Y氏
(写真左から)日本コンピュータシステム株式会社のE.K氏、K.M氏、K.Y氏

「声を掛けられた時はラッキーだと思いました」と話すのは、同社で製薬会社向けのシステム開発を率いるK.Y氏だ。PM塾の2期生で、2013年にPMPを取得した。

K.Y氏は、1期生として合格した先輩から、PM塾の存在を聞かされていたし、テキストも見せてもらっていた。「お前もやってみたらどうだ」と発破を掛けられていたのだ。

「いつかは取得しなければと思っていた資格でしたが、個人で挑戦するとなると、大半の人が途中で諦めるという印象も持っていました。その点、会社が研修を用意し、費用も負担してくれるのは本当にありがたいです」

医療・介護業界向けのプロジェクトを牽引するE.K氏は、月に2日間、休日を返上することについて「最初は休みがなくなるのかとも思いましたが、個人で取得するにはハードルが高いことは知っていたので、前向きに捉えました」と、研修参加が決まった当時を振り返る。

最初はテキストの厚みに圧倒されたK.M氏だが、講義が進むにつれその不安はやる気に変わったと話す
最初はテキストの厚みに圧倒されたK.M氏だが、講義が進むにつれその不安はやる気に変わったと話す

現在は管理業務を任されているPM塾3期生のK.M氏は、「声を掛けられた時期が、ちょうど業務が落ち着いた時期と重なったこともあり、やるしかないと思いました」と話す。

ただ、PM塾で使う厚さ3センチほどのテキストを見たときは、K.M氏は「マジか」と思い、E.K氏は「できるかな」と不安にもなった。

しかし、K.Y氏が言うように「人間、やればできるものです」。受講生が気を抜けないカリキュラム構成や、普段はなかなか会話の機会がない同世代と助け合い、競い合う環境のおかげで、「みっちり勉強するのは久しぶり」という3人は、緊張感を持ちながら、楽しんで勉強できたという。

「雰囲気は、学校というより予備校です。当初から合格率は100%が目標と言われていたので、気が抜けませんでした」(E.K氏)

「オンラインで、メンバーの学習進捗がわかる仕組みなので、自分だけ置いて行かれるわけにはいかないと思いました。2回目以降の受験の際は、自腹だとも聞いていましたし(笑)」(K.Y氏)

PMの基礎を学べたことで生まれる協力会社との共通言語

試験勉強に集中し、受講生同士で切磋琢磨した半年間の研修、そして試験合格で得た最大のものは何だったのだろうか。

「それまでの私のプロジェクト管理の方法は、上司の見様見真似で覚えたやり方でした。しかし今回、体系的にプロジェクトマネジメントを学ぶ中で、自分がしてきたことにはこういう意味があったのかなど、ハッとさせられることが多々ありました」(K.M氏)

「プロジェクト全体を見通せるようになったのが大きいです。知識のベースが固まったことで、プロジェクトを回していくために必要な視点を持てたと感じています」(E.K氏)

「迷った時に戻れる原点となる知識を得られたことが大きいです。いつも、主要項目がコンパクトにまとめられたガイドブックを持ち歩いていますし、細かいことはテキストに戻って確認するようにしています」(K.Y氏)

E.K氏のプロジェクトには他社のPMPが多く、取得後は特に意思疎通がスムーズになったという
E.K氏のプロジェクトには他社のPMPが多く、取得後は特に意思疎通がスムーズになったという

プロジェクト全体を俯瞰できる力を手に入れ、マネジメントの軸を改めて実感できたことが、最大の果実なのかもしれない。その結果として、3人の名刺には「米国PMI認定PMP」の文字が刷られている。クライアントやパートナー企業にも、同じ資格を持っている人も多いという。

「PMPを取得してからは、打ち合わせの内容も以前より深く理解できるようになり、意思の疎通がしやすくなりました」(E.K氏)

ただ、どんなに立派な資格や多くの知識を持っていても、実際のプロジェクトをうまくマネジメントできるとは限らない。

マネジメントには、同じプロジェクトはふたつとない現場ごとにカスタマイズし、実践していく力も必要だ。具体的には、そのプロジェクトに共に取り組むパートナー企業のメンバーなど、人と人とのコミュニケーションの能力が問われることになる。

その部分はどのようにしてクリアにしたのだろうか。

実践前の最後の授業は「コミュニケーション論」

「実は、研修ではその部分も教わることができました」とK.M氏。

半年間にわたる研修の最後の時間が、コミュニケーションのロールプレイングに充てられていたのだ。それを受講したことで、E.K氏は「部下と話すときも、こちらが正解を言うのではなく、話を引きだして、部下自身に気付かせることが大事だと知り、その方法も身に付けられました」と話す。

外資系や大手企業に友人が多いK.Y氏は周囲からの評価の高さに驚いているとも
外資系や大手企業に友人が多いK.Y氏は周囲からの評価の高さに驚いているとも

ほかにも、コミュニケーションの講義で学んだことは多々あるのではないか――3人の穏やかで人を安心させる物腰には、そう思いたくもなる。受講し、資格を取得しての周囲の反応についても聞いてみた。

「大手や外資系コンサルティング会社に勤める友人から『難しい資格なのによく取れたね』と言われました」(K.Y氏)

PM塾の導入と、PMP取得者の増加は、社内に新たな変化も生んだ。横のつながりが芽生え始めたのだ。

PMP受験が与えた、世代を超えた連帯感

SIerでの仕事は、プロジェクトごとに常駐先が異なることは珍しくなく、たとえ同期入社の同僚であっても、現場が違えば話をする機会がなかなか持てない。日本コンピュータシステムでもそれは同様だ。

「それなのに、私が、年齢も事業部も違うE.Kさんたちと同期入社の様に仲が良いのは、同じ2期生として、半年間一緒に勉強したおかげだと思っています。あの場で勉強をしたことそのものが新鮮な体験で楽しかったですし、同じ目標を目指して努力して乗りきった仲間は、戦友のような存在です」とK.Y氏。

年齢も部署も異なる3人だが、取材中のにこやかな表情からも連帯感の強さが伺える
年齢も部署も異なる3人だが、取材中のにこやかな表情からも連帯感の強さが伺える

それを受けてE.K氏が「K.Yさんが今後の情報共有の仕組みを作ってくれたので、それを使ってナレッジを共有していきたいと思っています」と応じると、3人の中では最年少のK.M氏が「ぜひ、3期生も混ぜて下さい」と言った。確かに、同じ経験をしたことが、連帯感を生んでいるようだ。

半年間、土日を返上して手に入れた対価は大きい。

「当社は教育熱心なので、教育の機会はPMPの取得以外にも与えられており、それにはとても感謝しています。教育の仕組みは整っているので、あとは社員一人ひとりのやる気の問題です」とK.Y氏。意欲あるエンジニアにとって、日本コンピュータシステムは働きがいのある職場と言えるだろう。

E.K氏が同社に入社したのは、前職時代、常駐先で一緒になった同社の社員が魅力的に見えたことがきっかけだったという。「素晴らしい仕事ぶりの方で、いろいろと勉強させてもらいました」というが、今後はE.K氏を含めた同社のPMP保持者が、他社のエンジニアから憧れられ、同じ会社で働きたいと思われる存在になっていくのではないだろうか。

取材・文/編集部 撮影/小林 正

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