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「自律型ロボットで“物流”に魔法をかける」立命館大発ベンチャー・Kyoto Roboticsの挑戦

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    ネット通販が台頭し、クリック一つでどんなものでも運んでもらえるようになった現代。生活は便利になる反面、うなぎ上りに増えていく物流量を、全て人力でさばくのには限界がある。この“物流問題”を打破すべく誕生したのが、立命館大学発のベンチャー企業Kyoto Roboticsだ。

    彼らが挑むのは、1時間に700~800個の荷物を、24時間365日さばき続けられる自律型知能ロボットの開発。まるで人間のように荷物をつかみ、上げ下ろしをしながら箱のサイズを計測、データ登録を行う。荷物を積み込むときも、うまく空間が使えるよう自ら考えて動きだす、まさに「人間の代わり」になるロボットだ。

    大手電機メーカーで自律型ロボット開発の最前線を走っていた大澤弘幸さんは、同社のロボット開発の可能性に心惹かれた技術者の一人。なぜ大澤さんは、大手の看板を自らおろし、設立間もないベンチャー企業での開発に携わる決断をしたのか。そこには「好きなことならどれだけ高いハードルがあっても楽しめる、ずっと夢中でい続けられる」、そんなロボティクスエンジニアのものづくり哲学があった。

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    東京電機大学工学部電子工学科卒業後、NECホームエレクトロニクスで、ECUの品質保証を経験。その後、キヤノンで18年間、Computational Photography技術や三次元計測技術などの研究開発に従事し、Blu-rayディスクの規格策定会議(BDA)にも参画。ロボットを用いたランダムピッキングシステムや自律知能ロボットAIの研究開発に携わり、関連特許を50件以上出願している。キヤノンの監視カメラソリューションやロボット用三次元カメラのベースを築いた。2018年Kyoto Roboticsに入社し、8月より現職

    「スタンプラリーは技術者の仕事じゃない」
    47歳でベンチャー企業のロボティクスエンジニアへ転身

    大手電機メーカーで20年近く、三次元ビジョンカメラや、自律型ロボットAIの研究・開発をしていた大澤さん。ロボットの目や脳、手となる技術を知りつくしたエキスパートだ。

    前職ではプロジェクトを次々と成功させ、順調に昇進することができた。ところが成功の先に待っていたのは、仕事に意義を見い出せない日々だった。

    「エンジニアが大企業で管理職になると、プログラミングができなくなるんです。私は毎日いろんな部署との調整に追われ、書類に印鑑をもらう“スタンプラリー”が仕事になっていました。多い時は、一つの承認のために5回も6回も資料を見直して、各所を説得するだけの仕事をしていました」

    もともとプログラムを組むことが大好きだ、と目を輝かせる大澤さん。「一度プログラミングに手をつけたら、寝るのも忘れてしまう」と笑う。新しいテクノロジーを自分の手で組み上げることに何よりの喜びを見出すエンジニアが、開発に携われない歯がゆさは想像に容易い。

    そこで大澤さんは動いた。こんな毎日が自分のためになるはずがない。自ら進んで苦労して、直接手を動かす仕事で戦わなければキャリアはつくれない。

    一念発起し、47歳でベンチャー企業Kyoto Roboticsに飛び込んだ。

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    「前職にいた頃から、Kyoto Roboticsは、三次元ビジョンカメラの技術と、マスターレスを実現できるアルゴリズムが、ロボット技術を扱う企業の中でも飛び抜けていると感じていたんです。

    中でも“マスターレス”という開発コンセプトが気に入っています。通常、物体を画像認識させるには、3D・2DCADのマスターデータを読み込ませる膨大な作業が必要です。Kyoto Roboticsの技術では、そのマスターデータがいりません。現場で電源を入れれば、いきなり実践で使える。現状、デパレタライズ(積み荷おろし)の分野でマスターレスのソリューションを提供できるのは当社だけ。物流問題はこれからも深刻化していくはずなので、これは必ず世の中の役に立ち、大きなインパクトを与える技術だと確信しました」

    さらに同社は、ロボットの実用化までのスピードが速いことも、大澤さんが転職先を選んだ理由の一つだ。すでに製造業の分野では、細かい部品をピッキングする自律型知能ロボットが100台以上導入されており、国内No.1の稼働実績を誇る。主要ロボットメーカーとも提携済みで、各工場で使い慣れたロボットを知能化することも可能だ。

    「新しいロボットを作ったといってもR&Dやテストモデルばかりでは、いつまで経っても絵に描いた餅のまま。必要なのは、現場で困っている人たちを今すぐ助ける実用的なロボットです。この会社でなら、自分の手で生活を変える実用的な技術に携われると思い、転職を決めました」

    最大の「敵」はアナログ。
    現実世界とロボティクスをコネクトせよ

    今、同社が改善に取り組む“深刻な物流問題”。物流が滞れば、日本経済にとっても大きな痛手を負う。

    「今の物流には、必ず人の手が必要です。物流センターで仕分けされ、フォークリフトやカゴ車に積荷し、トラックに乗せ、トラックから台車に乗せて宅配する。どこかを自動化しないかぎり、供給過多に耐えることはできません」

    そこで同社が今取り組んでいるのが、荷物の入ったダンボール箱ごとロボットで持ち上げる「ケースピッキング」の分野だ。現在は中央の配送センターや工場の出荷の自動化ロボットの導入を進めているが、将来的には物流に関わる大部分をロボットに任せたいという。

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    人間の手の替わりに、荷物を持ち上げるロボットが開発されている

    また、ロボット開発を進める上では、「アナログの世界」を解き明かすことが最も困難だと大澤さんはいう。

    「ロボットの最大の敵は“アナログ”なんです。アナログの世界をセンサーがどう捉えて、デジタルデータに変換するか。これは永遠の課題だと思います。例えばダンボール箱の大きさ・柔らかさも、温度や湿度の変化で変わりますし、つかむ荷物の種類もさまざま。毎回同じ動きをすればいいわけではありませんから、どんな物でも瞬時に認識し、“人間の代わり”ができるようにならなければなりません」

    特に、人間の手をロボットで再現するのは非常に難しい技術だ。我々の手は複雑な機構をしており、その制御のために大脳の4分の1を使っているほど。故に、未だ人間の手を代替する完璧なロボティクスは登場していない。

    「手はロボティクスにとって永遠のテーマです。圧力センサーや温度センサーなど、たくさんのセンサーがついているし、筋肉をひっぱるのは一カ所なのに、関節は数カ所動く。腕の制御やセンサー、柔軟性、どれをとっても人間の手はとんでもなく複雑なんです。ロボットに人間の手の動きを覚えさせようとしても、どうしても柔軟性が足りません」

    こうしたアナログ界特有の「ゆらぎ」のようなものを、数学やエンジニアリングの力で解き明かしていくのが、ロボティクスの難しさであり、面白さだと大澤さんは語る。

    ロボティクスは現代の魔法
    “できない”を“できる”にするものづくりの醍醐味

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    Kyoto Roboticsが目指すのは、物流分野であらゆるものを“つかめる”ような自律型ロボットだ。

    「ダンボール箱に麻やビニール、紙袋などのさまざまな素材・形状のものをつかみ、運んでくれるロボットが理想です。この技術が一般化すれば、次はコンビニやスーパーの商品の棚卸しなども人間に代わってロボットができるようになる。そうすれば、世の中は一変すると思います。

    私が理想とするのは、アニメ『攻殻機動隊』のタチコマのようなロボットです。ロボットが自分で考えて的確な行動ができる。常識も通じるし、人間にできることなら当たり前にできる。そうすれば、物流問題は全て彼らが解決できるでしょう」

    大澤さんの野望が実現すれば、これからどれだけ物流量が増えても、荷物はミスなく滞りなく届くようになるだろう。私たちの生活も、さらに便利になるはずだ。

    Kyoto Robotics株式会社 執行役 兼 チーフアーキテクト 大澤弘幸さん

    「エンジニアリングは、“できない”を“できる”にする現代の魔法です。私はロボットを使って、世の中の役に立つ有益な魔法をたくさん提供していきたい。それをスピーディーに叶えられるのが、ベンチャー企業の良いところですよね」

    KyotoRoboticsは今後、日本での市場拡大はもちろん、大きなマーケットが眠っている中国市場にも照準を定めている。

    取材が終わると、大澤さんは大急ぎで自分のリュックを担ぎ始めた。「今から中国出張に行くんです。うちは小さい会社ですから、どんどん自分で動いていかないといけなくって。毎日こうして走り回っているんですよ」。そう微笑みながら走り去っていった大澤さんの目は、生き生きと輝いていた。Kyoto Robotics、そして大澤さんの挑戦は続く。

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    取材・文/石川香苗子 撮影/桑原美樹

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