“「(NTT持ち株会社の研究開発の人材は)35歳になるまでに3割がGAFAなどに引き抜かれてしまう。2019年度から、AIなどの研究者の賃金を引き上げたい」(2018年11月20日 日本経済新聞 引用)”
【NTTデータへの転職】高額報酬の人事制度を投入へ「GAFA流出への危機感」
NTTデータは、2018年12月4日(火)、AIやIoTなどの分野で、専門性の高い外部人材の獲得を狙った人事制度『アドバンスド・プロフェッショナル制度』(以下、ADP制度)を新設したと発表した。世界的に不足しているAIやIoTのトップ技術者は、国境を越えた争奪戦になっている。国内IT企業では最高水準の年収2000万~3000万円で処遇し、米国企業とも戦える報酬制度で対抗する狙いがある。
NTTデータの代表取締役副社長執行役員 人事本部長である柳圭一郎さんは、「専門性の高い技術者を獲得するために本制度を新設した」と語る。今後、同社の人材確保の鍵を握るADP制度設立の背景や概要を紹介しよう。
市場価値に応じた報酬制度で採用をしていく
ADP制度とは、AIやIoT、クラウド、セキュリティー分野におけるエンジニアやデータサイエンティスト、コンサルタントといった高度な専門知識や技術を習得している人材を外部から市場価値に応じた報酬で採用する仕組みだ。
柳さんは「国内外のトップクラスの研究者・技術者や、先進的なサービスの開拓、市場化をリードした経験・実績を持つプレーヤーなどを採用したい」と話す。高額報酬により、獲得が困難な高度スキル人材の中途採用を強化することが目的だ。
NTTグループをめぐっては、NTT持ち株会社の澤田純社長が、Googleなどをはじめとする「GAFA」に人材が引き抜かれている現状に危機感を示し、待遇改善で対抗すると話していたことは記憶に新しい。
また、NTTグループからGoogleに転職した人が、退職理由などをブログに書きとめる【退職エントリ】も話題になったばかりだ。同ブログの著者は、高額報酬で有名なGoogle社への転職を明かしている。
柳さんは、「個人のスキルによるが、外資系企業と同等の条件を提示できる」とし、引き抜きなどによる人材流出を防ぐ狙いも示す。
旧来の日系企業的な考え方から、外資企業の考え方へシフトする
ADP制度の最大の特徴は、人材の市場価値に応じて報酬を柔軟に設定することだ。スキルや雇用後の業績次第だが、外資系企業のように高額な報酬を得ることができる。
報酬は、個別に設定した「役割給」と、業績に応じて変動する「業績給」で構成する。業績が低い場合は役割給も連動して下がる。ADP制度の適用範囲は正社員のみならず、契約社員にもわたる。
雇用形態によらず、上位クラスの業務を担当し、業績に直結する成果を短期スパンで上げることが求められる。労働者の要望に応じて、契約期間を定めない雇用もあり得るが、この場合、有期雇用契約と比べて報酬は下がる。
なお、報酬の上限は設けておらず、採用する人材により水準は変動するという。
一方、旧来の日系企業的な考え方から外資系企業的な考え方を取り入れる同制度には、懸念点もあると柳さんは話す。
「日本人のメンタリティー的なところで、この制度を受け入れてもらうことができるのかは、正直なところまだ分からない。具体的な採用人数の目標もまだ決まっていない」
デジタルトランスフォーメーションに貢献できる高度スキル人材の継続的な確保の施策として、今後、ADP制度の浸透や生み出される効果が注目される。
取材・文・撮影/君和田 郁弥(編集部)
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