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売り手市場の落とし穴? 院卒20代エンジニアが転職で失敗した理由

転職

    type編集部が回避法をレクチャー!先輩たちの“転職失敗”体験談

    入社した会社でまずは数年頑張らなきゃ、なんて一昔前の話。今では20代の転職希望者も、若手を採用したい企業も増えてきた。とはいえ「そろそろ自分も……」と思っても、初めての転職は分からないことだらけ。せっかくの貴重な20代を、失敗で終わらせたくない!そこで、typeに訪れた「20代で転職に失敗した人」たちのエピソードを、type編集部のアドバイス付きで紹介。先輩たちの経験談から、‟失敗転職”の回避法を学んでいこう

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    30歳(女性・年収400万円)E美さんのケース

    24歳 有名私立大学院卒業後、システム開発会社にプログラマーとして就職(年収280万)
    28歳 ITベンチャー企業でSEになる(年収400万)
    29歳 フリーランスエンジニアとして独立(年収400万)
    転職活動期間:1カ月
    希望条件:前職以上の給与、通勤30分以内、システム設計に関われる、活気がある社風であること
    妥協した条件:家賃補助がない、福利厚生が手厚くない
    応募社数:50社、書類選考通過:12社、1次面接通過:4社、内定社数:2社

    ※この記事は姉妹サイト『20’s type』の記事を一部修正して転載しています。

    昇給も、スキルアップも叶わなかった前職

    現在フリーランスのエンジニアとして働いているE美さんは、情報系の大学院を卒業後、プログラマーとしてシステム開発会社に就職した。仕事も楽しく人間関係も良好だったが、不満だったのは給与面だ。

    「年収280万円って、院卒のプログラマーとしてはそんなに高くないんです。さらに入社してから2年間一度も昇給がなくて、3年目にようやく上がったと思っても数千円程度。学生時代の友人がどんどん金銭面に余裕が生まれていくのを見て、うらやましくなりました。この会社にいては給与も上がらないし、業務内容もプログラミングのみ。もっとシステム設計側のスキルも欲しかったですし、そうすれば自然と給与も上がるものだと考え、転職を決意しました」

    厚生労働省の初任給調査(平成28年)によると、「情報通信系」の院卒初任給は月額23万8千円。ボーナスを加味せず、単純に12倍すると約280万円という計算になる。E美さんの場合は、ボーナス込みの280万円とのことだったので、月給に換算するとさらに低かった

    「辞めると言ったら上司に引き留められたので、給与交渉はしたんです。だけど、満足できるような額は到底もらえなさそうでした。エンジニアで転職することは珍しくないですし、その時はスムーズに新しい仕事も見つかりそうだったので、退職を決めました」

    熱くて魅力的だった面接とは全くの別人!?
    パワハラ社長の無茶ぶりと怒鳴り声に疲弊

    転職活動では、引く手あまたの若手エンジニアならではの苦労があったようだ。

    「転職エージェントに登録したんですけど、予想外に多くの会社で書類選考を通過してしまったんです。そもそも応募社数も多かったんですけどね。50社に応募して、書類選考通過が12社でした。さすがに1日3社の面接した時は、疲れてしまいました。だから1社1社をじっくり見ている間もなく、選考を進めてしまったんです」

    最終的には、2社内定をもらったうち、「社長がとにかく元気で、オフィスに活気があった」というITベンチャーへの転職を決めた。

    「社長は元営業マンで、話も上手でしたし、すごく魅力的な人でした。会社に対する熱い思いを話してくれて、思わず聞き入ってしまいました。『もちろんうちでは設計にも関わってほしいし、いろんな仕事を任せたい』。その言葉に心が揺れたのを覚えています」

    E美さんは「今思えばコーポレートカラーが赤やオレンジだったので、はつらつとした印象を受けただけかも」と苦々しく語るが、とにもかくにも満足のいく年収を提示してくれたこの会社で、SEとして働き始めることになった。

    ところが彼女は、入社して唖然とする。会社の内実は、社長による壮絶なパワハラのオンパレードだったのだ。

    「面接の時のあの人は誰だったんだろうっていうぐらい、普段の社長は全くの別人でした。卑屈で暴力的、社員を支配することがマネジメントだと勘違いしているタイプ。フロアには朝から社長の怒鳴り声が響き、仕事でミスをすると『全部お前のせいた!』と全責任を押し付けられました。通常3カ月かかるシステムの導入を『1週間でやれ!』と言われたことも。40人ほどの会社でしたが、毎月数人辞めては、同じ数だけ増えるの繰り返し。私もストレスでどんどん体重が減って、あっという間にうつ状態になってしまいました」

    E美さんは、面接での“甘いささやき”を見抜けなかった自分は「現実が見えていなかった」と考えている。

    「面接の時って、どの会社も良いことしか言いませんよね。なのにそれを鵜呑みにしてしまいました」

    さらに、「もっと真摯に人の話に耳を貸すべだった」と続ける。

    「実はこの会社に決めた時に、エージェントの担当者から『厳しい会社だと聞いていますよ』とアドバイスをもらっていたんです。当時は、その意味を真剣に考えていませんでした。『20代のうちは残業なんて関係ない、きつい環境でバリバリ働いて成長したい』と思っていたので、問題ないと思っていたんです」

    パワハラ社長は百害あって一利なし。幸い、E美さんは「おかげで独立するきっかけができたし、どこもエンジニア不足なのでフリーランスにも仕事がたくさんある」と今では前向きだ。


    type編集部からのアドバイスをCHECK!

    E美さんは苦労の末、自分に合った働き方に辿り着けて本当に良かったですね。これからも健康にだけはくれぐれも注意してほしいものです。

    人生100年時代、E美さんのようにフリーランスとして働くことも選択肢の一つとしてメジャーになってきました。とはいえ会社員として働きたいと考えるなら、会社選びは失敗したくないもの。焦って実態を知ることなく転職しては、自分の市場価値も下がりやすくなってしまいます。

    社内の実態や実績はどうかを知るために、最低でも以下の3点についてはしっかり確認した方が良いでしょう。

    ・社員の平均勤務年数はどのぐらいか(3年未満など、極端に短い場合は要注意)
    ・産休・育休の取得実績やそこから復帰した社員が長期的に働いているか
    ・社風は自分に合うか

    可能であれば、選考中に現場社員の方との面談などを実施してもらい、社風を確認できるとミスマッチが防げます。

    また今回、E美さんはせっかく進言してくれたエージェントの意見をあまり重視しませんでした。キャリアアドバイザーは直接企業の担当者と接して、社内の雰囲気やオフィスを知っている立場だからこそ分かることも多いもの。これから転職を考えている人は、希望の業界や会社に務める友人、専門家などに話を聞いて、実態はどうなっているのか少しでも事前に知る工夫をしてみると良いですね。

    参照:「長く働く」を実現するには? 女性が覚えておきたい会社選びの視点

    文/石川 香苗子

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