キャリア Vol.877

「マネジメントに挑戦して心が折れそうに」その時の自分を支えたのは、ジャグリングに打ち込んだ経験だった

13歳の頃からジャグリングの魅力に目覚め、全国大会の決勝にも4度出場している松村高朗さん。2016年に株式会社日本総合研究所に新卒で入社し、開発案件を主導する立場として活躍するようになった今でも、「ジャグリングの道具に触れない日はない」と言う。

本業と並行しながら、ジャグリングイベントへの出演やYouTubeへの新技動画の投稿なども行い、日本人では5人目かつアマチュアの立場として初めて世界最大のジャグリングイベント『EJC』にもゲストとして出演。その活動はパフォーマーの領域にとどまらず、全国大会運営やNPO日本ジャグリング協会の理事就任など、日本国内のジャグリング普及にも貢献している。

松村さんにとって、仕事と好きなことを両立させる多忙な日々は、むしろ仕事の難所を乗り切る糧になったという。「ジャグリングを通じて得た経験が、自分を支える軸となった」と語る彼に、“夢中になれること”が仕事にどんな影響を与えるのかを聞いた。

株式会社日本総合研究所
松村高朗さん

中学時代にジャグリングに目覚め、友人たちと有志で練習を続けながら地域のイベントに出演。高専入学以降、4度の全国大会出場と決勝進出を果たす。大学院生時代はコンピュータビジョンの研究に従事し、2015年度PRMU研究奨励賞受賞。2016年、株式会社日本総合研究所に入社し、ITソリューション部門にてシステム開発の上流工程を担当。仕事と並行し、18年にはジャグリング全国大会の運営代表として活躍。19年、NPO日本ジャグリング協会の理事に就任

ジャグリングの面白さは、
プログラミングに夢中になる楽しさとよく似ている

松村さんは、高専で情報工学を7年専攻した後、大学院に進学。当時から、IT業界に携わる仕事がしたいと考えていた。

「周囲にはエンジニア志望が多かったけれど、コードを書くだけでなく、ビジネスサイドにも関わっていける仕事がしたいと思っていました。金融系のITシステムに特化している日本総合研究所に入社したのは、技術以外のさまざまなスキルが身に付くと感じたからです。それに、『何か大きなことができる人間になりたい』という気持ちが根底にあったんですよね。世の中に広く影響を与えるシステムづくりに携われたら、目の前にいる人だけでなく、何千万ものユーザーの役に立つことができる。それによって、社会や既存のシステムも変えていけたら、もっと多くの人をハッピーにできるんじゃないかと思いました」

入社4年目となる現在、プロジェクトマネージャーとして大手金融機関のWebサイトやスマホアプリの開発推進を担当するまでになった松村さん。仕事で活躍の幅を広げる一方、趣味のジャグリングでも活動の場を広げている。ジャグリングに目覚めたきっかけは、友人がジャグリングをしている姿を見たことだった。

「実は、幼い頃にテレビを見て、3つのお手玉を2つの手で扱えることに、凄く興味を持ったことがありました。さらに中学時代、友人がジャグリングをしている姿を見て『あっ、やってみたい』と(笑)。そこから道具を買って、友人4〜5人と一緒に、土日に練習するようになりました」

友人と一緒に地域のイベントに出演をしながら、徐々に各地で開かれるイベントやお祭りなどに呼ばれるようになり、定期的にパフォーマンスを披露するようになった。そうして段々と、松村さんはジャグリングの実力を本気で伸ばしていきたいと思うようになっていた。

「当時、ジャグリングの全国大会を生で見に行ったことがあり、『自分もあの場に立って実力を試したい』と感じました。それからは、朝も昼休みも夜も体育館でひたすら練習し、夜は自宅で筋トレとイメトレ。休みの日もずっと練習を続けた結果、全国大会の決勝進出を果たすことができました」

その後も、週に5日は練習を続けて技術の向上や新技の開発に励み、半年に一度はYouTubeで動画を披露。これが注目され、SNSで広まっていくうちに、ジャグリング・イベントに出演の声がかかるようになる。2013年には、フランスで開催された世界最大のジャグリングイベント『EJC』にもゲストとして出演。

また、国内外のイベントに審査員として呼ばれ、世界のトップジャグラーを紹介する海外サイト『The Ministry of Manipulation』にも取り上げられた。

友人たちが大学受験のためにジャグリングを辞めていく中、松村さんは「一人で体育館にこもってトレーニングを続けていた」と話す。一体、なぜ彼はそこまでジャグリングに夢中になれたのだろうか?

「中学時代に部活動でテニスをやっていたんですけど、スポーツって“戦うこと”が前提なんですよね。ジャグリングも大会はありますが、出場するかしないかは個人の自由。人前で披露するかどうかも自由ですし、練習にもノルマはなく、休んでもいいし、集中してやってもいい。やりたいように自由にできるところが性に合うんでしょうね。それに、好きな音楽を聴きながら集中して技を繰り出すジャグリングの感覚は、ヘッドホンをしてプログラミングをする時の楽しさにも似ているんですよ」

ジャグリングで得た“成功体験”は
生き方の指針を与えてくれた

その後、松村さんは、パフォーマンスだけでなく、ジャグリング全国大会の運営活動にも興味を持つようになる。大学院生時代からボランティアでWebサイトの更新や運営スタッフなどを経験。日本総合研究所に入社して3年目には、全国大会の運営代表まで務めるようになった。

撮影者:Shun Onozawa

「1年かけて、中心メンバーと一緒に、全国大会や交流イベントの企画や運営、海外ゲストの選定、Webサイトの制作、チケットサイトとの調整など、あらゆる面を仕切っていきました」

仕事を終えた後の夜の時間や週末を使い、多忙な日々を過ごしてきたが、「全力で駆け抜けた充実感と、無事開催を終了できた達成感は大きかった」と松村さん。ジャグリングを通じて得た数々の経験は、自身の人生において、かけがえのないものになったと話す。

「一つのことに集中し、没頭する経験によって、僕は“生き方の指針”を得ることができたと思っています。例えば、全国大会に出場するという目標にひたすら向かっていった時期は、『何にも代えがたい、夢中になれる気持ち良さ』を味わいましたし、達成した時の喜びは本当に大きいものです。僕自身は、もともと特別な能力があったわけでなく、むしろ人より苦手なものが多い方だと思います。けれど、ジャグリングを通じて、『苦手なものでも、頑張れば人並み以上にはなれる』と、身をもって知ることができました。その感覚は、仕事においても、人生においても、自分の指針になっていると感じます」

入社2年目、複数のメンバーを取りまとめるプロジェクトマネージャーを任されるようになった時期、「自分にマネジメントは向いていないかもしれない」と心が折れそうになったことがあったという。

撮影者:Kenji Eto

「その時、思い出したのが、『ジャグリングをやり始めた当初は、何度トライしても失敗していた。あれだけ苦手だったのに、できるようになったんだ』ということ。先が見えなくても、積み重ねていけば必ずできるようになると思えたんです。また、大会の運営を通じて、チームで大きなことを達成していく醍醐味も味わえた。ジャグリングで得たこれらの成功体験が、仕事でも自分の支えになってくれています。もしもジャグリングが無かったら、軸になるものもなく、仕事でも迷いが生じていたと思いますね」

“仕組み”を作る人間でありたい

入社4年目となる現在、仕事の難易度がまた一段と上がっていることを実感している松村さん。「難しいことであるほど、燃えてしまう自分がいる」と笑う。

撮影者:Arata Urawa

「負けず嫌いなので、やったことのない仕事や、できない仕事をクリアしたい思いが強いです。ジャグリングで技を習得したり、新技を編み出したりする時の挑戦していく感覚にも似ています。『あの感覚を仕事でも味わいたい』と思うと、やる気に火がつきますね」

夢中になることを経験すれば、一つのことに集中する充実感と、達成感が味わえる。そして、そこで得た成功体験は自信へとつながっていく。

「この感覚を知れば、そのまま仕事に生かすことができると考えています。取り組み方そのものが変わるので、その先で得られる成果も変わってくると思いますね。また、仕事一辺倒の生活では、救いがなくなる可能性もありますが、僕は仕事がうまくいかない時期でも、『自分にはジャグリングがある』と思えます。それに、大会や新技の開発に向けて頑張ること自体が大きな活力となり、結果的に、仕事へのモチベーションを上げることにも役立っていると感じます。ジャグリングは、自分にとってエンジンやガソリンみたいなものですね」

今後は、仕事でも日本ジャグリング協会の理事としても、「組織や仕組みづくりに挑戦してみたい」と松村さん。

「ジャグリング協会の理事としては、日本のジャグリング界をより良くするための取り組みに注力し、仕事では、システム開発を効率よく進めるための組織作りにチャレンジしていきたいと思います。例えば、『開発手法の選定や運用』『開発・運用のルール策定』といったルールづくりから、システムアーキテクチャのようなシステムそのものの仕組みについてまでつくれるようになりたいですね。それらの経験を積み重ねていけば、さらに大きな自信と実力を身に付けていくことができるはず。ジャグリングの感覚を生かして成長を続け、いつか、世の中にとって価値のある仕組みをつくれる人間になることが今後の目標です」

取材・文/上野 真理子 撮影/君和田 郁弥(編集部)

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