キャリア Vol.928

業界を先導するARスタートアップ4社が集結!ARコミュニティイベント「ARISE #1」イベントレポ

メガネ型の形状と88gという軽量が特長の革新的なMRデバイス『nreal light』の発売決定や2019年配信予定のARゲーム『ドラゴンクエストウォーク』など、今年に入りますます盛り上がりを見せているAR業界。

そんな中、2019年8月3日(土)にARをテーマにしたコミュニティイベント「ARISE: Spatial Experience Summit #1」(主催:株式会社MESON)が開催。6時間以上に渡る長時間イベントにもかかわらず、会場には開発者をはじめとした約300人が来場。その熱気からARへの期待値の高さが伺えた。

当日実施されたいくつかのセッションのうち、AR業界を牽引する4社が2019年のAR業界の動向についてパネルディスカッション形式で語った「スタートアップセッション」の内容をお届けしたい。

左から、株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん、Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さんが登壇
左から、株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん、Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さんが登壇

AR業界で話題を集める4社のファウンダーが登壇

ファシリテーターを務めた株式会社MESON COO 小林佑樹さん
ファシリテーターを務めた株式会社MESON COO 小林佑樹さん

ーーまずは、みなさんの自己紹介からお願いします。

MESON・梶谷:自分は国内外の企業でサービスデザインやグロースハックの経験を積んだ後、2017年にCOOの小林と一緒にMESONを創業しました。現在までの実績としては、オンワード樫山さんと共同制作したARファッションサービス『PORTAL』や博報堂さんと共同制作したARクラウドサービス『AR city in Kobe』があり、いずれも世界最大のARカンファレンス「AWE」でファイナリストに選ばれています。

meleap・福田:幼い頃からかめはめ波を打ちたいという願望があって、その願いを叶えるためにmeleapを立ち上げました(笑)。弊社では『HADO』というテクノスポーツを作っていて、これはARを使ってエナジーボールを打ち合い、制限時間内のスコアを競うゲームです。2016年から世界大会も行っていて、現在は25ヶ国で展開しています。遊びではなく、本気で戦う競技にしたいと思っています。

左から株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん、Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さん
左から株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん、Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さん

ホロラボ・伊藤:私は商社で新規事業の開発をしていたんですが、2017年にマイクロソフトのMRデバイス『HoloLens』が日本に上陸したタイミングで、5名の飲み仲間と一緒にホロラボを立ち上げました。主に、B toBで多くのプロジェクトを展開しています。

Graffity・森本:僕は元々、AIを研究していたんですが、2017年に『ARKit』が出たときにARの未来がくることを確信し、その年の8月に起業しました。現在のメイン事業はARシューティングバトルゲーム『ペチャバト』で、ユーザーの70%は中高生です。『モンスターハンター』や『スマブラ』のような、コミュニケーションゲームを提供したいと考えています。

2019年のAR業界でインパクトがあった出来事
スマホとグラス、注力すべきはどっちか?

イベントにはAR三兄弟の川田十夢さん(@cmrr_xxx)も訪れており、『nreal light』を体験していた
イベントにはAR三兄弟の川田十夢さん(@cmrr_xxx)も訪れており、『nreal light』を体験していた

ーー2019年、もっともインパクトがあったAR関連のニュースといえば?

MESON・梶谷:MRデバイス『nreal light』の発表は、個人的にも業界的にも一番インパクトがあったと思います。普段使いできるサイズとデザインで、機能的にも十分なARグラスが5万円で買えるとは。MESONとしても『nreal light』を使ったプロジェクトを仕掛けようと思っています。

Graffity・森本:僕も同感です。今回初めて『nreal light』を体験させていただき、価値観が180度変わりました。「ウェアラブルまだまだ来ないでしょ」と思っていたのに、これは「ARが立ち上がってくるぞ」と。
ホロラボ・伊藤:私は、ドコモがMagic Leapへ2.8億ドル(約300億円)を投資したニュースが印象的でしたね。キャリアサービスを提供している企業がARにコミットしたというメッセージ性がすごく大きかったなと。

meleap・福田:僕は、『ARKit』のバージョンアップです。とはいえ、まだ欲しい機能が揃っていなくて、共同開発できたらというお話もしていますね。

Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さん
Graffity株式会社 CEO森本 俊亨さん

ーーでは、この流れで2019年後半、注力すべきは「スマホAR」と「グラスAR」どちらなのかについて、みなさんの見解を聞かせてください。

Graffity・森本:僕らは引き続き、toCのスマホARにフォーカスしていきます。ARが利用できるスマホの普及率が来年70%程になるので、今年の末から来年にかけてコンテンツが増えるのではと予想しています。ですが『nreal light』がきちゃったもんで(笑)、R&Dとしてグラス用のコンテンツも作っていきたいですね。

meleap・福田:メインはスマホARですね。HADOはスポーツなのでプレイヤーと観戦者の2つの層がいて、プレイヤーはデバイスをつけますが、観戦者はテレビやスマホなどマルチデバイス対応にしたい。プレイヤーは1万人でもいいから、観戦ユーザーを10億人まで増やしたいんですよね。

ホロラボ・伊藤:グラスはまだデメリットが多いので、スマホとグラスの使い分けが大事かなと思っています。予算があるプロジェクトの場合は、両方のコンテンツを提供することもあります。

MESON・梶谷:結論としては両方やりますが、グラスにフォーカスしたいと思っています。理由は2つで、1つ目は『nreal light』のようなシチュエーションを限定すれば十分使えるデバイスが出てきたから。2つ目は、グラスARネイティブなUX構築力は、まだグローバルでの正解を誰も見つけられていないから。今から知見を溜めておけば、市場が立ち上がった時にかなり優位になるだろうと考えています。

グローバルを見据えた4社のマーケット戦略
採用は「ビジョン、バリューへの共感度」を重視

株式会社MESON CEO 梶谷健人さん
株式会社MESON CEO 梶谷健人さん

ーー自社のプロダクトをどのように普及させていこうと考えているか、マーケット戦略について教えてください。

meleap・福田:観戦ユーザー獲得のために、参加型コンテンツを作ろうと思っています。世界中の人たちのパワーを集めて元気玉を打つドラゴンボールのように、人を巻き込める環境を作りたい。そのためには魅力的なビジョンが不可欠で、「meleapはこんなにワクワクする10年後の未来を描けているんだ」ってことを伝えていきたいですね。

Graffity・森本:僕らも世界的なARカンパニーになりたいという思いがあって、ARアプリケーション時代の任天堂みたいなポジションを狙っています。とはいえ課題は多く、一番は一般的なゲームと比べてリテンションが低いこと。要は、目の前に友達がいる時しかアプリを開いてもらえません。この課題をクリアするために、来年『ペチャバト』のリニューアルを予定しています。

MESON・梶谷:グローバルを狙う、ビジョンを描くというのは前提としてやりつつ、そこへ至る「道筋」はあえて描いていません。スタートアップは道筋よりも、入り口とタイミングで全てが決まると思っているので。ARという不確実性が高い分野では、いつ、どんなユースケースでアクセルを踏むかが全てかなと。そこだけ間違えないように、ということを強く意識しています。

ホロラボ・伊藤:今、梶谷さんが言ったように「分からない」というのが、面白いところですよね。弊社の場合は仲間になりたそうな人たちと組んで、緩く決めて、一緒に作っていくスタイルです。

左から、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん
左から、株式会社meleap CEO 福田浩士さん、株式会社ホロラボ COO 伊藤武仙さん

ーーでは、一緒に働くチームメンバーを採用する際に意識していることは何でしょうか?

MESON・梶谷:2つあって、1つはスキルの幅を自分で広げられる人。AR開発では、建築の考え方や空間的な体験設計能力など求められる能力の範囲が広いので、それらを自分でキャッチアップできるかどうかを強烈に見ています。

もう1つは事業が変わっても付いてきてくれて、かつ活躍できる人。道筋を描かないという話にも通じますが、事業が変わる前提で経営をしているので、ビジョンへの共感度やそもそもの人間性、地頭が良いかを見ています。

もう少し視野を広げると、フリーのクリエイターとプロジェクトごとにコラボレーションする取り組みも行っていますね。

meleap・福田:弊社ではビジョンへの共感が最も重要だと考えています。設立5年を経て、さまざまな採用の失敗を重ねてきて悟ったのは、少しでも違和感があったら採らないこと。絶対に妥協しないことは大事だと思います。

Graffity・森本:僕らもビジョンやバリューを意識して採用しています。というのも、以前コミュニケーションアプリからゲーム領域へミッションが変わったときに、離脱したメンバーがいたんです。深くビジョンにフィットした人じゃないと、大きな方向転換があった時に一緒に続けていけないので。

ホロラボ・伊藤:弊社は募集要項に「my HoloLens所有」と書かれていて(笑)。半分冗談で半分本気なんですが、私たちはデバイスが好きな人と一緒に仕事がしたいという思いがあります。そういう人は指示をしなくても、勝手に最新デバイスの情報をキャッチアップしていけますしね。

未開拓の「AR業界」で正解を見つけるには

左から、株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん
左から、株式会社MESON CEO 梶谷健人さん、株式会社meleap CEO 福田浩士さん

ーー開発の知見を強みとするために、取り組んでいることを教えてください。

ホロラボ・伊藤:新しいことに挑戦して、会社に失敗談を残すことを意識しています。プロジェクトによってはコストが厳しいケースもありますが、そこに目を瞑ってでもやる時は、会社に学びが残ることを優先しています。

MESON・梶谷:僕らが意識しているのは2つで、1つは海外の一次情報に当たるということ。英語の記事を読んだり、世界的なARカンファレンスに足を運んだり。もう1つは自分たちで教科書を作ること。ARのサービス作りには、未だ正解はありません。それらの教科書を自分たちで作り、なおかつ業界に向けて発信することを意識的に取り組んでいます。

Graffity・森本:僕らはto Cのプロダクトなのでユーザーに触ってもらうことが重要で、2週間に1回はヒアリングをしています。毎回シチュエーションを変えながら実施すると、一度で10個程の改善点が見つかります。1ヶ月で20個、1年で240個と考えるとすごい数ですよね。ここでの試行錯誤こそ会社のナレッジになっています。

meleap・福田:弊社ではデバッガーを採用して、週に2〜3回ひたすらプレーしてもらっています。身体能力が必要になるので、採用基準が反復横飛びの回数とか(笑)。もう少し長期的な目線だと、研究開発チームは存在しているべきかなと思っていて、3人目の社員は研究開発のために採用しました。今後は、さらに強化していきたいですね。

ーー4社4様の戦略があり、非常に興味深いお話でした。引き続き、切磋琢磨しながらAR業界を盛り上げていきましょう!

取材・文・撮影:小林 香織


ARコミュニティイベント「ARISE #2」は、2019年11月30日(土)に開催が決定している。詳細が気になる方は、ARISEのDiscordコミュニティで続報のチェックを。

>>「ARISE: Spatial Experience Summit #1」ダイジェスト映像はこちら

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