キャリア Vol.932

「クライアントワークを舐めるな!」と一喝するGoodpatch土屋尚史と現場エンジニアに問い掛ける3つの疑問

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多くのエンジニアが従事している受託案件。だが、なんとなく「受託案件より自社サービスの方がいい」というヒエラルキーを感じることもある。2次請け、3次請け企業で働くエンジニアだけでなく、1次請けの開発案件に取り組むエンジニアでさえ、そんな空気を感じている人もいるのではないだろうか。

そうした、受託開発に対するもやもやを「クライアントワーク(受託開発)を舐めるな!」と一括し、誇らしげにクライアントワークの良さを伝えてくれたブログ(Goodpatchがクライアントワークを続ける理由)が話題になった。

書いたのは、UI/UXデザインのリーディングカンパニーでもあるグッドパッチの創業者・土屋尚史さん。

10年以上に渡ってクライアントワークに取り組み、「プロフェッショナルとして、プライドを持って(クライアントワークを)やっとんねん!」と気炎を上げる土屋さんと、現場エンジニア2人に、ブログに書かれた内容についての真意と、クライアントワークを通じてエンジニアができる成長について聞いた。

株式会社グットパッチ
株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO
写真中央)土屋尚史さん(@tsuchinao83

1983年生まれ。Webデザイン会社でディレクターなどを経験した後、サンフランシスコでスタートアップの海外進出支援に勤しむ。2011年9月株式会社グッドパッチを創業。UX/UIデザインをコア事業として事業展開をしている
エンジニア
写真左)松村智弘さん

2017年6月入社。32歳。モバイルアプリを中心にアプリケーションエンジニアとして約6年間従事。これまでにマンガアプリなどのクライアントワークを中心に担当
デザインエンジニア
写真右)尾崎雄太さん

2018年4月新卒入社。25歳。学生時代からエンジニアとしてクライアントワークに携わる。現在はエンジニア兼UXデザイナーとしてさまざまなプロジェクトに参画している

Q1.クライアントワークの1番のやりがいは何ですか?

――「決まったものを作るだけ」「納期が厳しい」「つらそう」など、クライアントワークに対して、やりがいを感じにくいというイメージを持つ人は少なくありません。そもそもクライアントワークの一番のやりがいとは何でしょうか。

株式会社グットパッチ 土屋さん

土屋:クライアントごとに業種もビジネスモデルも違うので、幅広いビジネスに触れられることですね。好奇心が強いタイプで、一つの事業だけをやり続けるのは難しいと感じている人には向いていると思います。僕自身もそうで、いろいろな事業に関われるクライアントワークは性に合っているし、楽しいですね。そして成功したら、ユーザーとクライアント両方の喜びを感じられる、こんなに美味しい仕事はないと思いますね。

尾崎:やっぱり、ユーザーとクライアントの両方に喜んでもらえることは、一番のやりがいですよね。クライアントから「どうしたらいいと思う?」のような相談を受けて、それを解決して喜んでもらえることが嬉しいですね。

松村:僕にとってクライアントワークが楽しいなと感じるのは、僕たちとクライアントとお互いの本気が伝わり合う瞬間ですね。自分自身がクライアントに本気でコミットすると、クライアントのマインドセットも変わって相乗効果が起こる瞬間があります。

例えば、打ち合わせした当日に提案内容をまとめてクライアントに設計書を送る。すると、クライアントもそれに応えて、仕様をたった1日で詰めてくる。そして、僕たちは上がってきた仕様をすぐにプロトタイプにする。決められた期間で相手の期待値以上のクオリティが求められるプレッシャーがあることは、お互いを高め合うことにつながってます。このお互いを高め合う開発ができるのは、クライアントワークならではですよね。

Q2.クライアントと親密な関係ってどう築くんですか?

――土屋さんのブログの中で「社外に友(とも)ができる」と書いてありました。どうしても仕事を請け負う側としては、クライアントの意向を忖度したり、遠慮して真剣な議論ができなかったりすることが多く、“戦友”というほど親密な関係を築くのは難しいように感じます。

土屋:松村は、クライアントとサウナに行ったんでしょ?

株式会社グットパッチ 松村さん

松村 はい(笑)。クライアントとはいつも腹を割って本気で話しているので、その流れで、サウナに行きました。

――本当に仲が良いんですね。とはいえ、腹を割って本気で話したい気持ちはあっても、なかなかそうできないことの方が多いような……。

松村:凄く分かります。時には本当のことを言うのを躊躇してしまう時もありますよね。だけど、クライアントの課題を解決することが僕たちの責任。「言いにくいから」を理由に本当のことを言わないのは、その責任を果たせないことだと思っています。だからこそ真剣勝負で話をしますし、その結果、クライアントとの一体感が生まれると感じることが最近多いですね。

尾崎:クライアントワークは、前提として全員が同じゴールを見据えるということが大事だと思います。エンジニアとしても、顧客の要望を鵜呑みにするだけでなく、クライアントにとって何がベストな設計かを自発的に考えて、常に提案できるスキルを身に付けるべきですよね。

土屋:例えば、クライアントとミーティングをしていると、大きなテーブルのこちら側と向こう側の間に、何か見えない線が引いてあって、その境目で「今日はあの条件を飲んでもらおう」とか「あそこを値引きしてもらおう」とかって、駆け引きをしてしまう瞬間ってあるじゃないですか。

ただ、「本当はもっとこうしたほうが良いのに」とか、「70点くらいのクオリティだけどクライアントのニーズは満たしているからいいや」とか思いながら仕事をしていると、相手も心を開いてくれないんですよ。だからこそ、自らオープンにコミュニケーションをしないと、戦友にはなれないんですよね。変に構えず一緒に働く人がたまたま社外の人と捉えるくらいがいいんです。

実際、プロジェクト終了後のクライアントインタビューでは、「忖度しない」「正直で裏がない」「提案に対して、首を振ってくれる」といったことが嬉しいという意見をいただくことが多いんです。それってお叱りの言葉じゃなくて、本音で正直に言うことをクライアントも求めているということなんですよね。

Q3.自社サービスの開発と比べてクライアントワークはユーザー視点が身に付きにくい?

――クライアントワークの場合、一つのプロダクトに集中できる自社サービス開発と比べて、案件ごとにユーザーが違うためユーザー視点を身に付けにくいという意見もあります。

株式会社グットパッチ 尾崎さん

尾崎:そんなことないですよ。自社サービスの場合、基本的にはそのサービスのユーザーのことだけを考えながら働くことになると思います。けれどクライアントワークの場合、案件ごとに競合調査もすれば、10人ぐらいにユーザーインタビューもするし、ユーザーが抱える悩みについても分析します。案件ごとに多種多様な市場の競合調査やユーザーインタビューを繰り返すことになるので、結果としてユーザードリブンな開発の姿勢が身に付きやすい環境だと感じています。

――確かに、複数企業のユーザーを理解できるのはいいかもしれませんが、自社サービスのユーザーのことだけを考えている人と比べると理解度は浅くなるような気もするんですが……。

松村:そういう意見があるのも分かりますが、自社サービスかクライアントワークかという環境自体は、あまり大きな問題ではないように思います。結局はエンジニア自身がどれほどユーザーのことを理解したいかという気持ちの問題ではないでしょうか。

前職に在籍していた時、プロトタイピングツールで簡単なプロトタイプを作ってみたことがあります。それをクライアントに見せてみたところ、アプリの使い勝手を体験することができて好評でした。また、現職の Goodpatch ではエンジニアもユーザーインタビューに参加する機会を作って、理解を深めることに務めています。

土屋:意外と自社サービスの方が、資産として溜まったペルソナをそのまま使っていることが多くて、ユーザーインタビューに行かないことが多いですよね。ユーザーのインサイトは常に変わっているので、直接ユーザーの声を聞き理解してペルソナをつくるまでの過程は非常に重要だと思います。

クライアントから、「ユーザー視点を持ってサービスをつくる大切さが分かりました」と言われるくらいコミットする。ユーザーのニーズをクライアントが理解できるような状態にするまでが、クライアントワークだと思っています。

クライアントワークに誇りを持つエンジニアが増えれば、良いプロダクトは増えていく

――これまで色々とお話いただきましたが、最後に皆さんはクライアントワークの何が良いと思ってるのか、改めて教えてください。

株式会社グットパッチ

土屋:さまざまなサービスに関わり、クライアントの期待値を期間内で超えることが求められるクライアントワークは、成長するのに最も適している環境だと思います。noteにも書きましたが、自社サービスは会社によって納期がゆるい場合も多く、期限については甘い。しかし、クライアントワークは決められた納期の中で、クライアントの期待値を超えるアウトプットを出さないといけないというプレッシャーがあります。この強烈なプレッシャーが人を育てるんです。

尾崎:エンジニアだからミーティングでは黙っていますとか、与えられた範囲のことしかやりませんみたいな「受託根性」は捨てて、自分の出せる価値を全部出し切ることが大切ですよね。責任範囲を決めずに、クライアントにとってこれがいいと思ったら、ちゃんとぶつける。それが、自分自身の視点を高めることに繋がるし、一つ上の提案ができるエンジニアへと成長させるんだと思います。

松村:そうですね。Goodpatchのコアバリューのひとつに「Go Beyond 領域を超えよう」というものがあり、僕たちは職種や入社年次といった垣根を超えて、どんどん越境することを大切にしています。課題解決をはばむ垣根は全部取っ払って、チーム一丸でクライアントの課題に取り組む。偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれると信じています。

土屋:クライアントに良い影響を与えて、クライアントのチームまで変革してこそ真のクライアントワーク。自社プロダクトと同等以上にクライアントワークには魂を込めているし、クライアントにフルコミットしています。

尾崎:現場のエンジニアからすると、中途半端に言われた通りに作って失敗する方がリスクですよね。業界が狭いんで、すぐ広まるんですよ(笑)。あの企業はクライアントの課題を解決できなかったとか、むしろ負債になったと言われるような仕事は、絶対にしたくないですね。本気でコミットすればクライアントにも伝わるし、会社の評判も上がる。次の良い仕事にもつながります。

松村:クライアントワークとはいえ、僕たちエンジニアにとっては、作ったものは全部自分の子どもみたいなものです。やっぱり多くのユーザーのためになって欲しいし、成功させたい。クライアントの課題を解決するプロダクトをつくりたい。いつも、そう祈るような気持ちで開発しています。

土屋:グットパッチが誇りを持てる案件を取れるのも、現場のエンジニアやデザイナーの努力があってこそなのは言うまでもありません。どんな役割、どんな案件だとしてもエンジニアとしての誇りを持って開発すべき。クライアントワークに誇りを持てるエンジニアが一人でも増えれば、クライアントも本気でプロダクトをつくろうとするし、より良いプロダクトやサービスが増えると思います。

株式会社グットパッチ

とはいえ、クライアントと直接話ができなかったり、自分の担っている役割にやりがいを感じず、もやもやする瞬間もあるかもしれません。でも、自分が取り組んでいる一つ一つの仕事が、世の中を動かしてるんだと誇りを持ってクライアントワークに取り組める人が増えると嬉しいですね。ユーザーとクライアント両者に喜びを提供できるクライアントワークは、誇りある仕事ですから。

取材・文/石川香苗子 撮影/桑原美樹

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