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【中国配車サービス】牽引する滴滴(DiDi)・新規参入続出で課せられた課題

ITニュース

    圧倒的シェアの背景で抱えるいくつもの課題

    2019年5月中国配車サービスアプリのユーザー規模(出典:易观)

    2019年5月中国配車サービスアプリのユーザー規模(出典:易观)

    中国配車サービス最大手の「滴滴(滴滴出行、DiDi)」は2016年にアメリカの配車サービス「Uber」と合併してから中国市場をほぼ独占状態にある。

    2019年5月のMAU(月間アクティブユーザー数)は7517万人で2位の「首汽约车」の約22倍と、圧倒的なシェア率は数字からも見て取れる。

    近年は海外進出も積極的に行っていて、すでに日本でも東京や京都、大阪でサービスを展開しており、トヨタからは600億円の出資を確保。JALとは共同してキャンペーンを行い空港送迎サービスを打ち出したりと、積極的に海外企業と連携を図り、海外においての事業拡大を進めている。

    このように順調に見える滴滴だが、実は2012年の会社成立以降6年間、1度も黒字を出していない。

    その理由として、中国当局に反トラスト調査を行われたり、2018年に利用者が運転手に殺害される事件が2件も起きたことによって、相乗りサービス「順風車」の提供を中止に追いやられ、いまだ開始できていないことが挙げられる。

    2018年にはなんと109億元(約1,779億円)もの巨額な赤字を出しており、知名度と圧倒的シェアの裏側で、様々な課題を抱えていることが分かる。

    業界はスピード重視から品質重視へ

    滴滴の抱える課題は中国配車サービス業界全体の課題でもあるため、ライバル社の美団も対応に尽力している。殺人事件のような恐ろしい事件の他にも、違法車両による安全問題も懸念されており、当局の取り締まりも強化されているのだ。こうした背景によって社会全体でサービスの安全性への懸念が高まり、高品質なサービスの需要が増えている。

    ■「专車」の市場規模が拡大

    配車アプリが提供するサービスは、大きく2つに分かれる。

    (1)正規タクシーと個人タクシーによる「快車」
    (2)車種も異なり、サービスグレードも高まる「专車」

    安全性が重視されている今、料金の安い「快車」よりも、料金は上がるがサービスの品質が高い「专車」を選ぶ利用者が増えている。市場取引においても、「专車」の市場規模は2015年の時点で19億元だったのが、2018年には460億元と、大幅に増加した。

    「快車」と「专車」の利用状況(左)、「专車」市場規模と予測(出典:易观)

    「快車」と「专車」の利用状況(左)、「专車」市場規模と予測(出典:易观)

    「专車」の特徴

    ・清潔で広い快適な車内環境
    ・厳しい審査を通ったプロの運転手
    ・荷物を持ってくれるなどのサービス提供
    ・安全性が高い
    ※事件の被害者の多くが女性乗客だったため、2018年から女性の「专車」利用が増えた。

    ■配車サービスはさらに細分化

    より多くのニーズに応えるため配車サービスは細分化され、その場で車を呼ぶサービス以外にも、空港への送迎や数日間の利用、貸切、香港マカオ広州の通関、国外での送迎、障害者向けサービスなども提供され始めている。

    海外旅行へ行く中国人観光客が増えていく中で、海外においても自由に配車サービスが利用できるように、Ctirpなどは海外の各地域の地元の企業と連携し、中国人観光客向けの配車サービスを打ち出した。

    異業種からの市場参入

    中国配車サービス市場は滴滴がほぼ独占状態にいるが、地図アプリの高徳(2014年にアリババに買収された)やデリバリーサービスの美団、旅行会社のCtirpなど他分野の企業も配車サービスを打ち出し、市場へ参入。さらには、中国の三大自動車メーカー東風汽車、中国第一汽車、長安汽車も、合同で新しい会社を設立し配車サービス事業を始め、参入を果たした。

    他分野からの強豪達の登場は市場競争を激化させ、絶対的な地位を確立していた滴滴を脅かしている。“莫大な資金を投入し、高い市場シェアを占める”という先手を打つ時代はもう終わったのだ。

    高品質なサービス提供こそが配車サービス業界の勝因となっている今、滴滴も各ライバル社もさらなるサービスの品質や安全性の向上に力を注いでいる。

    ※こちらの記事は、『チャイトピ!』コンテンツから一部抜粋して転載をしております。
    >>元記事はこちら

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