キャリア Vol.984

エンジニアは技術力が10割! “英語ができなかった”人が海外で働いてみて思うこと

日本のエンジニアの給与は海外に比べて低いと言われている。以前エンジニアtypeでお話を伺ったLinkedIn村上臣さんによると、「社内におけるエンジニアの重要性が日本と海外では全く違う」ことが待遇に影響しており、日本は世界から「エンジニアを安く買える国」とすら見られている状況だ。

>>LinkedIn村上臣に聞く、転職で失敗しないためにエンジニアが知っておくべき3つのこと

より良い条件で働くためには、海外勤務を経験しておいた方が良さそう。だけど海外で働くイメージは湧かないし、英語力にも自信がないーー。そんな迷いを払拭するべく、もともと「英語は全然喋れなかった」と話す海外経験者3人に、現地での経験や想像とのギャップを聞いた。

村下 瑛/谷口真章/服部毅保
SHE株式会社 CTO / 執行役員 村下 瑛さん(写真右)
株式会社ハッカズーク 開発責任者 / 谷口真章さん(写真中央)
アソビュー株式会社 ASOVIEW VIETNAM CTO 服部毅保さん(写真左)

豪華な住まい、リムジン通勤……ギャップだらけの海外勤務

ーーまず、皆さんのこれまでのご経歴と、海外で働くことになった経緯を教えてください。

村下さん(以下、敬称略):僕はリクルートが求人検索サービスの米・Indeedを買収した直後、同社の東京オフィスの新卒一期生として入社しました。最初の4年間は東京で、その後1年間はアメリカのテキサスで開発に携わり、今年の3月に帰国して女性のためのキャリア&ライフコーチングスクールを軸に事業を展開するSHEにジョインしました。

リクルート入社時の英語レベルは、TOEFLのスピーキングテストで30点中3点。自分の好きなものは言えるけど、その理由は言えないレベルの語学力でした。

谷口さん(以下、敬称略):エンジニアになって2年目のときにスカウトを受け、ある日本企業のニューヨーク拠点で開発をすることになりました。当時いた会社には籍を置いたまま、1カ月現地に行って帰ってくるという生活を約1年間続けました。

ーースカウトを受けたとは、すごいですね。

谷口:海外で働きたい気持ちがあったのでうれしかったです。ただ、渡航直前になっても英語は全く喋れなかったですね。準備といえば、行きの飛行機の中で英会話の本を読んだ程度です(笑)

服部さん(以下、敬称略):新卒で大手SIerに入社した後、国際的なチームでの開発を京都のスタートアップ企業で経験し、その後アソビューにジョインしました。最初の会社で普通に働くことに退屈してしまい、海外で働ける会社をずっとを探していたんです。

アソビューでは2018年7月にベトナムオフィスが立ち上がり、今年の7月からそこのCTOに就任しました。

ーーそれぞれの国の文化面で、出発前に抱いていた印象とのギャップがあれば教えてください。

村下:トランプ大統領のイメージがあったので、外国人には不寛容な方が多いのではないかと思っていました。でも実際はフレンドリーな人ばかりで、差別や孤独を感じることはなかったですね。同僚の友人との集まりに招待してもらうことも多く、移民に対しても開かれた国だなと思いました。

村下 瑛

谷口:どうせ安いホテル住まいだろうと思っていたら、先方がずいぶん立派なホテルを用意してくれて。部屋は広いし、リムジンの送迎まで付いていました。

ーーリムジンで毎日通勤していたのですか!?

谷口:はい。日本ではなかなか考えにくいですが、アメリカはお金を使うところには使う文化なんだと感じましたね。

服部:ベトナムはあまり発展していない国だと思っていましたが、イメージと全然違って街はとても賑やかでしたね。僕は50階建てくらいのタワーマンションに住ませてもらったのですが、プールとジム付きで家賃は都内のワンルーム賃貸と同額。物価の安さは予想通りで、生活費は日本の3〜4分の1ぐらいに抑えられました。

「Ifこれだったら、thenこれだよね、OK」で通じる

ーー皆さん最初から英語が堪能ではなかったとのことですが、コミュニケーションはどのようにとっていたのでしょうか?

村下:はじめは本当に英語が話せなかったので、とにかくプレーヤーとして成果を出すことに集中していました。

その後喋れるようになるにつれて、チームのファシリテーションや1on1をする役割にシフトしていったのですが、その時も結構大変でした。不完全な言葉で自分の意見をみんなにも納得してもらうように伝えるのには非常に苦労しましたね。

メンバーの中には10年もアメリカに住んでいる日本人がいたんですけど、発音もボキャブラリーもコテコテの日本人なんです。その人を見て、必ずしもネイティブみたいに喋れる必要はないと気付き、できるだけシンプルに伝えるように心掛けていました。

谷口:僕がニューヨークで働いたのは日本の会社だったので、一緒に働いていたメンバーもほとんど日本人でした。中には外国人の方もいましたが、ブリッジSEの方がいるなど環境が整っていたので、英語を話す必要は基本的にはありませんでした。

ーー英語を話せなくてもコミュニケーションが取れる環境が用意されていたのですね。

服部:僕も谷口さんと一緒で、ITC(ITコミュニケーター)という通訳の方が間に入ってくれました。ベトナムの方は英語が喋れる方が多いですし、エンジニア用語ってほとんど英語なので、通訳を介さなくても単語を知っていれば大体通じました。

村下:エンジニア同士は専門知識を共有している分、英語を完璧に喋れなくても通じやすい面はあると思います。「Ifこれだったら、thenこれだよね、OK」というレベルの会話でも通じるので(笑)

ーー通訳の方がいる場合は、会話で苦労することは全くないのでしょうか?

谷口:いや、苦労したこともありました。技術的に難しすぎる話はブリッジSEの方が訳せないので、そういうときはボディーランゲージでなんとかしていました(笑)

谷口真章

谷口:あとドキュメントが英語なので、喋る必要はなくても、読んだり書いたりすることは必要だったんです。読み書きの出来はたぶん10%ぐらいでしたね(笑)。それでもプログラミングで成果を出していれば、良い評価をしてもらっていた気がします。

服部:日本語って難しいらしく、ベトナム語に訳されると3倍ぐらいの量をITCの方が喋るんですよ。相手はウンウンと頷いていても、間に人が入っているので、本当に通じているのか最初はすごく心配でした。

あるときITCの方が僕の言葉をベトナム語に訳してslackで展開してくれたことがあったので、それを試しにGoogle翻訳にかけてみたんです。そしたらめちゃくちゃ短縮されてたんですよ(笑)。ディテールが全然伝わっていなくて。尺は伸びてるのに、情報量は減っていたんです。ITCの方にはそのまま訳してほしいとお願いしていますが、正確に伝えることにはいまだに苦労していますね。

“プロジェクトの文化”に国籍は関係ない?

ーー日本のエンジニアと海外のエンジニアで違いを感じたことはありましたか?

村下:アメリカには「意見を述べて存在感を示さないと、参加する意味がない」というディスカッションのカルチャーがあるので、ミーティングでは全員が活発に発言していました。ところが「それで何決まったんだっけ?」となることも多くて、議事録は大切でしたね(笑)

あとは職務要件に対する意識が日本よりも強いなと感じました。自分はこのために給料をもらっていて、それができなければクビだし、それ以上のことをしていれば昇給してしかるべきだと。それゆえ業績のアピールや、給与の交渉などをしっかりとする方が多い印象でした。

ーー給与交渉を積極的に行うとは、日本人とは大きく異なる性質ですね。

村下:そうですね。でもその反面、決められた職務内容「以外」のことをするのにはためらいを感じるようです。相手を立てたり、上司の決定にはあまり反論しなかったりするので、お互いの担当領域を明確にして、争いのないようにしているんだなと感じました。

服部:ベトナムも同じです。職務内容を詳しく記述した「ジョブディスクリプション」を気にする方がほとんどです。「自分はプログラマなのでテストはしません」と言ったりするので、文化の違いを感じますね。

服部毅保

服部:一番驚いたのは、曖昧な指示が一切通じないことです。「このページと同じように作ってください」とお願いすると、日本人なら汲み取ってできてしまうものですが、ベトナム人からは全く違うものが出てくるんですよ。理由を聞くと、「画面定義書がなかったから」と言われました。その反面、詳しく指示を出せばその通りにしっかり作ってくれる。間違えることはほぼないですね。

ーーベトナムの方は業務の正確性に長けているのですね。

服部:はい。ただ問題は、作る「早さ」に焦点を置きすぎてしまうことです。もともとあったパーツを使い回した結果、動作が遅いものを作ってしまうこともあるので、まだユーザビリティーなどには配慮が及ばない段階なんだなと感じました。

谷口:私もアジアのとある国の方と一緒に仕事した経験がありますが、ベトナムと同じで、早さを優先してしまうんですよね。それによって品質の優先順位が下がってしまうと、あとあと自分たちの首を締めるということをちゃんと説明する必要があるんです。

ーー同じエンジニアでも、国によって価値観が大きく異なるのですね。

谷口:そうかもしれません。ただ僕はいろんなプロジェクトを渡り歩いてきてきましたが、“プロジェクトの文化”という観点でいうと、「日本人だから」「アメリカ人だから」「フィリピン人だから」というのはあまり感じませんでした。自分からどんどん発信するプロジェクトもあれば、お互いのテリトリーが閉じているプロジェクトもあって。それはメンバーの国籍よりも、初期メンバーの性格で決まる部分が大きいのではないかと思います。

ーーなるほど。ところで、日本と海外ではエンジニアの待遇はかなり異なるのでしょうか?

村下:エンジニアの待遇は日本よりアメリカのほうが圧倒的に良いと思いました。僕らの会社が出したオファーの倍額の給与がGoogleから提示されて、良い人に逃げられてしまうことがよくあったので。

服部:ベトナムのエンジニアが日本人と比べて給料が高いわけではないのですが、ベトナム国内の他の職種に比べると、エンジニアの待遇は圧倒的に良いです。あとベトナムのエンジニアは情報系の大学を出ているので、自分のことをプロフェッショナルだと思っていますね。その分プライドも高い傾向にあるかもしれません(笑)

語学力と技術力、必要な割合は「技術力が10割」

ーー海外で働いたことでどんな学びがありましたか?

谷口:ときには自分の意見をグイグイと主張することの必要性を覚えました。日本でやりすぎると嫌がられてしまいますが、プロジェクトを成功させるためには自分を出していくことも必要だと感じました。

服部:人に優しくなれましたね。「こういうものなんだ」ってある意味諦められるというか。やってくれないのは自分の指示が悪いからだし、そもそも「やってくれない」という考え方をやめようと思えたのは大きな収穫でした。

村下:僕も優しくなったなと(笑)。それは他人に対してだけでなく、自分に対してもです。バンド活動をしていてお金がなくなったからプロジェクトマネジャーになった人とか、家族がイスラエルにいるので9カ月だけアメリカで働いている人とか、海外にはいろんな人がいて。そうした日本ではあまり見られない価値観に触れたことで、自分ももっと自由に生きていいのかもしれないと思うようになりました。

村下 瑛/谷口真章/服部毅保

ーー自分自身の働き方を見直すきっかけにもなったのですね。

村下:そうですね。あとは多様なバックグラウンドの人と一緒にプロダクトを作ることを楽しいと感じるようになりました。さまざまな価値観のメンバーがいると、それだけ多くの視点から検証されることになるので、結果的に強いコンセプトのものが生まれます。この「多様性のメリット」に気付けたことはうれしかったですね。

ーーこれから海外で働きたいと思っているエンジニアの方へアドバイスをお願いします。

谷口:体調が悪くなったときに薬局に行っても、英語が読めないと怖くて薬が買えないので、自分の一番大事な薬は日本から持っていった方がいいです。僕の場合はオロナイン軟膏でした(笑)。あと日本のお菓子を持っていくとかなり喜ばれます。最初の掴みさえうまくいけば、会話は単語を拾っていけばなんとかなるので。

村下:お菓子はかなり喜ばれますね。僕のおすすめはキットカットです。特に抹茶や桜、ハローキティといった日本の要素があるものが喜ばれます。

ーー人間関係はお菓子で切り開くと(笑)

村下:取っ掛かりとしては効果的ですね。

まじめにアドバイスをすると、海外で働くといっても、他の方のように通訳が付くケースもありますし、職位によって求められる英語レベルも違うので、自分はどんな感じで海外で働きたいのか、ゴールを明確にすることが大切かなと思います。必要な英語のレベル感は、一度海外のエンジニアと会話してみると掴めると思います。

服部:ベトナムのような途上国で働くときに大事なのは、“手放す力”です。「日本ではこうだから」と言い始めると、拒否反応が出てきて日本に帰りたくなってしまうと思うんですよ。僕はベトナムの『Grab food』というフードデリバリーサービスでハンバーガーを頼んだときに、1つしか頼んでないのに3つも入っていたことがありましたが、その雑さも含めて楽しめるようになると、やっていけるんじゃないかなと思います。

語学に関しては、ベトナムの場合は特に必要ないかなと思います。僕が覚えて行ったベトナム語は、「1、2、3」という乾杯の合図だけでしたから(笑)

村下 瑛/谷口真章/服部毅保

ーー皆さんの総論として、海外で働く上で高い語学力は必要ないということでしょうか? 語学力と技術力、それぞれ必要な割合はどのぐらいだと思いますか?

服部:現地のポジションによると思いますが、プログラミング力がないとエンジニアとして認められないと思うので、技術力が10割ですね。

谷口:同感です。

村下:僕もエンジニアとして仕事ができないと、いくら英語ができても現地で受け入れてもらえるイメージは湧かないです。語学はなんとかなるので、まずは日本でしっかりプログラミングスキルを身に付けることが大事だと思います。

取材・文/一本麻衣 企画・編集/天野夏海 撮影/川松 敬規(編集部)

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