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悪徳SESにコマにされないためには? 「エンジニアを使い捨てる会社」を面接で見破る3つのポイント
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「SES(System Engineering Service)」という言葉には、「企業のシステム開発を下支えする存在」であると同時に「使い捨てエンジニアを量産する“グレー”なビジネス」というイメージを持つ方もいるのではないだろうか。
無論、法令を守り、エンジニアの成長のために尽力するSES業者はある。しかし、エンジニア個人が入社前に、会社の実態を見極めるのはそう簡単なことではない。
では、どうすれば転職活動中に、これから面接をするSES企業がエンジニアを使い捨てる会社か、そうでないかを見極めることができるのだろうか。
前職のSIer時代を含め、40年以上にわたって業界の変遷を見つめてきたシステム営業のベテラン、松本兵衛さんは、「面接官との対話の中で、悪徳SESを炙り出すことができる」と話す。
松本さんが言う“悪徳SES”とは何か。そのような企業に入社しないために面接時に何を確認すればいいのか。具体的に話を伺った。
なぜ、“悪徳SES”が存在し続けるのか
IT業界において、SESを問題視する声があるのをご存じの方も多いと思います。
その悪評の元になっているのが、エンジニアを育てることなく使い捨てるSES業者や、紹介手数料を荒稼ぎしてプロジェクト全体のコストを押し上げる“手配師”と呼ばれるブローカーの存在です。
とはいえ、SESは準委任契約の一つに過ぎず、その存在自体に良いも悪いもありません。
ではなぜ、働き手であるエンジニアやシステム開発を依頼した顧客の利益を食い物にする人々が業界にはびこっているのでしょうか。
それは、エンジニア不足という社会的背景とともに「多重下請け」という、IT業界が長らく依存してきた業界構造にも問題があると考えます。
ピラミッド型の多重下請け構造は、要件定義から設計、実装、テスト、運用へと、工程が段階を経ながら進捗するウォーターフォール型の開発スタイルとも相まって、これまで数多くの大規模開発プロジェクトを支えてきました。
しかしこの仕組みは、工程管理のしやすさがある一方、現場で働くエンジニアにメリットだけをもたらしたわけではありません。
なぜなら、多重下請け構造は、ピラミッドの底辺に近付けば近付くほど、低賃金で働くエンジニアを数多く必要とする仕組みでもあるからです。
もちろん、ピラミッドの頂点に向かって一段上れば会社の収益は高まり、所属するエンジニアの収入も増えます。しかし、それを実現するには多大な教育コストを支払わなければなりません。
しかし、大多数のSES業者は、手間暇が掛かるエンジニアの育成に時間を割くより、現場に送り込むことを優先しがちです。その方が直ちに売上が立ち、収益が上がるからです。
事実、誠意のないSES業者がアピールする『手厚い技術教育』や『最新技術が身に付く』といった甘い言葉に誘われてエンジニアになったものの、何年にもわたって技術力をあまり必要としない業務を与えられ続け、「成長機会を奪われた」と考える人は少なくありません。
私自身、これまで大勢のエンジニアと面談してきましたが、幾度となくこうした悩みを打ち明けられてきました。
新型コロナショックで景気低迷。エンジニアは「自己防衛」を
「スキル向上」や「キャリアアップ」など、到底望めない職場環境に追い込まれてしまったエンジニアが、成長の停滞を挽回するのは簡単ではありません。
会社に掛け合って待遇改善を要求できる人や、プライベートな時間を費やして、業務に結び付くかどうか分からない学習を続けられる人ばかりではないからです。
ならば「転職すればいい」という意見もあるでしょう。実際、転職市場は一貫してエンジニアの売り手市場であり、転職すれば状況を変えられる可能性は高いといえそうです。
しかしそれでも、知らず知らずのうちに成長機会の乏しい会社を渡り歩いてしまうエンジニアもいます。「どこにいっても同じ」だと諦め、向上心を失ってしまっている人が少なからずいるからです。
また、ここ数カ月、市況全体が悪化しているのも見逃せません。
2018年にIDC Japanが公表した調査によると、2018年から2023年までの国内ITサービス市場の年間平均成長率は、年率1.3%程度と予測されていました。
無論、この数値には、現在進行している新型コロナウイルス感染拡大による世界規模の需要低迷は織り込まれていません。
1%台の成長はおろか、マイナス成長を覚悟しなければならない状況の中とはいえ、数十年にわたって続いた業界構造がこの1年で劇的に変わるとは思えません。
当面は、エンジニアが自身の置かれている立場をよく理解し、悪徳業者の言葉に引っ掛からないよう「自己防衛すべき」というのが、もっとも現実的なアドバイスになりそうです。
「エンジニアを使い捨てする会社」を面接で見抜く3つの方法
では、その自己防衛はどうすればできるのか。
前職のSIer時代から数えて約40年にわたりシステム営業に携わってきた経験から、注意すべき会社を面接の場で見分ける方法をご紹介したいと思います。
面接は人材を採用したい会社と求職者のコミュニケーションの場です。社風や仕事の進め方、互いの人柄など、募集要項には書かれていない事柄にも触れられる貴重な機会にも関わらず、あなたのスキル、実績だけを一方的に聞かれていると感じたら要注意。
それはあなたを理解するために行っている質問ではなく、あなたが「いくらで売れる“手駒”になるか」を値踏みしているだけかもしれません。
自社の優位性や強みを示す根拠が、取引先の顔ぶれでしか示せない会社は、警戒すべきです。
会社は利潤を追求する存在であるとともに、事業を通じて社会に貢献すべき存在です。将来ありたい姿、果たすべき使命、組織としての価値観があってしかるべきなのに、それを面接官が語れないのは、その会社が利潤追求にしか興味がないことの表れかもしれません。
もちろん、有力なクライアントと取引をしていること自体は悪いことではありませんが、「それしか強みがない」場合には注意が必要です。
ウェブサイトや会社案内には、「AI」や「アナリティクス」「IoT」など、話題性のある技術キーワードが散りばめられているのに、実際何をしているのか面接官が具体的に話せない場合は要注意。
逆に、実際にチャレンジしている会社であれば、たとえ小さな取り組みであったとしても実績を伝えようとしてくれるはず。派手なキーワードに惑わされないように心掛けましょう。
「開発の民主化」時代に、多重下請け構造の底辺にい続けてはいけない
今、システム開発の世界には「開発の民主化」ともいうべき、変化の波が押し寄せています。
業務効率化を支援するクラウド、AI、データアナリティクスなどは、あらゆる業務、業界に及んでおり、これらのサービスを組み合わせることで、誰もが安価で効率的な業務プロセスを組み立てられる時代です。
これは、社会にとって良いことであるのは間違いありませんが、われわれシステム業界にとってみれば、ピラミッドの底面が小さくなるという危機的な状況でもあります。
こうした状況をどう受け止め、どのように対処するかは会社によって異なるでしょうが、一つ確実に言えるのは、SIerにしろSES業者にしろ、多重下請け構造を前提としたビジネスモデルの中にいる限り、ビジネスは先細る一方だということです。
当社は、こうした状況を鑑み、2018年9月から製造、流通、物流事業を手掛けるスモールレンジ、ミッドレンジの顧客に特化し、ビジネスデベロップメント事業に活路を見出し、市場開拓を始めました。
ここで言うビジネスデベロップメント事業とは、欲しいもの、つくりたいものが明確になる前段階から顧客とコミュニケーションを取り課題を可視化。下請けを使わず、自社内で要件定義から開発、導入、運用を完結させる体制によって、顧客のビジネスを成功に導くソリューションビジネスを指します。
依頼される案件の規模は大手SIerに比べればまだまだ小さいですが、開発を外部に丸投げせず、グループ企業と一体となって実現したスピーディーな開発プロセスが高く評価され、すでにデータアナリティクスやIoT関連といった最先端のプロジェクトをいくつも手掛けています。
当社の社名である「みんなの未来」には、社員をはじめ、顧客やパートナー、地域社会と手を携え、目標に向かって未来を切り拓いていくという意味が込められています。もちろん、多重下請け構造からの離脱、ビジネスモデルの変革も、未来を切り拓く試みであるのは言うまでもありません。
企業の力量は、必ずしも知名度や規模には現れません。もし着実なキャリアアップを目指すのなら、情報と五感をフル活用して、ぜひ自分にあった会社を見つけてください。
皆さんが、自分の力量を思う存分発揮できる会社に出会えるよう、心から願っています。
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/赤松洋太
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