【ソニックガーデン倉貫義人】リモートワーク暦10年のエンジニア経営者が実践する“生産性を落とさない”働き方
新型コロナウイルス感染拡大に伴う「緊急事態宣言」が発令され、急遽リモートワークで働くことになったエンジニアも多いだろう。
また、今回のリモートワークは「いつまで続くか分からない」「基本的には全員が在宅勤務を続けなければならない」という点で、通常のそれとは訳が違う。
最初は「通勤しなくていいから楽」「自分のペースで働ける」と在宅勤務の利点に目がいっていた人でも、徐々に、さまざまな課題を感じ始めているのではないだろうか。
そこで今回エンジニアtype編集部では、10年前からリモートワークを導入し、2016年からは全社員フルリモートを実現しているソフトウエア開発会社、ソニックガーデン代表取締役の倉貫義人さんにオンライン取材を実施。
「集中力が続かず、生産性が落ちている」「開発チームをうまくマネジメントできない…」など、この状況下で浮き彫りになりつつある「リモートワークの壁」にどう向き合うべきか、助言を求めた。
初回となる本記事では、エンジニア一人一人ができる「生産性キープのコツ」について紹介しよう。
仕事モードに入るための「スイッチ」を自分でつくる
リモートワークだからといって寝癖頭のまま、パジャマのまま仕事をしていませんか? まずは、会社で働くときと同じように「始業時間」を決めて、毎朝必ずその時間から仕事を始めるように心掛けましょう。
ソニックガーデンで全社リモートワークを始めた時から私が気を付けているのは、自分なりの「始業時間」をちゃんと決めること。
中には作業の開始時間をSlackなどで報告するよう決められている会社もあると思いますが、たとえフルフレックスだとしても、自分で「始業時間」を決めて働くのはとても大切なことです。
特に今回ような状況下における在宅勤務では、普段生活している自分の部屋でずっと仕事をすることになります。すると、生活空間と職場が一緒になってしまうので、つい日常生活の延長を仕事に持ち込んで、だらけてしまいがちに。
通勤時間がなくなったからといって、ぎりぎりまで寝ていていいわけではありません。会社に行くつもりで身だしなみを整え、いつテレビ電話で話し掛けられてもいいように顔を洗い、寝癖は直しておきましょう。
そうですね。また、仕事を開始する前に、軽くストレッチをしてみたり、オンラインの朝礼や、勉強会などに参加するのもいいと思います。
これまでオフィスに出勤していたときは、通勤時間や始業前のコーヒーでやる気スイッチを入れていた人も多かったかもしれません。そのときと同じように、日常生活と仕事の時間をスムーズに切り替える、自分なりの「スイッチ」を自主的につくるのがいいと思います。
終業時間についても同様です。この時間には仕事を終えると決めたら、その時間にちゃんと切り上げましょう。時間だけでなくタスクも、「今日やる分はここまで」と決めて、キリが良いところで終わらせる。
中途半端にしてしまうと、夜ご飯を食べたり、ゲームをしていても「今日の仕事、まだ残ってるな~」と気になって、楽しめないですよね。
一つのタスクにかける時間は最大1時間に設定。
「タスクばらし」で集中力をキープ
私がおすすめしたいのは、仕事をタイムアタック化することです。
まず、その日に取り組む仕事を小さなタスクに分解して(私はこれを「タスクばらし」と呼んでいます)、一つのタスクが30~45分、最大でも1時間で終わるように調整します。
そして、その一つのタスクをできるだけ早く終わらせるよう、タイムアタックしてみてください。
目標時間をクリアすることができたら、「次に同じ作業をするときは、5分はやく終わらせるようにしてみよう」というふうに見積もり時間を短縮してみます。すると、自然と仕事が効率良く回っていくようになりますよね。
生産性の向上とは、「一定の時間でより多くの作業ができるようになる」ことを意味しますが、エンジニアなどの、ものづくりに携わる人にとっても当然、一つの作業にかかる時間を計ることはとても大切なことです。
つい時間をかけてこだわれば良いものができると思ってしまいがちですが、いたずらに長い時間をかけても必ずしもいいものができるわけではありません。限られた時間の中で、求められるクオリティーを出すのがプロですから。
台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンさんも取り入れてると言われている「ポモドーロ・テクニック」を取り入れるのもおすすめです。
これは、25分間は集中して作業して、5分間休憩するという方法です。つまり、集中と休憩を小まめに繰り返す仕事の進め方になります。専用のタイマーも出ているので、ぜひ活用してみてください。
(参考:Pomodoro Tracker)
集中力とは、結局のところ自分自身との闘いです。いくら会社や上司が指導したところで、取り組むか取り組まないかは自分次第。在宅勤務になり、自分のペースで仕事ができるようになった今だからこそ、自分に合った方法で生産性を上げていきましょう。
もしも時間が余ったら?
自学自習でスキルアップ習慣を身に付けよう
「自分にできることはないか」周囲の人に声を掛け、提案してもなお時間が余ってしまうなら、その時間を有効活用し、自学自習を進めてみてはいかがでしょうか?
そもそもエンジニアは、「自学自習」すべき職種です。このタイミングを機にスキルアップ習慣を身に付けてしまいましょう。
エンジニアたるもの、リモートワークでもオフィスに出勤するスタイルでも、常に自力で新しい技術を習得し続けなければなりません。それはキャリアが浅くても、ベテランでもみんな同じです。
いつもですね。私自身、長年エンジニアをやってきた経験から思うのですが、自分が持っているスキルだけで仕事が完結することは、ほとんどありません。
開発現場では常に新しい技術が求められているし、それをワクワクしながら学び、いつも新鮮な気持ちで仕事に取り組んできました。
それが、エンジニアが仕事を楽しむコツの一つでもあると思いますね。
また、自分自身でいろいろなサイトを調べたり、サンプルコードを書きながら新しい技術を習得していくのは、エンジニアの醍醐味。
「今こそ自分の力で新しい技術を身に付ければ、次の面白い仕事につながる」と、ポジティブに捉えることもできると思います。
通勤もなくなり、普段より時間の自由もきくはずです。さらに、簡単なタスクしか任せてもらえないならササっと終わらせ、空いた時間を有効活用してスキルアップを目指しましょう。
取材・文/石川香苗子 写真提供/株式会社ソニックガーデン
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