この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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「リモートワーク続けたい」出社うつなエンジニアの悩みにSansan藤倉成太・えふしん・DMM松本勇気が回答
緊急事態宣言が解除され、リモートワークをやめて、出社前提の働き方へと戻ろうとしている企業も少なくありません。
そんな中、今回エンジニアtypeの読者から寄せられたのは、「リモートワークから、オフィスに出勤するスタイルに戻るのが不安」という悩み。
コロナ禍に関係なく、普段から柔軟な働き方ができるようにチーム、全社を変えていくために何ができるのかーー。
藤川真一(えふしん)さん、松本勇気さんに加え、今回から新たにエンジニアtype公式メンターに加わったSansanのCTO、藤倉成太さんから回答をもらいました。
エンジニアtype 公式メンターズ
Iさんの質問:どうすれば柔軟な働き方を続けられる?
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークがスタートし、思った以上に快適さを感じています。しかし、会社は6月から出社を前提とするスタイルに戻すと決めており、今から憂鬱です。リモートワークを継続させるために、私にできることはありますか?
Iさんのプロフィール
26歳男性。自社パッケージと受託開発を行う100名程度のソフトハウスにSEとして勤務
新型コロナウイルスによる外出自粛要請をきっかけに会社でリモートワークがスタートし、人生で初めて自宅で仕事をする経験をしました。
集中しているときに誰かに話しかけられたり、打ち合わせのために移動する必要がないため、正直めちゃくちゃ仕事がはかどりました。
今の生産性の高さを考えると、正直このまま在宅で働きたいという気持ちが強いです。
しかし、会社は6月以降は出社を前提とするスタイルに戻すと決めています。
在宅勤務の方がはかどることを上司に相談してみましたが、「会社の決定だから」と言われるだけで、何か対応してくれそうな気配はありません。
「何で出社しなきゃいけないんだ」と思うと、生産性だけでなくモチベーションも下がりそうで……。今から出社がすごく憂鬱です。
とはいえ、携わっているプロジェクトや一緒に働くメンバーには満足しているので、それを理由に転職するつもりはありません。
どうしたら、柔軟な働き方を会社に取り入れてもらえるか、私にできることはありますか?(Iさん)
藤倉さんの回答:経営における懸念点も考慮し、上司と議論しながら模索してみては?
働き方を変えるには、メリットとリスクの両方を考えて。セキュリティーの課題など、長期的に会社に与える影響を考え、上司と議論すべきでしょう
これは難しい問題だと思います。というのも、短期的にはリモートワークが開発生産性の維持、もしくは向上に寄与することが分かったとしても、長期的にどういった影響を会社にもたらすのかが分からないからです。
みんなが高いモチベーションを維持し、お互いに成長できる開発チームをつくるためには、評価や育成の仕組み、会社の文化と帰属意識をリモートワーク環境下においても持続させる必要があります。
これらが果たして実現できるのか。また、リモートワークを日常的に取り入れたときには、情報セキュリティーの危険性も相対的には高まることが予想されます。
情報セキュリティーの課題は、エンジニアやマネジャーを含め、これからわれわれが向き合っていかなければならないテーマだと思います。
今回の件では、会社として、今はこれらのリスクは取りにくいと判断されたのかもしれません。
働き方を変えていくには、そのメリットに加えて、リスクが顕在化したときの対応も考えておきたいところです。経営における懸念点を上司の方と議論しながら、良い方法を模索してみるのはどうでしょうか。
段階的にでも、効果的なリモートワークが実現できれば、会社のブランディングに寄与できるというメリットもありますしね。
えふしんさんの回答:会社を説得したければ、経営者や上司の思考をハックしよう
リモートを推進することで、「自分」ではなく、「会社」が高い成果を生むことを上司・経営者に示しましょう
今後、企業がリモートワークを継続するかどうかは、今回、在宅勤務を経験した多くのエンジニアの関心事項だと思います。
とはいえ、これはリモートに限らず、裁量労働制にするか否かでも何でもいいのですが、「働き方に対する意思決定にどう介在していくか?」という話なのだと思います。
もし、リモートで働くことがエンジニアの働き方で正しいと思われるのであれば、その責任を担う立場になるのが一番良いと思います。
人気ドラマ『踊る大捜査線』の登場人物、 和久 平八郎(いかりや長介)の台詞に「正しいことをやりたければ、偉くなれ」というのがありますが、解決方法としてはリモートを推進し、“自分が”ではなく、“会社が”高い成果を生むことに責任を持つというのが一番妥当です。
そして、その立場になったらIさんが手を動かすのではなく、誰かに動いてもらう役割になっているはずです。
でも緊急事態宣言が解除された今、短期的にはどうにもならないことでしょう。
一方で、再度の感染拡大も懸念されている現状、今後のリモートワークについてどう考えていったらいいのかは、あらゆる会社が頭を抱えている事項だと思います。
どうにか会社を説得したいのであれば、経営者や上司の思考をハックすることをおすすめします。Iさん個人の視点で生産性が高いと主張したとしても、会社全体で見ると、そうではないのかもしれません。だからこそ、「在宅勤務を延長しない」という意思決定を下している可能性があります。
もしIさんが現場視点で企業の課題を改善できるというのであれば、説得できるかもしれないですね。
松本さんの回答:人事部長や技術担当役員などの意思決定者が、どうすればリモートを承認するのか、考えてみることが第一歩
あなたが個人的にどんな成果を挙げようと、人事部長などの意思決定者に適切な形でリモートワークのメリットが伝わらない限り、会社全体では何も変わりません。意思決定者に声を届けるための情報伝達経路を確保しましょう
これはエンジニアリングと関係なく組織での意思決定の課題になりますね。組織における意思決定を動かしていくには、その構造を知ることが重要です。
まずは、この働き方を決定する人は誰か理解してみましょう。
会社によって違うと思いますが、例えば技術担当役員や人事部長などが意思決定者である場合が多いのではないかと思います。
あなたが個人的にどんなアクションを取ろうと、どんな成果を挙げようと、こうした意思決定者に適切な形で伝わらない限り、会社全体では何も変わりません。
ですから、そうした意思決定者にどうやったら声を届けられるのか、情報伝達経路を確保してみましょう。
その上で、意思決定者が何を評価基準にしていて、それに対してどういった結果がもたらされればリモートワークを承認するのか、自分なりの解を持ってみることが第一歩なのではないかと思います。
この解が分かったら、あとはそれに貢献する手段を検討・実行し、結果をその意思決定者へ伝わるよう活動してみてください。
今回のケースで言えば、例えばプロダクト開発が順調に推進されることなどでしょうか。そうした結果を適切な形で発信していくことが変革の第一歩かと思います。これは結果的に人事評価上の成果にもつながるでしょう。
次回のお悩みは?
次回の相談は、新卒入社した事業会社で自社Webサービスを開発しているSさん(25)から寄せられた「やりたいことが定まらず、上司とのキャリア面談で話すことがない……」という悩み。
次回は、藤倉さん、澤さん、松本さん、3人がキャリア面談の時間を有意義なものにするコツについて回答します。
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、藤倉成太さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
Sansan株式会社 CTO
藤倉成太さん(@sigemoto)
株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する
BASE株式会社 取締役EVP of Development
藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職
合同会社DMM.com CTO
松本勇気さん(@y_matsuwitter)
1989年生まれ。東京大学工学部在学中より株式会社Labitなど複数のベンチャーにてiOS/サーバサイド開発などを担当。13年1月、Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当する。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/AR技術の調査・開発に従事。18年8月まで同社の執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務め、同年10月、DMM.comのCTOに就任。19年5月よりDMM GAMES CTOを兼任
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