今回エンジニアtype編集部では、20代~30代のSEを対象に年収の実態を調査。不況が深刻化するとも言われるwithコロナ時代、SEが希望年収を叶えるためのポイントを全4記事にわたって解説する
未経験の仕事に挑戦したい若手SEが転職でやりがちな“3つの失敗”とは? 年収アップを叶えるキャリアチェンジのコツ
最近では高額年収のイメージが強いエンジニアだが、実際のところはどうなのだろうか。
転職サイト『type』に登録する20代SEの現在年収をエンジニアtypeで調査したところ、年収300万円未満の20代SEの割合は約20%となっていた。
さらに、汎用系や組み込み系ポジションで働く20代前半SEの平均年収は、200万円台にとどまるという結果に。
20代SEの平均年収
オープン・Web系:365.9(336.2)万円
パッケージ系:367.5(316.7)万円
社内SE系:356.7(324.8)万円
組込み系:317.5(268.0)万円
汎用系:338.2(286.5)万円
※()内は20代前半SEの平均年収
※本調査は、弊社の個人情報保護方針に則り、個人を特定できない範囲でデータを抽出しております
typeエージェントの浜野陽介さんは、「年収が200万円台のSEは、作業的なテストや監視といった業務を任されている場合が多く、今後年収アップを狙うならば、クライアントに近い距離で要件定義や設計などの上流工程に携われるポジションへの異動や転職が近道だ」と話す。
しかし、こうした新しい仕事へのチャレンジをともなう転職では、多くの人がやりがちな「3つの失敗」があるそうだが、一体それは何なのだろうか。キャリアチェンジで年収アップを実現するためのコツを聞いた。
type転職エージェント キャリアアドバイザー
浜野陽介さん
前職では生活用品のメーカー営業として法人営業を経験。人生の重要な転機に関われるキャリアアドバイザーに魅力を感じ、キャリアアドバイザーへ転身。以来、一貫してIT領域でのキャリアカウンセリングに従事しており、エンジニアの転職支援を強みとしている
未経験の仕事に挑戦するときは、面接で「独学」アピールを
エンジニアの場合、年収には「システム開発のどの工程に関わっているか」が反映されます。年収200万円台の方は、SEと言っても、実際は作業的にテストや監視などの業務のみを行っている方が、一般的には多いという印象はありますね。
また、プログラミングや設計に携わっている方の場合でも、三次請け以降で働いていると、年収が200万円台に留まる可能性はありそうです。商流上で間に他の企業が入ればその分企業としての利益が減るので、社員への還元、つまり給料が減っているのかもしれません。
プログラミングや設計に携わっていて現在の職場が三次請け以降、という方であれば、今よりも商流が高く、システム開発の中で裁量を持てる環境へ転職することで、給料アップは見込めるはずです。
しかし、これまでに作業的なテストや監視業務しか経験がないという方であれば、まずは業務を通じて、主体的に技術を生かせる専門的なスキルを身に付けることをお勧めしたいと思います。システム開発を主体的に実行できる、プログラミングや設計などの業務にステップアップしていきましょう。
もしも今の会社で、より上流の工程にチャレンジできる環境があるなら、その部署に移れるよう、上司に希望を伝えてみてもいいかもしれません。ただ、そもそも今の会社に案件がなく、希望の部署に異動できそうにない場合には、転職を視野に入れて自らスキルアップに取り組むことが大切だと思います。
プログラミングや設計の実務が未経験だったとしても、キャリアアップのためにどんな努力をしたのかを示すことができれば、企業は実務経験以外の観点からもちゃんと応募者のことを見てくれます。うまくいけば、新しいキャリアが拓けるはずですよ。
Webや本で興味のある技術を学習したり、セミナーやスクールに通うなどして汎用性のある技術を学び、充実したポートフォリオを用意することも一つの手です。
また、中には自分で勉強した言語を使って、スマホアプリや簡易的なゲームを実際に作っているエンジニアの方もいらっしゃいました。
そうした経験を面接の場などでアピールできると、「自ら新しいことを学べる、成長意欲の高い人なんだ」という印象付けにもつながります。
未経験の仕事に挑戦したい若手SEがやりがちな「3大失敗」
実務経験がない仕事に挑戦するときの転職活動で、SEの方がよくやってしまう失敗事例を三つご紹介します。
一つ目は、目先の年収だけで転職先を決めてしまい、年収が上がらない会社に入ってしまうことです。
前回の記事でもお伝えした通り、入社後に年収が上がっていくかどうかを見極めるには、その会社の評価制度を知る必要があります。
仮に今、年収280万円から380万円に上がったとしても、この先10年間あまり年収が上がらなかったら後悔することになりますよね。
提示された年収だけで入社を決めるのではなく、評価制度をきちんと確認してから入社を決めるようにしましょう。
二つ目は、入社前の企業とのすり合わせが不十分だったために、想定と異なる仕事を任されてしまうことです。
未経験の仕事にチャレンジし、将来的なキャリアアップを目指そうと思って入ったのに、実際は前の会社で身に付けた技術の範囲内でできる仕事を任されてしまう、というケースがよくあります。
例えば前職でテストをやっていた人が、またテストのみを任されてしまう、といったことなどが挙げられます。自分が叶えたいことのために転職をしても、アンマッチが発生してしまうわけです。
こうした事態を防ぐためには、とにかく事前のすり合わせを丁寧にするしかありません。選考では自分がこの先やっていきたい仕事をきちんと伝え、業務内容に関する不明点はしっかり確認できるといいですね。
選考の中で不明点を丁寧に質問したり、認識をすり合わせようとすることは、企業側にも「入社後のイメージを具体的に想像しようとしている」と好意的に捉えてもらえることにもつながると思いますよ。
そして三つ目は、独学による努力の方向性を間違えてしまうこと。
実務でほとんどプログラミングをしていなかったため転職に向けて独学を試みたものの、汎用性のない技術を勉強してしまい、希望の企業を受けられなかった、という方が実際にいらっしゃいました。
はい。「自分ができそうだから」という理由だけで、勉強する内容を選ぶのは、釣りの初心者がとりあえず目先のルアーを買うようなものです。道具選びを間違えてしまうと、いつまで経っても魚は釣れませんよね。釣り場は海なのか川なのか、それとも湖なのか。狙う魚によっても適した機能が変わるはずです。
新たに学ぶ技術も同じく、自分がやっていきたいことを明確化した上で選ぶことが大切です。そのため、未経験の仕事に挑戦する際に何を勉強するべきかは、自分だけで判断するのは危険かもしれません。
独学を開始する際はネットで調べてみたり、転職したい企業が属する業界で働いている知人の意見を聞くなどして、汎用性のある技術や、転職先に合った技術を選ぶようにできるといいですね。
コロナ危機の今、転職は控えるべき?
求人が全体的に減少傾向なので、しばらくは様子見かな……と考えている人は多いと思うのですが、私はこの状況でも動くべきだと考えています。
リーマンショックが起きた2009年は、有効求人倍率が0.45倍にまで落ち込み、1倍以上に戻るまで5年という歳月がかかりました。
一方で、今回のコロナ禍においては、4月までのデータでは有効求人倍数は1倍を超えていますが、影響が長期にわたることが見込まれ、場合によってはリーマンショック以上の深刻な影響をもたらすとも言われています。
それを踏まえると、5年、もしくはそれ以上の期間を転職せずに待つというのは得策ではないのでは、とも考えられます。それに、5年後に未経験の仕事にチャレンジできるかというと、年齢的に難しくなってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
逆に、今の状況をチャンスと捉えることもできるはずです。最近はWeb面接も広がってきているので、転職活動は以前よりもしやすいですし、このご時世でもエンジニア採用ができている会社は、体力のある優良企業だと捉えることもできます。
現在の会社にいてもやりたいことができないことが明らかならば、景気がどうであろうと、“今”動くことも大切だと考えられるのではないでしょうか。
職務経歴書を書いてキャリアを棚卸ししてみて、自分の強みと弱みを把握しておくことをお勧めします。
自分の強みを正しく把握できていない人は多いですが、「自分なんか……」と仰る方の中にも、話を聞くと意外な強みが見えてくることがあります。
強みや弱みは一人では気付きにくいものでもあるので、周囲の人に意見を求めるなどして、自分を客観的に知ることから始めてみるといいですね。
職務経歴書を書くことは、過去の経験を整理するだけでなく、今後自分がどういうキャリアを築いていきたいかを考える材料にもなります。転職を検討しているこの機会に、ぜひ取り組んでみてください。
取材・文/一本麻衣
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