今回エンジニアtype編集部では、20代~30代のSEを対象に年収の実態を調査。不況が深刻化するとも言われるwithコロナ時代、SEが希望年収を叶えるためのポイントを全4記事にわたって解説する
「30代で年収1000万円エンジニア」を目指すには?上位1.6%を目指す20代SEが今からできること
エンジニアの売り手市場が続いている。ここ数年、新卒で年収1000万円のIT人材募集が話題になるなど、「稼げる仕事」というイメージも定着してきた。
そこで、エンジニアtypeでは、転職サイト『type』に登録する30代エンジニアの年収を調査(※)。すると、年収1000万円を超える人は全体のわずか1.6%だということが分かった。
ここ数年エンジニアの超売り手市場が続いていたとはいえ、現実はそこまで甘くないのかもしれない……。
だが実際に、高額年収を手にしているSEが存在するのも事実。しかも、type転職エージェントの浜野陽介さんによると「コロナ禍にあっても高額年収の人材は今まで通り採用している企業が多い」とのこと。
では、そうしたごく一握りの人材になるためには、今からどんな準備をすればいいのだろうか? 浜野さんがこれまでに見てきた求人事例をもとに、高額年収を目指す20代SEが今から意識するべきことを浜野さんに教えてもらった。
※本調査は、弊社の個人情報保護方針に則り、個人を特定できない範囲でデータを抽出しております
type転職エージェント キャリアアドバイザー
浜野陽介さん
前職では生活用品のメーカー営業として法人営業を経験。人生の重要な転機に関われるキャリアアドバイザーに魅力を感じ、キャリアアドバイザーへ転身。以来、一貫してIT領域でのキャリアカウンセリングに従事しており、エンジニアの転職支援を強みとしている
「30代で年収1000万円」求人、3つの特徴
あまり多くはない印象ですね。そもそも年収1000万円を出せる企業自体がかなり限られているので、そうした求人は必然的に少なくなります。
ポイントは大きく三つです。
一つ目は、企業の規模感や、多くの資金があること。誰もが知っている大企業であるほど、社員に還元できる資金が多い傾向があります。
二つ目は、商流が上流であること。IT業界ではピラミッド構造の上の方であるほど、間で抜かれるマージンが少ないので、給料は高くなります。
そして三つ目は、企画や提案、プロジェクト管理といった上流工程や、技術スペシャリストの募集であることです。
まとめると、「規模の大きなプロジェクトをマネジメントする役割を担える人や、技術力の高いスペシャリスト職を担える人」が高額求人の対象と言えるでしょう。
ポテンシャル層の採用に比べると、減り幅は少ないです。こうしたポジションを担える人はやはり限られていますから、常に求められており、景気に関係なく今まで通り採用している企業が多いですね。
20代SEはプロジェクトの“全体感”を把握すべし
先ほど紹介した三つの条件にできるだけ近いポジションで業務経験を積むことだと思います。
社内でスキルアップしたい場合は「できるだけクライアントに近い立ち位置で働きたい」「規模の大きなプロジェクトに携わりたい」「システム開発に一貫して携わりたい」と上司に主張することで、道が開けるかもしれません。
その場合は、まずは自分が関わっているプロジェクトの全体観を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
クライアントと離れた立ち位置で働いていると、いち作業員として、言われたことをやるだけになってしまい、「何のためにこのシステムを作っているのか」を見失ってしまいがちです。
「プロジェクト全体の予算っていくらなんだろう」「何を解決するためのシステムなんだろう」「どんな機能があると更に使いやすいだろう」と疑問を持ち、自分が関わっているプロジェクトについて主体的に語れる状態を、まずは目指してみるといいと思います。逆に中小規模のシステムで一貫して開発に携われるチャンスかもしれません。
例えば現在年収500万円の人が、いきなり1000万円の求人で採用されることは難しいと思うので、転職して段階的に年収を上げていけるといいですね。
そのときに大切なのは、これまで関わってきたプロジェクトの全体観を理解した上で、「次はこんなフェーズに携わりたい」「こんな環境でこんな開発がしたい」と面接で具体的に語れることです。中長期的に叶えていきたいビジョンを明確化させていきましょう。
逆に言うと、それを整理できていない状態では、年収を上げての転職が難しくなってしまうかもしれません。
コンサルティングファームへの転職は年収1000万円への近道?
あくまで一例ですが、コンサルティングファームに転職すると、年収を上げていきやすいという傾向はあります。クライアントに近い立ち位置や、上流から関われる機会、実績に対する昇進昇格が早い印象はありますね。
確かに構えてしまう方は多いですが、コンサルティングファームは比較的上流から案件を獲得している場合が多く、高額求人で求められる経験を積みやすい環境です。
さらに昇進昇格が早いのも大きな特徴ですね。プロジェクトを回したりクライアントに提案したりするスキルがあれば、若手であってもチャンスは多くある印象です。
また、コンサルティングファームと言っても、長時間労働の解消や有給休暇の取得促進など、他の日系企業と同じような制度を設けて働き方改革を推進している場合も多いですよ。
ありだと思います。なぜ若い方にコンサルティングファームをお勧めするかというと、30代になってからコンサルティングファームで挑戦してみようと思っても、それだけ比較されるポイントも上がっていくからです。
一方で、20代であればポテンシャルを鑑みて判断してもらえる可能性もあります。
仮に20代のうちに、年収600万円でコンサルティングファームに転職したとしても、順調に昇格していけば後々年収1000万円を超える可能性は十分あります。このようなキャリアパスも、一つの例として考えていただければと思います。
今後の転職活動では、転職時に提示される入り口の年収だけでなく、「入社後にどのぐらい年収が上がるか」という観点を持って企業を選ぶようにしてみてください。
年収を上げたいなら、評価制度に関心を持とう
はい。高額年収を目指す人にこそ気を付けてほしい部分ですね。転職時、提示された年収に飛びついて決めてしまうと、あとで後悔することになりかねません。
評価や昇進の仕組みをよく知らずに入社したために、「数年経っても年収があまり変わらない」と相談に来るエンジニアの方は実際によくいらっしゃいます。
こうした事態を避けるためには、少なくとも内定をもらった時点で、評価制度についてもきちんと知っておくことが重要です。
ただ、細かい評価制度や昇格ペースなどは外部に公表されていない場合も多いため、個人で転職活動をされる場合は、ご自身で人事担当者に聞く必要があります。
こういったことを突っ込んで聞くのが苦手、という方は、場合によってはエージェントサービスを利用して転職活動をするのも一つの手だと思います。
その通りですね。現職の評価制度を意識せずに過ごしてしまう方も中にはいらっしゃると思いますが、高額年収を目指したいのであれば、まずは自分の年収がどのように決まっているのかを確認してみてください。評価の仕組みを知れば、「今の会社で年収1000万円を目指せるのか」が分かると思います。
もしそれで難しそうだと思ったならば、そこから「どんな給与レンジの会社に転職すれば年収1000万円を目指せるのか」「自分に足りないスキルや経験はどうすれば得られるのか」と、戦略的にプランを立てることができます。
30代で年収1000万円を叶えている人はほんのわずかです。上位1.6%を本気で目指すのであれば、会社の評価制度にもぜひ目を向けてみてください。
取材・文/一本麻衣
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