この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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「プロジェクトリーディングのスキルを磨くには?」新米PLの悩みに澤円、えふしん、藤倉成太が回答
今回『エンジニアtype』公式メンターズに相談を寄せてくれたのは、最近リーダーポジションに就いたという20代SEのDさん。
プロジェクトリーダーとして初めて担当した案件を炎上させてしまい、焦りを感じているそう。
「うまくプロジェクトリーディングができるようになりたい」と話すDさんに、澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、藤倉成太さんが送るアドバイスとは?
エンジニアtype 公式メンターズ
Dさんの質問:どうすればプロジェクトリーディングがうまくなる?
最近プロジェクトリーダーに昇格しました。しかし、初めてリーダーとして担当した案件を炎上させてしまいました。先輩には「そのうち慣れるよ」とフォローしてもらったのですが、炎上はできるだけ避けたいし、いち早くプロジェクトリーディングの能力を伸ばしたいと思っています。どうすればいいでしょうか?
Dさん(27歳/男性)
300名程度の中堅SIer勤務。新卒として今の会社に入社し、SEとして開発プロジェクトに従事。最近、リーダーポジションに昇格したばかり。
メンターズのみなさん、はじめまして。
私は今、社員数300名程度のSIerで働いており、最近になってプロジェクトリーダーを任せてもらえるようになりました。しかし、初めて自分が主導する案件を炎上させてしまいました。ちなみに、案件の内容は金融機関向けの社内システムの開発で、管理するメンバー数は15名程度です。
振り返ってみると、お客さまとのリレーションがうまく取れていなかったり、メンバーのマネジメントが適切に行えなかったりなど、炎上の原因はいろいろあったと思っています。
幸いにも先輩がすぐに間に入ってくれたおかげで炎上は沈下。今はサポートを受けながら、問題なくプロジェクトを進めることができています。
先輩からは「最初に失敗するのは仕方ない。やっていけば慣れる」と言われたのですが、なるべくなら炎上はもう避けたいし、早く成果を出したい気持ちもあります。
どうしたらうまくプロジェクトリーディングができるようになるのでしょうか?(Dさん)
澤さんの回答:気楽に考えることで、プロジェクトを俯瞰できるかも
システム構築のプロジェクトに想定外は付き物。今回の件を失敗と捉えるのではなく、むしろ「思い描いた通りにはいかないことが普通」だと考えましょう。
リーダーを任されるというのは素晴らしいことですね。
人望や期待がなければリーダーポジションは回ってこないと思うので、そこは素直に喜んでいいと思います。
また、「炎上=失敗」と単純に考えなくてもいいのでは?
システム構築のプロジェクトは、まだまだ「変数」の多い領域であり、「こう進めれば大丈夫」という教科書のようなものもありません。自分が思い描いたプロセス通りに進まないことがデフォルト、と思っておくくらいがちょうどいいような気がします。
以前、僕がマネジメントしていたチームのメンバーで、「私、失敗したことがないんです」と言い切る人がいました。
これだけ切り取ると「なんて自己肯定感の強い人!」とか「もしかして思い上がってる?」と感じるかもしれませんが、その人曰く「毎回のように自分の描いていた結果と違うことが起きるのですが……」だそうです。
プロジェクトと自分の人生は別物で、自分の外側で起きている出来事の一つ、と考えておくのが健全な距離の取り方でしょう。
あまりにも没入しすぎて働くと、視野が狭くなってしまい、結果的に炎上を起こしやすくなるかもしれません。
気楽に考えることで、プロジェクトを常に俯瞰して見ることができるようになると思いますよ。
えふしんさんの回答:「リーダーとは何か?」をじっくりと考えてみよう
プレーヤー時代の視野を抜け出し、全体を見渡せるようになることが大切です。また、プロジェクトの中で関わるチームメンバーやお客さまが人それぞれの考え方を持っているということを認識しましょう。プロジェクトへの向き合い方が変わってくるはずです。
リーダーになりたての頃は、「思ったように人が動いてくれない」と思い悩むことが多々あると思います。
Dさんは、20代でリーダーになられたということで、プレーヤーとして優秀な方だったのではないかと推測します。
Dさんのように、もともと優れたプレーヤーだった人がやってしまいがちなのは、自分が一番得意なことにマインドリソースを使ってしまうことです。
僕は、「いかにプレーヤーの視野から抜け出すか」が、リーダーをする上で大切だと思っています。細かいところに目が行き届くことも大切なのですが、一方で、プレーヤー目線で物事を見過ぎて、木を見て森を見ずにならないようにしたいものです。
次に大切なのは、チームメンバーやお客さまは「成長した大人」だということを受け入れることでしょうか。誰もが完成した大人なので、納得感がなければ動けないし、納得感をそれぞれの中でどう醸成していくかも違います。
Dさんがマネジメントするメンバーの皆さんも、それぞれ違った考え方を持っていると思います。各々の考え方を理解した上で、進めるべき道筋に導くのがリーダーの仕事です。
こういう話については幸い本もたくさんあります。リーダーというのはどういう仕事なのかを休日にでもゆっくり考えてみましょう。
あとは息抜きも大事です。僕はリーダーになりたての頃は、プールに行って「何も考えない時間」をつくっていましたね。
藤倉さんの回答:マネジメントに正解はなし。自分なりの方法論を見つけよう
会社やプロジェクトによって、リーダーに期待される役割の範囲やレベルは異なります。また、マネジメントには唯一無二の正解が書かれた教科書などはありません。さまざまな方法論を学び、自分なりの方法論を見つけることが大切だと思います。
「プロジェクトリーダー」と言っても、会社やプロジェクトごとに期待される役割の範囲やレベルが異なります。ここでは、私の経験を基にした回答になってしまうことを予めご了承くださいね。
さて、お悩みを見るに、メンバーマネジメント的な要素が役割に含まれているようです。マネジメントには唯一無二の正解が書かれた教科書などはなく、どんな場面にも通用する方法というのもありません。
それが、Dさんにとって、今の役割の難しさにつながっているのかもしれませんね。
私はよく、新任のマネジャーに二つのことをアドバイスします。一つは、浮上した課題に対応するだけでは後手に回るので、常に先手を打てるようにすること。二つ目は、管理すべき対象を因数分解して、先手を打つ対象を明確にすることです。
例えば、受託案件をリードすることを考えてみます。このような場合、全体を俯瞰する視点と、詳細を把握する視点が必要になります。
また、管理対象には、システムそのものと、開発に携わるメンバー、協力会社、お客さまとの関係があります。これらを縦軸と横軸に置いて、2(全体と詳細)× 4(システム、メンバー、協力会社、お客さま)のマトリクスを作ります。
この8マスを常に意識して、それぞれの課題やリスクとその解決策を考えておくことが、先手を打つことにつながります。
このように、ご自身なりの方法論をしっかりとつくって言語化しておけば、今後の成果につながるだけでなく、後進の育成にも役立ちますよ。
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、藤倉成太さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
BASE株式会社 取締役EVP of Development
藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職
Sansan株式会社 CTO
藤倉成太さん(@sigemoto)
株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する
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