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担当Webサイトの保守性が低い&老朽化。常駐エンジニアとしてどう対応すればいい?【澤円・えふしん・藤倉成太が回答】

働き方

    今回相談を寄せてくれたのは、業務支援のSIerに勤務するMさん。常駐先で保守を担当しているWebサイトの保守性が低いことに悩んでいるそうです。ただ、常駐案件ということもあり、お客さまに機能改善の提案もしづらいし、どうすればいいのか……とモヤモヤしているんだとか。

    澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、藤倉成太さんに、アドバイスをもらいました。

    エンジニアtype 公式メンターズ

    エンジニアtype 公式メンターズ

    圓窓 代表取締役 澤 円さん
    日本マイクロソフトの業務執行役員の経験を経て、現在でも複数のベンチャー企業で顧問を務める。キャリアのスタートはCOBOLプログラマー。「プレゼンの神」の異名を持つ

    BASE 取締役EVP of Development 藤川真一さん
    『モバツイ』開発者。想創社の創業者。BASEでCTOを経て現職。今は組織マネジメントに専念している。通称えふしん

    Sansan株式会社 CTO 藤倉成太さん
    ミドルウエア製品の導入コンサルティングや米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発などを経験後、SansanのCTOに就任

    Mさんの質問:常駐先のシステムが老朽化していて、保守性が低いのに困っています

    Mさん(35歳/男性)

    業務支援のSIerに勤務しており、フロントエンド、バックエンド問わずシステム全般を担当しています。現在お客さま先に常駐し、Webサイトの保守を行っているのですが、システムが老朽化していて保守性が低くて困っています。

    <編集部からのコメント>

    保守性が低いサービスを扱うのは、エンジニアにとって煩わしさを感じることも多いかと思います。

    以前も「レガシーシステムと戦うエンジニア」からのお悩みが寄せられたことがありました。

    >>レガシーシステムの技術的負債と戦うWebエンジニアの悩みに、澤円・えふしん・DMM松本勇気が回答

    今回のMさんの場合は、お客さま先への常駐で意見が出しづらいという点でより一層モヤモヤしてしまうかもしれませんね。

    このような状況で、現場のエンジニアはどう対応したらいいのでしょうか?

    澤さんの回答:今の状況は「手放すことのできるオプションの一つ」として考えてみてください

    澤さん

    自分が考えて行動できることに脳のCPUを使うことは、人生を豊かに生きるうえで必須のスキルです。Webサイトを刷新する、常駐先から外してもらう、転職する。視野を広く持ってご自身で選択してみましょう。

    ボクがエンジニアになった頃は、Webサイトそのものが存在していなかったので、そのシステムがレガシーになるということに隔世の感があります……。

    というノスタルジックな感想はさておき、Mさんの悩みは、下記のいずれかか、あるいは両方といったところでしょうか。

    ・老朽化システムの運用はモチベーションが上がらない
    ・客先常駐ということで問題点を指摘しにくい

    キャリアに関して考えるときは、「自分がコントロールできることに思考を集中させる」ことは何より大事です。

    自分がコントロールのしようがないことをあれこれ考えても、むなしいだけですし疲れます。

    もし、Webサイトを刷新することができるなら、そうすればいいでしょう。常駐から外してもらうことができそうなら、そのように会社に掛け合えばいいでしょう。上記いずれも無理だと判断するなら、転職すればいいでしょう。

    自分が考えて行動できることに脳のCPUを使うことは、人生を豊かに生きるうえで必須のスキルです。

    レガシーシステムの保守性の低さや客先常駐の働き方は、Mさんの人生そのものではありませんし、手放すことのできるオプションの一つです。ぜひ視野を広く持って考えてみてください。

    えふしんさんの回答:他のサービスでも生かせる経験を得られることが何より大事です

    えふしんさん

    長く存続しているWebサービスは、生き残っていること自体が価値とも言えるので、得られるものも十分にあると思います。Mさんはそのサービスに携わり続けることへの価値を感じていますか? 今一度考えてみてください。

    あらゆるシステムは生存価値を持っているからこそ、レガシーシステムという言葉を得ることができます。生存価値がなければ早々にクローズしているはずなので、生き残っていること自体が価値とも言えます。

    一方で、保守フェーズに入って進化を止めたWebサイトはセキュリティーの問題や技術的に大きな変化を問われた時に、存続の危機になることもあります。

    分かりやすい例が、ガラケーサイトがSSLのセキュリティー問題に付いていけなくて終焉を迎えたケースなどです。このようなインターネット技術の変化に付いていけないという経験を目の当たりにしたことがあります。

    さてMさんのキャリアにとって、このサービスに携わり続けることの価値は十分に感じていますでしょうか? もしくは、そのサービスが万が一クローズしてしまった時に、その後のキャリアとしてモダンなシステムへの適応はできますでしょうか? もしくは、その準備をしていますか?

    Mさんの立ち位置が分からずに言っていますが、正社員として自分たちが技術戦略を決める立場であれば、レガシーシステムをどうしていくかというのは、スキルを獲得するチャンス。ですが、常駐で運用に携わっている場合は、そういうスキルが得られるのかどうかは、すみませんが私には分かりません。

    今後、存続しているWebサービスも10年・20年選手は増えていくでしょう。そこで、このサービス以外でも生かせるような経験を得られることが一番大切なのだと思います。

    もし、今の環境でそのように動けるなら動いてみてはいかがでしょうか?

    藤倉さんの回答:問題を正しく定義して、必要なアクションを取りましょう

    藤倉さん

    保守性の低さは問題ではありません。なぜなら、Webサイトの保守性が低くても問題ない状況があり得るからです。問題の本質を見極めて、必要であればお客さま先であっても提案する必要があります。

    「保守性が低い」ということ自体は問題ではない、というところから考えていく必要がありそうですね。

    低い・高いというのは相対比較で測られる程度でしかないですし、サイトの保守性が低くても問題ないと言える状況もありえます。

    例えば、そのWebサイトがお客さま企業の収益に寄与しているけれども、今後の大きな成長を見据えていないので大規模な改修の意義がないというような状況であれば、保守性の向上に事業上の意味はありません。

    逆に、保守性が低いことによって収益を圧迫していて、それを避ける技術的な手段があるのであれば、それは改善するべき事象とも言えます。お客さまの事業の状況や性質の観点から事実を捉えなければなりません。

    このように考えた時に、サイトの保守性を高める必要がないことに納得できたならば、それを前提に保守作業を楽に、安全に実施することに創意工夫を向けてみてください。

    もし改善の余地があると言えるのであれば、しっかりと提案をしていかなくてはなりません。もちろん、お客さま先に常駐している身であると提案することが難しいということもあるとは思います。ですが、お客さまも会社である以上は収益の向上は絶対に必要なはずです。

    提案が通らないのであれば、必要な情報や理解が足りていないとか、提案内容が十分でない可能性が高いと思います。

    まずは、何が問題であるのかを正しく定義して、必要なアクションを取れるようにしていきましょう。


    『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!

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    株式会社圓窓 代表取締役
    澤 円さん(@madoka510)

    立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
    著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
    Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム

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    BASE株式会社 取締役EVP of Development
    藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000

    FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職

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    Sansan株式会社 CTO
    藤倉成太さん(@sigemoto)

    株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する

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