SGホールディングスが物流業界で唯一の『DX注目企業2020』に選ばれた理由【SGシステム社長インタビュー】
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昨今、各企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)対応が進んでいる。その中でもコロナ禍で再注目されているのが、佐川急便などを有するSGホールディングスグループでITの中枢を担うSGシステムだ。
同グループは、経済産業省と東京証券取引所が発表する『DX注目企業2020』にも、物流業界の中で唯一選出されている。グループが進めるDXを支えるのは、SGシステムのテクノロジーによるものだ。
なぜ今、物流業界の中でも特にSGシステムが注目を集めているのだろうか? 同社社長の谷口友彦さんに話を聞いた。
コロナ禍が追い打ちをかけた「宅配クライシス」
物流業界では数年前から「宅配クライシス」という問題が叫ばれています。これは通販を中心としたBtoCの取扱個数が飛躍的に伸びていくのに対し、運送側の労働力不足が深刻化していくという問題。そこに追い打ちをかけたのが、今回のコロナショックです。
コロナ禍で企業活動が停滞しBtoBは減少しましたが、巣ごもり消費によりBtoCが増加し、全体の取扱個数は増加傾向にあります。そしてこの取扱個数の増加は、荷物の「再配達」の量が増えることも意味しています。
とはいえ緊急事態宣言下では在宅の方が多く、再配達率は10%を下回るくらいでした。しかし今後、少しずつ通常通りの生活に戻るにつれて、コロナ禍以前の再配達率である16%程度に戻ってしまうと想定されます。
SGホールディングスグループにとって、運送に関わる社員の業務過多を防ぐためにも、また荷物を受け取るお客さまへのサービス品質向上のためにも、この宅配クライシスへの対応は経営の重要課題だと位置付けています。
そこでSGホールディングスグループでは、テクノロジーを活用してこの経営課題の解決に取り組んでおり、その中心的な役割を我々SGシステムが担っているのです。
物流業界を救う「ロボティクス」と「AI」
当社では、コロナ禍以前から「ロボティクス」と「AI」の両翼でさまざまな取り組みを進めていました。
例えば、グループ各社の物流機能を集約した次世代型大規模物流センター『Xフロンティア』のロジスティクス事業においては、これまで人手で行っていたピッキング(商品の取り出し)や梱包など、発送するまでの作業の一部をロボットが代替しています。これにより、以前に比べて約半数の人員で作業を行うことが可能になりました。
また現在、ドライバーがトラックで運んできた荷物を物流センターに降ろす作業を、ロボットが担えるように研究開発を行っているところです。
通常、人力で荷物を降ろすには10トン車で1~2時間ほどの時間が必要であり、それはかなりの重労働になります。
そこで当社が研究開発するロボット技術の出番です。これまではさまざまな大きさの荷物が何百個と積み込まれているコンテナから自動で荷降ろしすることは困難でした。それを、ロボットがAIを用いて荷降ろし順序を判断し、すべての荷物を自動で降ろす技術を研究開発しています。
この研究開発は内閣府が実施する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つとして採択されており、当社は国からの高い期待を感じながら開発に取り組んでいるところです。
ロボットの技術開発以外にも、当社が他社に先駆けて取り組んでいるのが、データ分析やAIを活用したシステム構築です。
例えばビックデータ分析基盤を構築し、荷物一個当たりにかかるコストを見える化することで適正運賃の収受に繋げたり、AIを活用した文字認識技術を使うことで手書き配送伝票のデータ入力作業を抜本的に効率化しています。
特にAIを活用した文字認識技術に関しては、現場の業務改善に大きく貢献しました。取り組みを行うまでは、1日で約100万件の手書き伝票を人手で読み解き、入力作業を行っていました。
中にはドライバーが走り書きして読み取れないような伝票も多く、人手でも苦労していたのですが、我々が開発した手書き文字を読み取るAIシステムでは文字の認識精度が99.995%の正確さを実現し、作業時間を月間約8,400時間圧縮しました。
また、この文字認識の技術をベースにしたAIシステムを、SGホールディングスグループ以外のお客さまにもサービス提供しています。
評価の背景にあるのは「オープン化」「内製化」されたシステム基盤
SGホールディングスは経済産業省と東京証券取引所が選出する『DX注目企業2020』に、物流業界の中で唯一選出されました。ただ、私たちは「新しいテクノロジーを導入しているから」という単純な理由で選出されたのではないと捉えています。
新しいテクノロジーを現場業務に適用する際、多くの場合は基幹システムや各業務システムと連携する必要があります。しかし、基幹システムなどの開発・保守を外部に委託し、ブラックボックスになっている場合、その連携は容易にはいきません。これが経済産業省のDXレポートでいう「2025年の崖」です。
しかし我々はその「2025年の崖」は既に克服しており、新しいテクノロジーを活かしやすいシステム基盤を保有しています。
当社は、SGホールディングスグループのIT化を進めるために、1983年に佐川急便の情報システム部門が独立子会社化したという経緯があります。当時はさまざまなITベンダーに支援をいただいていたので、グループ内には多様なシステムが乱立し、システムの維持管理コストがかさむという大きな経営課題を抱えていました。
そこで2005年からは、当時大きなメインフレームで稼働していた基幹システムを、オープン系の仕組みにダウンサイジングしました。また、当社の若手エンジニアを参画させて育成することで、システムの開発・保守、運用を内製化したのです。その結果、2005年以前は年間数百億円費やしていたITの維持管理コストを、4割ほど圧縮することに成功しました。
更に当社は「経営課題を技術力・テクノロジーで解決する」存在として、SGホールディングスグループ内からも常に高い期待が寄せられています。その期待に応える為の取り組みの一例として、佐川急便東京本社の営業部の席の横には10名程度当社のエンジニアのデスクを設けて頂き、エンジニアが「現場の声」を直接聞き、アジャイル開発する取り組みを行っています。既に現場業務の改善に大きな効果を上げており、感謝の声も多く挙がっています。
このように、システム基盤のオープン化・内製化により、新しいテクノロジーを活用できる環境が整っている。その上でAI化やロボティクスといった新しいテクノロジーの活用やアジャイル開発といった取り組みにチャレンジできている。これが、『DX注目企業2020』などで当グループが高い評価を頂いている理由だと考えています。
「エンジニア冥利に尽きる環境」で共に働く仲間に出会いたい
先ほども申し上げたように、我々SGシステムは労働力不足というグループの経営課題を技術力・テクノロジーで解決することをミッションとして取り組んでいます。それはグループとして新しいテクノロジーを活用するチャレンジが推奨され、且つそのチャレンジに対してグループ全体のバックアップも得られているからこそ推進できています。
例えば、経営課題の解決に繋がりそうなテクノロジーがあれば、研究開発として、我々だけではなくユーザーでありお客さまでもあるグループ会社と一緒に、現場で新しいテクノロジーを試す取り組みを行っています。更にベンチャー企業とも積極的にタッグを組み、彼らが持つ新しい考え方やテクノロジーを現場で試すことも。実際、このような取り組みによって、SGホールディングスグループの課題を解決した事例は数多くあります。
そして、このような取り組みは、ユーザーとの距離が近いため感謝の気持ちも直接届いてきますし、現場の業務課題が改善されたことを身近に実感できるため、非常にやりがいを感じながら働くことができます。
エンジニアの方にお伝えしたいのは、我々の職場はこのように新しいテクノロジーを使ったチャレンジが歓迎される、うまく解決できた際は感謝される、という「エンジニア冥利に尽きる環境」だということです。
加えて当グループでは、「佐川急便」の物を運ぶ力、「佐川グローバルロジスティクス」の3PL、「SGシステム」の技術力・システム構築力といったグループ各社の強みを組み合わせて、お客さまのサプライチェーンをトータルで最適化する取り組みを行っています。
IT(物流システム)だけではお客さまの経営課題、物流課題を部分的にしか解決できないことがあります。しかし、グループの力を結集すれば、お客さまの課題をトータルで解決する提案も可能になる。このように真の意味でお客さまに貢献できる取り組みも推進しています。
ロボティクスやAIなどの新しいテクノロジーを活用して経営課題の解決に取り組みたい、お客さまの課題をトータルに解決して真の意味でお客さまに貢献したいと考えるエンジニアに対して、やりがいのある仕事を提供できる環境がここにはあります。
社会生活をより良いものにする、新しい物流テクノロジーの開発に一緒に取り組む仲間と会える日を、楽しみにしています。
>>SGシステム株式会社【SGホールディングスグループ】の中途採用情報
取材・文/安藤記子 撮影/吉永和久 編集/大室倫子
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