キャリア Vol.1181

「技術オンチな経営者が多いのは、エンジニアの責任もゼロじゃない」【連載:澤円】

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株式会社圓窓 代表取締役 澤 円(@madoka510)立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム


皆さんこんにちは、澤です。

少し前に、東証がシステム障害を起こした際に「経営陣の経緯説明が完璧だった!」と話題になっていましたね。以前よりもずっと、経営とテクノロジーが密接に関わってきたことを感じます。

そこで今回は「エンジニアには経営視点が必要か」というテーマで、ボクの考えをお届けしようと思います。

そのテーマに直接入る前に、まずは逆のパターン「経営者にエンジニア視点が必要か」について考えてみましょう。

さらにボクはとても幸せなことに、数多くの経営者の前でプレゼンテーションをさせていただく機会に恵まれています。

経営者の方は、大局的に世の中を見る能力に長けていて、そして、自分の会社の成長や競争力向上について真剣に考えておられます。

そのためにテクノロジーはどう寄与するのかに興味をお持ちになっている方がとても多かった印象があります。

一方で、エンジニア出身の経営者はかなりの少数派でした。ほとんどいないといってもいいでしょう。

そのため、経営者は細かいテクノロジーに関する情報を持っていないことが多く、基礎的な用語も解説が必要なことがよくありました。

今なおテクノロジーの領域は「専門家に任せる」という姿勢で経営を行っている経営者が大半なのではないかと思います。

もちろん、絶対的な信頼関係の中でそのような判断になっているのであれば問題はないのですが、「テクノロジーは最低限のコストで導入して、あとは運用でカバーすればいいや」なんて考えている経営者がいたりすると、これはかなりマズい状況です。

澤円NewWave

また、日本のエンジニアリングの世界は、多重下請けになりやすい産業構造になっています。

なにしろ、70%以上のエンジニアリソースがITベンダー側にいるといわれており、事業会社のシステム導入はほとんどの場合外注のシステムインテグレーターが請け負うかたちになっています。

そうなると、システムを実際に開発する人たちは「今書いているコードはどのように役に立つのか」「このプログラムはビジネスのどの部分で使われるのだろうか」という視点のないままに、極端な部分最適なシステムの開発が行ってしまうリスクがあります。

本音をいえば、この時代の経営者がテクノロジーに明るくないのは、大問題だと思っています。

「BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)が理解できなければビジネスパーソン失格」という発言をする経営者は少なくないですが、「テクノロジーについて理解できないのはBS/PLが分かっていないのと同じ」とまで言い切る経営者は多くない気がしています。

テクノロジーを理解することは、今後の経営の中では極めて重要なことであり、漠然とした理解ではなく本質的に「自分たちの経営にどのようにテクノロジーが寄与するのか」を言語化できる経営者だけが、今後は生き残れると思っています。

「うちの会社もAIで何かやろうよ」とか「DXって言葉が流行ってるからわが社もクラウドみたいなやつを入れようよ」とか、こんなトンデモ発言が出ている会社の、将来は明るくないでしょうね。

経営者の思考パターンを理解して「技術」を語ろう

といっても、このことについて嘆きまくっていても仕方ありません。エンジニアとしてできることを考えてみましょう。

経営者がテクノロジーについて理解できていないのは、ある意味エンジニア側も責任がゼロとは言えません

経営者の人たちが分かりやすいように通訳できる人があまりにも少なかったり、多重下請け構造のおかげで本当にテクノロジーを理解している人に出会う機会がなかったりするせいでもあります。

この問題は、エンジニア側が経営者視点を持っておくことで、大きく改善される可能性があります。

経営層と定例ミーティングの機会を持っていれば最高なのですが、そうではない人が大半でしょう。であれば、数少ないチャンスを生かせるように「経営視点を持ってテクノロジーを語る」準備をしておくことが大事です。

会社によっては、役員との懇親会などの機会を設けているところもあるでしょう。そのときに、経営者側の言葉を主語にして最新のテクノロジーを語る、というのは効果があるかもしれません。

経営層はコストを抑えることが大好きな生き物です。そして、利益を上げることが大好きな生き物でもあります。

さらには、自分たちのビジネスが主語になっていない話に興味を持たない生き物でもあります。

上記のような経営者なりの思考パターンを理解した上で、経営者と会話をしましょう。

澤円NewWave

例えば、「VRのテクノロジーを使うとこんなことができます」と語るのではなく、

「コロナ禍で出張制限されている中で効果的に海外拠点のサポートをするために、社員の出張コストよりもはるかに安い金額でシステムの導入が可能です」と言った方が、経営層の耳目を引くことができるでしょう。

あるいは「最新のデジタルマーケティングのツールを使うことで、若者に情報を届けましょう」というのではなく

「わが社のマーケティングデータによると、20代へのリーチが弱いようです。ここは大手メディアによる公告からSNSなどを使ったマーケティングを自動で行うことでコスト削減と若年層へのアピールが両立できます」と語った方が説得力が出ますね。

ビジネスもテクノロジーも、目指す方向は同じ

エンジニアが経営視点を持つと、世の中の動きとテクノロジーの相関関係がクリアになってきます。

これを「世界を見る解像度が上がる」とボクは表現しています。

解像度を高めて世の中を見るようになると、さまざまな部分から気付きが得られたり、興味をひかれたりします。

そして、テクノロジーが寄与できる部分をより具体的に理解できるようになってきます。

テクノロジーは、世の中をよくするために存在しています。
そして、すべてのビジネスは社会貢献のために存在しています。
ビジネスもテクノロジーも、目指す方向は同じなのです。

エンジニアが経営視点を持つということは、世の中をよくするための力をアップさせることになります。

世の中をよくする力を持っているということは、人材として極めて高い価値を持っているということです。

ご自身のキャリアアップのためにも、エンジニアとしての腕を磨きつつ、経営視点を持つ努力もしてみてください。


▼澤円氏 最新書籍『個人力――やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)

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世界中にインパクトを与えた新型コロナウイルス(covid-19)。私たちの目の前の「働き方」が大きく姿を変え、企業もその大小を問わず大打撃を受けている。在宅勤務・リモートワークが主流となる社会では、これまで以上に「成果」が評価軸となり、「個」としての力量が問われていくことは間違いないだろう。

そんな世の中で充実して働くため、また活躍するために大切なのは、「どんな自分でありたいか」、その信念を軸にして行動することである。もっと“自己中”に、もっと“わがまま”に――。澤円が、新しい時代の「働く力」を描き出す。

>>詳細はこちら

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