この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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最終面接、有名ベンチャーCTOたちは何を見てる? メルカリ名村・SmartHR芹澤・スマニューたいろーが回答
お悩みを寄せてくれたR.Iさんは、有名ベンチャー企業への転職を希望しているものの二次面接・最終面接がなかなか通らないそう。技術要件は満たしているはずなのに、一体なぜ?
そこで今回は、多くの二次面接や最終面接を担当してきたメルカリCTO名村さん、SmartHR CTOの芹澤さん、スマートニュースのたいろーさんに、相談してみました。
R.Iさんのお悩み:技術力はあるのに、最終面接に受からない
技術要件は満たしているはずなのに、今どきな有名ベンチャー企業の面接に受かりません。特に二次面接や最終面接で落ちることが多いです。私はスキルも問題ないはずですし、資格も持っており、日々の勉強も欠かしていません。
エンジニアにとって一番重要なのは、技術力ではないのでしょうか? そのほか、面接でアピールすべきことがあれば教えてください。
名村さんの回答:企業がどのような「価値観」に基づいているのかを確認しよう
書類選考を通過し、面接に進んだ場合、面接官は「どういった考え方を持っている人なのか」を見ていることが多いです。企業にはそれぞれの価値観がありますから、その価値観と応募者の考え方が合っていなければ、面接通過はしません。
多くの企業が技術力が高いエンジニアを求めていることは間違いありません。技術力という指標が、面接における採用判断の基準になっていることもその通りです。しかし技術力は十分だと思っているのに、面接で通らない場合は、他にいくつか確認すべきことがあります。
まずは、企業が求めている技術力と軸がズレていないかです。
エンジニア採用において、資格を重要視しているベンチャー企業は少ないですし、実際には実務経験をより求めていることが多いです。勉強で得られる知識も重要ですが、実際のプロジェクトなどで得られた“知恵”を必要としている会社がほとんどだと思います。
この場合は、面接官に「どのような能力を求めていますか」と質問するなどして、企業と自身の考えるスキルのズレを確認してみるといいかもしれません。
そしてもう一つは、技術力以外の方がより重要という現実があることです。
実は、技術力や経験という点だけで見ると、採用の要件を満たしている候補者は少なくありません。
しかし多くの企業はチームで開発をしており、チームメンバーがシナジーを生み出して開発できるか、が何より重要です。
企業にはそれぞれの価値観がありますから、そこに共感した人たちが集まってチームとなり開発をしています。そこで価値観が合わずチーム内でシナジーが生み出せないだろうと判断されると、どれだけ技術力が高くても面接で落とすことになります。
つまり、企業がどのような価値観に基づいて考え、判断を行っているかという点が、面接においては最も重要なポイントになっていると思います。
芹澤さんの回答:面接官は「バリューへの共感性」を確認しています
選考で何を大切にしているかは各社それぞれですが、「技術力が一番大事」ではない会社もあります。
それを踏まえて面接でアピールすべきは、その会社の「バリュー」を確認した上で、なぜご自身がその環境で十分に活躍できると思ったかを伝えてみることだと思います。
選考で何を大切にしているかは各社それぞれだと思いますので、あくまで弊社の場合という前提で回答させていただければと思います。
弊社におけるプロダクト開発タスクは、基本的にはさまざまな職種のメンバーからなるチームによって取り組まれます。エンジニアが単独で行動し、その成果がお客さまのもとに届くというようなことはありません。
そのようなチームで活躍するエンジニアの条件を考えるとき、一番重視するのは実は「技術力」ではなく「チームワーク力」だったりします。どんなに技術力があっても、チームのやり方に合わず、輪を乱したり、モチベーションが安定しなかったりすると、結果的にチームが出せるアウトプットの質や量が下がってしまうためです。
では、この「チームワーク力」を面接の場でどのように判断しているのでしょうか。
弊社では7つのバリューを掲げていて、日々の意思決定は基本的にはこれらをもとに判断されています。
これが結果としてメンバー1人1人の言動に反映され、会社のカルチャーとなっていくのですが、チームワーク力とは結局のところ、このバリューへの共感性ではないかと考えます。
会社のメンバーと同じ価値観を持って意思決定をし、仕事を進められるかどうか。それを面接の場で確認しているのです。
たいろーさんの回答:技術要件はあくまで「必要条件」。十分条件になる“魅力”を考えよう
面接に通過するには、その企業で働く人や面接で会った方が「この方とぜひ一緒に働きたい」という気持ちになるかどうかが重要です。
その時、応募者がエンジニアとして技術力が高いというだけでなく「技術を使って何に貢献してきたか」という実績や、それに裏打ちされた「技術を使って○○をしたい」という価値観に魅力を感じていることが多いです。
「エンジニアにとって一番重要なのは技術力」という考え方には盲点があり、そこにハマってしまう方は少なくありません。求人に書かれている技術要件はあくまで「必要条件」なので、内定するための「十分条件」ではないからです。
エンジニアにとって技術力が重要なのはもちろんですが、選考プロセスで他にもそういう候補者の方がいる場合、何が決め手になると思いますか?
面接で通過していく方は、その企業で働く人や面接で会った方が「この方とぜひ一緒に働きたい」という気持ちになっている事が大半です。
彼らが何に惹かれるのかというと、エンジニアとして技術力が高いというだけでなく「技術を使って何に貢献してきたか」という実績と、それに裏打ちされた「技術を使って○○をしたい」という価値観だったりします。
そして、それは選考中の企業のカルチャーや成長フェーズによっても相性が変わるものであり、一概にこれという正解はありません。
ただ、私がこれまで多くのエンジニアと面接をしてきた経験から言えるのは「成果に焦点を合わせて行動し、その思考プロセスを自分の言葉で話せるエンジニアは魅力的だ」ということです。
貴方にとって「成果」とは何でしょうか? それは、その企業や顧客を幸せに貢献できることですか? そして、その実現のために何が必要かというコスト感覚は持っていますか?
会社である以上、製品や事業、組織など常に課題を抱えています。視点を一つ引き上げて、ご自身の技術力がどんな成果に貢献できるか考えてみる事をお勧めします。
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メンターズプロフィール
株式会社メルカリ 執行役員CTO
名村卓さん
1980年生まれ。小学生の頃からプログラミングを始め、大学はコンピュータ・サイエンスを専門とする会津大学へ進学。コンピュータ理工学部へ進み、在学中からSIerでシステム開発を行う。2004年、大学を中退した後はSIerに就職、その後サイバーエージェントに入社。リードエンジニアとして『アメーバピグ』『AbemaTV』など主要サービスの開発に携わる。16年メルカリに入社。US版メルカリの開発などを担当。17年4月に執行役員CTOに就任
株式会社 SmartHR 取締役・CTO
芹澤雅人さん(@masato_serizawa)
2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模なWebAPIの設計と開発に従事。16年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。20年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う
スマートニュース株式会社 Technical Product Manager
森山大朗さん(@tairo)
早稲田大学卒業後、リクルートで人事・営業などを経験した後、エンジニアに転身。新サービスの立ち上げやビズリーチでの求人検索エンジン開発などを経てメルカリに参画。Head of Data/AI/Searchとしてメルカリの検索アルゴリズム改善やAIを活用した新機能の開発、Machine Lerning Engineer組織を統括した。2020年より現職。AIを活用したダイナミック広告のプロダクトオーナーとして開発のマネジメントを担っている。■ブログ:ユニコーン転職日記、■voicy:ユニコーン転職ラジオ、■note:たいろーのnote
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