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「日本のホワイトカラーの労働生産性を飛躍させる」、...
B2B領域でスタートアップがキャズムを越えるには?4カ月で200社利用のビジネスマッチング『Boxil』代表×投資家対談
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B2B市場においてスタートアップが存在感を増しつつある。B2B市場はB2C市場に比べ、まだIT化の歩みが遅いため、潜在的な需要があると考えられるためだ。
とはいえ、目を見張るような大きな成果を挙げたB2Bスタートアップは、国内ではほとんど例がない。複数の要因が考えられるが、個社別のカスタマイズを当然のごとく求める日本企業の商習慣や、SNSや口コミで拡散しやすいB2Cサービスとは異なりマーケティングにもパワーがかかることが要因に挙げられる。
B2Bサービスの特性は、企業体力の乏しいスタートアップには荷が重い一面があるのは事実だ。
そこでスポットを当てたいのが、2014年6月に設立されたスマートキャンプだ。同社は現在、コスト削減や業務効率の向上などに課題を抱える企業と、課題を解決できるサービスを持つ企業とをつなぐ法人向けクラウドサービスマッチングサービス『Boxil(ボクシル)』を提供しており、徐々にシェアを伸ばしつつある。
今回は、スマートキャンプ代表の古橋智史氏と、自らもスタートアップ経営者であり、投資家としてスマートキャンプの経営にも携わっているソラシード・スタートアップス代表の柴田泰成氏(サムライト代表取締役)に、B2Bスタートアップがキャズムを越えるために何が必要か、当事者の立場から語ってもらった。
「日本のホワイトカラー労働生産性を飛躍させる」サービス開発
柴田 古橋さんが新規ビジネスの相談に来られたとき「テレアポを世の中からなくしたい」、「ホワイトカラーの生産性を上げたい」という話をされていたのを聞いて興味を覚えました。具体的な話を進めるうち、出資だけでなく、取締役として一緒に事業を動かしていくことになったんです。
古橋 スマートキャンプは「日本のホワイトカラー労働生産性を飛躍させる」という理念を掲げて創業した会社です。SKETもこの理念を形にするために手がけたサービスではあるのですが、資料づくりの代行だけでは、使命を十分に果たしているとはいえません。
そこで考え出したのが、課題を抱えた企業と、解決策を持っている企業をつなぐBoxilでした。2015年の5月からサービスを開始してまだ半年足らずですが、すでに約200社の商材を掲載しており、多くのユーザーに使っていただいています。
柴田 投資家目線から見ても、Boxilは現在注目を集めているインバウンドマーケティングやマーケティングオートメーションといったトレンドとも呼応するサービスでもありますし、事業の伸びしろも大きいと感じています。
古橋 この5カ月間、サービスを提供する中で特に親和性が高いと感じた商材は、勤怠管理や人事管理、グループウェア、社内SNSなど、Web上で完結するクラウドサービスでした。クラウドサービスへの関心度は高いものの、導入に対して漠然とした不安や疑問を感じている中小企業の方などが、キーワード検索を通してBoxilにたどり着くケースが多いようです。
つまり、従来であれば、セールスが担っていた情報提供者としての役割を、Boxilが果たしていることになります。今後、クラウドサービスへの関心はますます高まっていくことが予想されるので、今年の11月に、クラウドサービスに特化したマッチングサイトにリニューアルする計画です。
キャズム越えの鍵は、愚直な「磨き込み」と「新しいマーケ手法」への挑戦
古橋 スピード感を持ってPDCAサイクルを回すことでしょうね。
柴田 同感です。顧客の声を聞いてそれをいかに開発に反映させるかが鍵になるでしょうね。個別の声に耳を傾けることで、初めて大きなトレンドが見えてきます。当初の思いつきレベルのアイデアをいかにユーザーの求めるものへと軌道修正できるか。高速にPDCAサイクルを回すことなしに実現することはできないでしょう。
古橋 逆にいえば、規模の小さな我々のようなスタートアップには、素早くPDCAサイクルを回す以外にできることって少ないんですよ。だから愚直にやるわけです。
そうでなければサービスの質を上げられませんし、開発メンバーのモチベーションも下がってしまいますから。サービスを熟成させていく上で、スピードを意識することはとても重要な事だと考えています。
柴田 身も蓋もない話ですが、こちらから積極的に売り込まなくても見込み客に響くサービスをつくり、徹底的に磨き込むことが大前提になるでしょうね。その次にやるべきことは、テクノロジーの力を借りて、サービスを市場に浸透させていく努力です。
古橋 うちの場合ですと、サイトの配下に『Boxil Magazine』というオウンドメディアを置いて集客しています。検索からモチベーションが高い状態でサイトに入ってきてくれるので、問い合わせから受注に至る率は30%を超えており好調です。
B2Bのグロースに効くとされる広告チャネルはB2Cサービスに比べると格段に少ないですし、リスティング広告も年々高騰傾向にあるので、オウンドメディアの運営はかなり有望な手法だと感じています。
柴田 今、古橋さんがおっしゃったオウンドメディアはひとつの例ですが、なるべく人が介在しなくても勝手にグロースしていくような仕組みをつくることも大切だと思っています。
また最近では、BYOD(Bring Your Own Device/個人が所有する端末の業務利用)に次ぐトレンドとして「BYOA(Bring Your Own Application/個人利用のサービスやアプリの業務利用)が当たり前になりつつありますが、そうした流れを受けて、B(Business/法人顧客)向けのサービスであっても、あえてC(Consumer/個人消費者)に寄せたサービス戦略を取ることも有効だと考えます。
柴田 Google AppsやDropboxのサービス戦略が好例ですが、一旦、個人で使い始めてしまったサービスを、いくら業務で使うなといっても、もはや止めようがないというのが実情です。企業としては、使い勝手のいいサービスの利用を禁じて生産性を下げるより、自ら進んで法人ユーザーとなり料金を支払うことで、情報漏洩などのリクスに備えられるのであれば、それでよしとする企業はこれからもっと増えるでしょう。
つまり、個人ユーザーにはサービスを無償提供することによって利用者の裾野を広げ、最終的には法人会員からの課金によって収益を上げるという戦略が成り立つわけです。
先ほど申し上げたCに寄せたサービス戦略とは、いわゆる「フリーミアム戦略」ですが、長年手掛けてきたビジネスモデルに縛られている大手企業にはなかなか真似できないことです。スピード感で勝負できるスタートアップならではの戦い方といえるでしょう。
古橋 サービス同士の比較機能やデータのエクスポート機能など、利便性を高める技術的な試みはいくつもありますが、いずれは人工知能によるレコメンドが最終目標になるのではと見ています。
現状、直面している課題や企業情報を入力すれば、どのようなクラウドサービスを入れるべきかを瞬時に判断できるようになれば、単なる比較サイトを越えた新しいB2Bサービスになるはずです。僕らはまだその段階には至っていませんが、いずれはそこまで必ずいくと確信しています。
B2B領域のシェア拡大に「テクノロジー×人力」の両方が必要な理由
柴田 B2Cの世界で10年、20年掛けて実現してきたような安価で利便性の高いサービスが、B2Bの世界にも数多く登場してくるでしょう。それによってこれまでの組織や仕事の仕組みもどんどん変わるはずです。今はちょうどその過渡期であり、需給バランスに「歪み」がある状況だと感じています。
しかしこうしたタイミングこそ物事を大きく変えやすい時でもあるので、これからのB2B領域はますます面白くなると予想しています。
古橋 Boxilのようなサービスがあることで、必要なB2Bサービスが見つかるのであれば、従来セールスが担っていた役割の一部を代替できると思いますが、すべてを補完できるとは思いません。
冒頭でもお話した通り、我々が目指しているのは「日本のホワイトカラー労働生産性を飛躍させる」ことです。誤解を恐れずにいえば、この理念を実現するためなら、現時点での我々自身の生産性は二の次でいいと思っているくらいなんです。
コミュニケーションロスを最小限に抑えるためなら毎朝のミーティングも厭いませんし、良い関係を築けるのであれば、顧客のもとにも積極的に足を運びます。
一見、我々の目指す企業理念と矛盾しているように感じると思いますが、この状態は「高次元の矛盾」だと思うんです。いずれ、この矛盾は解消されるべきですが、今我々の置かれているフェーズでは、人の介在なしにサービスの質は高められないと考えています。
柴田 Boxil上にあるデータやレビューを読んでから具体的な商談に入るのと、知識がゼロの段階から信頼関係を築いて商談に入るのとでは、進展のスピードがまったく違います。Boxilはまさに、商談に至るプロセスをかなり大きくショートカットすることでセールスの生産性を上げるサービスです。
削ぎ落としたプロセスの分、ユーザー企業のセールス担当者は、顧客との関係を強くすることに集中できる。新規開拓はBoxilに任せ、新規顧客のフォローや既存の顧客に新しいサービスを提案するようなサイクルが理想できでしょうね。
お客さんとともに手を携え、一緒に課題を解決していくためのプラットフォームとして、Boxilを活用してほしいですね。
古橋 僕らとしては今後、Boxilを通じてクラウドサービスに関する素朴な疑問や漠然とした不安を取り除くことに注力していくつもりです。その実現のためには、課題解決型のエンジニアやセールスの仲間が必要です。一緒にアイデアも出し合い、サービスをよりよくしていく方々と一緒にB2B領域を活性化させていきたいと思っています。
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/赤松洋太
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