『世界一わかりやすいDX入門』著者に聞く“DX先進企業”で働くことでエンジニアが得られる成長とは?【各務茂雄】
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世間ではDXが進んでいるが、自分の会社はどうも出遅れている……。「こんなアナログな会社にいて大丈夫?」と不安に感じたなら、それはキャリアを考え直すタイミングかもしれない。
「エンジニアはDX先進企業で経験を積むことで圧倒的に成長できる」と語るのは、KADOKAWA Connected代表の各務茂雄さん。KADOKAWAの社員1000人を一斉にリモートワークに切り替えたABW(Activity Based Working)導入や、2020年11月にオープンした日本最大級のポップカルチャー発信拠点『ところざわサクラタウン』のデジタル化など、KADOKAWAグループのDX推進を先導してきた。
コロナ禍でこれだけの成果を出せたのは、「社内が完全にDX化されていたから」だという。話を聞くと、同社では組織内のコミュニケーションや意思決定プロセスの徹底的な合理化が図られているようだ。そんなDX先進企業で働く経験が、エンジニアの成長を促す理由は何だろうか。各務さんに真意を聞いた。
DXとは「デジタルツールを導入すること」ではない
デジタル庁の新設など、政府もDX推進にますます力を入れています。しかし、一体何が本当のDXなのか、実はよく分かっていないという人は、DX導入を進める立場の人の中にも意外と多いのではないでしょうか。
よくあるのが、「とにかくデジタルツールを導入すればいい」という思い込み。しかし、デジタルツールの導入は、デジタル技術を使った売上の拡大や、新規サービスの企画、業務の合理化に有用だからやるのであって、目的そのものではありません。
まずはできるだけ幅広い業務領域を合理化することが大切ですが、多くの企業は徹底できていません。曖昧さの排除は面倒ですし、それによって損する人も出てきますからね。でも、そこに切り込んでいかなければ、DXは中途半端に終わってしまいます。
私がかつて勤めていたAWSやマイクロソフトなどの外資系IT企業では、物事の進め方が非常に合理的でした。人のクリエイティビティは、合理的に業務を進められる土台があって初めて発揮されるものです。だからこそ、世の中にインパクトを与えるビジネスを生み出せたのでしょう。
そうした土台をつくることなく、やみくもにデジタルツールを導入してしまうのは、要件が決まっていない状態でシステムを入れるようなもの。「働き方改革をしたい」「生産性を高めたい」「リモートワークに切り替えたい」……これらは全て、要望に過ぎません。
本来は要望を要件に落とし込んだ上で、それを満たすシステムを導入するなり作るなりしなければなりません。しかし、ほとんどの企業では要件定義のプロセスをITベンダーやコンサルティングファームなどに丸投げしてしまうのです。
こうした状況は、中で働くエンジニアにとってもマイナスです。
エンジニアは本来、要件定義まで踏み込み、PDCAを回して、アジャイル開発的なやり方をしていくことで成長することができます。しかし要件定義を外注してしまうと、いつまで経っても「作るだけ」の受け身の姿勢が染み付いてしまいます。しかも、当事者意識の抜け落ちた要件で作ったシステムでは成果を出せないことも多い。
DXがうまくいっている企業では、要望・要件・仕様が社内で一気通貫になっています。改善提案も含めてPDCAを回していくので、エンジニアはただ作るだけではなく、上流工程も学んでいくことができる。エンジニアが成長するのは、こうした環境のある企業だと思います。
コミュニケーションコストを下げなければ、DX推進は不可能
DXを推進する側の組織に一番大切なのは、スピーディーに業務を進められる体制づくりです。変化の多い世の中にアジャストしていくためには、PDCAを短期間で数多く回す必要があるからです。
業務スピードを上げるためには何が大切でしょうか。それは、コミュニケーションコストの削減です。DXを推進していく上では、あたかも一人の脳内シナプスで情報を処理していくように、各チームとの連携をスムーズに進められる体制づくりが欠かせません。
当社では「サービス型チーム」という体制を導入しています。これは、ほぼすべての仕事をサービスとして定義し、その社内外の利用者に対してサービスの品質を約束するものです。
すると、各チームが何に対して責任を持っているのかが明確なので、仕事の押し付け合いや細かな調整が減り、自然と組織横断的な働き方ができるようになります。
サービス型チームの中では、メンバーのロールも明確です。「サービスオーナー」なら、サービス全体(売り上げ、費用、品質)に責任をもつ。スクラムマスターであれば、スケジュール管理に責任をもつ。オペレーターであれば、オペレーション(運営・運用)に責任をもつ、というように。
ECのサービスオーナーを経験した人は、今度はCRMのサービスオーナーに挑戦できるので、ロールは「業務を超えて活用できるスキルセット」とも言えます。
サービス型チームは、顧客に価値を提供する上で必要な土台でありながら、メンバーのキャリアの可能性を広げる仕組みでもあるのです。
従業員に渡すお金は「労働の対価」ではなく「投資」
サービス型チームで働くエンジニアには、「自律」が求められます。自律とは、自分がどんな価値を出せる人間なのかを知った上で、自分に対して挑戦状をぶつけられる人。そのプロセスをサポートするのが、上司や会社の役割です。
私は、従業員に渡す手当や給料などのお金は全て、「労働の対価」ではなく「投資」だと認識しています。新入社員に支給する「新卒手当」や、リモートワークの生産性を向上させるために個々人で試行錯誤をしてもらうことを目的とした「在宅勤務生産性研究費費」など、さまざまな種類の手当てを支給しています。これらは、余ったら自身の疲れを癒すために“無駄遣い”してもらっても構いません。
なぜ“無駄遣い”が許されるのか。それは私が、人間はHP(フィジカルポイント)とMP(メンタルポイント)をキープしなければならないという「HP/MPマネジメント」の考え方を採用しているからです。
HPが落ちていると感じたら、よく寝て疲れを取る。そしてHPの基礎数値を高めるために運動をする。MPが落ちているなと感じたら、メンタルが上がる好きなことをする。もしそれが、一見無駄遣いのようでも、それでHPやMPが回復するなら全く構いません。それも含めて「投資」だからです。
そう考えるようになった理由の一つは、私の新卒時代に遡ります。
プログラマーとしてキャリアを始めましたが、実はキーボードも触ったことがない状態で。早く周囲に追いつきたくても、会社から支給されたパソコンは遅く、思うように作業が進みませんでした。そこで、なけなしの給料3カ月分を投資してパソコンを自作し、会社に持ち込んで、人よりも早く成長できる環境を整えたのです。
まだ経験が浅い時期こそ、投資は大事。そう身に染みて感じていたので、従業員には惜しみなく投資したいと考えています。
目指すは「DX人材輩出企業」。努力するエンジニアが報われる世界をつくりたい
当社は今、将来のCIOやDXリードを育てるべく、OJTに力を入れています。ゆくゆくはDXを担う人材をマーケットに送り出す「人材輩出企業」を目指しているのです。
目の前のDX推進だけでなく、業界全体への貢献を意識しているのは、地道に努力しているエンジニアがちゃんと報われる世の中をつくりたいからです。
エンジニアの仕事は、「コードを書くこと」だと思っている人は多いかもしれませんが、私はそうは思いません。エンジニアとは、「物事をエンジニアリングするスキルを持っている人」。つまり、物事を構造化し、リスクを最小限にするスキルを持っている人のことです。それは究極的には、宇宙旅行のような超ハイリスクな計画を実現する力とも言えます。
エンジニアの皆さんには、人類の壮大な夢の一部を担うだけの力があることを知っておいてほしいですし、技術を扱えることに誇りを持ってほしいですね。
エンジニアはDXを本質的に理解し、推進することができる。DXをけん引するのは、他でもないエンジニアなのです。そんなエンジニアがもっと活躍できる世の中にするために、できる限りのことをしたいと、本気で考えているところです。
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取材・文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/河西ことみ(編集部)
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