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アラサーエンジニアの採用事情を3社の社長&人事に聞いてみた「プログラマーの市場価値が再評価され出した」

ITニュース

    7月23日、東京国際フォーラムで開催された@typeエンジニア転職フェアにて、特別講演『有名企業の人事に聞く!アラサーエンジニアの転職まるわかり~エンジニア採用の条件って変化しているの?~』が行われた。

    かつて、技術職として手を動かすエンジニアは30代になると、キャリアの選択肢が狭まってしまうといわれていた。 “エンジニア35歳定年説”という言葉が流行ったほどだ。では実際に、30代になったらプログラミングを得意とするエンジニアの市場価値は下がってしまうのだろうか。またそうだとしたら、アラサー技術者たちはどんなことを意識してキャリアを築いていくべきなのだろう。

    有名企業の人事や採用に関わる事業責任者の方々に、20代後半~30代前半の年齢層のエンジニア採用状況の変化を聞くことで、アラサー技術者に求められている姿が見えてきた。

    ≪登壇者≫※五十音順
    アビームコンサルティング株式会社
    人事ユニットシニアマネージャー 小河原 政信氏

    株式会社永和システムマネジメント
    代表取締役社長 平鍋健児氏

    株式会社NTTデータMSE
    人事総務課長 吉川聡氏

    (左から)アビームコンサルティング 小河原 政信氏/NTTデータMSE 吉川聡氏/永和システムマネジメント 平鍋健児氏

    (写真左から)アビームコンサルティング小河原政信氏、NTTデータMSEの吉川聡氏、永和システムマネジメント平鍋健児氏

    プログラマー→PL・PMのキャリアは王道ではなくなってくる

    ―― ずばり、30代前後のエンジニア採用において、最近の各社採用動向はどうなっていますか? 昔と比べて変化はあるのでしょうか?

    平鍋 一昔前なら、ある程度年齢がいったらプロジェクトマネジメントのスキルが重視されていました。今ももちろん重要ではあるものの、一方で実際に自分で手を動かす人、いわゆるプログラマーの需要が今すごく高まっていると感じますね。

    ―― 昔ながらのキャリアパスでは、プログラマーはPL・PMになるというのが王道でした。

    平鍋 そうですね。でも今、永和ではプログラマーの地位も高いですよ。最近になって、リーダー職と並行でプログラミング職のポジションも新設したほどです。

    プログラミング職の人がマネジメント面を見なくてもいいとは言いません。プロジェクトを見ながら、メンバーのプログラミングスキルを向上させていく必要があるんです。当社が得意としているアジャイル開発の中では、プログラミングがコミュニケーションにも繋がるので、手を動かせる人は価値があるんです。

    ―― プログラマーにはかつて「35歳定年説」という言葉もありましたが、それが崩壊してきたということでしょうか?

    平鍋 スキルがあって情熱があるなら、当社ではそこは気にしていませんね。

    小河原 アビームも、コンサルティング企業ではありますが、直近半年間に採用したIT人材は20代~40代まで幅広い年齢層です。その中でも、業務/業界に強い方、技術に特化している方と、得意な分野もさまざまです。共通しているのは、もともと持っている技術や知識を使って言われたことだけをするのではなくて、それを活かしてプロジェクトをどう上手く進めたり、より良いものを作れるのかを考えている人ですね。

    吉川 当社も従来より確実に、開発エンジニアの採用年齢の幅は広がりました。というのも、NTTデータMSEでは、以前は組込み系開発がメインでしたが、最近ではモバイルやコンシューマ向けのサービス開発の割合も高まっています。そうすると、例えば事業会社で開発をしてきた経験や知識がより活きるんです。

    座談会の様子

    多様化していく開発環境の中で生き抜くエンジニアに大切な志向

    ―― スピード開発・事業戦略の多様化・アジャイル開発など、開発プロセスや取り巻く環境に変化がありますが、それを踏まえた上で、今はどのような強みを持つアラサーエンジニアが求められるようになったのしょうか?

    小河原 持っている技術を、言われたとおりだけに使うのではなく、どう上手く活かしていくかが大事という話にもつながりますが、「技術を使ってこんなビジネスを達成したい、クライアントに貢献したい」とイメージできる人を採用しています。そして、そういう人のバックグラウンドを聞くと、「苦労」してきた人が多いと感じますね。

    ―― 苦労した人、というと?

    小河原 いわゆる「デスマーチで苦労しました」ではなく、プロジェクトを成功に導くために「この要件はおかしいと思うので、こういう風にしたいです」と自分の考えをしっかり持ち、クライアントやPMにぶつけた経験というか。そういう「苦労」を持っている人です。

    ―― なるほど。この要件をこの納期で、と言われたままのことをやっている人の「苦労」ではないということですね。

    平鍋 確かに、アジャイル開発を進めていても、指示されたことだけではなく「これってどうして作るんですか?」と本質を聞き出しながら開発を進めるメンタリティを持っている人が良いと感じます。当社でも、採用時に技術力を見極めるのはもちろんですが、そういったメンタル面も重視していますね。

    小河原 そう。そういう視点で提案してくれるエンジニアは、特に求められていると思うんですよね。

    ―― 大規模な業務系開発だと、そういうクライアントとの交渉はPM・PLがやっていて、プログラマーの場合はクライアントと関わらないのが普通でした。が、今はそうではないのでしょうか。

    吉川 組込み系の開発だと、いまだにPL・PMが窓口となってお客さまとコミュニケーションを取ることが多いです。しかしモバイル系サービスの開発案件だと、プログラマーでも若手でも、クライアントのところに行って提案する機会が自然と多くなります。そういう意味だと、チームビルディングと手を動かす技術の垣根はなくなってきているのかもしれません。

    ―― ということは採用でも、プログラミング力に加えて、そういう経験をしている人が有利になるのでしょうか?

    吉川 そういった交渉力を持った若手が増えてきていることからも、やはりアラサーエンジニアには顧客折衝だったり、コストや品質を意識したプロジェクト進行、業務知識などのプラスアルファの力が必要になりますね。作り続けているだけでは、対抗できなくなると思います。

    年齢を積んでいくだけではなれない、シニアスペシャリストの道

    座談会の様子
    ―― 経験を積んでいくにつれてエンジニア個々の役割はどう変化していくのでしょうか?各社における「アラサー以降」のエンジニアのキャリアパスを交えて教えてください。

    平鍋 先ほども説明したように、永和のアジャイル事業部では基本的にプロジェクトリーダーとコンサルタント、そして手を動かし続けるプログラマーという選択があります。プログラマーでキャリアを積みたいけど、管理面が苦手というならば、育成を含めたチームづくりや、技術の伝授・教育をするシニアなプログラマーを目指すのでかまわないと思っています。

    ―― 「手を動かせる人」の価値が高まっているからこそ、後進育成も重要視されていると?

    平鍋 そうですね。後進を育てるのは経験を積んだエンジニアの役割。当社では、GitHubのコードにレビューをしてくれるようなベテランエンジニアも多くいますよ。

    吉川 当社も、30代でマネジメントをするか技術のスペシャリストになるか適性を見極めます。今まではマネジメント一本道しかなかったのですが、スペシャリスト、さらにその上に“シニアスペシャリスト”を設けています。

    小河原 アビームでは、コンサルタントと、スペシャリストとでキャリアパスが分かれています。

    ―― 各社、マネジメント以外の選択肢を増やしている印象ですね。キャリアパスが増えた理由はどこにあるのでしょうか?

    吉川 背景としては、やはり作れる人の価値が上がっているということでしょうね。手を動かせる人のキャリアパスがないと、スペシャリスト志向の人が上に上がるモチベーションも沸かないですから。希望と能力次第でキャリアを作っていける体制を作っています。

    ―― スペシャリストのキャリアパスには“シニアスペシャリスト”というのがありますが、シニアとシニアじゃない人の違いって何なのでしょう?シニア職って年を積めばなれるというわけではないと思うのですが。

    平鍋 当社のシニアスペシャリストは、「業界の第一人者」という言い方をしています。社内だけではなく、業界全体に影響を与えられる人ですね。

    小河原 アビームでも、業界で名前が知れ渡っていたり、「この分野はあいつに聞け」と社内外から普通に言われているような人がシニアな人として認められます。勉強会で声がかかるような人もそうです。

    ―― 業界内で有名になるのは、かなり難しいことですよね。そのくらい突き詰めないと、シニアスペシャリストにはなれないと。

    吉川 そうですね。そういう意味でいうと、個人に閉じない、というのが重要だと思います。個人のスキルや知識に留めずに、社内外に共有・発信できる人は、30代以降も順調にキャリアアップできています。

    ―― かつてほど単純なキャリアパスではなくなってきている、というのは各社共通していますが、自分の得意分野という縦軸と、それを広めていく努力やマインドという横軸、どちらも伸ばしていく努力が必要なんですね。そして、何かしらの専門領域を学び続けて発信していかないと、キャリアを拓いていくことはできないと。今日はありがとうございました。

    取材・撮影・文/大室倫子(編集部)

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