新機能も続々と。爆速で進化するGitHubのすべて、この1記事でざっくりキャッチアップ【GitHub Universe 2016レポ】
9月14日(水)、米サンフランシスコで開催された『GitHub Universe』には、世界中から1500名以上の人が集まった。GitHubのコミュニティに向けたユーザーカンファレンスの開催は、昨年に続いて2回目となる。
>> 2015年開催の『GitHub Universe』レポートはこちら
メインステージが二階建てになるなどスケールアップした会場には、エンジニア・起業家・ビジネスリーダーなどさまざまな人材が集まり賑わいを見せた。
カンファレンス初日のキーノートには、GitHub社 共同創業者でCEOのクリス・ワンストラス(Chris Wanstrath)氏が登場。同社の最たるゴールを、「ユーザであるエンジニアのソフトウエア開発をより簡単にすること」だとした上で、その目的を後押しするための新機能を発表した。
このレポートでは、「サービス開始以降、最大のアップデートだ」と同氏が意気込むその内容についてお届けする。
また、今回のカンファレンス開催に合わせて、過去1年間における活動の内容をまとめた『Octoverse 2016』が公開されたので併せてご覧いただきたい。
『Electron』と1800万DLされるテキストエディタ『Atom』
9年前にリリースしたGitHubは、これまで“継続的な改善”を続けることで強固なコミュニティを構築してきた。
その一つが、JavaScript+HTMLでクロスプラットフォームのデスクトップアプリが開発できる『Electron』だ。今年5月のバージョン1.0のリリース以降、ダウンロード数は200万回を超え、BasecampやSlackを含む180以上のアプリケーションがElectronを使っている。
Electronは、もともとGitHub独自のテキストエディタ『Atom』のために開発されたもの。このAtomも好評で、ダウンロード数は1800万超、月間アクティブユーザーは100万人を超えている。Atomの公式サイトでは、さまざまなプラグインが公開されている。編集履歴を過去に遡って見られる『git-time-machine』、マークダウンのドキュメントをPDF化してくれる『markdown-PDF』など。
ワンストラス氏が今回のキーノートを書くために使ったという『Active Power Mode』は、Atomでタイプする際に文字を破壊するようなアニメーションが用いられていて遊び心がある。
※Atomの詳細については、マニュアルを参照できる。
『Black Girls Code』などGitHubの教育への取り組み
昨年のGitHub Universeで発表された同社の教育関連の取り組みの一つ『GitHub Classroom』。プログラミングを教える側がそのクラスを管理しやすくする他、プログラミングを学ぶ生徒に対して、プロのデベロッパーが使うツール(AWSやDatadogなど)を無料で解放している。現在、20万人を超える生徒が利用している。
その他、GitHubはハッカソンを積極的にサポートし、またオンライン教育プラットフォーム『Udacity』と組むことで、生徒のキャリア設計を見据えたNanodegree学習プログラムにも参加している。
ワンストラス氏の紹介を受けてステージに立ったのは、アフリカンアメリカンの女性向けプログラミング教育『Black Girls Code』創業者であるキンバリー・ブライアント(Kimberly Bryant)氏。MCやラッパーとして知られるコモンが登場するカンファレンス初日夜のアフタパーティーの売り上げは、その全額がBlack Girls Codeの活動に寄付される予定だ。
4年前にBlack Girls Codeを立ち上げたブライアント氏。彼女自身、決して恵まれているとはいえない環境で育ったというが、当時には珍しく大学でコンピュータサイエンスを専攻し、それが彼女の未来を大きく変えた。
自分がそうだったように、7~17歳の若い女の子が早くにテクノロジーに関心を持つ機会を提供している。Black Girls Codeは、2040年までに100万人のアフリカンアメリカンの女の子にコーディングを教えることを目指す。
「彼女たちに、自分でコードを書くこともできるし、成功することも、また次世代のCEOになることだってできるということを伝えたいです。ただテクノロジーの受け手でいるだけでなく、新しいものを自らつくる手段を持つことで、未来のテクノロジー業界を先導していってほしいです」
オープンソースコミュニティとホワイトハウスの活動
年々大きくなるGitHubのコミュニティ。昨年、5000件だった新規ユーザーによる1日の公開リポジトリの数は倍増し、今年は毎日1万件に。そのオープンソースコミュニティには、個人のロジェクトからNASA、VRのフレームワーク、『Chart.js』のようなデータビジュアライゼーションライブラリまで多様なプロジェクトが並ぶ。
その中でも、人の生活を丸ごと変えるポテンシャルを持つプロジェクトとして、ワンストラス氏は『OptiKey』を紹介。目の動きを探知する安価なハードウエアを用いることで、キーボードを使わずに目だけでタイプできるようにするソフトウエアだという。こうしたプロジェクトの一覧は、オープンソースのショーケースで見ることができる。
注目のオープンソースプロジェクトとしては、ホワイトハウスの取り組みが取り上げられた。特別ゲストとして、ホワイトハウスの技術アドバイザーを務めるアルバン・サレヒ(Alvand Salehi)氏が登場。ホワイトハウスは、今年8月にオープンソースを推奨する内容のソースコード政策を発表したばかり。
この政策へのフィードバックを集めるためにGitHubのコメント機能を活用した結果、史上最多の2万件のコメントが集まったという。
サレヒ氏は、ホワイトハウスのオープンソースの例として、「Petitions」(請願)や政府関連のWebサイトへのリアルタイムなトラフィックを表示する「analytics.usa.gov」を挙げた。
また今後、ホワイトハウスでは、手始めにカスタム開発されたコードの20%をオープンソース化していくという。消費者金融保護局(CFPB)など一部の外庁においては、そのすべてのソースコードを公開。従来、各官庁による個別購入で重複していたソフトウエアまわりの費用を削減し、政府内でリソースを共有し合う狙いだ。
独自のプロジェクト管理や追加されたコードレビュー
キーノートの最後には、ワントラス氏からGitHubの各種アップデートや新機能が発表された。主なトピックスは、インテグレーション・GitHub Enterprise・ワークフローの3つ。
昨年リリースされた『Integration Directory』には、150件のアプリケーションが公開されている。今回新たに、希望した一部ユーザにだけ新機能やAPIを公開できる早期アクセスが加わった。
さっそく、Facebookが開発する『GraphQL』のアーリーアクセスに応募できる。
また、GitHub.comでもソースコードにアクセスできる全メンバーに対する2段階認証の義務付けが可能になり、セキュリティ・ポリシーへの対応が容易になった。
さらに加わったのが、GitHub独自のシンプルなプロジェクト管理機能『Projects』だ(チュートリアルは以下の動画参照)。
『Trello』や『Redmine』のようなプロジェクト管理ツールと似たような形で、カードやボードの作成、ドラッグ&ドロップで進行管理できる。
その他、GitHub内のコードレビューを改良した『Reviews』(チュートリアルは以下の動画参照)はすべてのプルリクエストに使え、特定の一行にコメントを残したり、レビュー内容のサマリーを残したりすることでコードレビューのプロセスを効率化する。
上記の主だったアップデートに加えて、今回プロフィールページも改良された。新プロフィールでは、GitHubに初めて登録した日から現在に至るまでのすべての履歴をタイムラインで確認できる。初めてのプルリクエストやオープンソースへの貢献、また組織に参加したタイミングなども分かるようになった。
GitHubでは、今後もユーザからのフィードバックに耳を傾け、それをプロダクトに反映していくべく、2017年頭にGitHub全般のコミュニティプラットフォームを開設する予定だという。ワンストラス氏は、「ソフトウエア開発の未来を一緒につくりましょう」という一言で講演を締めくくった。
取材・文・撮影/三橋ゆか里
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