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エンジニア必須スキル「学び続ける力」は今からでも身に付けられる!『学び方の学び方』要約

スキル

    コードを書く時間は減らさない!

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    ビジネスや世の中のことももっと勉強したい、でもコードを書く時間は減らしたくない!そんなエンジニアに、10分で読める要約版でオススメ書籍を紹介します

    エンジニアにとって「学び続けること」が大事なのは言い尽くされている。テクノロジーの可能性が多様化する今、技術だけでなく、ビジネス、アートといった分野にも学びの幅を広げていかなければならない。

    どんな学びにも応用できるテクニックが紹介されている本書を読んで、「学び続ける力」を身に付けよう。

    学び方の学び方書影

    『学び方の学び方』

    著者:バーバラ・オークレー(著)、オラフ・シーヴェ(著)、宮本喜一(訳)/出版社:アチーブメント出版/定価:1,600円(税別)/出版日:2021年1月30

    Book Review

    最初から「勉強が得意な人」というのはあまり多くないだろう。しかし学生の間はもちろん、社会人になっても勉強の機会は多い。

    本書はタイトルの通り「学び方の学び方」を指南するものであり、どんな学びにも応用できるテクニックが紹介されている。これさえ読めばラテン語でも経済学でも、はたまたダンスのステップでさえ効率的に学ぶことができるようになる。あらゆる学習に通じる優れた教本だ。

    本書の特徴は効率的に記憶したり、モチベーションを維持したりする方法の紹介にとどまらない点だ。神経科学や認知心理学に基づき、「なぜそれが有効なのか」を示す理論も一緒に説明してくれるため、より理解を深めやすい。

    例えば、集中力を高めて作業に没入する方法として、短時間の作業と小休止を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」が紹介されている。実践者も多いとされるテクニックだが、本書ではなぜこれが学習において有効なのか、実践中に脳内でどんなことが起こっているのかを詳細に解説してくれる。理論をしっかりと理解してから取り組むことで、一段と高い学習効果が期待できそうだ。

    不確実性に満ちた現代、変化に対応するには常に学ぶ姿勢が欠かせない。「学び続ける力」はこれからの時代を生き抜く力となるはずだ。「子どもの頃から勉強は大の苦手」という人にこそ本書を手に取っていただきたい。

    パフォーマンスを高める集中法

    学び方の学び方イメージ画像

    気を散らせるものを完全排除

    集中力を高めて効率的に学習に取り組むには、ポモドーロ・テクニックが有効である。

    やり方は簡単だ。まず、スマートフォンなど学習の妨げになるものを身のまわりから排除する。次にタイマーを設定して25分間、作業に没入する。それが終わったら再びタイマーをかけ、1分間休憩する。これを繰り返す。

    ポモドーロ・テクニックは、シンプルながらその有効性が科学的にも検証されている。なお、休憩時間にスマートフォンを使うと、頭脳の働きが効果的に回復しないことも検証済みのため、注意しよう。

    ポモドーロ・テクニックを実践しているときは、1つのことに集中したほうがいい。なぜなら、別の新たな課題に取り掛かるたびに、脳内においてスイッチング・コストというエネルギーが使われるからだ。集中して学習したいときにマルチタスクは禁物である。

    集中モードと拡散モードで脳をフル活用

    脳には、何かに集中しているときの「集中モード」と、そうではない「拡散モード」がある。シャワーを浴びているときや散歩しているときなど、拡散モードのときはとりとめもなく様々な考えが浮かんでいる。

    計算問題などのやり方を知っている問題に取り組んでいるとき、脳は集中モードに入っている。すでに完成しているレールの上を走っているような状態だ。一方、新しいことに取り組んでいるとき、脳は拡散モードに入っている。これは頭の中に新しいレールをつくっている状態と言える。

    それまでわからなかったものが突然理解できるようになるのは、拡散モードに入っている脳が、新たな結びつきを見いだせたときである。拡散モードによって新しい洞察が得られると、今度は集中モードがそれを強化してくれる。

    このように、学習は集中モードと拡散モードを往復する作業なのである。集中力が切れたら、集中モードから拡散モードへの移行のときだ。歯を磨いたり散歩したりして、頭を気ままにリラックスさせよう。

    【必読ポイント!】 脳の仕組みを知って学習を深める

    学習とはニューロンの連鎖を生み出すこと

    何かを学習しているとき、脳の基本的な構成要素であるニューロン同士を結合する作業が行われている。2つのニューロンをつないでいる連接点をシナプスと呼ぶ。新しい知識が頭の中にしっかりと定着するとき、脳内の長期記憶の領域で、ニューロンの小さなグループが相互に新しい連鎖をつくり出している。学ぶ対象がダンスのステップであってもラテン語であってもこれは同じだ。学習済みの内容を考えるときには、すでにできあがっているシナプスを介して、信号がニューロン間を行き来する。ニューロンの結合が多く強力であるほど、学習の成果があがる。

    簡単なことを学習しているとき、つくられる連鎖は短い。学習が複雑になるにつれ、連鎖は長くなり、他のつながりとも絡み合っていく。多様な反復を通じて「完成された」連鎖を得ることが、学習において非常に重要となる。

    積極学習でニューロンの結合を促進

    学習するときは、意識して積極的に学ぶべきだ。なぜなら、自分で問題の答えを導き出そうと考えることが、ニューロン同士の結合を促すからである。ぼんやりと消極的に学んでいると、これは起こらない。

    積極的な学習をしているとき、脳内では「回収活動」が行われている。これはただ目の前の対象を眺めているだけでなく、自分の記憶から情報を引き出し、活用しようとする活動だ。回収する対象が多いほど、そして対象にまつわる範囲が広いほど、ニューロンの結合は広範囲で強化される。長期記憶へと情報を送るための最良の方法は、長期記憶から情報を回収しようとすることである。

    さらに、回収作業にはフィードバック効果もある。記憶から何かを回収しようとするとき、簡単に回収できる内容と、そうでない内容がある。簡単に回収できることはすでによく理解できているが、回収できない内容はまだ学習量が足りない。このフィードバックにより、自分の学習そのものを把握、評価できる。

    「記憶」だけでは不十分

    学習している内容への理解をさらに深めるには、データや事実を記憶するだけでは十分とは言えない。学習している内容と、他に学習中の内容や既知の内容とを積極的に結合させることが重要となる。先述のように、ニューロンの連鎖はできるだけ多くの対象と、できるだけ広い範囲で結合させたほうがいいからだ。

    連鎖を拡大するには、アウトプットが重要な役割を果たす。自分が学習している内容を自分の言葉で説明するのが有効だ。また、様々な対象を交互に学習することで互いの違いが理解でき、適切な連鎖を選び出す訓練ができる。

    さらに、ニューロンの結合には運動が有効なこともわかっている。運動すると、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)が産出される。これはニューロン同士を結合しやすくする突起状の「スパイン」の生成を促す、タンパク質の一種だ。定期的な運動によってBDNFのレベルは上がる。たとえ1回だけの運動でも効果が得られる。

    学びは睡眠中に進む

    学習とは長期記憶の中にニューロンの結合をつくり出す作業である。この結合が完成するのは寝ている間である。したがって、学習するときには一定の間隔を置くことが非常に重要となる。1日に10時間学習するよりも、同じ時間を10日間かけて学習するほうが効果的なのだ。

    睡眠にはもう1つ大切な役割がある。それは脳の代謝の結果産出される、毒性のある生成物を排除することだ。起きている間は脳細胞にせき止められ、毒性のある生成物を完全に排出することができない。ところが睡眠中は脳細胞が収縮するため、すべて洗い流すことができる。仮眠が学習効率を上げるのはこのためである。睡眠時間は8時間確保するべきだと言われている。

    作業記憶と長期記憶

    人の頭の中には「作業記憶」と「長期記憶」がある。作業記憶は長い時間保持することができない。目の前の対象を理解するのが難しいときは、作業記憶が限界に達している状態である。

    作業記憶を最大限活用するには、要点をまとめてシンプルにすること、内容をいくつかの小さな塊にわけること、自分の理解しやすい言葉に置き換えることが有効となる。この作業によって、長期記憶にある既知の知識と新しい知識を結びつけ、効率的に大きな連鎖をつくることができる。

    また、todoリストを作成したり、考えを紙に書き出したりすることで、作業記憶を解放して効率的に作業を進められる。
    現代はどんな情報でも調べればすぐに手に入る。しかし学習においてはある程度の記憶の蓄積がなければ、高いパフォーマンスを得ることは難しい。

    成果をあげるには、頭の中から情報をすばやく簡単に引き出すことができなければならない。そのために長期記憶の領域に強力な連鎖を構築する必要がある。それによって作業記憶が解放され、高いレベルの思考が可能となる。効率的に記憶するには、言葉を利用したり、視覚的にイメージしたりするテクニックが有用だ。

    モチベーションを維持して怠け心に打ち勝つ

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    自律心はなくとも学習は続けられる

    自律心とは、自分自身をコントロールする能力のことである。長期的に学習を進めるには様々な誘惑に打ち勝つことが必要だ。そのためには意志の力だけに任せず、環境を整えることだ。

    例えば勉強する気が起きなくなってしまうなら、一日の勉強が終わった時点で翌日の準備を整えてしまう。誘惑や怠け心を排除し、できるだけ簡単にやるべきことを始められるようにするといい。

    また、学習を習慣にしてしまえば、意志の力に頼る必要はない。まずは自分の悪い習慣を1つ取り上げ、その習慣の引き金になっていることを突き止める。引き金になっているものを取り除くか、それに対する自分の反応を変えれば、悪い習慣をなくすことができる。習慣を変えるには努力と時間を要するが、一度習慣を身につけてしまえば後は簡単だ。

    モチベーションを維持する3つの要素

    長期的に目標に向かって努力を続けるには、モチベーションの維持が欠かせない。人の意欲に影響を与える要素は3つある。

    1つ目は価値だ。人は自分にとって利益がある活動には意欲的に時間を割くことができる。課題を達成したときに、自分自身にごほうびを与えるのも意欲を保つのに有効である。

    2つ目は達成感だ。何かを達成したという感覚は強烈な動機づけとなる。課題が難しすぎるとフラストレーションがたまるが、その場合は課題を分割するなどうまく対処する方法を探そう。誰かに助けを求めるのも方法の1つだ。仮に挫折したとしても、それさえ成長の機会となる。

    3つ目はゴールの設定だ。長期的なゴール、マイルストーンのゴール、プロセスのゴールの設定をおすすめしたい。長期的なゴールは、それを思い浮かべるだけでワクワクできるようなものがよい。それを象徴するような写真や物などを手元に置いておくとなおよいだろう。

    マイルストーンのゴールは、長期的なゴールの道のりにある小さなゴールである。プロセスのゴールはそれをさらに細かくわけたもので、「毎日新しい単語を10個覚える」など、マイルストーンのゴールに向かうためのステップを踏むものを設定する。

    ゴールはいずれもSMART(具体的、計測可能、野心的、現実的、時間制限がある)を満たしていることが望ましい。

    また、意欲を持続させるには仲間とともに学習することも重要だ。

    著者情報

    バーバラ・オークレー

    工学博士。ミシガン州ロチェスターにあるオークランド大学教授で、二〇一八年度ミシガン州優秀教授賞受賞。コーセラ(二〇一二年にアメリカで創立された教育技術の営利団体)創立以来の“イノベーション・インストラクター”である。米国生物・医療工学研究所と電気電子工学研究所のフェローでもある。一九九八年、オークランド大学からシステム工学の博士号を与えられている。世界最大の生体工学の学会、生体臨床医学学会のバイスプレジデントを務めていた。

    オラフ・シーヴェ

    ノルウェーのオスロにある教育テクノロジーのスタートアップ企業、エデュカスの創業者兼CEO。学生のよりよい学び方のソリューションの開発に取り組んでいる。世界最大の教育テクノロジー企業の一社、カフートの教育コンサルタント兼スペシャルアドバイザー。同社の抱えるユーザーは世界中に一〇億人以上を数える。二〇一〇年にノーウェジアン・スクールオブエコノミックスとカリフォルニア大学バークレー校から学士号。二〇一四年には、オックスフォード大学サイードビジネススクールでMBAを極めて優秀な成績で取得している。

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