(株)キャリアデザインセンター『Direct type』プロダクト責任者
前田直哉さん
2008年株式会社キャリアデザインセンターに入社し、転職サイトtypeの企画・運営に13年間従事。UXディレクション、CRMなどを担当し、19年~21年6月まで編集長を務めた。21年4月にITエンジニア向け転職アプリ『Direct type』のプロダクトマネジャーに就任
IT人材不足がたびたびニュースで報じられ、コロナ禍においても「ITエンジニアは超売り手市場」というイメージは強い。
しかし「一概にそうとも言い切れないため注意は必要」と話すのが、転職サイト『type』の企画・運営に13年携わり、現在はITエンジニア向け転職アプリ『Direct type』のPMとして、長年ITエンジニアの転職市場を見てきた前田直哉さんだ。
その言葉の真意は何なのか。そして前田さんが、そのような状況下で転職を成功に導くポイントとして挙げた「職務経歴書作成のコツ」について、「type エンジニア転職フェア ONLINE」内のセミナーから紹介しよう。
(株)キャリアデザインセンター『Direct type』プロダクト責任者
前田直哉さん
2008年株式会社キャリアデザインセンターに入社し、転職サイトtypeの企画・運営に13年間従事。UXディレクション、CRMなどを担当し、19年~21年6月まで編集長を務めた。21年4月にITエンジニア向け転職アプリ『Direct type』のプロダクトマネジャーに就任
なぜ「エンジニア転職は一概に売り手市場とは言い切れない」のか。まずは、ITエンジニアの市況感のデータからその理由をお話しします。
経済産業省が2019年に出した「日本のIT人材の需要と供給に関する調査」を元に試算すると、18年に約100万人だったIT人材は、30年には110万人程度にまで伸びると見込まれています。
ただ企業が求めるIT人材はこれよりも多くて、20年では既に約30万人が不足している。30年には不足数が45万人とさらに深刻化すると言われています。ITエンジニアの不足は中長期的に続くので、これだけ見ると「ITエンジニアは転職のチャンス」と思えるかもしれませんが、実はそう単純ではありません。
というのも、ITエンジニアが活躍する市場は大きく二つに分けられます。一つは従来型のIT市場。受託開発や保守運用など、一般的にエンジニアと聞いてイメージするような業務に関する市場です。もう一つは先端IT市場。こちらはIoTやAI、機械学習などを活用したITサービスの市場です。
従来型IT市場は19年頃までほぼ横ばいでしたが、20年を境に減少に転じており、長期的には人材ニーズが縮小していく予想です。一方で、先端IT市場は順調に伸びていく。現在はまだ従来型IT市場の規模が大きいですが、28年頃には逆転すると見込まれています。つまり、新しい技術を扱えないITエンジニアの転職は厳しくなっていくと言えるでしょう。
転職者の動向も変わってきました。転職サイト『type』に登録している20~30代のITエンジニアの属性を見ると、16~19年頃は経験3年以上の人が6割ほどを占めていました。それが20年以降、経験3年未満の登録者が急速に増え、21年現在は7割を超えてきています。
理由としては、世の中のDX推進でITエンジニアの将来性への期待感が高まっていることが挙げられます。ITエンジニアになりたい人にとっては、コロナ禍でオンラインの学習環境が整い、さらにステイホームで勉強時間を確保しやすいという追い風もあるでしょう。
そうした背景から、経験が浅くても転職を希望するITエンジニアが増えていると考えられます。長い目で見ると、今新たにITエンジニアになりたい人たちがどんどん増えているのは、非常に良いことだと思うのですが、一方で今、企業が求めるのは「即戦力がある経験豊富な人材」なんですね。
経験と技術力があるエンジニアであれば、採用枠が多い上に競争相手が少なく、まさに売り手市場といえます。しかし、転職希望者の多くが経験の浅いITエンジニアになっている今、多くの転職希望者にとっては、採用枠は少ないのに競争相手が多いという状況。一概に「ITエンジニアは転職しやすい」という状況ではまったくないというわけです。
そんな熾烈な競争環境を勝ち抜くには、他の転職者との差別化が必要です。特に転職活動に欠かせない「職務経歴書」は、自分の特徴を伝え、人と差をつけることができるツールですから、活用しない手はないでしょう。
職務経歴書は、単純に「応募時の書類」というわけではありません。最近では、企業も応募を待っているだけではなかなか良い人材に出会えなくなっているため、企業側から転職者の職務経歴書を見てダイレクトにアプローチをすることも増えており、その重要性はますます高まっていると言えます。
ただ「職務経歴書が大事」ということはほとんどの転職希望者が理解しているものの、実際に作るのは大変な作業であるため、多くの人は作成を後回しにしがちです。ネットで見つけたテンプレを活用して「とにかく用意する」だけになってしまうことも。
するとどうしても人と似たような職務経歴書になってしまい、企業にとって魅力的な転職者になることは難しいでしょう。
また転職者一人一人にとっては、唯一無二の職務経歴書であっても、採用担当は仕事上毎日たくさんの書類を見ていますから、細かいところまでじっくり読み込んでくれるとは限りません。そのため、採用担当の状況や心理を踏まえた上で「人と差別化した職務経歴書」を作成することが大切になってきます。
それでは、いつどんな職務経歴書を作れば良いのか。職務経歴書の作成で陥りがちな失敗事例を挙げながら解説していきます。
まず失敗事例の一つ目は、職務経歴書を「応募するときに作る」ことです。これは「急いで書くのは良くない」という単純な話ではありません。
応募された書類を選考する際は、当然採用担当の目も厳しくなります。一方で、転職初期から職務経歴書を用意しておけば、「どこかに良いITエンジニアがいないかな?」とスカウトやダイレクトアプローチをしようとしている企業の目に留まる可能性が高まり、思いがけない企業と出会えることも多い。一般的にスカウトやダイレクトアプローチの際は、応募者をふるい落とす書類選考時より、間口を広くする傾向がありますから、それだけでも可能性はぐんと高まるのです。
次の失敗例は、書類を作成する際に「事実情報を羅列する」ことです。事実関係は、羅列するのではなく、強弱をつけて書くことを意識しましょう。
本やコンテンツなどは、ストーリーに山や谷があるから心に残るし、読む気にもなります。人の心を掴むメカニズムは、本も職務経歴書も基本的に同じ。すべての事実が同じ温度感で淡々と書かれた職務経歴書は読んでいて面白くないし、疲れてしまいます。そのため情報はそのまま羅列するのではなく、いかに編集するかが重要なのです。
具体的に弱めて書いたほうが良いのは、事細かに事実を書き連ねること。特に得たものが少ない業務やプロジェクト、勝負ポイントではない経験はそこまで詳しく書く必要はありません。
逆に強めて書くべきなのは、アピールしたいプロジェクトで果たした役割や具体事例、その業務での創意工夫、そして自分が何を学び、経験したのかということ。職務経歴書を読んだ採用担当が応募者の人物像を具体的にイメージできるかどうかは、事実情報にプラスしてどれだけ熱意や人となりを込められるかにかかっています。
最後のよくある失敗例が「自分がアピールしたいことを書く」ことです。
「ん?それを書かなくてどうするの?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、巷の職務経歴書は自己アピールに溢れていますから、差別化するにはさらにもう一段掘り下げる必要があるわけです。
といっても難しく考える必要はありません。シンプルに「アピールしたいこと」を「(採用担当が)アピールしてほしいこと」に置き換えて書いてみてください。
多くのノウハウ本には、プロジェクトでの役割や貢献したことを書くように記述があります。でも、それをそのまま書くだけではもったいない。採用担当が知りたいのは、貢献が伝わる具体的なエピソードや課題に直面したときに解決したプロセスなど、もっと生々しい話なんです。
また、成果として「表彰」とか「年間1位」といったトピックスを挙げるなら、なぜその成果を出せたのか、そこにどんな創意工夫があったのかも合わせて書くといいでしょう。
技術スキルに関しては、どれくらい使えるのかの習熟度も必要。勉強していることなら、勉強をきっかけに起こした具体的なアクション、たとえば何かモノを作ったとか、そこまで具体的に書くと、熱意や努力が伝わりやすいです。
職務経歴書は、転職活動の優秀な営業ツールのようなものです。良い職務経歴書を作れば、企業側からアプローチも届くようになり、転職の成功率は高まります。
作るのは大変ですがメリットは非常に多いので、ぜひこれらのポイントを踏まえて、後回しにせず「採用担当の心を掴める最強の職務経歴書」を作ってみてください。
皆さんが最強の職務経歴書を作り、転職活動を成功させて、充実した働き方を実現させることを願っています。
文/古屋 江美子
ITエンジニアのためのスカウト型転職アプリ【Direct type】
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サクッと作って理想の企業からのスカウトを待ってみましょう。
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