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米マイクロソフトの日本人エンジニアで元Dellの採用面接官が語る、米国流Aクラス人材の見極め方

ITニュース

    2014年8月16日、はてなブックマークの人気エントリに「マイクロソフトで働き始めて半年経ちましたんで雑感まとめ。」というブログ記事が載った。

    これを書いたのは、今年1月から米マイクロソフト本社のSkypeチームでエンジニアとして働いている渡辺毅氏。

    渡辺氏は福岡の高校を卒業後、アメリカの大学に入学し、その後そのまま現地で就職した。現在はマイクロソフトにいるが、それ以前にはDellやゲーム会社などでの勤務を経験しており、そこではチームリーダーとして採用面接にも携わった経験があるという。

    プロフィール画像

    Microsoft Corporation Skypeチーム
    渡辺 毅氏

    福岡県福岡市生まれ。高校卒業後、アメリカに語学留学。オハイオで国際関係学・平和研究専攻。ニューハンプシャー州の大学院でコンピュータサイエンスで修士課程を修了。ゲーム会社やDellでの勤務を経て、2014年1月から米マイクロソフトのSkypeチームで.NET関連のプログラマーとして活躍中

    シリコンバレー流の言い回しで、卓越した力量を持つ人のことを「Aクラス」と言うが、アメリカでは「Aクラスの人材はAクラスを採用し、Bクラスの人材はCクラスを採用する」といわれる。それほど、Aクラス人材の確保は重要なのである。

    Dellで採用面接を行っていた渡辺氏は、これまで多くのAクラス人材に出会ってきた。そんな経験豊富な渡辺氏にSkypeを通じて、アメリカで求められるAクラス人材の共通点を尋ねると次の2つを挙げてくれた。

    求められるのは高いビジネス意識と自分自身への理解

    渡辺氏が考える「2つのポイント」とは以下だ。

    【1】ビジネス意識が高い
    【2】自分の限界を知っている

    【1】ビジネス意識が高いとは、いちエンジニア視点ではなく、もっと上のレイヤーの視点、つまり経営者的視点を持ち合わせていることだと渡辺氏は話す。

    「自分でやりたいことを持っているのはもちろんのこと、それをやることで会社にどのような利益をもたらせるか、を理解している人がアメリカでは欲しがられる人材です」

    自分のキャパシティを越える前に対処できるかどうかが重要

    From spaghettipie
    自分のキャパシティを越える前に対処できるかどうかが重要

    また、【2】自分の限界を知っていることは、チームでの仕事を円滑に進める上で重宝されるスキルだという。

    「自分の限界を知っているということは、チームへの仕事の振り分けができるということ。自分がタスクを抱えすぎて、開発業務が回らなくなるという事態を防ぐことができます」

    Aクラス人材に求められるこれら2つのポイント、採用ではどのように見抜くのだろうか。

    ビジネス意識の高さを測るための履歴書フォーマット

    【1】のビジネス意識が高いかどうかは、履歴書の段階である程度推察できるのだと渡辺氏は言う。

    「アメリカのレジュメでは、1ページ目の一番上に『Objective』、直訳すると『目的』を記入する欄があり、次に職歴、その後学歴と続きます。名前や職務経歴を書く欄よりも上にあることが示すように、ここがとても重要です。自分が志望している企業のそのポジションに就いた時に、その立場を鑑みた上で何をしたいのかがしっかり書かれていないと、履歴書の『Objective』より後の部分を読んですらもらえない可能性が高いです」

     『Objective』が上部にあるアメリカの履歴書

    From The CV Inn
    『Objective』が上部にあるアメリカの履歴書

    現在勤務する米マイクロソフトの採用試験を受ける際、渡辺氏自身も『Objective』についてはかなりの気を遣って記載したという。また、採用担当者側に立っていたときにもそこを重視して見ていたと話す。

    「私がDellで採用を担当していた時にも、その人のやりたいことと企業の方向性が同じ方向を向いているかどうかをとても重視していましたね。優秀な人のレジュメには、その会社を理解した上で、自分がどのように貢献できるかを含めて書いてあるのが見て取れました」

    また、【2】自分の限界を知っていることについては、対面式の面接で判断すると渡辺氏は話す。

    「面接の時、必ず1つ難問が出題されます。それを答えられる、とても優秀な人ももちろんいますが、答えられない人がほとんどです。そんな時重要なのは、取り組む姿勢を見せることです」

    渡辺氏いわく、面接官が見たいのはその人が困難に直面した時の対応力だという。

    「この場合、面接官は即答力を求めていません。難問なので、面接官も途中でヒントを出してくれます。その時に自分がどこまで理解できていて、どこが分からないのか、何が分かれば解けるのか、を面接官に説明できることが重要です。分からない問題に対して、あきらめてしまうのではなく、どのように努力するのか、どこまでならできるのかという自分自身への理解度を示せることが大事なのです」

    コミュニケーションで求められるのは英語力より我の強さ

    海外での就職、特にマイクロソフトほどのグローバル企業での勤務というと、ネイティブレベルの英会話能力が必要になりそうなものだが、必ずしもそうではないと渡辺氏は言う。

    「MSは特に、国際企業ですから英語といってもいろんなイントネーションの英語が共存している状況です。私の英語もきっと日本語訛りの英語なんでしょう。車の運転に例えると、最初は下手でも免許を取れば、運転をして次第に上手になっていきます。英語の場合も、上手ではなくてもどんどん使うことで上達できます。我々エンジニアには『プログラミング言語』という共通言語があるので、英語が下手でも仕事の会話の大部分は理解できます。まずは恐れずに話してみるべきです」

    渡辺氏は数社での面接官としての経験から、コミュニケーションにおいて、英語力よりも重要なことがあると考えている。

    「いい意味で“我が強い”人が求められていると思いますね。私が働いているSkypeチームに日本人が1人いますが、彼も自分の意見をはっきりというタイプ。マイクロソフトのみならず、こちらの企業はイノベーションを生むためにボトムアップの提案を欲しています。会社のためになる提案を臆せず主張できる人、そのような人がこちらでは求められています」

    取材・文/佐藤健太(編集部)

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