情報発信は個人ができる最も簡単なキャリア形成だ~5周年を迎えたIncrementsに聞く「アウトプットの効能」
10月20日、日本最大級の情報共有コミュティサービス『Qiita』を運営するIncrementsが、創立5周年を記念した記者発表会を行った。
当日はCEOの海野弘成氏とプロダクトマネージャを務める及川卓也氏から、『Qiita』と社内共有ツール『Qiita:Team』の歩みが語られ、『Qiita』はすでに月間250万人ものユーザーが利用していることなどが発表された。現在は毎日約200件の投稿が集まっており、累計で17万件以上の技術情報が蓄積されているという(リリースはこちら)。
『Qiita』の勢いが象徴しているように、近年は自身の開発経験や調べた技術情報をネット上で情報発信するエンジニアが増えているのは間違いない。しかし、頻繁に情報発信をしているエンジニアとなると、人数はそれほど多くはないであろう。一般的なエンジニアが発信者側にまわるのは未だ敷居が高い。
『Qiita:Team』のようなツールを使って社内で情報共有することも、活発にかつ継続的に行えているという開発チームはまだまだ少ないのではないだろうか。
そこで弊誌では、記者発表を終えた海野氏と及川氏から、「エンジニア個々人が情報発信をしていくことのメリット」を聞いた。タスクや業務報告以外の発信を増やすことで、何が変わるのか?
『Qiita』は読むだけでなく「参加すること」もできるメディア
まだ『Qiita』の詳しい使い方を知らないという人に向けて、まずは記者発表会で語られた現況を記しておこう。
『Qiita』は開発情報に特化した情報共有コミュニティであり、個々が持っている知見を共有するだけではなく、情報に対して全ユーザーが追加編集することを可能にしている。古い技術情報や間違った情報を「コミュニティで解消していくことができる」(及川氏)ことが売りの一つだ。
初心者が『読んで良かった基礎知識の入門書』といったビギナー向けの情報から、ベテランエンジニアによるノウハウまで、その情報レベル・濃度は多岐にわたっている。『Qiita』のプロダクトマネージャを務める及川氏は、同サービスの強みを以下のように語った。
「Qiitaができるまで、プログラマーが技術情報を発信するスタンダードなプラットフォームが日本にはありませんでした。それが今や、技術的なコンテンツはQiitaに書いた方がいい、という流れまでできるほどになっています。今後は、より良い投稿が流通・拡散している状態を目指したいと思っています」(及川氏)
コードを公開することができない人も「経験」は発信できる
また、CEOの海野氏は、『Qiita』や『Qiita:Team』を普及させていくことが「共有文化の発展」につながると語る。
「プログラムは一人で書くものでなく、今やチームで作るもの、というのが定説になっています。Qiitaも同様に、ノウハウを一人が発信するだけではなく、コミュニティを通してコンテンツを成長させていく。そのような文化を、QiitaやQiita:Teamで醸成していきたいですね」(海野氏)
さて、ここからが追加取材の内容だ。及川氏は、こういった共有・発信文化の発展が、キャリア形成にも不可欠になってくるだろうと予想する。
「プログラマーの転職市場を見てみると、個人のGitHubが外部に評価される、という流れはある程度一般的になっています。しかしそうはいっても、GitHubのアカウントすら持っていない人もまだまだ多いのが現状。やはり、自分の技術スキルに自信がないだとか、コードの公開を会社に許してもらえない、といった理由が多いようです。
ただしそういったコードを公表できない事情があったとしても、『何かエラーがあった時に自分が解決した』という経験をテキスト情報を出せる人ならたくさんいます。そのため、今では、ヘッドハンターがGitHubだけではなくてQiitaの投稿を見て声をかけてくるケースもあるそうです。
つまり、コードを公表せずとも、テキストでの情報発信を通じて個人のプレゼンスを上げることもできるということだと思います」(及川氏)
まずは、カジュアルな発信から始めてみよう
とはいえ、ネット上にテキストを投稿するのも、経験がない者にとってはハードルの高い行為であることに変わりはない。実際に、どういったきっかけでテキスト投稿を始める人が多いのだろうか。
CEOの海野氏は、「初心者が投稿するきっかけ」を以下のように語ってくれた。
「Qiitaに寄せられた投稿を見てみると、質の高い投稿もあれば、初心者向けの簡単な投稿も多いことに気付きます。そういった初心者向けの投稿で、たくさんのユーザーに求められて、評価されているものもある。すると、『自分でもこういう内容だったら書けるかな』と思ってテキストを書き始めてみる、という人が多いようですね」(海野氏)
また、プロダクトマネージャの及川氏は、「投稿できない」という人の中には「何を書けばいいのか分からない」と思っている部分が大きいのではないかと予想する。そういったユーザーに向けて、『Qiita』では定期的に「お題」を提供している。
「主にシーズン的なお題を出すことが多いです。例えば、引っ越しの多い時期には、『Windowsを使っていたけどMacに変えたときの経験談』、『今までAWSだったのを、Googleクラウドに移行した時に苦労したこと』といった、環境移行のネタを書いてみませんか?と提案していました」(及川氏)
さらに及川氏は、お題があっても経験に自信がない場合であれば、クローズドな環境での発信から始めてみては?と提案してくれた。
「Qiitaに限らず、情報発信をしたことがない人におすすめなのが、リアルなコミュニティや勉強会に参加してみること。そうするといずれ必ず、『LT募集』の声がかかります。そこでまず、思い切って手を挙げてしまうんです。間違えても失敗しても、それをのちのち笑い話にする、くらいの軽い気持ちで始めてみてください。
あと、これは私の経験ですが、スキルを高めたければ、どこかに情報を発信することが一番の近道だと思うんです。そこで初めて自分の間違えを知ったり、第三者からフィードバックを得たりできる。そうやって、自分を成長させていくんです」(及川氏)
転職市場に目を移すと、最近はリファラル(縁故)採用に注目が集まり始めている。リアルかネットかはさておき、「知っている人」を採用した方が、効率の面でも入社後のカルチャーフィットの面でも良いという企業が増えているためだ。
そこで大事になるのが、自身がどんな経験を積んでいて、どんな技術分野に興味があるのかetc.を伝えていく作業になるわけだ。キャリアを磨いていきたいエンジニアは、思い切ってはじめの一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影/大室倫子(編集部)
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