【文中に登場する調査データ概要】
■ サンプル数: 286件。各社/各年代のサンプルをそれぞれ約10件-15件抽出
■ サンプル収集期間: 2013年1月~2月
■ 対象: 現職もしくは1年以内に離職したITエンジニア/プロジェクトマネジャー
■ データ元: アイム・ファクトリー調べ ※年収データはあくまで一つの指標としてご利用ください。 ※この調査は、年収によって企業の優劣を決めるものではありません。
【年代別調査】IT・インターネット業界のエンジニア平均年収:大手SNSだと30代で800-900万円のところも
働く上で気になる指標の一つである年収。ネット業界の平均給与紹介は時折見かけるが、業界と職種どちらも絞った給与情報を見かける機会は少ないのではないだろうか。
そこで、ITエンジニア特化の転職エージェントである『エンジニア・ファクトリー』を運営するアイム・ファクトリーに調査協力をしてもらい、エンジニア職の年収を【業界×職種】軸で分析してみた。
業界別では大手SIerの安定感が目立つ:30代後半で約800万円
まずは業界別に見ていこう。今回は「大手コンテンツ企業」、「ソーシャル・アプリ・プロバイダー(以下、SAP)」、「大手SI企業」という3つの業界を調査対象とした。
その結果が以下の表だ。
上場SI企業は安定的な年収カーブを描き、35-40歳の平均年収は791万円という結果となった。大手コンテンツ企業(SNS系などのプラットフォーム会社5社が含まれる)も、上場SI企業と似たような上昇カーブを描いている。
SAPに関しては、35歳から40歳前後のエンジニアは役職・ポジションによって年収のバラツキが散見され、それに伴い年収の平均が若干下がるという結果に。活躍する世代が若いため、結果として35歳以上のエンジニアが少ないという実状も浮き彫りになった。
平均年収は業界動向の変化で上下動するという点を見逃してはいけないが、現時点で中長期的に給与を計算しやすいのは、この3業界の中だと大手SI企業だといえるだろう。
会社別エンジニア平均年収トップは某SNS企業:35-40歳で862万円
次に、各業界を代表するような大手企業の平均年収(以下の表)を見てみよう。
先に紹介した「大手コンテンツ企業」群には、大手SNS(1)(2)とポータルサイト、EC大手、ソーシャル系ブログ企業と、国内のインターネット業界最大手の5社が名を連ねる。この中で最も高い平均年収だったのが、現在六本木にオフィスを構える「SNS大手(1)」社となった。
ちなみに「SNS大手(1)」社は、今回の調査ではSAPやSI企業も含め、すべての年代で平均年収トップとなった。
そのほか、上記のデータだけでは見えない、調査の過程で明らかになった傾向を3つ紹介しよう。
【1】SAP系は、同年齢でもエンジニアのポジションによって年収の開きが50万~100万あるのが目立つ(人によって年収の開きが相対的に大きい)。
【2】大手ポータルサイトからの転職組では、100-150万円程度UPで成功しているケースが目立った(大手ポータルサイトの年収が、相対的に転職先となるほかの大手Web企業群より低いともいえる)。
【3】SIerは、役職によって年収に50万~100万の開きが出ている。主任級でも残業代の有無やプロジェクトにより年収が変動する傾向があるため、評価・実績と年収が直結していないケースがある。
年収アップ転職を考えるなら、タイミングは20代後半がベスト?
上記の定量的なデータのみでは推し量れないエンジニアの年収や転職の傾向を、アイム・ファクトリーの取締役・袖山亜希子さんに聞いたところ、年収アップや理想の企業への転職に成功する人と、失敗する人では明確な違いがあるようだ。
■技術面
・ 技術者として自身の技術にトレンドもうまく加味している(例:Rubyの最新動向に敏感・仕事以外のところでも技術研磨をしているetc.)
・ 自分の強みを理解し、やりたいことよりできることをアピール。評価してくれる会社を選択できる
・ インフラもアプリ開発も両面できる
・ 三度の飯よりコーディング命、技術が好きである
■人間性
・ 明るいオタク(自己PRや熱意は必須)
・ 自身の年収が低いという事実に直面しても「石の上にも3年」で頑張った人
■技術面
・ マネジメントと言いながら工数管理のみで開発から離れてしまった人
・ コーディングをやっていない(忘れた)人
■人間性
・ 夢や希望が先に来て、自身の技術でお金をもらうと割り切れない人
・ 「ソシャゲが何となく嫌い」や「すぐ業界がダメになりそう」などというネガティブな考え方で業界トレンドの波に乗れず、自身の転職先を限定する人
・ 安定の定義が「退職金」だったり「社員数が多いこと」だと思っている人
こうしてみると、先端的かつ汎用的な技術力や柔軟性がありつつも、物事を突き詰めるタイプの人が転職で成功しやすい傾向にあることが窺える。
「転職回数が不可抗力で多くなってしまっても、技術力があり前向きな方であれば、外部的要因と今後のキャリアを明確に伝えることで年収アップ転職を可能にしているケースは多いです」(袖山さん)
また、転職時だけでなく、入社後にどうなっているかも気になるところだ。
「入社後も年収を上げていける人の傾向としては、脂の乗る20代後半に転職をし、実績を上げていくパターンが多いです。30代中盤になると年収の上昇率は緩やかな傾向、もしくはステイの方が多い傾向にあります。背景としては、結婚や子どもができたことによるワークライフバランスを優先としたい転職理由が多く、今まで忙し過ぎたのでお金よりバランス重視ですという人も増えました。もちろん、スピード感のある業界なので、会社の将来性への不安など安定を求める転職理由も多くなる世代と思われます」(袖山さん)
収入にこだわって転職するなら、20代後半がベターということか。転職経験のない人も、1度目の転職を考え始めるのが28歳くらいといえるのかもしれない。
なお、今回の調査に協力してくれたアイム・ファクトリーの『エンジニア・ファクトリー』では、「サービスの企画から携わりたい」、「もっと上流から経験を積みたい」などなど、さまざまな志向のエンジニアを転職支援してきた実績が多いそうだ。
「ピカピカのキャリアを持つITエンジニアの転職が成功するのは当たり前です。エージェントとしてその方の技術者としての魅力をいかに伝えるかが重要です。転職活動を通じて多様なキャリアとチャンスを用意できることが存在価値だと思っています」(袖山さん)
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取材・文/梅木雄平
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