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セールスエンジニアってどんな仕事? エンジニアからキャリアチェンジする魅力を経験者が解説

転職

    「IT技術を勉強しても、エンジニアならあたりまえだとみなされる」
    「どれだけ働いても、プロジェクトが無事サービスインするまで評価されない」
    これが、「ふつうのエンジニア」の方々が持つ悩みでしょう。日々進歩するIT技術に追いつくには、業務時間外も勉強しないといけない。それなのに、そのがんばりは長期間評価されず、給料に反映されにくい……。努力が報われないことにもどかしさを感じているのではないでしょうか。

    そう語るのは、『ふつうのエンジニアは「営業」でこそ活躍する~セールスエンジニアとして最短で評価される方法』(技術評論社)を上梓した時光さや香さんだ。

    時光さんも、かつては開発プロジェクトを渡り歩く「ふつうのエンジニア」だった一人。

    エンジニアとして目立った成果を出せず、フラストレーションを感じていたときに「セールスエンジニア職」に転職したことでキャリアが開けていったという。

    時光さんが考える、エンジニアが「セールスエンジニア」にキャリアチェンジする魅力について、著書より紹介しよう。

    働く前に知っておきたいセールスエンジニアの原則

    本書では「セールスエンジニア」で統一していますが、企業によっては以下のような名前で呼ばれることもあります。

    ■プリセールス
    ■テクニカルセールス
    ■ソリューションエンジニア
    ■ソリューションアーキテクト
    ■カスタマーエンジニア
    ■技術営業

    このセールスエンジニアという職業は名前のとおり、「営業(セールス)」と「エンジニア」両方の役割を持って働くことになります。それぞれ見てみましょう。

    売上に責任を持つ「営業」の立場になる

    セールスエンジニアは、エンジニアと何が違うのでしょうか?

    もっとも大きな違いは仕事の捉え方です。エンジニアのときは営業が受注してきたプロジェクトをもとにシステムを開発する、という形で仕事を遂行していたことでしょう。しかし、セールスエンジニアはただ待っているだけで商談数が増えるわけではありません。

    商談数を増やすには、セールスエンジニア自身の得意な技術エリアや業務分野を、マネージャーや営業に理解してもらうことが大事です。得意分野を理解したマネージャーや営業が、「この人に○○の商談をアサイン(任命)すれば、クローズできる」と思ってもらうことで、商談を担当します。

    つまり、商談アサインのためにエンジニア時代より、自身が評価される頻度は高まると考えるといいでしょう。

    セールスエンジニアは自ら新規に売上を取りにいくマインドセットが重要です。そして、商談中は「お客様に必要な技術支援をし、営業が売り上げられるようにするのだ」と考えながら働くことで、結果的に自身の評価を高めて、商談数を増やすことにつながります。

    セールスエンジニア

    また、セールスエンジニアは評価に売上が含まれることもエンジニアとの大きな違いです。担当している製品・サービスが売れれば、次のメリットが生まれます。

    ■お給料やボーナスが増えて経済的なリターンが大きくなる
    ■余裕ができて時間の自由度が高くなる

    ただし、「売上が評価に含まれる」とは担当している製品が売れなければ「あの人は組織に貢献していない」と周囲に思われてしまうかもしれません。そのような状態で働き続けるのは辛いですね。

    とはいっても、セールスエンジニア個人は売上のみが評価軸でないことが多いので、営業ほどには売上について厳しく言われません。営業(特に外資系)は売り上げればお給料もうなぎのぼりのハイリスク・ハイリターンとすれば、セールスエンジニアはミドルリスク・ミドルリターンと言えるでしょう。

    提案する技術に責任を持つ「エンジニア」の立場になる

    逆に、セールスエンジニアが営業と大きく違うのは提案する技術に責任を持つことです。

    セールスエンジニアがお客様に技術を提案するには、
    ■提案している製品が開発元でサポートされていて、実際に稼働する
    ■パフォーマンスなどで問題が生じない
    ■実際に実装できる

    などの実現可能性を技術的に検証する必要があります。

    そのため、セールエンジニアには技術的な知識・スキルが必要になります。もともとエンジニアだった方はこれまでの知識・スキルを存分に活かすことで、営業活動に必要な働きができるでしょう。 

    しかし、万が一、お客様の希望内容は提案する技術で実現できないのに、「実現できる」と言ってしまえば、営業担当者とともに責任を問われます。

    その場合、
    ■お客様に謝罪する
    ■開発元にかけあって実現を交渉する
    ■交渉できない場合は、運用での回避策を考えてお客様に承諾してもらう

    といったことをしなければなりません。

    このとき、「いざとなったら、自社の開発元やサービスチームに対応してもらえばいい」とかんたんに考えるのはやめましょう。お客様の希望内容を実現するために、開発元やサービスチームが特別対応するのは自社のコストを増やすことにつながります。また、もともとできないことをできるように対応するのは、かんたんではありません。安請け合いすれば社内のメンバーからも信用を失うことも忘れないでください。

    そのほか、セールスエンジニアとエンジニア、営業の違いは以下の表にまとめられます。

    セールスエンジニア

    「セールスエンジニア」のフレームワーク

    セールスエンジニアとして成功するためには努力するポイントをおさえることが大切です。ただ仕事場に行って言われたことをやるだけでは成果をあげることはできません。

    仕事をするうえで、「だれと」「何を」「どのように」成し遂げなければいけないのかを理解して動くことで、成果をあげることができます。

    この節では、以下3点の努力ポイントをおさえてセールスエンジニアのフレームワークを理解しましょう。

    ■セールスエンジニアはなにで評価されるのか?(KPI)
    ■セールスエンジニアはどのように働いているのか?(働き方)
    ■セールスエンジニアはだれと働くのか?(関係者)

    KPI―なにで評価されるのか?

    さきほど「セールスエンジニア個人は売上のみが評価軸でないことが多い」と述べました。それでは、セールスエンジニアはほかに何で評価される可能性があるのでしょうか? 

    企業によりけりですが、おもに「売上」「顧客満足度」「マーケティング活動」「教育活動」が挙げられます。

    「売上や顧客満足度はともかく、マーケティングや教育もセールスエンジニアの仕事なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

    たしかに「マーケティング担当者」や「教育担当者」は別にいることも多いですが、各担当者は製品の中身まで詳細に把握しているわけではありません。そこで、セールスエンジニアが活動に関わることで、以下のようなメリットが生まれ、単年度のみではない中長期的な売上が見込めます。

    ■マーケティング活動:製品でできることが伝わりやすくなり、製品の信頼度がアップする
    ■教育活動:チームメンバーのスキルが底上げされる

    企業によっては売上(や顧客満足度)だけで、評価されるしくみになっているところもあります。その場合でも、自分でマーケティング活動に取り組んだり、周りへ教育活動したりする手段を持っておくことをおすすめします。

    マーケティング活動は製品や自分の認知度・信頼度がアップして商談もクローズしやすくなりますし、人を育てることは自分の学びにもつながり、今後の自分のワークロードも調整しやすくなってきます。

    それぞれの評価軸をくわしく見ていきましょう。

    売上

    セールスエンジニアは、個人的な売上だけではなくチームベースの売上をセールスエンジニアのお給料の指標にしている場合も多いです。チームの単位は日本国内で製品ごとに1チーム、としている企業もありますし、アジア地域で製品ごとに1チーム、としている企業もあります。

    チームベースの売上を評価指標にしている企業では、以下のような特徴が見られます。

    ■チーム内での情報共有が必須になり、勉強会などが開催される
    ■助けあう文化ができやすくなり、商談のクローズ率が高まる
    ■評価はチーム内で分割されるため、売り上げたコミッションすべてが自分だけに還元されない

    顧客満足度

    セールスエンジニアは、お客様がビジネス上で何らかの課題(売上向上やコスト削減など)を抱えているとき、自社の製品・サービスで解決できる部分を見つけ出し、提案します。

    お客様の課題をうまくヒヤリングして、自社の製品・サービスで課題を解決できれば、顧客の満足度もアップしてサービスを利用し続けてもらえるでしょう。

    マーケティング活動

    マーケティング活動は、担当製品を市場で宣伝して、営業担当者あるいはセールスエンジニアに問い合わせが来るようにする活動です。世の中で製品の認知度を高めるために、以下のような活動をします。

    セールスエンジニア
    教育活動

    お客様に製品を購入していただくために、社内の営業自身が製品知識を持っていることは必須です。また購入後のサービスがうまくできることも大事です。

    そこで、セールスエンジニアは営業やサービスチームを対象に、担当製品の学習コンテンツや研修・セミナーを開催して支援します。たとえば、以下のような対象者にあわせた学習コンテンツを開発します。

    セールスエンジニア

    働き方―どのように働いているのか?

    「商談対応(売上+顧客満足度)」「マーケティング」「教育」の3つの活動について、どのように時間を配分すればいいでしょうか?

    セールスエンジニアの状況(得意・不得意など)でも変わりますが、おもに担当製品が新製品か既製品かで時間配分は変わってきます。上司が理解のある方であれば、ある程度柔軟に時間配分を任せてくれるので、適切な時間配分を学びましょう。

    下図は新製品の展開を任せられた場合と既製品担当をしている場合の時間配分例です。なお、図中の「プリセールス活動」は契約までの提案活動、「ポストセールス活動」は契約後のフォロー活動を指します。

    セールスエンジニア
    新製品を担当する場合

    新製品の場合、商談対応よりもマーケティングや教育に時間を割くことになります。なぜなら新製品は、機能やその製品でできることを把握するために専門的な技術知識が必要で、マーケティング担当者や教育担当者のみで活動することが難しいからです。

    そのため、セールスエンジニアが主になってマーケティング活動や教育活動をしなければなりません。

    たとえば、マーケティング部門から製品の優位性や製品解説のコンテンツレビューを依頼されたり、製品デモを見せたり、新製品なので自分でイチから教育コースのコンテンツを作成したり、教育コースを開催したりする必要もあります。

    なお、新製品から既製品になるまでの期間は、おおよそ短くて3ヶ月、長くて1年程度です。

    既製品を担当する場合

    既製品はすでにマーケティング担当者や教育担当者にノウハウが蓄積されているので、商談対応に時間を割きます。

    既製品のマーケティング活動は、商談を受注するルートを増やすためにパートナー向けの技術情報を提供したり、登壇活動をしたりすることが挙げられます。

    ちなみに、セミナー登壇はマーケティング部門から依頼されます。マーケティング部門は競合製品との差別化のためにセミナーを企画しますが、マーケティング部門の社員が製品詳細を話せるケースは多くありません。そこで、製品詳細説明をするときはセールスエンジニアが登壇する必要があります。

    このようなマーケティングセミナーは直接商談の成約に結びつくことは少ないため、商談ではなく「マーケティング活動」の仕事です。

    また、既存製品の場合は、リリース対応などの「製品バージョンアップ」の説明会で講師をすることもあります。これは、サービスチームに対しての「教育活動」になりますし、リリースされた機能が魅力的であったり品質改善したりするものであれば、競合との差別化につながりますので「マーケティング活動」と言えるでしょう。

    セールスエンジニア

    既製品ではトラブル防止のための「教育活動」も増えます。既製品は新規の商談に比べて、導入件数やユースケースも増え、本来の使い方ではない使い方をされたり、トラブルが発生したりすることもでてきます。トラブルが発生すると自社の営業人員やサービス人員が対応するので、コストを下げるためにはトラブル対策の教育が重要です。

    社内関係者―だれと働くのか?

    お客様の課題を解決するためには、たくさんの人の力が必要となります。その中の1人であるセールスエンジニアは、提案する担当製品がホントに解決策となるのか、たくさんの人と確認しながら提案をまとめていく立場です。そのため、セールスエンジニアは1つの仕事において、下図のように多くの人間とより密に関わります。

    セールスエンジニア

    あらかじめ、だれとどのように働くかをおさえると、適切なサポートをしやすくなったり、困ったとき的確なアドバイスをくれる相談先を選びやすくなったりします。結果的に多くの商談を受注できますし、クローズ率もアップできる関係性を築けるでしょう。

    営業

    本記事冒頭で説明したとおり、セールスエンジニアの商談は営業から持ちかけられることが多いです。たとえば、お客様からかんたんにやりたいことや困りごとを聞いた営業が「お客様が○○で困っているらしいが、それはあなたが担当している製品で解決できないか」という相談をセールスエンジニアに持ちかけることでセールスエンジニアの仕事がはじまります。

    よって、営業からは相談しやすい、声をかけやすい、と思われる関係性を築くことが重要です(詳細は本書参照)。

    ソリューションアーキテクト

    お客様が困っている内容は、自分が担当している製品だけでは解決できそうにない場合、セールスエンジニアの中でもソリューションアーキテクトと呼ばれる人と製品の組み合わせを考えることがあります。たとえば、以下のような製品の組み合わせが考えられるでしょう。

    ■データベースとデータ統合ツール
    ■データ統合ツールとマーケティングツール
    ■構成管理ツールとデータ統合ツール

     
    また、組み合わせた製品をお客様に提案するために、お客様にあわせたシステム構成図をソリューションアーキテクトと作ります。

    サービスの提供をしているメンバー/サービスを提供するパートナー会社

    解決策となる製品を提案しただけで、お客様は「はい、わかりました」と受け入れてくれるわけではありません。当然、「ホントに実現できるの?」と疑問に思うでしょう。

    そのときに「どうやって実現するのか」を示すために、机上で検証したり、デモや実際に近い環境で検証したりします。

    検証の結果、追加の有償サービスが必要だと判明すれば、サービスを提供するメンバーやパートナー会社に手助けを求めます。その場合はサービス提案の営業担当者と一緒に働くこともあります。

    研修チーム/研修サービスの営業担当者

    お客様が購入した後に製品をうまく使えるように、社内のセールスチームやサービスを提供するチームに製品知識を伝えます。その際に、社内の研修チームメンバーと働きます。さらに、お客様が研修を必要とする場合はお客様向けの研修サービスの営業担当者と働くこともあります。

    サポートチーム/製品開発チーム

    サポートチームは、サポート品質を改善するとき、製品開発チームは製品品質を向上させるときに関わりがあります。

    たとえば、サポートチームは購入後の製品問い合わせ対応をするので、「お客様が担当製品にどんな問い合わせをしてきたか?」を知りたければサポートチームに確認をとります。また、担当製品に重要な問題が発生してしまった場合は、サポートチームに迅速な対応を依頼したり、一緒に問題を解決したりします。

    製品開発チームとは、お客様が求める機能が実装されていない場合にVoC(お客様の声)をインプットして製品のアップデートを依頼したり、製品新機能の情報をもらったりするなどの関わりがあります。

    マーケティングチーム

    担当製品のマーケティング活動をするときはマーケティングチームのメンバーと一緒に働きます。社外向けのセミナーで話す内容やタイトルを相談したり、製品のブランドメッセージを一緒に考えたりもします。セミナーで配布するノベルティの購入相談をすることもあります。

    このように「セールスエンジニア」はさまざまな人たちと協力しながら、会社の売上向上とコストの削減に貢献する職業です。

    本書では、セールスエンジニアが最短で成果を出すために必要なソフトスキルをくわしく解説しています。それらを参考に、ぜひあなたが「今」より活躍できるキャリアへの一歩をふみだしましょう!

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