採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
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採用担当者はどこを見ている?
エンジニア転職「成功の仕様書」売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
「専門領域を磨いて、プロフェッショナルとして活躍したい。そのために、大手企業を辞める決断をしました」
そう話すのは、社会人4年目ながら、CRM領域において世界トップクラスの実績を持つアーカス・ジャパンで数々のプロジェクトを任されているエンジニアの浦田隼佑さん(26歳)だ。
浦田さんは全国に支社を持つ大手企業で幅広い業務に携わりながらも、将来のキャリアビジョンが描けず、伸び悩みを感じていた。
そこで約1年前に社員数30名にも満たないベンチャー企業である同社に転職し、「新しいことをどんどん吸収できる環境が最高に楽しい」と現状を語る。
彼はなぜ「プロフェッショナル人材」として最も成長の機会を得られる企業へと転職することができたのか。浦田さん、そして彼の採用を決めた同社代表、元マイクロソフトCRMスペシャリストの松原晋啓さんに話を聞いた。
1.キャリアビジョンが明確かつ「やり切る力」を持っていた
2.人と話したり接したりすることが好きで、コミュニケーション力が高い
3.とにかく成長に貪欲で、「まずはやってみる」ことができる
浦田:エンジニアとしてどんどんステップアップしていきたい気持ちが強く、新卒で入社した会社でも「実力をつけて3年で転職しよう」と考えていたんです。
とにかく経験を積みたくて、職場の先輩に「この仕事は僕に任せてほしい」と積極的に頼んでいました。
その結果、人事給与システムの開発に携わったり、AIの研究、RPA業務に参加したりと、幅広い仕事に関わることができて。仕事以外の時間も技術の勉強に充てられていましたし、初めはとても充実していたんです。
ただその業務をこなしていくうちに、社内で誰もやったことのないような仕事が、ジャンルを問わずにどんどん僕に回ってくるようになってしまいました。
必然的に勉強時間も少なくなりましたし、まだまだ未熟なのに教えてもらえる先輩もいない。そこで「もっと一つのことを極めて、プロとして専門分野を持てるようになりたい」と考えるようになったんです。
そんな時に、前職の先輩から「お前はもっと、成長できる環境に行った方がいいよ」と言われて、松原さんを紹介されました。そこから松原さんとは、飲みに行くようになって。
浦田:そうなんです。最初は転職ありきというより、今の仕事の悩みだったり、これからどうしていきたいのかだったりを飲みながら聞いてもらったという感じでした。
松原:そこで「プロフェッショナルになりたいなら、大手よりもベンチャー企業でスキルを身に付けた方がいい」という話をしましたね。
浦田:はい。そこで、転職をしようと他の企業も調べてみたんですよ。
でも大手企業に転職しても、結局1社目とそんなに変わらず、「企業の歯車の一部」としてゼネラリスト的な動きが求められるんですよね。人と人とのバトンパスをする役割が多いというか。だから松原さんがいう通り、中小規模の会社が自分に合っているのかなと感じました。
あとは他にも何社か見てみましたが、やっぱり松原さんの話が一番面白くって(笑)。社会人2年目になってすぐに、アーカス・ジャパンへの転職を決意しました。
飲みに行っていた頃は、松原さん自身の話はあまり聞かなかったので、入社する前に「あれ、松原さんって実はすごい人だったんだ」とその時に初めて知ったんです。ただそうやってフラットに「飲み採用」してくれたおかげで、自分が仕事を楽しめそうかどうかとか、自身のキャリアに必要なものは何かなど、考えを深めてから転職することができたと思っています。
松原:人となりが分からないと、一緒に仕事をしても「あれ、なんだか空気感が違う……?」とミスマッチを起こしてしまいます。ですから私は、一緒に飲みに行っていろいろな話をしてみるのが一番手っ取り早いと思ってるんですよ(笑)
浦田:プログラマーとして入社しましたが、入社して1年経った今ではさまざまなプロジェクトでリーダーを任せてもらっています。
現在は主に大手流通系企業の弁当管理システムのプロジェクトで、リプレース対応などを行っています。Microsoft製品を主軸に、Microsoft Power AppsやPower Automateなどを使いながら、CRM開発の経験を積んでいるところですね。
松原:自分のキャリアを真剣に考えているかどうか、人とうまくコミュニケーションできるかどうか、など「姿勢」の部分が素晴らしかったんですよ。プログラミングのスキルや専門知識については後で習得していけるので、重視していませんでした。
自分で理想のキャリアを描いて、そこに向かって努力する姿勢は、話しているだけでも十分感じられましたし、根性もありそうだった。
なので、「きっと彼なら成長して活躍してくれるんだろうな」という期待が持てたんです。
松原:そうですね。特に若いうちは「がむしゃらに向かっていこう」「とにかくやってみよう」という気持ちも重要だと思っています。
その点、浦田くんはその貪欲さがすごかったんですよ。例えば、こちらが「この技術はこうやってみると良いよ」と伝えたことを、すぐ実践して報告してくるとか。
IT業界って一見スマートそうに見えますが、実はとても泥くさい世界です。優れたエンジニアになるには、とにかく実践してスキルを伸ばす。それを近道なくやることが大事だと私は思っているので、そのあたりの志向もマッチしているんじゃないかなと感じました。
浦田:うれしいです。ただ、新しい技術に触れるとワクワクするってだけなんですけどね。
松原:その感覚が持てるかどうかは、かなり大事だと思いますよ。さらにエンジニアとして飛躍するには、そういった素直さに加えて「自分で考えてみる姿勢」も必要です。浦田くんの場合は、その感覚も併せ持っているのがいいなと思ったんですよね。
浦田:ありがとうございます。たしかに、ただ何でもかんでも周りの言うことを聞くのではなく、言われたアドバイスを一度試してみて、自分の場合はこうした方がいいなとか、必ず自分の正解を見つけていくことは大事にしています。
松原:アドバイスをもらって「自分には関係ない」と思う人は多いですが、「とりあえずやってみて、自分用にアジャストしていく」ことって意外とできないものですよね。
浦田:CRM案件の専門家として、技術力や知識量は大幅に増えたのではないでしょうか。
たくさん打席に立たせてもらったおかげで、マネジメント力や対外交渉力も磨かれたと思っています。メンバーをまとめる力はもちろんですが、30代~40代の方との対等に話せるようになったのが印象的ですね。
松原:浦田くんは、この1年で3~5年分以上の経験値を身に付けられていると思いますよ。
あとは、当社で行っているマネジメント研修の影響も大きいのではと考えています。マネジメント研修って、海外では多くの企業で取り入れていますが、日本ではまだまだ。
だから浦田くんのように20代でマネジメントの基礎を付けると、組織管理という面では、40代、50代の方たちとも対等に話すことができるようになります。
浦田:メンバーが成果を出せるように、社内で新しいルールをつくりながらプロジェクトを進めていくところに大きなやりがいを感じますね。
松原:当社では、社内評価制度など、組織を良くしていくためのルールや制度をメンバーで議論してもらうようにしているんですよ。
これは外資系の企業で実際に行われているのですが、テーマごとに各メンバーで議論していくんです。ここに幹部以上は参加しません。
「評価制度にはこの項目をいれた方がいいよね」「勤怠にこんなシステムが入ると便利なのでは」などをメンバーで話し合い、経営陣に意見として挙げてもらうようにしています。「自分たちが理想とする組織」を自分たちで考えることで、自発的に動ける組織になると考えているので。
浦田:これからは「強いチーム」をつくっていきたいです。僕は今2人のメンバーを見ているのですが、お互いに得意なスキルやノウハウをシェアし合って、技術的にも精神的にも補完し合えるようなチームをつくっていきたいんですよね。
そうすれば自分自身のスキルアップにもつながるし、チームとしてさらに一段階大きなことができるんじゃないかなと思っています。
松原:浦田くんのようにスキルアップに貪欲な人であれば、自分で考えたことを反映させられる環境が大事なんですよね。「そんなことはルールにないから、できません」っていうお堅い会社だと、生かしきれないんじゃないかな。
自分がどうなりたいのか、キャリアをちゃんと考えている人こそ、当社のようなベンチャーで「動きやすい環境」を選ぶべきだと思いますよ。
取材・文/キャベトンコ 撮影/赤松洋太 編集/大室倫子
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