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【情シス裏話】新型コロナで全社在宅ワークへ移行。緊急対応から学んだ、これからの“危機管理”の話

働き方

    新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令によって、多くの企業が一斉に在宅勤務の実施に踏み切った。それにより、これまでリモートワークを推進していなかった企業の情シス部門は緊急・かつ大人数の環境整備を強いられる事態に。

    そこで今回エンジニアtypeでは、某企業の情シス部門で働く2名のエンジニアに取材を実施。急なリモートワーク移行によって実際に起きたトラブルや、その対処法を赤裸々に教えてもらった。

    今後またいつ訪れるか分からない“緊急事態”に備える方法や、危機管理に対するスタンスを学びたい。

    【CASE1】従業員400名/中堅製造業の情シス・スミニヤシさんの場合

    情シス

    スミニヤシさん(@miya_y

    従業員約400名の中堅製造業
    業務内容:振動試験装置の製造販売、振動試験の受託サービス
    デスクトップ:ノートPC比率=5:5
    業務システム:G Suite、Salesforce、オンプレのERPなど
    在宅勤務告知/開始時期:3月末に告知/4月上旬から随時
    情報システム部:社員3人、社外パートナー2人の計5人。スミニヤシさんはその責任者。

    ーー在宅勤務が発表された時期と、準備期間、対応したことについてお聞かせください。

    3月末、会社に行くと社内ポータルの掲示板に「4月上旬から在宅勤務を推奨する」と掲載されていて、そこで初めて知りました。事前情報がなかったので当然何の準備もしておらず、大慌てです。

    特に大変だったのは端末の準備です。社員のうち半数くらいはデスクトップPCだったので、その人たちのノートPCを急いで確保しなければならなくて。

    でも社内にノートPCの在庫が足りず、ECサイトや販売代理店も品薄状態で。最終的には廃棄予定で社内に保管していた『Windows 7』を見つけ、OSをGoogle ChromeのOSにリノベーションすることで対応したんです。

    ーーOSのリノベーション!? どれくらいの台数を対応したんですか?

    最終的には20台ほどですね。OSのインストールはかなり時間がかかるので、一日中作業しても3~4台しか終わらなくて、その合間に「早くノートPCを回してほしい」「うちの部署に優先してくれないか」とひっきりなしに相談が来て、さすがにくたびれました(笑)

    情シス
    ーー大変でしたね……。

    ただ不幸中の幸いだったのは、以前から全社的にG Suiteの導入だけは進めていたんですよ。前職でたまたまG Suiteを使っていて便利だったので、「出張中にWeb会議ができたらいいな」くらいの気持ちで導入して、去年の秋頃までに一通りのツールを移行していたんです。

    社員も使い慣れてきたタイミングでの在宅勤務でした。それまではオンプレの業務システムとメールサーバーを使っていたので、もし当時のままだったらどうなっていただろうと背筋が凍りましたね。

    ーー間一髪だったんですね(笑)。全社で在宅勤務に移行してからは、トラブルや問い合わせはありましたか?

    問い合わせは「あった」というレベルじゃなかったですね。通勤時間がなくなった分、みんな少し早い時間から仕事を始めるみたいで。始業前にチャットを開くとすでに問い合わせが15件ほど並んでいて、その対応をしているうちに昼になる。そんな毎日でした。

    また、社員が外部の方との打ち合わせにWeb会議を使うようになったのですが、会議の始まる時間になってその会議に参加する予定だった複数人から「Web会議システムの使い方が分からない! どうにかしてくれ!」という電話がくることも。

    「テレビ会議ツールは事前にダウンロードしておいてくださいね」「会議URLに入れるか、事前にテストしておきましょうね」と呼び掛けてはいたんですけどね。

    あとは、在宅勤務開始の前日に会社のノートPCを持ち帰らず、始業時間に自宅のPCを起動して、「あれ、これどうやって社内のファイルにアクセスするんだ?」と気付いて問い合わせてきた社員がいましたね。自宅PCでも普通に仕事ができると信じて疑わなかったようです。

    ーー普段との仕事環境や、ツールの違いに戸惑う社員は多かったんですね……。今回の状況下で新たにチャレンジしたことがあれば教えてください。

    新卒のオンライン採用に挑戦しました。4月になって人事部から急に、「新卒採用向けの企業説明会をオンラインで開催したい!」と相談されて。これまでにオンラインイベントを開催した経験がなかったので、全て手探りで準備を進めました。

    ただ、初回開催時は勝手がいまいち分からなかったこともあり、対面でのセミナーのように学生からの質問が出てこなかったんです。オンラインだと発言のハードルが高いんだな、とそこで初めて気付きましたね。

    2回目以降はその教訓を生かし、事前に「チャットで質問を書き込んでください」と伝えるように。思った通り質問はかなり出てくるようになり、オンラインでもやり方次第でインタラクティブなイベントが実現できるんだと勉強になりました。5月からはオンライン面接にも取り組んでいます。

    情シス
    ーー今回のコロナショックを受けて、情シスとして今後の環境整備をどのように進めていきたいですか?

    SaaSやクラウドベースのソリューションをもっときちんと導入して、インターネットだけで仕事ができる環境を整えることです。VPNやリモートデスクトップが必要な環境では、会社のネットワーク回線がボトルネックになります。CRMツールや電話ツールも含めて、あらゆるツールをSaaSベースにシフトしていきたいですね。

    また、情シスの業務範疇からは超えてしまいますが、個人的には評価制度も見直す必要があるのではと思っています。

    これまでは部下の表情を見て阿吽の呼吸で管理してきた人たちが、リモートワーク下では部下を評価できなくなって、噂によると「社員が仕事をしているか部下の様子をチェックしたい」とWebカメラで社員を監視する、といった恐ろしいケースも出てきているようですから。

    今後リモートワークが主流になるとしたら、旧来型の人事評価を見直して、ジョブ型の評価制度を導入する必要があるんじゃないでしょうか。せっかく今回のコロナショックで働く環境を見直す機運が高まってきたので、組織としてはそういう取り組みをしていけたらいいなと思っています。

    ――ちなみに、スミニヤシさんは在宅勤務中も出社することはあったんでしょうか。

    実は私、一度も在宅勤務ができなかったんですよ。もちろん部下たちには在宅勤務をさせていましたが、サーバーや会社のネットワーク回線に何かあったら誰かが対応しなければならないので。これはもう、情シスの運命ですね(笑)

    他の企業の情シスも、同じ状況の方は多かったのだと思います。皆さんに「お疲れさまでした」と伝えたいです。

    【CASE2】従業員180名/建設業の情シス・ひこさんの場合

    情シス

    ひこさん(@virii_k

    従業員約180名の建設業
    業務内容:プラントエンジニアリング
    デスクトップ:ノートPC比率=1:9
    業務システム:オンプレのERP
    在宅勤務告知/開始時期:3月から段階的に開始
    情報システム部:なし。総務部に所属する社員で唯一の情報システム担当。

    ーー建設業というと、普段から現場に常駐する社員も多いですよね。コロナ前からリモートワークできる環境は整っていたのでしょうか?

    仰る通り、建築現場に常駐する社員や営業は社外からノートパソコンで仕事ができるようリモートワークの環境を用意していました。数年前からTeamsも導入し、営業部門では使っていたと思います。なのでリモートワークの環境自体は、ある程度は整っていましたね。

    でも実際にテレビ会議を行っていた社員は20人いたかどうか……。日常的にリモートワークをしていた社員も、10人もいなかったと思います。

    社内の業務システムやファイルサーバーなどはすべてオンプレです。変えたくても決裁を上げることすら難しい状況でした。

    ーーリモートワークができるようになるまで、どれくらいの準備期間がありましたか?

    3月上旬に在宅勤務の試験運用が発表され、その日から3月いっぱいが試験運用期間となりました。3月末から出社率50%、4月初めに全社員原則在宅勤務と、段階的にリモートワークへ移行していきましたね。

    準備で特に大変だったのはVPNの設定です。在宅勤務について発表があるたび、30~40人くらいから一気に「VPNを設定してほしい」と申請が上がってきます。ピーク時は、1日10~15人分のVPN設定に追われました。

    作業としてはアプリのインストールと、デジタル証明書の申請・発行で、デジタル証明書は普段なら3~5分で発行されるのですが、当期間中は半日待っても発行されないことがありました。全国的にリモートワークを始める企業が急に増えたからでしょうね。

    私自身も焦りましたし、申請した社員も「いつ在宅勤務ができるようになるんだ」とイライラして、社内がピリピリしていました。

    他に準備期間中に行ったことといえば、大会議室に社員を集めて、Teamsのレクチャーをしましたね。先ほども言った通り、ほとんどの社員がTeamsの使い方をまったく分かっていなかったので、急きょマニュアルを作って説明することに。

    会議室に集まった大勢の社員を前にして、思わず「この環境が密だろ……」と心の中でツッコミを入れてしまいました(笑)

    ーー印象的なトラブルはありましたか?

    一部の社員はデスクトップPCを使っていて、そういった人たちには社内で余っていたノートパソコンを支給したのですが、数が足りなくなってしまったんですよね。すると、とうとう、コンピューターとモニターを自宅に送ると言い出した社員が続出したんです。

    それで私に「家にパソコンを送りたいんだけど、どんなダンボールで送ればいい? 梱包方法は?」と複数名から問い合わせがきまして。思わず「情シスに聞かないで!」と言ってしまいました(笑)

    情シス

    でも、後から「ちゃんと梱包方法を伝えておけばよかった……」と反省しましたね。

    6月以降、週1~2回の出社になったため、会社にコンピューターやモニターが送り返されてきたんですけど、壊れているものがいくつかあって。今はコツコツ、修理や買い替えの作業を進めています。

    あとは、自宅にネット環境が整っていない社員が数名いたんですよ。そこで、普段は無効にしている社用iPhoneのテザリング機能を一部の人に開放することにしたんです。

    でも、後で請求金額を見て、目を見張りました。ひとりあたり月に7万円ほど費用がかかっていたんです。非常時なので仕方ないですが、この体制を継続するのは難しいと思いましたね。

    ーーひとり当たり7万円! 衝撃ですね。リモートワークに移行してからの問い合わせはあったのでしょうか?

    それが、問い合わせがパタッとやんだんですよ。電話もメールも来なくなって。「みんな、やればできるんだ」と思いましたね。パッと質問できる人が近くにいなければ、自分で調べて解決できるんだ、って。

    でもたまに出社すると、僕を見つけた社員がわらわらと寄ってきて質問攻めに合うので、できるだけ出社せずに在宅勤務をするようにしていました(笑)

    ーーひこさんはいわゆる「ひとり情シス」ですよね。これまでのお話を伺っていると、「対応すること」と「対応しないこと」の線引きをしているように感じます。どのような基準で対応していますか。

    社内のインフラ・設備を使う上で必要なことや、事前準備については対応しますね。一方で、ツールの「使い方」やシステム以外のこと、社外のことについては社員に任せています。

    例えば、時々「エクセルの使い方を教えて」とかっていう問い合わせがあるんですけど、「そこは自分で頑張ってください……」という感じです(笑)

    ーー今回の件を踏まえて、今後は仕事環境をどのように整えていきたいですか。

    まずは印鑑を電子決済にしたいですね。今はオンプレのERPを使っているため、社内のちょっとした申請書から稟議書、社外との契約書まで、すべて出社して印鑑を押さなければなりません。

    在宅勤務中、「捺印するために誰が出社するのか問題」で役員が揉めていたんですよね。さすがに役員も「電子決済にしないと困る」と身に染みたはずなので、これからはさまざまな分野でペーパーレス化が進むといいなと思っています。

    そういう意味で、今回のコロナショックは良い経験になりました。

    とはいえ正直、会社に多くを期待してはいないんですよね……。今までもいろいろな提案をしてきましたが、検討もされずほとんど却下されてきたんです。

    今回、それほど大きな準備をせずにリモートワークが実現できたのも、自分の仕事を楽にしたい、やる気のある社員をサポートしたいという思いで少しずつ準備してきたことが、実を結んだ結果です。

    今後も、少しずつだけど、場所にとらわれず働ける環境づくりを地道に継続していきたいですね。

    取材・文/石川香苗子 編集/河西ことみ(編集部)

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