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スタートアップでロボット開発に携われるITエンジニアとは? 採用&現場のIT出身者に聞いた【ZMP×スマートロボティクスウェビナーレポ】

働き方

特集「ロボティクスな人と企業の最新情報 ロボトレ!」では、今「ロボット業界」で働くエンジニアがここ数年で多様化している様子を伝えてきた。

そこでエンジニアtypeでは、株式会社ZMPで開発に携わるエンジニアの河村龍さん、採用担当の新井野翔子さん、株式会社スマートロボティクス取締役COO井島剛志さんをゲストに迎え、ウェビナー「ロボティクス企業 エンジニア採用New Wave」を開催。

今まさにスタートアップのロボット開発の現場で起きている「エンジニア採用の変化」と、ITエンジニアへの期待について話を聞いた。

ロボット業界の人材流動は「まだまだこれから」

――(聞き手:編集部)最近、労働人口の減少などの社会問題が深刻化していることに加え、コロナ禍のあらゆる課題がロボット業界のニーズを引き上げていると聞きます。

河村:そうですね。弊社の『パトロ』の消毒機能や、スマートロボティクスさんが開発された殺菌灯搭載ロボットなどもまさにそうですが、コロナ禍で顕著にニーズが現れたことで、「ロボットメーカーができること」が顕在化してきました。

そのニーズをいち早くとらえて、課題に対してベストなソリューションを提供しようと各社動きを早めていると感じます。

スマートロボティクス『殺菌灯搭載ロボット』

スマートロボティクス『殺菌灯搭載ロボット』

――なるほど。では、ロボット業界で働くエンジニアの変化については、どのように感じていますか? ZMPの採用に関わる新井野さんは、いかがでしょうか。

新井野:多様なプレーヤーが増えている印象があり、質・量共に変化を感じています。

「質」でいうと、これまではロボットそのものを開発するためのハードウエアやソフトウエアのスキルが重視される側面が強いようでしたが、直近はロボットサービスを構築するIT人材も増えています。

また、転職の志望動機もロボット開発そのものに興味があるという人もいますが、「ロボットをどう社会に役立てるべきか」というサービス視点の運用に興味を持っている入社される方も多くなっていますね。

それと同時に、当社の場合は応募者の「量」も増えています。これまでは数年に1回、一時のブームとしてロボット業界に注目が集まることはあったのですが、最近ではそれが継続的に起こるようになっています。

ZMPの自動運転歩行速モビリティ(自動運転一人乗りロボ)『RakuRo(ラクロ)』

ZMPの自動運転歩行速モビリティ(自動運転一人乗りロボ)『RakuRo(ラクロ)』

――スマートロボティクスの井島さんから見た、ロボット開発に取り組むエンジニアの変化はいかがですか?

井島:今も、大学時代からロボット工学を勉強してきて、「ロボコン」や「ロボカップ」のような大会にも出場しているような人たちが入社しています。それに最近では一度大手企業に就職したけれど、希望するようなロボット開発の業務に携わることができず、それならばベンチャーでもロボット開発ができるところに行きたい、と転職してくるエンジニアの方も増えてきました。

先ほど新井野さんが仰ったように、人材の流動性の高まりは感じています。ただ、本格化するのはまだまだこれからなのかな、という印象です。

特にIT系のエンジニアにとって参入障壁となっているのは、ロボット業界の待遇面ではないでしょうか。利益率の高いIT業界と比べるとロボット業界では、どうしても高コストなビジネスになりがち。人件費の確保が難しい面もあります。

だからこそ弊社では、きちんと収益を生むロボット開発の新しいビジネスモデルを構築する必要性について常々考えて事業を展開しています。

河村:井島さんのお話にあった通り、現場の感覚としては「人材流動の大きな変化はまさにこれから」という感じ。

これからは、IT系出身者たちがWebサービスの開発などで培ってきたユーザーニーズの捉え方や現場での経験が、ロボット業界に浸透していくといいですよね。エンジニアの多様化がさらに進むことで、業界もどんどんアップデートされていくのではと思っています。

株式会社ZMP ROBO-HI Division General Manager 河村 龍さん

株式会社ZMP ROBO-HI Division General Manager 河村 龍さん

求められるのは「スキル」よりも「マインド」

――ロボット業界の人材がさらに多様化していく中で今後エンジニアにはどのようなスキル、マインドが求められますか?

井島:ロボット開発で今もっとも重要なのは、一般のユーザーにとっての使いやすさです。特定のスキルというよりも、ユーザビリティーの向上を意識した開発をする視点を持っていることが大事だと思います。

例えば、これまでの産業用ロボットは、専門のシステムインテグレーターが導入して、専用のトレーニングを受けないと使えないような導入時の負荷が高いものばかりでした。しかし、それでは広く浸透するロボットにはなりません。

そこで昨今ではソフトウエアでいうUI/UXに当たる、使用するユーザーにとっての最適な操作性を考慮して設計することが求められています。

先ほど河村さんが仰っていたようにIT出身の方たちがこの業界にジョインしてくることでロボットが一般に普及する良いイノベーションが起きるのではないかと思いますね。

――なるほど。新井野さんはどうでしょう?

新井野:当社に関して言うと、スキルもマインドも「これがないと絶対ダメ」というものはないですね。

ロボットにおけるソフトウエア開発には、例えば、認知、判断、操作といったいろいろなレイヤーがありますから、技術者ごとにその方のスキルに合うポジションを一緒に考えていけばいいので。

強いて言えば、井島さんが仰るように、ロボットはプロダクトであり、その先に社会や人の存在がありますから、誠実にユーザーに接するマインドこそ重要だと思います。

株式会社ZMP Corporate Communication Dept General Manager 新井野 翔子さん

株式会社ZMP Corporate Communication Dept General Manager 新井野 翔子さん

――河村さんは、IT業界から転職された時に、どんなスキルやマインドが必要だと実際に感じましたか?

河村:選考においては、新しいものを生み出していくというマインドは重要視されていたと思います。

今後ロボット業界でもITやクラウドシステムが核になっていくわけですが、前例がありません。そんな中でプロダクトを一から生み出さなければならないわけですから。

また、さまざまなバックグラウンドを持った人が集まるので、それぞれの役割を持ちながらチームとして「このプロダクトを社会に役立てていきたい」という共通マインドを持つのは必須だと思います。

iモード、検索エンジン、スマホ市場…伸びる業界の共通項

――IT業界から転職した井島さん、河村さんに、ロボット業界に転職して気付いた「業界ならではのおもしろさや魅力」を伺いたいです。

井島:今はまだ利益を出せるビジネスになりづらい業界ではありますが、だからこそロボットを実用化していくのが醍醐味だと思っています。

実証実験で終わるのではなくて、ビジネスとして本格運用していった会社が今後この業界で生き残っていけるのでしょうね。

それに、今のロボット業界って、iモードが始まった初期と状況がよく似ているんですよ。私は過去にiモードのコンテンツ開発に携わっていたのですが、小さな携帯画面に横6文字、縦4行しか映すことができず、「こんなの誰が使うんだ」と非難されていました。

当時、「必要ない」「流行らない」と言われてきたものが、現在のスマートフォンまで進化し、今やなくてはならないものになっています。

株式会社スマートロボティクス 取締役COO 井島 剛志さん

株式会社スマートロボティクス 取締役COO 井島 剛志さん

ロボットも同じで、多くの人がイメージするようなガンダムや鉄腕アトムといった万能なロボットはまだまだ難しく、現代の技術でできることは限定的。でも、確実に進化は起こり、ビジネスとして成立していくはずです。まだこの業界で覇者がいないという事実も、ベンチャー的にはワクワクするところですね。

河村:僕も同じですね。僕がインターネットの世界に入って、最初に関わったのは検索エンジン事業でした。みんながGoogleを知り始めたくらいの頃から、だんだんと検索がインターネットの中心になり、ネット上のコンテンツ数が増えていった。

スマートフォンの市場ができあがった時もマーケットに変化が起こり、検索からソーシャルメディアという流れができて、ユニークなサービスが急増しましたよね。

そういった印象的な変化があった分野に、今のロボット業界も雰囲気が似ているなと感じています。「本当にこれでビジネスになるのか?」という混沌としたところから、徐々にそこをこじ開けるプレーヤーが出てきて、新しいチャレンジが生まれているので。

僕が転職したきっかけも、まさにそこです。前職ではスマホアプリを作っていましたが、スマホ上ではできることが限られて、やれることも限定的になってきたなと思っていました。

一方、ロボティクス業界はまさにこれから花開く業界。初めてづくしの世界でチャレンジできる土俵があったので、ワクワクできるなと。

ロボットは物理的に人間をサポートしたり、ものを運んだり、Webサービスではかなえられないこともたくさんかなえられる。これから成長するマーケットとしては、とても見込みのある業界だと思っています。

文/小林香織

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