参考記事
・「この会社、何か違う…」スタートアップ転職で後悔しないためにエンジニアが注意すべきポイントは? SmartHR宮田昇始さんに聞く
「スタートアップ」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?
安定性が不安? 福利厚生に期待できなそう?
他にも、経営層が近いから働きやすそう、やりがいが大きそうというイメージを持っている人も多いかもしれませんね。
実は一口に「スタートアップ」と言っても、フェーズによって違いがあり、その違いは働き方にも大きく影響します。今回は、エンジニアがスタートアップ転職をする上で気を付けたいことを徹底解説。今転職活動をしている人はもちろん、スタートアップに興味がある人は要チェックです。
スタートアップとは単に創業間もない企業を指すのではなく、斬新なアイデアやサービスで市場を開拓し、短期間での成長を目指す企業のことを指します。ほとんどのスタートアップが数名~50名程度の少数精鋭の組織で、意志決定が速いという特徴があります。
一方で、一口に「スタートアップ」と言っても、いくつかのフェーズに分けられ、フェーズによっては働き方や社員に求められる志向性も大きく変わります。具体的にスタートアップの特徴を紐解いていきましょう。
スタートアップは一般的に「シード」「アーリー」「グロース(ミドル)」「レイター」の四つに分類されます。それぞれの特徴と向いている人をみていきましょう。
スタートアップフェーズの中で最初のステージがシード期です。
アイデアが「シード=種」の状態にあるスタートアップのことを指し、まだサービスやプロダクトができていない、もしくはプロトタイプ(試作品)のみが開発された状態です。
サービスの本格始動にむけて事業計画を立てたり市場調査をしたりする段階で、まだ売上のめどが立っていないことがほとんどなので、チームの規模は3~5名程度が一般的でしょう。
シード期のスタートアップでは、創業メンバーとして事業の中核で活躍することが求められます。既にスタートアップでの勤務経験がある人や意志決定経験が豊富にある人に向いているでしょう。
スタートアップがシード期の次に迎えるステージがアーリー期です。プロダクトを市場に提供するところからビジネスモデル確立の見通しが立つ状態までの期間を指します。
アーリー期のスタートアップは必ずしも収益を上げている必要はなく、収支としては赤字の場合もあります。プロダクトを開発するために必要な最低限のエンジニアと、それを販売する営業担当などの増員により、5~20名程度の社員がいるケースが一般的です。
アーリー期のスタートアップには、プロダクトを本格始動させるための実行部隊が必要です。ただしまだルールが確立されていないことがほとんどなので、開発手法や技術選定などをイチから行い、顧客に提供できるプロダクトとして完成させる力がある人が重宝されるでしょう。
グロース期のスタートアップの特徴は、その名の通り成長段階にあることです。ミドル期と呼ばれることもあります。
顧客の増加と共に収益化への施策も始まり、顧客データの収集のためにサービスを無料で提供していたところから有料化の施策が始まるケースも多いでしょう。創業メンバーによる個々の能力に支えられていたフェーズから従業員の増加に応じてオフィスの拡充や人事制度の確立など組織的な運営が求められるフェーズに入ります。
シード期やアーリー期に求められていた0→1でなく、1→10を求められるフェーズに移行します。
個人レベルで動いていたフェーズから組織的な運営となっていくのがグロース期の特徴ですが、とは言え大手企業のような潤沢なリソースはないため、事業の目標設定と実行部隊の両方の役割を担えるプレイングマネージャーが求められるでしょう。
グロース期以降のスタートアップに転職する場合、すでに開発方針が決まっていることも多いため、その企業の開発方針が自分に合っているかを見極めるのが大切です。
スタートアップとしての最終段階がレイター期です。
企業によっては黒字化しているケースも増えてくるでしょう。既に確立されたビジネスモデルや販路をもとに新たな事業展開に着手することも。大手企業との協業やメディアへの露出なども増え、一般的な知名度が上がっていくのもこの時期です。
スタートアップの経験を積みたいという人に向いているフェーズです。
創業メンバーという強力な人材のもとでスタートアップに必要なスキルやマインドをスピーディーに学べるでしょう。ベンチャーマインドを持っていることは大前提ですが、レイター期のスタートアップはすでに組織運営が確立されているため、大企業からのキャリアチェンジも違和感なく実現できる可能性が高いのが特徴です。
スタートアップとベンチャー企業は似ているものの、まったくの別ものです。
スタートアップはもともとシリコンバレーで使われ始めた英語でGoogleやAmazon、Facebookなどの企業が代表的です。スタートアップの最終目的は株式公開や事業売却(IPO)。この最終目的に向けて「斬新なアイデアやサービスをもとに、短期間で成長する企業」のことを指します。
それに対してベンチャー企業は和製英語で、設立してから間もない企業を指すこともあれば、単に社員数が少ない企業のことを指すことも。いずれにしても、既に確立されたビジネスモデルをもとに事業を運営しており、「世の中にない新しいサービス」であるかという点でスタートアップとは異なります。
ベンチャー企業は最終目標を株式公開に定めていることが多く、達成するまでの期間はスタートアップと比較すると長めに設定されています。
ビジネスモデルすら確立していない不安定な経営状態であるにもかかわらず、今スタートアップ、特にシード期やアーリー期のスタートアップに人気が集まっています。
スタートアップがエンジニアに人気な理由は、技術者にとって自由度が高い環境だから。技術的負債のない状態で、自由に技術選定ができる環境はエンジニアにとって魅力的なものに映るでしょう。
また以前よりもスタートアップは資金調達がしやすくなっており、「良いエンジニアはサービスの質を左右する」という視点も広まったことから、スタートアップからのオファーは提示金額が高いという特徴があります。
一方でシード期やアーリー期のスタートアップに入社した人は、グロース期を迎えるにあたって過去に自分が作った技術が技術的負債になったり、組織運営を確立していく中でそれまでの属人的な環境とのギャップに馴染めずに苦労したりする点は留意すべきポイントです。
スタートアップでは、エンジニアも事業づくりや組織運営の視点が求められます。技術力はもちろん、マインドの部分でも向き・不向きがあると言えるでしょう。スタートアップに向いている人の志向性としては以下のようなものがあります。
・あらゆる変化を楽しめる人
・良いプロダクトを作りたい人
・精神的にタフな人
・好奇心旺盛な人
・行動力がある人
・技術力を高めたい人
スタートアップは人数が少ない分、否が応でも1人あたりにかかる負担は大きくなります。ただし「常にプレッシャーのかかるスタートアップにいればおのずと成長できるはず」と考えるのは危険。「スタートアップで自分が何をしたいのか」「それはそのスタートアップで本当に実現可能なのか」が明確になっていないと、自己成長は難しいでしょう。
参考記事
・「この会社、何か違う…」スタートアップ転職で後悔しないためにエンジニアが注意すべきポイントは? SmartHR宮田昇始さんに聞く
※各種情報は2021年12月に公開されていたものです。
設立:2017年 従業員:128名
「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げる、AIをコア技術としたヘルステックスタートアップ。「ユビーAI受診相談」「ユビーAI問診」をメインサービスとしています。
設立:2018年 従業員:57名
「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに、さまざまな産業のDX化を推進するスタートアップです。クラウド型経理DX支援システム「バクラク請求書」などを運営しています。
設立:2017年 従業員:30名
「10xを創る」をミッションに、開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能なサービス「Stailer」を運営するスタートアップ。小売市場だけでなく、今後はあらゆる産業の課題解決に向けてプロダクトの開発を目指しています。
設立:2014年 従業員:30名
すべての人がテクノロジーを使える世界を目指し、誰でも簡単に素早くホームページが制作できるサービス「ペライチ」を運営。今後はWebページ作成だけでなく、その後の集客や売上にもコミットできる体制の実現を目指しています。
参考記事
・“技術力だけ”で勝負するスタートアップ転職はNG?「技術面接を廃止」したUbieの真意から探る
・Flutter採用で“フルDart”体制へ。スタートアップ10Xが「全社で言語統一」を選ぶ理由
【LayerX CEO福島良典】2度の起業から見えた「スタートアップが勝つための鉄則」
イノベーションによって新しい市場を開拓するスタートアップ。一見華やかな世界に見えるスタートアップですが、働く際にはやはりメリット・デメリットはあります。スタートアップで働く上でのメリット・デメリットを見ていきましょう。
スタートアップの特徴は意思決定のスピードが早いことです。通常大企業になるほど決裁や承認などに時間がかかりますが、スタートアップは少数精鋭で運営するため経営層との距離が近く、決定事項の遂行もスピード感を持って取り組めます。意思決定から行動までのスピードが早い分、さまざまな経験ができるため「短い時間で成長したい」という人にぴったりの環境です。
先述したように、スタートアップは人数が少ない分経営層との距離が近いため、社歴に関係なく自分の声が上層部に届きやすい傾向にあります。一人一人にかかる責任も大きく、裁量が大きいことが多いため、判断力や責任感を身に付けるには最適の環境でしょう。
組織が急激に成長していくさまを見ることができるのはスタートアップならではのメリットの一つ。さらにスタートアップでは、自分の仕事の成果が企業の成長に直結するため「自分の力で会社を動かしている」という実感を得られるでしょう。
既に体制ができあがっている大企業とは違い、スタートアップでは事業そのものを自分で動かしながら体制を整えていくことが求められます。事業全体の流れを把握しながら働くという経験は、起業時のアドバンテージとなるでしょう。また経営者や上層部の考え方や意思決定の仕方を間近で勉強できる点もスタートアップならではのメリットですね。
スタートアップでは、まだサービスやプロダクトができていない、もしくは利益を出せていないことも充分ありえます。売上のめどが立っていないこともほとんどですので、給与や福利厚生面の期待はできないことが多いでしょう。逆に会社が軌道に乗れば、創業メンバーとして好待遇を得られるチャンスもあります。
スタートアップでは資金難に陥って倒産するということは珍しくありません。他の職種と比較するとエンジニアは転職先が見つけやすい職種ではありますが、安定とはほど遠いと思っていた方が良いでしょう。
スタートアップ転職のメリットでも挙げたように、スタートアップでは少数精鋭で事業を展開していくため、業務範囲が明確に定義されていないことが多く、状況次第ではエンジニア以外の業務をする可能性もあります。経験を広げるという意味では有益ですが、場合によっては想定していたキャリアを積めないということも発生するでしょう。
「スタートアップに向いている人って?」でも述べたように、スタートアップには適性があります。また、適性を満たしていてもフェーズや企業によってカルチャーが大きく異なるため、その企業に馴染めなければ楽しく働くことは難しいでしょう。スタートアップ転職で気をつけたいことをまとめてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
スタートアップは短期間でフェーズが変わっていきます。フェーズが異なれば求められることや働き方が急速に変わっていくため、同じスタートアップでもついていけなくなったり面白さを感じなくなったりすることも珍しくありません。
特に既にスタートアップで働いており、異なるフェーズのスタートアップへの転職を考えている人は注意が必要です。
0→1が求められていたシード期のスタートアップから10→100が求められるレイター期のスタートアップに転職して「意思決定のスピード感が遅い」と不満を感じたり、逆にレイター期からシード期のスタートアップに転職して「業務範囲が煩雑で効率が悪い」と感じたりすることも。フェーズ間の移動をする際は、フェーズによって働き方などが異なることを理解したうえで、まずは近いフェーズに移動するのが無難です。
スタートアップに転職する際は、その企業のカルチャーや経営方針などをしっかり理解しておくことが大切です。スタートアップ転職で起こりがちな失敗をまとめてみました。スタートアップに転職を考えている人はチェックしてみてください。
アーリー期以降のスタートアップでは、すでに開発方針が決まっていることがあります。例えばその会社がスピード重視で開発するのか、品質重視で開発するのかによってエンジニアに求められるスキルやマインドは大きく異なります。スタートアップに転職する際は、自分の能力を発揮できる開発方針かどうかをしっかりチェックしましょう。
エンジニアにとって、技術的負債がなく自由度の高い環境は魅力的ではありますが、それだけでスタートアップへの転職を決めると後悔する可能性が高いでしょう。スタートアップではエンジニアの視点から事業に対する意見を求められる場面が多くあります。事業自体に興味を持ち、共感できていないと入社後に戸惑うことになるでしょう。
これまで何度も述べた通り、技術選定が自由にできるスタートアップはエンジニアにとって夢のような環境です。しかしリリース前にあまりドキュメントや事例のない最新の技術を選定していまうのは危険です。その技術が大型アップデートした時や、プロジェクトにトラブルが発生した時に立ち往生してしまう可能性があるからです。また新しい技術に精通した人材を確保するのも難しいでしょう。
スタートアップでの開発は数人単位で進めることが多いため、ドキュメントを残さなくても進められてしまうケースが多いのが特徴です。事業規模の成長に伴う増員によって初めてドキュメント整備というタスクが加わることも。後にドキュメント作成に追われないためにも、初めからドキュメントを残すことを意識するのが吉でしょう。
参考記事
・今、スタートアップがエンジニア採用で「共感」を重視するワケとは? ミラティブ、LayerX、カミナシに聞く共感ポイントの見つけ方
「自由に技術選定ができる」「大きな裁量で働ける」など大企業にはない魅力があふれるスタートアップ。しかしスタートアップ転職にはデメリットやリスクが伴うことも忘れてはいけません。
転職後に後悔しないためにも、その企業がどのフェーズにいるのか、そして「求められていること」や「できること」と「自身がやりたいこと」が合致しているのかをしっかり見極めることが大切です。とはいえ、入社してみないとわからないことがあるのも事実。事前にしっかり見極めたうえで、思い切ってチャレンジすることでキャリアが拓けるかもしれません。
NEW!
NEW!
タグ