本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
コンピュータと軍事の進歩は同時進行…皮肉な現状に、世界中が願うこと【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
今回のテーマは「戦争とコンピュータ」です。
残念なことですが、これはかなりのホットトピックになっていますね。
この原稿を書いているのは3/14ですが、今の時点でロシアによるウクライナの侵略はまだ解決はしていません。
ここまで大きく戦争状態の報道を日本人が目にするのはかなり久しぶりのことですし、SNSが浸透してからでは初めてと言ってもいいでしょう。
この原稿では、ロシア・ウクライナの問題そのものを論じることはありません。
あくまでも、戦争とコンピュータの関係について、ボクなりの考えを書いていきたいと思います。
コンピュータと軍事の進歩は同時進行
コンピュータの歴史は、軍事の進歩と完全に同時進行していると言っても過言ではないでしょう。
コンピュータの開発には極めて大きな資本が必要で、その資本が集中していたのは軍事の領域でした。
世界最初のコンピュータと言われている『ENIAC』は、ミサイルの弾道計算のために作られました。
ミサイルを飛ばす技術は、製造業的なアプローチでかなりの部分までは進められるでしょうけれど、正しく相手に到達させるためには、相当複雑な計算が必要になります。
何せ、気軽にテストするわけにもいかないので、何らかの手段でシミュレーションが必要になります。
そのためには、複雑な計算を人の代わりにやってくれる機械があるといいよね、ということでコンピュータの登場になるわけです。
他にも、核爆発のシミュレーションや暗号解読などでもコンピュータは活躍したようです。
※なお、『ABC』や『Colossus』の方が先に開発されていたのですが、ABCは動作不安定で完成せず、Colossusは極秘開発されていたので世界が知ったのはずっと後になってからだったこともあり、一般的にはENIACが「世界最初」の称号を得ているようです。
その後、コンピュータは一般的な学術研究やビジネスの世界でも使われるようになり、一般市民の目に触れる機会も増えていきました。
その中で、密かにそしてしっかりと準備され、そして世界を大きく変えたものがあります。
そう、インターネットです。
エンジニアの方なら、インターネットの源流が『ARPA NET』だったことはご存知でしょう。
この『ARPA NET』開発のプロジェクトを担っていた研究機関がARPA(Advanced Research Projects Agency)であり、この研究機関の親組織はあのペンタゴン(米国の国防総省)でした。
『ARPA NET』そのものは、軍事目的で開発されていたわけではないようですが、やはり軍事との関係はかなり深かったようですね。
その研究結果が、まさに今のわれわれの生活を支えるインフラとして活用されているわけです。
戦争というキーワードのもとに、さまざまな技術が進歩していくのは皮肉なものではありますが、歴史的に見ても動かない事実なんですよね。
そして、今やコンピュータや各種テクノロジーは軍事を後押しするものである一方、戦場そのものにもなっていますね。
そう、サイバー戦争です。
インターネットは、まさにその戦場としても発展している側面があります。
いわゆる「サイバーアタック」には三階層の定義がある、と政府関係者の方から聞きました。
まずは「サイバー犯罪」。
これは明らかなお金目的で、企業や個人の使うコンピュータを狙ってなんらかの利益を得ようとするものです。
次が「サイバーテロ」です。
テロの定義は実は少々あいまいなのですが、警察庁組織令第三十九条では「テロリズム(広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。)」 と規定されています。
なんらか政治的な考えが根底にあり、それを暴力的手段で相手に押し付ける行為ということになります。
これも、インターネットによって、国際的なテロ行為が行われるようになっています。
イスラム過激派組織であるISISが、テロの賛同者をインターネットで募集をしていた話は有名です。
そして、最後が「サイバー戦争」。
国同士が兵器によって闘争を繰り広げる、というのが戦争の定義ですが、今やその戦場がサイバー空間にまで広がっているのです。
実際に銃弾が当たるわけではありませんが、相手の国のインフラを麻痺させるなどの攻撃は、結果として同等の戦果とみなすこともできるわけです。
テクノロジーは人を幸せにするために存在しているはず
人間に便利さや快適さを提供できるはずのテクノロジーが、人を傷つけるための手段になってしまうのは、本当に悲しいことです。
でも、多くのテックカンパニーはそれに賛同なんかしていない、とボクは確信しています。
SF作家、アイザック・アシモフの小説の中に登場する「ロボット工学三原則」には、以下のように記されています。
<第一条>
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
<第二条>
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
<第三条>
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
もちろんこれは小説の話なので、現実世界にそのまま反映するにはいろいろな矛盾が出るかもしれませんが、多くのロボット技術者はこの原則は頭にあるのではないかと思います。
また、ボクの古巣のマイクロソフトでは、AI開発の原則として、以下のように規定していました。
●包括性
●信頼性と安全性
●公平性
●透明性
●プライバシーとセキュリティ
●アカウンタビリティ
いずれも、「いかに人が安心してテクノロジーに触れることができるのか」が現れているとボクには感じられます。
戦争をする上で、コンピュータをはじめとするさまざまなテクノロジーが使われているのは事実です。
しかし、本来テクノロジーは人を幸せにするために存在しているはずだ、というのがボクの考えです。
アルフレッド・ノーベルが、自身のダイナマイトの発明が兵器の威力増大を招いたことを憂いて、ノーベル賞を設立したのも、「テクノロジーが人類の脅威になってほしくない」という思いからだったのかな、と想像しています。
これからも、ボクは人を幸せにするためにテクノロジーと向き合っていきたいと思っています。
自分に嘘をつかない、
無理はしない。
だから、可能性が広がっていく。
マイクロソフトを卒業して、
自分らしく生きる僕が大事にしていること
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