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LayerX松本勇気が解説、エンジニアのキャリア形成理論「リスク/リターンの考え方は投資と同じ」

働き方

東大在学中に起業し、ニュースアプリの先駆けとなったGunosyのCTOに就任。その後DMM.comのCTOを経て、現在はSaaS×Fintechを手掛けるLayerXの代表取締役CTOとして活躍する松本勇気さん。

輝かしいキャリア選択の背景には、常に「投資家思考」があったと話す。それは一体どういうことなのか。2022年2月26日(土)開催「type エンジニア転職フェア」内で行われた松本さんの講演からお届けする。

前半の本記事では「キャリアの投資家思考」の基本的な考え方を紹介しよう。

プロフィール画像

株式会社LayerX 代表取締役CTO 松本勇気さん(@y_matsuwitter

東京大学在学時に株式会社Gunosy入社、CTOとして技術組織全体を統括。またLayerXの前身となるブロックチェーン研究開発チームを立ち上げる。2018年より合同会社DMM.comCTOに就任し技術組織改革を推進。大規模Webサービスの構築をはじめ、機械学習、ブロックチェーン、マネジメント、人事、経営管理、事業改善、行政支援等広く歴任。19年日本CTO協会理事に就任

自分が持っている「資産」を運用してキャリアを築いてきた

今回のお話のテーマは、キャリアにおける意思決定を「投資家思考」で考えてみようというものです。その話をする前にまず、私の経歴を簡単にご紹介します。

私は2008年に大学に入学したのですが、学生時代はちょうどFacebookやTwitterが大きくなって、SNS起業ブームが起きていた頃でした。私も大学の知人に誘われて学生起業をしたわけです。

いくつかのアプリを立ち上げたり、フリーランスで開発を請け負ったり。今考えると技術的には未熟なものでしたが、文字通り寝る間を惜しんでコードを書いて、作りたいプロダクトに向き合いました。

それによって、ものづくりのイメージがつかめましたし、自分の技術で生きていくことができるという自信も持つことができました。

その頃から、自分のキャリアに対して「リスクを取って向き合おう」という考え方をするようになったと思います。

その後、2013年にニュースアプリのGunosyに出会い、アルバイトから始めてプロダクト統括、CTOを経験しました。Gunosyは2年半で上場しているので、とてつもないスピード感だったと記憶しています。

GunosyのR&D部門で、後にLayerXとなるブロックチェーン技術の新チームの立ち上げに関わった後で、2018年にDMM.comに移籍して、2021年に再びLayerXに戻ってきたという経歴です。

さて、最初に申し上げたように、自分のキャリアを振り返ると、「投資家的な考え方」で意思決定をしてきました。

自分が持っている「資産」を、市場環境やリスク、ポートフォリオといった側面から、どう運用するかという視点で捉えていたわけです。この考え方について、順番にお話ししていきたいと思います。

キャリアの「リスクとリターン」を定義せよ

松本勇気

投資において、最もシンプルで大切な概念が「リスク」と「リターン」です。

一般的には、リスクが大きければリターンも大きく、リスクが小さければリターンも小さい。キャリアにおいても、リターン、つまり得たいものや目的と、それを実現するために、手元にある選択肢のリスクはどれくらいなのかを、まず整理することが大切です。

この時「リスク=何か危険なことが起きる可能性」と理解されることが多いですが、そうではありません。

リスクの定義は、「予測とのズレがどれくらい起きるか」。ですから、これはマイナスにズレるだけでなく、プラスにズレてもいけないわけです。

予測からズレるということは、その物事に対して、自分の理解が足りていないということ。そしてそれは、コントロールができないということです。

コントロールができないと、同じことをしようとしても毎回結果が変わってしまう。つまり再現可能性がないんですよね。

もちろん、社会で起きることに完璧な再現性があるわけではありません。ですが、その幅をできるだけ抑えることが望ましいわけです。

一方の「リターン」は、自分が得ようとしている目的そのものです。

金融では単純で、リターンはお金でしかありません。しかし、ここで考えようとしているのは、キャリアや人生のことです。

人生を測る指標は、お金ももちろん含まれますが、それだけではない。自分にとって大事な指標は何かを考えて、定義してみる必要があります。

このリターンを定義する時に大切なポイントは、それを達成して終わりではなく、「積み上がっていく(ストックできる)価値で定義する」ことです。

例えば、「プログラミングコンテストで一番になる」や「上場する」をリターンとしてしまうと、それは達成したら終わりで、「次はどうするの?」となってしまう。

お金という指標が便利なのは、それが無限に積み上げることのできるものだからです。そういう指標は、実はお金だけでなく、たくさんあります。

例えば、知識や経験、技術力、信用などです。こういった積み上げることのできる達成は、次の「投資」すなわち良い仕事の機会につながります。

リターンを得るためには「探索と振り返り」を繰り返す

松本勇気

リスクとリターンを考える上で、投資では「不確実性」を小さくする必要があります。そのためには「探索と振り返り」が欠かせません。

つまり、ある仮説を立てて行動して、その結果を振り返ることで、それを知識や経験に変えていく。すると、投資のリスクとリターンを、より精緻に検証することができるようになります。

それによって不確実性が減少し、着実な資産運用ができるようになるわけです。

これらを順番に見ていきましょう。まずは「仮説」です。今持っている知識や手段で、どうしたら目的を達成できるかを想定する。それに基づいて実際に「行動」をすると、結果が得られます。

多くの場合、結果は仮説の想定とズレたものになるので、そのズレがなぜ起きたのか、原因を特定します。そうした「振り返り」をすることで、自分に何が足りなかったのか、どうすれば良いのかが見えてくる。それが「知識化」ということです。

そしてこのサイクルを繰り返していくことで、仮説がより精密になって、不確実性が小さくなり、着実にリターンを得られるようになるのです。

人生の「ポートフォリオ」をつくろう

松本勇気

ここまで、リスクとリターンを検証し、その不確実性を最小化する方法を考えてきました。

ただ、これはあくまで「個別の投資でどうすべきか」という話。次に、手元の資産をどのように投資に「配分」するか、を考えるステップに入ります。

例えば、自分の貯金をすべて一つの投資に注ぎ込むことはリスクが高すぎますから、普通は複数の金融商品に分散します。その配分や組み合わせのことを「ポートフォリオ」と言います。複数の投資を組み合わせることで、リスクの一部を相殺することができるようになるわけです。

これを個人のキャリアに落とし込んだ時、「資産」とは「お金」だけではありません。例えば、みんなが平等に持っている「時間」。あるいは、「体力」「信用」「知識」も資産です。

これらの使い方をどのように割り振っていくかが「ポートフォリオ」の考え方です。

この時、そもそも今自分の資産はどういう状況か、すなわち何が投資可能なのかということを把握しておく必要があります。

例えば、若いうちは時間や体力に余裕があります。僕が学生時代に、ろくにプログラミング経験がないまま起業したのも、そうした時間や体力を投入することで、起業やプロダクト開発の経験というリターンを得ることを目指したと言えます。

このように、達成したいリターンに向けて、適切な資産の配分に基づく意思決定をしているかどうか。そして、十分なリスクを取っているか(=挑戦しているか)が投資の考え方です。

このポートフォリオは、一度作って終わりではなく、常に見直していくもの。ですから、見直すタイミングや、見直すために検証しておくべき仮説は何かを意識しておくことも重要になります。後半では、このポートフォリオの見直し方を合わせて解説していきます。

文/高田秀樹

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