システム開発におけるプログラミングの進め方や注意点は? スキルアップ方法や人気の言語も解説
さまざまな工程にそって進んでいくシステム開発。しかし、一般的に「システム開発」と聞いて真っ先に連想されるのはプログラミング工程ではないでしょうか。
設計書に沿ってプログラムを書くことで、システムそのものを作り上げていく重要な工程であるプログラミング。今回はプログラミングの進め方や注意するポイント、システム開発の現場でよく使われるプログラミング言語について解説します。
プログラミングとは
プログラミングは、システム開発における上流工程である詳細設計で作成された詳細設計書に基づいて行われます。プログラム言語を用いてソースコードの記述(コーディング)を行う工程で、「開発工程」とも呼ばれます。
上流工程(要件定義・基本設計・詳細設計)で決定した仕様を実現するために、システムの操作画面やバッチ処理などをプログラミングで実装していきます。システム開発においては、プログラミング以降が下流工程と呼ばれることが一般的です。
プログラミングでは、コンピュータや他のチームメンバーが正確に理解できる、分かりやすいコードをミスなく記述することが求められます。そのため、コーディング規約に沿ってプログラムを作成していきます。コーディング規約とはソースコードを書く際の共通のルールをまとめたドキュメントです。
プログラミングの担当者
プログラミングを担当するエンジニアのことをプログラマーと呼びます。
プログラマーと混同されやすいポジションとして、SE(システムエンジニア)があります。SEは主に上流工程に携わり、クライアントとコミュニケーションを取りながらどのようなシステムを構築するのか決定し、要件定義~設計までを担当します。
プログラマーはSEが作成した設計書をもとにプログラミングを担当するため、役割が異なります。ただし、中小規模のプロジェクトではSEがプログラマーの役割を兼任することもあります。
プログラマーの業務範囲
プログラマーの基本的な業務内容は、SEが設計した設計書に基づいてコーディングを行うことです。またコーディングしたプログラムがきちんと動作するかのテストや、バグを見つけて修正する作業も含まれます。設計書通りにコーディングしてもうまく動作しない場合、SEと連携して仕様を修正する場合もあります。
コーディングには、ある特定の処理を実行したい場合でも、複数の書き方が存在することがあります。人間同士の会話でも言葉遣いによって伝わり方や分かりやすさが異なるように、コーディングにおいてもコンピュータに対して効率的で確実な命令ができる記述が求められます。そのためにも、プログラマーには高度な技術力が必要なのです。
プログラミングの基本的な進め方
では、プログラミングはどのように行うのでしょうか。企業やプロジェクトによって異なる場合もありますが、基本的な進め方について解説します。
・開発環境の構築
まずは開発を行うための環境を構築します。一例ですが、プログラミングを行うには以下のような環境を用意する必要があります。
・テキストエディタ
・プログラム実行ツール
・デバッグツール
その他、開発のためのさまざまなツールを集合させた統合開発環境 (IDE)や、プログラムの変更内容を正確に管理するバージョン管理ツールを導入する場合もあります。
・コーディング
構築した開発環境でプログラムを記述します。大規模なシステムの場合は一から全てコーディングしていくのではなく、「モジュール」と呼ばれるプログラムの部品のようなものを複数作成し、最終的に組み合わせることが一般的です。
また作業を効率化させるために特定の機能をコードとしてまとめたライブラリや、開発のための機能の枠組みを提供するフレームワークを活用することも多いです。
・動作確認・デバッグ
コーディングが完了したらプログラムを実行し、動作を確認します。予想した結果と出力結果が異なる場合、どこにエラーがあるのかを推定して修正を行います。この工程をデバッグ作業と呼びます。不具合の原因を探るデバッグツールを活用すると効果的です。
・ソースコードインスペクション
完成したソースコードを別の人がチェックする作業です。設計書と異なっていないか、コーディング規則に沿っているか、文法の誤りはないかなどを目視で確認します。この後の工程での手戻りをなくすために重要な作業です。
プログラミングの注意点
プログラムの質はシステムの完成度を左右します。良いプログラムを完成させるためには、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
設計書通りに作られているか常にチェックする
プログラミングにはさまざまなスタイルや流儀がありますが、最も優先すべきは設計書通りに作成することです。プログラミングはチームで行うことが多く、作業を行う個人が自身のスタイルを優先してしまうとプログラム全体の統一感がなくなってしまいます。設計書からずれていないか常に意識し、メンバー同士でレビューし合うことも効果的です。
同じ処理を何度も書かない
プログラム内の複数箇所で同じ処理を行う場合、何度も同じコードを書くことは避けましょう。そのコードにバグが見つかった場合に修正作業に手間がかかるうえ、可読性も悪くなります。同じ処理をするコードは関数やメソッド、クラスなどで抽出する方がメンテナンスや再利用がしやすいでしょう。
適切な命名を行う
変数名、関数名、メソッド名、クラス名などプログラミングでは命名する機会が多いです。適当な命名を行ってしまうと後から苦労するため、時間を掛けてでも適切な命名を行いましょう。具体的には以下のようなポイントに注意します。
・役割や処理など、意味のある名前にする
・なるべく簡潔にする
・一貫性を持たせる
コメントの書き方に注意する
誰が読んでもプログラムの内容が理解できるようにコメントで補足すると効果的です。ただしコメントが多すぎても可読性が下がるため、書くべきところを適切に判断しましょう。またコメントの内容は簡潔にし、常に最新の情報に更新します。コメントが古いままになっていると、ソースコードとの整合性が取れずトラブルに発展する可能性があります。
プログラミングスキルを向上させるには
業務だけではなかなかスキルアップを実感できない、というプログラマーの方に向けて、プログラミングスキルを向上させるための具体的な方法について紹介します。
公開されているコードを読む
世界中の人がソースコードを公開しているGitHubなどを活用するのがおすすめです。自分の使用する言語や作っているものに近いコードを読むことで、新しい視点や今まで知らなかった書き方、テクニックなどが見つかることもあります。
コードレビューを受ける
書籍や記事の校正作業のように、書いたコードを他の人にレビューしてもらうと、コードの品質が高まります。自分では気付かなかったフィードバックをもらえることも多く、スキルアップにつながるでしょう。また、レビューを行う立場でも気付きを得る機会は多いため、積極的に他人のコードレビューを行うのもおすすめです。
個人開発を行う
業務以外に独自でシステムやサービスを開発することも、スキルアップに効果的です。個人開発ではプログラミングだけでなく、設計を始めとする開発業務の全てを自分で行う必要があります。他のポジションを体験することで、普段の業務が進めやすくなる効果も期待できます。また、新たなプログラミング言語の習得にチャレンジすれば、対応できる分野が増すため、活躍の場を広げられるでしょう。
開発現場でよく使われるプログラミング言語
現在、プログラミング言語は約200種類以上存在すると言われています。それぞれのプログラミング言語には特徴があり、開発できるものが異なります。
時代のニーズやコンピュータの性能に合わせて、新たなプログラミング言語が開発されてきましたが、現在よく使われている言語はその中の10%ほどです。ここからは、開発現場でよく使われているプログラミング言語について解説します。
開発用途別に選ばれるプログラミング言語
プログラミング言語にはそれぞれ得意・不得意な分野があるため、プログラミング工程においてどのプログラミング言語を使用するかは目的によって選択されます。開発用途別に選ばれる代表的なプログラミング言語は以下の通りです。
・Webアプリケーション開発
Google ChromeやSafariなど、Webブラウザで利用できるアプリケーションは、ユーザーの要望やトレンドに合わせて細かいアップデートが必要です。そのため文法が分かりやすく扱いやすい言語がよく使われます。フロントエンド開発ならJavaScript、バックエンド開発ならPHP、Ruby、Pythonなどが代表的です。
・スマートフォンアプリケーション開発
スマホゲームや位置情報アプリなど、スマートフォンにダウンロードして使用するアプリケーションは、OSがAndroidかiOSかによって開発言語が異なります。Androidの場合はKotlin、Java、iOSの場合はSwift、Objective-Cが一般的です。
・業務システム開発
販売管理システムや顧客管理システムなど、特定の業務の効率化を支援することに特化したシステムを指します。大規模な開発に向き、プラットフォームを選ばないことから、業務システム開発の現場ではJavaが多く選ばれています。
また、汎用機を用いる業務システムのほとんどはCOBOLで開発されています。しかし、COBOLの新規開発案件は現在ほとんどありません。
・組み込みシステム開発
特定の機能を実現するために家電製品や自動車、製造ロボットなどに組み込まれるシステムです。IoT製品の広まりとともに注目を集める分野でもあります。処理速度の速さやCPUやメモリを効率的に活用するプログラムが求められ、C、C++、Javaなどが使われています。
プログラミング言語ごとの特徴
プログラミング言語には、それぞれ異なる特徴があります。 ここでは、検索エンジンでの検索数などをもとに月1回更新され、プログラミング言語の人気指標となっているTIOBEインデックスで1〜3位(2022年10月時点)のPython、C言語、Javaについて紹介します。
・Python
機械学習やAI、データ解析など先端技術の分野で注目を集める言語ですが、Webアプリ開発などさまざまな分野でも活用できる汎用性の高さが魅力です。構文はシンプルで読みやすく、比較的短いコードで複数の処理を記述することができます。計算処理やビッグデータ解析、Webアプリ開発など幅広い分野のライブラリが豊富なことも人気の理由の一つでしょう。
開発現場での需要の高さに加え、機械学習・AIエンジニアやデータサイエンティストは人材不足が深刻なため、Pythonを扱えるエンジニアは非常に将来性が高いと言えます。Pythonで開発された有名なサービスとしては、YoutubeやDropboxなどがあります。
・C言語
1972年に開発された歴史の古い言語で、汎用性の高さから安定した人気があります。特に処理速度の速さや性能の高さから、組み込みシステム開発での需要が高いです。
ハードウェアの制御知識なども求められるため習得難易度は高めですが、C言語を学ぶことでコンピュータやプログラミングへの理解は確実に深まるでしょう。
C言語はソフトウェアやOSの開発にも使用されています。有名なものではApacheやNginx、UnixやLinuxなどもC言語で開発されたものです。
・Java
Webアプリやスマホアプリ、組み込みシステムなどさまざまな分野で用いられ、世界的にも高いシェアを獲得しています。高速な処理が可能で大規模開発に向いていることや、OSなどの環境に依存せず扱いやすいことも人気の理由の一つでしょう。セキュリティも堅牢なため、大企業のシステム開発などにも多く採用されています。
Javaはオブジェクト指向型言語のため習得の難易度は高めです。しかし求人数も多く需要が高いため、習得すれば携われる案件の幅は広がるでしょう。Javaで開発された有名なサービスとしてはTwitterやEvernoteなどがあります。
プログラミングの役割や注意点を理解してスキルを向上させよう!
システム開発におけるプログラミング工程は、設計書の内容を実現させるための重要な工程です。プログラマーには想定通りにシステムが動作するよう、ミスなく適切なプログラムを書くことが求められます。また細かなポイントですが今回紹介した注意点などにも気を配ると、より品質の高いプログラミングが行えるでしょう。
また、プログラミング言語は用途に応じてたくさんの種類が存在します。プログラミング言語について理解を深め、扱える言語を増やしたりスキルアップしたりすることはプログラマーの活躍の場を広げるでしょう。ぜひこの記事を参考に、より良いプログラミングを行うための知識やスキルのアップデートを目指してみてはいかがでしょうか。
文/江副杏菜
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