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システム開発のテスト工程は重要なの? テストの種類や進め方を詳しく解説

エンジニア辞典

    エンジニアの方ならご存じの通り、システムは設計やプログラミングが終われば完成というわけではありません。開発したシステムの動作確認を行うテスト工程を経て、正式に完成となります。

    システムトラブルが発生すると、企業のみならず、時には社会全体に大きな影響を及ぼしてしまうため、システムの品質への要求レベルは高まり続けています。

    今回はシステム開発工程におけるテスト工程の重要性や進め方、テストの種類や手法などについて詳しく解説します。

    テスト工程とは

    システム開発におけるテスト工程とは、開発したプログラムが要件や設計書通りに作成されているか問題なく動作するかの確認を行う工程です。

    プログラミングは人が行っているので、どうしてもヒューマンエラーの可能性が存在し、バグや不具合がつきものです。そのため、リリース前には必ずテストを行ってバグを洗い出し、必要があれば修正をして期待通りの動作を確認してからクライアントに納品する必要があります。

    テスト工程はなぜ重要?

    ビジネスシーンはもちろんのこと、人々の暮らしにおいてITシステムは欠かせないものとなっています。

    システムの普及や進歩によって利便性が向上した反面、不具合の発生によりシステムがダウンしてしまった場合の影響範囲は計り知れません。多大な金銭的損害や社会的な信用失墜などの可能性あるため、システムにはトラブルが発生しにくい高い品質が求められます。

    システムの不具合は、多くの場合受注者(開発者)側に責任があります。納品後に発見されたバグはトラブルにつながりかねないため、納品前のテストは重要な役割を持つのです。

    テスト工程の担当者は誰?

    一般的にテスト工程を担当するのは、テストエンジニアテスターと呼ばれる人たちです。

    以前はプログラマーが開発の流れでテストを行ったり、経験の浅い新人エンジニアが行うことが一般的でした。しかし、近年は品質やセキュリティー面の要求が高まっているため、レベルの高いテストを行うため、専門知識を持つテストエンジニアやテスターが担当することが増えてきています。

    テストエンジニアとテスターの違いは、担当する業務範囲です。

    テストエンジニアはテストの計画から実施・評価・改善提案までを行います。テスト技法に関する深い知識だけでなく、プログラミングスキルや提案力も求められます。

    一方でテスターは与えられたテスト計画書をもとにテストの実施のみを担当します。未経験者の場合はテスターの仕事からスタートし、スキルを身に付けながら担当する業務範囲を広げてテストエンジニアにキャリアアップすることが多いです。

    テスト

    また、テストエンジニアと似た職種としてQAエンジニアがあります。

    QA(Quality Assurance)とは「品質保証」という意味があり、QAエンジニアはシステムの品質保証や品質管理を担当するエンジニアです。一般的にはテストエンジニアが開発中のシステムにバグや不具合がないかを確認し、QAエンジニアは完成したシステムに対してユーザーが実際に使用しても問題ないか、品質や耐久性を確認する違いがあるとされています。

    ただし、各企業やプロジェクトによってテストエンジニアとQAエンジニアを明確に区別していない場合も多いです。

    テストの進め方

    システムのテストは基本的に以下のような流れで進めます。

    1.テスト計画

    まずはテストの計画を立てます。具体的には以下のような項目を決定します。

    ・テストの目的
    ・実施期間、スケジュール
    ・実施範囲
    ・開始/終了条件

    システム開発に複数のベンダーが携わっている場合は、この段階で各関係者の調整を行いスケジュールを明確化します。

    2.テスト設計

    テスト計画に基づき、実際に行うテスト項目を作成します。開発した機能を網羅的にテストできるよう項目を洗い出し、最適なテスト手法を決定する作業です。最終的に決定事項をまとめた「テスト設計書」を作成します。

    3.テスト実施

    テスト環境を用意し、テスト設計書をもとに項目に沿ってテストを実施していきます。テストを実施したら必ずエビデンスを取得します。エビデンスとは、正しく動作した、または動作しなかったことを証明するための資料です。エビデンスとともに全ての項目のテスト結果を記録します。

    4.プログラム修正

    テストでバグや不具合を確認した場合は、プログラムを修正します。まずは原因を調査し、問題がある箇所と影響のある箇所を確認してからプログラムを修正して解消します。修正後は再度テストを行い、きちんと解消されているか確認できたら完了です。

    5.テスト評価・報告

    全ての修正が完了したらテスト結果を分析して資料としてまとめ、開発者や上司に報告します。レビューをもらい、もし不備や追加の依頼があれば再度テストを実施します。

    テスト

    テストの種類と手法

    テストには開発の進捗段階や検証する内容によって、さまざまな種類や手法が存在します。それぞれ詳しく解説します。

    テストの種類

    システム開発は細かいモジュール(機能を持つ部品のようなもの)ごとに開発を進め、最終的にそれらを組み合わせて完成させます。そのためテストも段階を踏んで順番に実施していきます。主なテストの工程は以下の通りです。

    製造・単体テスト

    開発工程の後、初めに行うテストです。ユニットテストと呼ばれることもあります。作成したモジュール単位で要求される機能を満たしているか確認し、不具合がある場合は開発工程に戻って修正します。モジュール単位でテストするため原因の特定や修正がしやすく、後工程での手戻りを減らすことができます。

    結合テスト

    製造・単体テストをクリアした複数のモジュールを組み合わせて、正しく動作するか、想定通りに連携し合うかをテストします。例えば、入力した値が指定した処理を経てデータベースに正しく格納されるかなど、機能単位でチェックしていきます。結合テストによりモジュール間の構造の問題を早期解決できます。

    システムテスト(総合テスト)

    各モジュールの連携や機能が問題ないことを確認できたら、全てを結合しシステム全体に不具合がないかをテストします。システム全体で要件を満たしているか、設計書との不一致がないかを確認できます。本番環境に近い環境でシステムを実行し、実稼働で想定される負荷をかけてパフォーマンスに問題がないかなどをチェックすることも重要です。

    運用テスト

    クライアントにシステムを納品する前の最終テストです。実際のユーザーの操作内容を想定・実施し、操作性に問題はないか、トラブルが発生する可能性はないかなど細かくチェックします。クライアント側の担当者に実際に使用してもらってテストを行う場合もあります。実際に業務で使用する人にしか分からない部分もあるため、フィードバックをもらい改善していくことでユーザビリティーに直結する品質向上につながります。

    テストの手法

    ここまでテストの種類について紹介してきましたが、検証する内容によって、さらにいくつかの手法が使い分けられます。ここでは、代表的なテストの手法について解説します。

    ホワイトボックステスト

    システムの内部構造に重点を置いたテスト手法です。単体テストで用いられ、作成されたプログラムが設計通りに処理を実行できるか網羅的に検証します。具体的には以下のようなテストを行います。

    ・制御フローテスト:処理動作を確認する
    ・データフローテスト:データの流れを確認する

    ブラックボックステスト

    ホワイトボックステストとは対照的に、内部構造には着目せず、機能や性能、操作性などを確認する手法です。結合テストで用いられ、システムの内部構造を把握しない第三者がデータを入力し、正しいデータが出力されるかを客観的に検証します。具体的には以下のようなテストを行います。

    ・同値分析:条件をいくつか指定し、その中から代表値を選定してテストする
    ・限界値分析:ある範囲の境界部分を分析し、正しく処理されるか確認する

    確認テスト

    プログラムに何らかの変更や修正をした際に、不具合が起きないかを確認するテストです。システムテスト(総合テスト)で用いられます。具体的には以下のようなテストを行います。

    ・リグレッションテスト:特定箇所への変更・修正がほかの箇所への不具合を招いていないかを確認する
    ・デグレーションテスト:前のバージョンに戻ったり修正済みのバグが再発していないかを確認する

    評価テスト

    システム全体の性能全般を確認するテストです。システムテスト(総合テスト)で用いられます。以下のようなチェック項目があります。

    ・セキュリティテスト:不正アクセス防止や情報漏えい防止などのセキュリティ機能が正常に働き、要件を満たしているか確認する
    ・ユーザビリティテスト:ユーザー視点でシステムの操作性や視認性を確認する
    ・障害許容性テスト:障害発生時に指定する最低限の機能を維持した状態でシステムが稼働するか確認する

    負荷テスト

    システムに負荷が生じた際の耐久性や処理能力を確認するためのテストです。システムテスト(総合テスト)で用いられます。具体的には以下のようなテストを行います。

    ・性能テスト:処理能力が仕様を満たしているか確認する
    ・ロングランテスト:長時間の稼働による処理能力や稼働率に問題がないか確認する
    ・ストレステスト:高負荷をかけた際の挙動を確認する
    ・ロードテスト:通常時と高負荷時をそれぞれ想定して稼働させ、耐久性・パフォーマンス性を確認する
    ・キャパシティテスト:データ量やユーザーが増えた際の挙動と対処方法を確認する

    テストエンジニア・テスターのキャリア

    一部ではテストエンジニア・テスターはキャリアアップしにくいと言われることもあるため、将来性に不安を感じる方も多いかもしれません。しかし経験を生かしながら新たなスキルを身に付けていくことで、ステップアップする方法はたくさんあります。ここでは具体的なキャリアパスについて紹介します。

    スペシャリスト

    技術を磨きたい方は、経験を積みながらテストに関するより専門的なスキルを高めてスペシャリストを目指すキャリアパスがあります。

    資格を取得したり、特定の業界に特化したスキルを習得したりするのもおすすめです。社内での評価が上がる、もしくはより評価される他社への転職によって年収アップも狙えます。

    テストリーダー・テストマネージャー

    一般的にテストはチームで行うため、チームを率いるテストリーダーやテストマネージャーを目指すキャリアパスです。マネジメント力やコミュニケーション力などプラスのスキルが求められますが、責任感ややりがいを感じられる重要なポジションです。

    テストアナリスト

    テストアナリストはシステムの仕様を深く理解してどのようなテストが必要か定義したり、テスト計画やテスト結果を分析したりして、それらへの対策立案を行う専門職です。

    分析能力をはじめ、テストエンジニアのスキルを含めより幅広い知識が求められます。データ分析やデータ活用が重要視される近年、需要が高まっています。

    キャリアチェンジする

    テストエンジニアの経験を生かしてキャリアチェンジをするのも一つの手段です。例えば、テストを行う中で接するプログラムに興味を持ち、プログラミングスキルを身に付けてプログラマーに転職するケースもあります。

    また、あらゆる業界で需要の高まるセキュリティーに関する仕事も、システム開発に携わったテストエンジニアの経験が生かせるでしょう。新たなスキルを身に付ける必要がありますが、システムやITの基本スキルを生かせる仕事ならキャリアチェンジのチャンスは多くあります。

    テストの種類や役割を理解して、システム全体の品質を向上させよう

    ビジネスにおけるIT活用が重要な役割を担う昨今、システムの安定稼働は企業の生産性向上に欠かせないものとなりました。テストは一見地味な作業にとらえられがちですが、システムの品質を左右する重要な工程です。

    今回紹介したようにテストには多くの種類や手法が存在します。それぞれのテストの特徴や目的を理解し、システム全体の品質向上を目指しましょう。

    文/江副杏菜

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