アイティシージャパン株式会社の中途採用情報
設立以来30年以上、連続黒字の安定した経営基盤
SIerが「脱・人月ビジネス」を実現するには?PM歴20年以上のベテランに聞く3つのポイント
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エンタープライズのシステム開発現場では、いまだに「人月」という言葉が当たり前のように使われている。
何人が何カ月かけて開発するか、その積=人月がコスト算出の根拠となる現状が変わらないのは、それ以外の判断基準で見積もりを算出することが難しいという点があった。
しかし、本来のシステムの価値とは、開発・納品した成果物の使い勝手や、保守・運用を含めた事業貢献度にあるはず。この観点から、近年は人月ビジネスから脱却して本質的な価値を提供しようとする企業が増えており、クラウド利用を前提とした「納品のない受託開発」や「定額パッケージSI」など、新しいビジネスモデルも登場している。
そんな中、東京・大森にオフィスを構え、設立34年を迎える老舗SIerのアイティシージャパンは、約20年も前から「脱・人月ビジネス」を実践してきたという。
1984年に日本初の商用パソコン通信サービス『JALNET』を日本航空と開発したという、長い歴史と実績を持つ同社。自らをSIではなくBI(ビジネスインテグレーター)と呼び、さまざまな顧客との長期的な元請け契約を継続してきた。
なぜ、アイティシージャパンは他社に先駆けて「脱・人月」を具現化できたのか?その秘密と具体的な打ち手を、この道20年を越えるプロジェクトマネジャー(以下、PM)として今も活躍する同社の専務取締役・井上清貴氏らに聞いた。
業界の慣習に染まらず現場で培った知恵が「脱・人月」につながった
井上氏はアイティシージャパンに新卒で入社。その2年後、PMのポジションに就いている。そのため、一般的なSIerがどうやってプロジェクトを運営しているのか、詳しく学ばずに育ったという。
「当時の状況を振り返ると、PMにならざるを得なかったのです。当時、社員がまだ4名しかおらず、呼ばれたらどの現場へも1人で出かけていくような状態でした」(井上氏)
プロパー社員が4名と限られている上、パートナー企業に依頼を出したとしても、確実にその人員が構成できるとは限らない。当時の同社にとって、「人月計算」という考え方は理に叶わなかったのだ。
そのため、少人数でもシステム開発を滞りなく進める手法や、品質向上に向けた知識を付けることに腐心したという。そうやって得た知見が、現在のアイティシージャパンにおける開発スタイルの土台になっている。
井上氏は、顧客へのアウトプットの質にこだわるため、以前から継続して3つのポイントを徹底してきた。
【1】顧客の現場に入り込み業務を熟知する
【2】専任担当者がプロジェクトの上流から下流まで一気通貫で携わる
【3】目の前の利益に飛び付かない
「最初は1、2カ月ほどお客さまの会社で実際に起票作業をしてみるなど、業務内容を身をもって理解するところから始めました。『他社のエンジニアはここまでやらないよ』と言われたこともあります」と、【1】現場に入り込み業務を熟知することを実践してきた理由を説明する。
「どういうシステムを必要としているか、お客さま自身も理解されていないこともあります。そのため、情報システム担当の方と話しただけでは要件を把握できないと思っています。『お客さまが求めているものは、本当はこういうものではないですか?』と提案するためには、お客さまの業務を深く知る必要があります」(井上氏)
良いシステムを作るには、実装する前の下準備こそが大事――。これはSEやPL、PM経験のある人なら誰もがうなずく点だろう。
だが、理屈として分かっていても、その下準備を的確に行うための動き方をしている人は少ない。それゆえ、Excelでヒアリングシートを作り、ステークホルダーに回覧しながら表層的な要望を聞き出すような作業に終始してしまう。
このような作業に掛かる時間を短縮しながら、同時に最適な要件定義を行うためにも、井上氏は顧客の現場に入り込むわけだ。
アイティシージャパンでは、この【1】の時間を「コスト」ではなく「投資」と捉えているという。
「そこまでやる以上、基本的に私たちは、お客さまのご要望に対して『それは実現できません』とは言いません。業務をきちんと理解し、何を解消するためのシステムが必要なのかを知れば、打開策はほぼ必ず見つかるからです。ただ、限られたリソースでは、どんな問題も解決するシステムの構築は不可能です。そこで業務改革やフローの変更についてもお客さまとお話しして決めていきます」
こうした考えの下、場合によっては他社とのコンペで発注が決まるような案件でも、顧客候補のRFP(提案依頼書)作成から支援するケースがあるという。
こういった事前の作業が、提案書と最終システムの不一致をできるだけゼロに近付け、予期せぬ仕様変更を発生させないための布石となるからだ。
アウトプットの質を高める、独自のプロジェクト専任制度
では、【2】専任担当者がプロジェクトの上流から下流まで一気通貫で携わるについてはどのように実践しているのか。システムインテグレーション事業部・旅行ソリューション部で部長を務める上原剛介氏は、入社するまで2次請けのSIerで働いていた。10年ほど前に同社の評判を耳にし、仕事へのやりがいを求めて移籍してきたという。
「以前の会社では、お客さまとの打ち合わせの際に『こうした方がいいのでは』と思うことがあっても、それを口にできない立場。それでは良いシステムは作れないと感じていました」(上原氏)
「こうした方がいい」とは、主に業界の多重下請け構造に起因する、営業~設計~実装~運用の分業制を廃することだ。
大規模プロジェクトでありがちな上流工程~実装工程~テスト工程の分業化もしかり、このやり方は井上氏が指摘する「提案書と最終システムの不一致」を生む理由の一つとなっている。
この問題を解決するには、上流から下流までを通して担当する専任者が必要となる。主に外部パートナーを含め10人規模のチームで開発を進めることの多い同社では、ほぼ必ず、誰かが1つの案件を網羅的にサポートし続けるという。
「当社はエンジニアが営業も兼ねています。私は前職時代、営業未経験でしたから、継続開発のご提案などは慣れるまで苦労しました。が、やるしかないと見よう見まねで覚えましたね。モノができあがった後も自分が担当することになるので、自然と良いモノを作ろうという気持ちになります」(上原氏)
また、顧客が大手企業の場合、担当者の人事異動が多いという問題もあるが、仮に顧客側の担当者が異動しても、アイティシージャパン側が過去の開発経緯を把握できているため“断絶”は起こらない。この点でも、同社の敷く専任制は理想的といえる。
そんな同社だが、一度分業制を試みたことがあるという。ところが、すぐに今の状態に戻した。その理由を井上氏はこう語る。
「一般的なSIの分業制を試してみようとしたのですが、うまくいきませんでした。どれだけ気を付けても、作る側と保守をする側との間に、コミュニケーションのズレが生じてしまうからです」(井上氏)
顧客以上に顧客のことを意識し、モノを作り上げる。個人レベルでこの考え方が根付いた同社には分業制の仕組みははまらなかった。
「やはり、我々は作った後のことも気になりますし、知りたいのです。ですから半年ほどで元の体制に戻しました。もともとソフトウエアのプログラマーだったプロジェクト担当者でも、サーバの選定を行い、構築し、サーバラックへセットするといった作業を行いますし、リリース後は運用・保守にも関わります。ここまでやることがウチらしいんでしょうね」(井上氏)
SIの世界では、長期間にわたる案件に塩漬けされてしまうことで担当者が新たな技術知識が得にくくなるという話もよく聞くが、上原氏はこの点をどう感じているのか。
「以前は『作って終わり』でしたが、今はその後もお客さまとお付き合いがあるので、いろいろな方からシステムへの感想や要望をいただけるのが励みになります。と同時に、新しい知識も常に必要になります。長くお付き合いしていく中では、お客さまの要望にバラつきが生じることもありますので。そこを調整し、最適なモノを作り続けるのは、頭の使いどころとしてはとても面白いです」(上原氏)
「御用聞き」では脱・人月を達成できない
ただ、どんな案件でもここまで入り込んでの開発ができるかというと、そうではない。顧客の業務理解を投資と捉え、それを長期にわたって回収するという考え方は、単発のシステム開発には向かない。
なので同社では、継続的な関係の構築が難しそうな案件は断ることもあるという。つまり、【3】目の前の利益に飛び付かないということだ。
「私たちがやりたいのは、短期の売上げを追求することではなく、お客さまが将来的にメリットを享受できる仕組みとモノを作ることです。リリースはゴールではなく、スタートだと認識しています」(井上氏)
こうした同社の流儀は、若い世代にも伝授されている。井上氏は「早い段階から顧客の下へ足を運び、打ち合わせにも同席してもらう。言葉だけでは伝わらない現場感、温度感を身に付けさせることが重要」と語る。
「例えば、私からお客さまへ新システム構築のご提案をしている際、同席する私の上司からのフォローが入ったとします。それは、提案内容に対して、私の理解が足りないということです」(上原氏)
こうした経験こそが、【1】~【3】を実践するための土台を作り上げるのだろう。
「もちろん内部レビューは済んだ状態でお客さまの元へ出向いているのですが、打ち合わせでは予期せぬことが起こるものです」と、上原氏は自身の経験を振り返る。現在は入社2年目の若手SEを打ち合わせ段階から同席させ、成長を促しているという。
そうすることで、打ち合わせで出た課題を持ち帰ることなくその場で解決できるというメリット以上に、「アイティシージャパンはお客さまの御用聞きではなくパートナーだ」(上原氏)という自負を持ってもらうためだ。
数千人規模の超大規模開発でも、同社のようなやり方が実現可能なのかは一考の余地があるだろう。それでも、SIerが脱・人月ビジネスを実現するヒントは、同社の築いてきた歴史と文化に隠れているとは言えるはずだ。
取材・文/川野優希(編集部) 撮影/小林 正
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