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頑張っているのに報われない? スクラムマスター初心者が陥りなちな“チームのお母さん化”の落とし穴

働き方

開発チームのサポートに欠かせない「スクラムマスター」。

メンバーが開発作業をスムーズに遂行できるよう支える役目だが、スクラムマスターになってから「気疲れしてしまう」「チームもなかなか成長しない」と悩む人も多いのでは?

そんなスクラムマスターには、メンバーを気遣うあまり名前のない作業をとにかくひろう“チームのお母さん”的な存在になっていないか問い掛けてみてほしい。

チームのお母さん化”の落とし穴

自身もスクラムマスターを務め、「さんざん悩んで失敗してきた」と話すのはニフティ株式会社の西野香織さん。

試行錯誤を重ねながら、スクラムマスターが本来果たすべき役割は何かを見いだしてきた。そんな西野さんが2022年11月2日に開催された『Women Developers Summit 2022』で語った経験談をご紹介しよう。

プロフィール画像

ニフティ株式会社
会員システムグループ
西野香織さん(@nissynyossy

ニフティのスペシャリストを任命する「N1!制度」にて、スクラムエヴァンジェリストを担当。2019年〜スクラムマスターとして、ニフティへのスクラム導入を開始。8チーム、エンジニア約30名以上に対しスクラム導入を支援する。アドバンスド認定スクラムマスター(A-CSM)資格所持

「良かれと思って」の積み重ねで、何でも屋状態に

チームのお母さん化”の落とし穴

私は3年前からスクラムマスターとしてニフティの開発チームのスクラム導入を支援してきました。支援実績は8チーム、エンジニア30名以上です。

最近社内でスクラムマスターの資格を取る人が増えてきました。そんな人たちと話していてよく聞くのが、「チームのお母さん状態になってしまう」という悩み。

私もスクラムマスターになったばかりのころ、同じ悩みを抱えていましたし、似たような境遇の人たちはきっと社外にもたくさんいると思います。

そこで今回は、「スクラムマスターの本当の役割とは何か?」「どうしたらチームを成長させられるのか?」などについて私なりに考えてきた結果をこの場でシェアしたいと思います。

私がスクラムマスターになった当初、メンバーが働きやすい環境をつくりたいと思うあまり、開発以外の仕事を全部引き受けようとしていました。

各所との調整や資料の準備など、名前のない無数の仕事をとにかく先回りしてこなしていました。あの頃の私の仕事は「よかれと思って」の繰り返し。「何でも屋」状態でした。

また、そういう私の姿を見ていたメンバーも、「スクラムマスターって細かいタスクをやってくれる人なんだ」と認識していたと思います。

チームのお母さん化”の落とし穴

だけど、世の中のお母さんが家事をしているのと同じように、特段感謝もされません。自分はこんなに周囲に尽くしているつもりなのに……とモチベーションを維持するのも難しくなっていきました。

さらに、そんな状態がトラブルを引き起こしたこともあります。2日ほど会社を休んだ時のことです。

プロダクトオーナーと私が話をしていたことがメンバーに伝わっておらず、現場を混乱させてしまいました。日々のほそぼそとした雑務に追われて、チームの状況を見る余裕がなくなっていたのです。

チームのお母さん化”の落とし穴

メンバーに献身するのではなく、チームの成長に献身することが本来の役目

そこで、自分の状態を改めてじっくり考えてみて、ようやく気付いたんです。

私はほそぼそとした仕事をすることでチームメンバーに献身した気になっていたけれど、本当は「チームの成長」に献身するべきだったんだ、と。

つまり、チームが得意なことを伸ばし、苦手なことを克服できるよう導く。それがスクラムマスターの役割だ、と思い直しました。

チームのお母さん化”の落とし穴

それからは、自分のやっていた仕事の一部をメンバーに任せてみることに。手始めに、デイリースクラムのファシリテーションをローテーション制にしました。

これによってメンバーに自分たちの仕事を自分たちで管理していこうという意識が芽生えたように感じます。

さらに、他の人のファシリから学ぶこともたくさんありました。この人はすごく傾聴が得意だなとか、あの人はこんなにラベリングが上手かったなんてとか、メンバーの長所にも気付けたのは思わぬ収穫でしたね。

メンバーを信じて任せる。仕事を増やすときは理由とセットで伝えること

以前の私のように、「メンバーの仕事を楽にしてあげたい」だから、「業務を減らして負担を減らしたい」と思ってしまうスクラムマスターもいるかもしれません。

そんなときは、要注意です。ほそぼそしたことを一人で巻き取ってしまう「なんでも屋」は、チームの成長機会を奪ってしまう存在にもなり得ると考えてみてください。私がそうだったように、「よかれと思って」は危険信号なのです。

チームのお母さん化”の落とし穴

スクラムマスターの具体的な仕事は定義されていません。また、私はスクラムを「導入期」「適用期」「活用期」に分けて考えているのですが、フェーズに合わせて柔軟に振る舞いを変えていくべきだと思います。

導入期や適用期にはスクラムのルールを伝えないといけないのでティーチングを多めに、適用期から活用期に移るときはコーチングを増やしていく、といったようにです。

このとき、「これまでスクラムマスターがやっていた仕事の一部をメンバーに任せるけれど、それはスクラムが次のフェーズに移ったからです」としっかり伝えることができれば、多少仕事が増えてもスクラムが成長しているのだと前向きにとらえてもらえるはず。

チームを信じて任せる。そしてフォローすることがスクラムマスターの本当の仕事なのです。

文/まゆ

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