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「何でも屋」は「何もできない屋」? エンジニアの専門性の深め方 【キャディばんくし・Sansan藤倉成太・ZOZO瀬尾直利/聴くエンジニアtype Vol.6】

働き方

エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! エンジニア読者が抱える仕事やキャリアのお悩みに、注目企業のCTOやさまざまな領域の第一線で活躍する技術者が回答します
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今回は現場の中堅を担うであろう、29歳のエンジニアからの質問に回答! 「特技のない何でも屋になってしまっている」という不安の声に、藤倉成太さん、瀬尾直利さんはどう答えてくれるのか。今回もばんくし(河合俊典)さんと一緒に聞いていく。

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【MC】
キャディ株式会社 Tech Lead
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish

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【Speaker】
Sansan株式会社 執行役員/技術本部 インフラ戦略部 部長/同 海外開発拠点設立準備室 室長
藤倉成太さん(@sigemoto

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【Speaker】
株式会社ZOZO 技術本部 本部長 兼 VPoE
瀬尾直利さん(@sonots

【今回の相談】

Yさん(29歳)

人の役に立ちたくて頼まれた仕事は前のめりで引き受けてきた結果、携わってきた仕事の種類がバラバラな「何でも屋」になっていて「〇〇が得意」と断言できるようなスキルがありません。

このままでは「何もできない屋」になってしまいそうで不安なのですが、専門性を磨くためにも仕事は選ぶべきでしょうか?

仕事を選ばなくても、専門性は見つけられる

河合:専門性を磨くためにも仕事は選ぶべきでしょうか、という質問ですね。

まさに「何でもできそう」な藤倉さんからお話を伺っていきたいのですが、 いかがでしょうか?

藤倉:仕事は選ぶべきか、という問いに答えるとすれば、選ばなくてもいいのではないかと思います。

質問には「何でも屋」「何もできない屋」という言葉が出てきていましたが、「何でもできる屋」になったらよいのではないでしょうか。

相談者さんも、いろいろなことを任されても「結果が出せません」とは言っていないので、 ある程度のことはきちんとできてきてる感覚があるはずですよね。いつかその経験の点と点が線になったり、面になったりして、自分の専門性がおぼろげながら見えてくると思います。

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河合:相談者さんは29歳なので、現場の中堅層ですよね。藤倉さんは中堅のとき、すでにご自身の得意分野を把握していましたか?

藤倉:29歳というと、私の場合はアメリカから戻ってきてビジネススクールに通い始めた頃ですね。その時は、自分の得意分野は分かっていませんでした。30代でSansanに転職し、相対的に自分が得意なことが見えてきました。

私は物事の考え方が良くも悪くも抽象的になりがちです。そのため、説明するのが苦手というか、抽象度が高くなってしまうことがあります。分かりにくいと思われることも少なくないのですが、全体設計の抽象度を上げたり、下げたりすることができるのはアーキテクトとしての強みでもあったのです。

弱みだと思ってたものが強みになることもあると気付けたのは30代になってからのことです。

河合:強みに気付く具体的なきっかけは何だったんですか?

藤倉:メンバーと設計の議論をしている時です。

どんな設計をしたとしても、期待される動きはある程度実現できますよね。ただ、ドメインモデリングなどの場合は、機能の抽象度を上げることによって汎用性を高めるようなテクニックが必要になることがあります。

別の機能についても同じように考えてみたらいいのではと思い、こういう設計の方が望ましいのでは? と提案すると、「確かにね」と言ってもらえることがありました。

そういった経験が積み重なっていくと、自分自身も「こういうことが得意なのかも」と気付くようになったし、周囲からも「システムの全体設計は藤倉にやらせた方がいいよね」と思ってもらえるようになりました。

その結果、チーフアーキテクトという仕事に落ち着きました。

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河合:その経験がなければ、自分の得意分野を知ることができなかったかもしれないということですね。

一方で瀬尾さんはMLOpsやOSSなど明確な得意分野をお持ちの印象があるのですが、今回の質問についていかがですか?

瀬尾:私としては、何でも屋は「何でも屋」という動き方そのものがスペシャリティーだと捉えているので、不安を感じる必要はないと思います。

面接でも、そういう動き方が得意な方はその点を評価して採用することがありますよ。マネジャーの立場からすると、そういった人がチームにいてくれるととても助かりますし、評価したいと思います。

それでも不安に思うのであれば、何でもやりつつ何か一つでも専門性を磨く「逆T字型」人材を目指すとよいのではないでしょうか。自分の特技や専門ジャンルを一つ見つけて、チームの中で活躍できる場所を探していくと自信もつくはずです。

ただ、深掘りするなら続けられるものでないとダメなんです。やらされ感があると続かないので、自分が得意だと思える分野の中から席が空いてるものを選び、バリューを発揮していくといいと思います。

私自身、Rubyを深堀りした経験があり、その結果Rubyのコミッターになりました。この経験のおかげで、機械学習でPythonに触ることになった時も、課題解決がカジュアルにできるようになりましたね。「Pythonだとなぜここが遅いんだろう」という疑問が出てきたとしても、言語処理系を確認し、ソースコードを読めばいいので。

つまり、何か一つでも深掘りしておくと、後で幅を広げる時にスピーディーに深いところまでたどり着けるようになるんです。

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河合:今回の質問者さんの年齢的に、中堅層としてチームに欠かせない存在なのかな、と思います。もしかしたら、自分の得意分野の目安は付いているものの、いろいろなことをやらないと現場が回らないのかもしれないな、と。

私もマネジャーなのでこれは難しい状況だなと思うのですが、この場合どう行動したらいいのでしょうか? ぜひマネジャー視点でアドバイスをお願いします。

瀬尾:マネジャー視点で言うと、引き続き何でもやってもらえると助かるのが正直なところですが(笑)、メンバーがキャリアに不安を感じているのであれば、その障壁を除いてあげるのがマネジャーの仕事ですよね。

なのでマネジャーが、得意なことを伸ばせるような仕事をアサインしたり、環境を作っていかなければならないと思います。

河合:つまり、仕事を選ぶ必要はないけれど、キャリアについてはしっかり相談していくことが大事ということですね。

チーム内での専門性の伸ばし方って?

河合:先ほど瀬尾さんはRubyを深掘りした結果、それがオリジナルのスキルになったと言っていましたよね。当時は何をモチベーションにしていたのですか?

瀬尾:当時は仕事でRubyを使っていたんですよ。なので、インフラエンジニアとしてRubyのアプリケーションのパフォーマンスチューニングをしたり、問題が起きた時のトラブルシューティングをしたりする必要がありました。

業務上必要なスキルと、自分が身に付けたいと思うスキルを深掘りしていった感じですね。

河合:業務を中心に広げていった先にRubyがあったんですね。

ちなみに、自分の得意分野だと思っていたものが実際には違った……といったケースもあるのでしょうか?

藤倉:得意不得意って、結局のところ他人との相対比較になるんですよね。私もマネジャー経験を持つ身として、マネジメントには一定の自信や自分なりのセオリーがありますが、他の人のマネジメントを見て「あの人の方が上手だな」と思うこともよくあります。

得意分野で自分より上手な人がいるって、普通のことなんです。自分が世界で一番になることはなかなかないですからね。

河合:周囲とスキルを補完し合って、うまくチームを回していくってこと大事ですよね。伸ばしたいところを盗み合ってやっていけるといいんだろうなと思います。

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6月25日(日)『聴くエンジニアtype』公開収録を赤坂で開催!

ポッドキャストチャンネル『聴くエンジニアtype』初の公開収録を東京赤坂の会場で開催します。MCのばんくしさんをはじめ、澤 円さん、池澤あやかさん、小城 久美子さん、増井 雄一郎さんが、エンジニアから寄せられた仕事・転職・キャリアの悩みに回答。収録後には懇親会や、書籍サイン会も開催予定です!
※公開収録はエンジニアtype主催のテックキャリアカンファレンス『ECDW2023』の中のコンテンツとして開催いたします

>>エントリーはこちら(ECDW2023特設ページ)

【開催場所】
〒107-0052 東京都港区赤坂2-5-1 S-GATE赤坂山王ビル 5階
株式会社キャリアデザインセンター 赤坂山王オフィス

【参加費】
無料
※懇親会は15:30~30分程度の予定です
※懇親会への参加は自由です

【定員】
60名(先着)

【エントリー方法】
以下より詳細をご確認の上、エントリーフォームより必要事項をご記入の上エントリーください。

>>エントリーはこちら(ECDW2023特設ページ)

聴くエンジニアtype

文/まゆ

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