株式会社 PE-BANK
派遣営業部 部長
橋本譲二さん
2006年に新卒で株式会社PE-BANKの前身企業に入社し、約2年間システムエンジニアとして、業務系システム開発に従事。08年にPE-BANK営業部に異動し、月間最大90名のITフリーランスエンジニアのエージェント業務や年間50名以上のキャリアカウンセリングを担当。20年に新事業の派遣営業部を立ち上げ、事業責任者に就任
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時間や場所にとらわれず自由に働けて、頑張った分だけ稼げるというイメージがあるフリーランス。
会社員として働いているエンジニアの中にも、「いつかフリーランスに」と考えたことがある人は多いのでは?
しかし、フリーランスや派遣エンジニアの紹介事業を手掛ける株式会社PE-BANK派遣営業部 部長の橋本譲二さんは、「実際のところ、人材エージェントに頼らず一人でフリーランスとして安定して仕事を続けられる人は決して多くはない。ですので、そういった不安を払しょくできない正社員や転職を考えているエンジニアの方は、いきなりフリーランスになる前に、『派遣エンジニア』として働くことをおすすめしています」と話す。
その理由は一体何だろうか? フリーランスになってから後悔するエンジニアの共通点とあわせて聞いた。
株式会社 PE-BANK
派遣営業部 部長
橋本譲二さん
2006年に新卒で株式会社PE-BANKの前身企業に入社し、約2年間システムエンジニアとして、業務系システム開発に従事。08年にPE-BANK営業部に異動し、月間最大90名のITフリーランスエンジニアのエージェント業務や年間50名以上のキャリアカウンセリングを担当。20年に新事業の派遣営業部を立ち上げ、事業責任者に就任
ーーフリーランスとして安定して仕事を続けられるエンジニアは多くはないということですが、最も多い失敗ケースとは?
弊社では、業務委託の人材を求めている企業とフリーランスエンジニアをつなぐサービスを行なっていて、現在、フリーランスとして活躍されていて更にスキルアップやキャリアアップしたい方からのご相談や、正社員を辞めてこれからフリーランスになりたい方など、私自身もこれまでに数多くのフリーランスの方を支援してきました。
ですが、フリーランスになったはいいものの、長期的に案件を獲得することができず、仕事に行き詰って弊社へ相談に来られる方も少なくありません。
最初のうちは、会社員時代にお付き合いのあった企業から案件をもらえて、何とか食いつないでいても、契約更新がなされずに、いつの間にか仕事がなくなってしまうことも多いのです。
ーーそれはなぜですか?
契約を打ち切られてしまう理由はさまざまですが、フリーランスとして安定して案件を獲得できないエンジニアには、大きく分けて三つのスキル不足があるように感じます。
ーーその不足しているスキルとは?
一つ目は、クライアントのニーズをくみ取る力。二つ目は、クライアントの希望をカバーするだけの技術力。三つ目は、クライアントと信頼関係を築く力です。
例えば、会社員なら、上司や先輩の指示やフォローもあり、ニーズを正確に把握できたり、相手の方から歩み寄ってきてくれたりする場面も多いと思いますが、フリーランスとなるとそうはいきません。
もともと会社員として働いてきた人が、意識や行動を変えるのは苦労することですが、それでもクライアントのニーズを汲んで成果で返していかなければ、「次もお願いしよう」とは思ってもらえません。
さらに、求める技術力がなく、不足している部分を補うだけの学習を自発的にできないとなれば、「別の人に頼みます」という判断を下されてしまう。
他にも、信頼関係構築力や交渉力、営業力など、会社員時代にはそれほど必要なかったスキルをいろいろ求められるので、それらをバランスよくカバーできない人だと長期的な案件獲得ができず苦しむことになってしまいます。
ーー自分がフリーランスとして長くやっていけるのかどうか確認するにはどうすれば?
フリーランスエンジニアになる前に、一度「派遣エンジニア」として働く期間を設けるといいと思います。
ーー派遣の働き方を試してみるわけですね。なぜその方法がおすすめなのでしょうか?
お試しで派遣エンジニア期間をはさむメリットは、大きく分けて下記の三つです。
メリット1:リスクや面倒は最小限に、手っ取り早く年収を上げやすい
メリット2:参画できる案件の種類が、フリーランスより豊富
メリット3:フリーランスの働き方を疑似体験できる
一つ目のメリットは、リスクや面倒は最小限にとどめて、手っ取り早く年収を上げやすいこと。
派遣の雇用形態だと、派遣先から獲得できる発注単価は経験1~3年目で約60万円、経験3~5年目で70万円程度* 、派遣元の事務手数料はおおよそ30%なので、それを差し引いても20代後半で月収約50万円、年収約600万円を目指せます。
* 中小SESで一人称で仕事をしていた正社員エンジニアが派遣に転向した場合の例
フリーランスと同様に、雇用が安定している正社員ではなくなるリスクは残ります。ただ、フリーランスと比較した場合、派遣社員なら確定申告のような面倒な事務作業もないし、社会保険がなくなる心配もない。その上で、頑張った分だけ収入を上げることができます。
実際、弊社で支援してきたエンジニアの中には、正社員から派遣に切り替えたことで、100万円以上年収アップすることに成功した事例も多数あります。
また、二つ目のメリットは、フリーランスと比べて派遣エンジニアの方が参画できるプロジェクトが豊富なこと。
フリーランスには自分で案件を選べる自由度がありますが、意外と「参画したくてもできない案件」があることはあまり知られていません。
近年は、フリーランスエンジニアの活用に積極的な企業も増えている一方で、セキュリティーやコンプライアンスの観点から派遣社員の活用を進めている企業が多いです。
例えば、研究開発(R&D)関連のプロジェクトや、派遣元とのアライアンス強化を目的に派遣会社と提携している案件、エンジニアを育成する前提でチーム力をあげていきたい企業のプロジェクトなどで、フリーランスよりも派遣社員が重宝される傾向があります。
最後に、フリーランスの働き方を疑似体験できるところも“お試し派遣”期間を設けるメリットです。
例えば、これまでずっと一社で正社員として働いてきて他社に常駐した経験がない人は、まずは派遣エンジニアとしてさまざまな企業や開発現場で働く体験をしておくといいと思います。
同じ開発職といえど、企業の風土や、自分が所属するチームの方針、プロジェクトメンバーにどんな人たちがいるのかによって業務の進め方や求められることは千差万別。
さまざまな環境に適応し、そこで求められることを120%の成果で返していかなければいけないところはフリーランスも派遣エンジニアも同じなので、フリーランスの向き不向きを確認する上でも非常に良い期間になると思います。
ーーとはいえ、「派遣切り」という言葉もあるように、派遣社員の待遇がいいイメージを持っているエンジニアは少ないかもしれません。実際はどうなんでしょう?
ここ数年で、派遣社員をとりまく環境はだいぶ変わってきました。
例えば、「同一労働同一賃金」に伴う改正労働者派遣法が施行され、多くの派遣会社は「労使協定方式」という方式で社員の待遇を確保しています。
これは、正社員と派遣社員の待遇の差をなくしていきましょうというもので、派遣会社は仕事の内容を公正に評価して賃金を決定し、通勤手当などもきちんと支払わなければいけない義務を負っています。
また、育児・介護休業法が派遣社員にも適用されるようになり、育児休業などを理由に解雇や雇い止めなど不利益な扱いをされることはなくなりました。
そして、エンジニアに関してはテレワークが主流になっていますから、働き方や社内での待遇も正社員との差は縮まっています。
ーー派遣エンジニアの中でも、企業からの採用ニーズが高いのはどんな人なのでしょうか?
新しいトレンドをキャッチアップできたり、フルスタックで働けたりするエンジニアへのニーズは特に高いです。
IT業界は開発トレンドの変化が速いので、自ら学んでアウトプットする力を持っていることも大前提だと思います。
ーーもしも派遣社員になった場合、安定して働いていくためにエンジニアが気を付けた方がいいことは?
コロナ禍で一部の企業では開発案件の縮小などがあったようですが、IT業界全体は伸びていますし、派遣の市場全体も伸びていますから、仕事は長期的に確保しやすい環境だとは思います。
ただ、一つアドバイスをするなら、2~3カ月で終わる短期案件にばかり関わってしまうと、スキルアップや成長はしづらくなってしまいます。派遣会社と相談し、1年以上の長期案件にアサインしてもらえるよう調整することをおすすめします。
先ほどお話ししたことにもつながりますが、派遣社員もフリーランス同様、会社が手取足取りㇲキルアップを手伝ってくれたり、成長を促してくれたりするわけではありません。
自ら学んでエンジニアとして経験を積んでいかなければ、40~50代になったときにできる仕事の選択肢が狭まってしまうこともある。先々のことを意識しながら、自分をアップデートしていく必要はあります。
ーーなるほど、そういう面でもフリーランスの人生を疑似体験することができそうですね。
そうですね。ちなみに今は、仕事の内容や性質に合わせて派遣社員とフリーランスを行き来しながら働いているエンジニアも増えてきました。
自由、報酬、成長……IT業界では、正社員、フリーランス、派遣とさまざまな働き方がある中、これらの全てが手に入るのは、フリーランスという選択肢だけではないということを皆さんに知ってもらい、後悔しないキャリアを築いてほしいと思います。
取材・文/古屋 江美子 撮影/竹井俊晴 編集/玉城智子(編集部)
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