

「干渉しすぎない、でも孤立もしない」他者との距離感に悩んだフリーランスエンジニアがたどり着いた“ゆるく”つながるという働き方
多くの人にとって、キャリア選択の軸となるのは「どんな仕事をするか」、そして「どんなスタイルで働くか」の二つではないだろうか。
働き方が多様化した現在だからこそ、「自分に合った働き方探し」に悩む人も少なくない。
『commew(こみゅー)』というエンジニア向けのオンラインコミュニティーを運営するむちょこさんも、かつては自分の働き方に違和感を覚えていた一人だ。
以前はIT系のベンチャー企業に勤めていたむちょこさんは、他人との距離感に悩んだ結果、独立した。フリーランスのWebエンジニアとなった現在は「社会や他人とちょうど良い距離感を見つけることができた」と穏やかな笑顔で語る。
むちょこさんが自分らしい働き方を実現するまでの話を聞くと、彼女なりのエンジニアライフが見えてきた。
※本記事は姉妹サイト『Woman type』より転載しております

<プロフィール> フリーランスWebエンジニア むちょこさん(@muchoco_dev)
専門学校在学中にアルバイトやインターンとしてIT企業でエンジニアとして働き始め、2008年に中退してIT系ベンチャー企業へ就職。09年よりフリーランス。16年にweb系フリーランスの組合「Lachelier(ラシュリエ)LLP」を立ち上げ、18年にオンラインサロン『commew(こみゅー)』の運営をスタート。一児の母
孤独を抱える人をつなぐコミュニティー『commew』
――まずは、オンラインコミュニティー『commew(こみゅー)』の活動について教えてください。
『commew(こみゅー)』は「ゆるく、つながる、たすけあう」をテーマにした、困りごとの共有や相談ができるweb系フリーランスのコミュニティーです。現在メンバーは80名ほどいて、Slackで雑談したり、スキルアップのための勉強会を開催したりしてます。
交流だけでなく、メンバー同士で案件を紹介しあうこともありますよ。「駆け出しのフリーランスだから、一人で仕事を請けるのが不安」という方は、一緒に案件を請け負う仲間を探すこともできます。

――なぜ『commew』を立ち上げようと?
以前、客先に常駐しているフリーランスエンジニアの人に、なぜ常駐という働き方を選択したのかを聞いてみたら、「孤独に働くのが嫌だから」という回答が返ってきたことがあって。
その理由が私にとっては衝撃だったんです。というのも、私は一人でいるのが好きだからフリーランスという働き方を選んだので、みんなもそうだとばかり思っていたんですよ。
人との関わりを大切にしたいと考えているフリーランスエンジニアもいると知ったことで、「孤独を感じている人同士をつなぐ場所があれば、みんながもっと働きやすくなるんじゃないか」と思ったんです。
――むちょこさん自身は「一人でいるのが好き」とのことですが、自ら「人と人がつながる場」をつくろうと思ったのはなぜなのでしょう?
実は以前、身近な人を自殺で失った経験があるんです。もしあのとき、周りに支えになるような環境や場所があれば、その人は命を失わずに済んだんじゃないか、という思いがずっと胸の中にありました。
つらい思いを抱えていても、誰にも相談できずに一人で悩んでしまう人はきっと少なくない。だから、そういう人たちの救いになるようなコミュニティーをつくれたらいいなと思ったんです。
仕事を楽しむためには、他人との「ちょうどいい距離感」が大切だった
――むちょこさんがフリーランスになろうと思ったのはいつ頃だったんですか?
専門学校を中退後に入社した会社で働いているときから、「会社で働くのは合わないな」と感じていました。
会社という組織の一員になると、その会社での仕事しかできない。それって窮屈だな、って思っていたのです。
――組織にとらわれない働き方がしたかったのですね。
はい。それに、先ほども言ったように私は一人でいることが好きなタイプなので、周りに人がいる環境は、緊張するというか落ち着かなくて。
作業の途中で話しかけられると集中力が切れて、作業効率が落ちてしまう。だから私にとって、組織に属して働くというのは他人との距離が近すぎると思っていたのです。
さらに、人混みが苦手なので、満員電車で通勤するのも嫌で……「リモートワークがしたい」と思うようになったのは、私にとってごく自然なことでした。
なので、勤めていた会社が倒産したことをきっかけにフリーランスに転向したんです。社会に出て1年経った頃のことでしたね。

――社会人経験が浅い状態でのフリーランスデビュー、苦労はありませんでしたか?
それが、そこまで大きな苦労はなかったんですよ。
というのも、私は学生時代からインターンやアルバイトでさまざまな企業で働いていて。その企業とは、会社員になってからも副業としてお付き合いを続けていたんです。なので、ありがたいことにフリーランスになってからも引き続き案件をもらうことができました。
学生時代は何の人脈も実績もなかったので、IT企業のホームページのお問い合わせフォームに「お手伝いできることはありますか?」と、ひたすらメールを送りました。すると、3割くらいの企業が返事をくれたんです。
「やりたい」と思ったことに対して行動を惜しまなかった、過去の自分に感謝ですね。
他人とゆるく支え合うことが、長く働き続ける秘訣
――むちょこさんは、エンジニアの仕事のどんなところに面白みを感じていますか?
当たり前だと思われるかもしれませんが、自分が書いたプログラムが書いた通りに動くことです。初めてプログラミングをした学生時代、「魔法みたい!」って感動したんですよ。その気持ちが、今も変わらず続いています。
新しい技術が絶え間なく出てくるから学ぶことはいくらでもあって、それを生かせる場所も多い。ずっと成長していけることも魅力ですね。
もちろん、新しい技術の習得は大変です。AWSのようにブラックボックス化していると、難しくて放り投げたくなることもありますし(笑)
それでも、諦めなければいつか理解できる。プログラミングは努力の先の達成感が約束されているので、自分を信じて諦めないことを大事にしています。

――これから先はどんなことに挑戦したいですか?
『commew』を始めた当初は、駆け出しのフリーランスの支えになればいいな、くらいに思っていたのですが、メンバーが成長するにつれて私の方が支えられていると感じるようになってきました。
エンジニアはトラブル対応で深夜や休日に働くこともありますし、フリーランスの場合は「自分でどうにかしなきゃ」と追い詰められてしまう。
もともとは一人で自由に働きたいと思っていましたが、今はコミュニティーという場でちょうど良い距離感を保ちながらも支え合える仲間がいる心強さを感じています。
『commew』に関して言えば、コミュニケーションは全てオンライン上で行っているので、心理的にも物理的にも、まさに私が求めていた距離感なんです。おかげで、エンジニアとして働くことがもっと楽しくなりました。
私のように、楽しく働くフリーランスが増えたらいいな、と思っていて。なのでこれからは、コミュニティーメンバーにもっと心地よく、もっとスキルアップできる環境を提供できるような取り組みを模索していきたいですね。
取材・文/古屋 江美子 写真/ご本人提供
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