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ディープラーニング(深層学習)とは? 機械学習との違いや仕組み、活用シーンを解説

エンジニア辞典

近年、AI(人工知能)技術が飛躍的に発展し、あらゆるシーンで注目を集めています。このAIを支える技術の一つがディープラーニング(深層学習)です。

ディープラーニングという言葉は聞いたことがあっても、「AIや機械学習との違いは?」「具体的にどんなことができるの?」という疑問を持っている方も少なくないでしょう。

この記事では、ディープラーニングの仕組みや種類、AI・機械学習との違い、具体的な活用シーンなどを解説します。

ディープラーニング(深層学習)とは?

ディープラーニング(深層学習)とは機械学習の手法の一つで、大量のデータから機械が自動的に特徴を抽出して学習するAI技術です。

機械学習とは、膨大なデータをもとにコンピューターがルールやパターンを学習する技術のことを指します。ディープラーニングはこの機械学習を発展させたもので、人間がデータを定義付けしなくても自ら学習する能力を持つことが特徴です。

AIや機械学習との違いは?

AI(人工知能)とは、一般的に機械やコンピューターによって人間の知能を再現する技術全般を指します。

機械学習はAIを実現するための一つの技術。機械学習にはさまざまな種類があり、ディープラーニングは機械学習の一種です。

AIの一つの技術領域として機械学習があり、機械学習の一種としてディープラーニングがある。「AI>機械学習>ディープラーニング」という関係性になっています。

ディープラーニング(深層学習)の仕組み

ディープラーニングでは「ニューラルネットワーク」と呼ばれる分析構造がよく採用されます。ニューラルネットワークとは人間の脳神経回路(ニューロン)をモデルとして作られたネットワーク構造です。

ニューラルネットワークには、以下の三つの階層があります。

入力層:外部から分析・判断用のデータを入力する
隠れ層(中間層):入力されたデータの分析を行う
出力層:分析結果をもとに最終判断を出力する

このうち、ディープラーニングでは隠れ層を多層化することにより、自動的に機械が学習し複雑な判断を実現しています。

また、ディープラーニングのニューラルネットワークにはFNN(Feedforward Neural Network)とRNN(Recurrent Neural Network)の2種類の処理方法があります。​

FNNはデータを上層から下層へ向かって順番に伝播させるもの、RNNは隠れ層での分析を行ったり来たりしながら繰り返すことが特徴となります。

仕組みや性質を理解し、AIを活用する目的によってどのような処理が必要なのかを考えることが重要です。

ディープラーニング(深層学習)の種類

ディープラーニングにはいくつかの手法(アルゴリズム)があります。ここでは代表的な三つの手法について解説します。

・CNN(Convolution Neural Network)

CNNは、ラベル付けした大量のデータを蓄積することで人工知能の学習を促す手法です。畳み込み層とプーリング層と呼ばれるレイヤーを有していることが特徴で、畳み込みニューラルネットワークとも呼ばれます。

あらゆる画像データを処理して数百万レベルの情報を照合できるため、主に画像認識の分野において活用されています。CNNは画像から特徴を抽出し、そこから意思決定ができる点が従来の画像分析と比較して優れていると言えるでしょう。

CNNは現在、画像認識以外にも映像分析や顔認証などさまざまな分野に応用されており、ニューラルネットワークで最もよく使われている手法です。

・LSTM(Long Short Term Memory)

LSTMは、長い時系列のデータを学習するための手法です。RNNではあまりにも長い時系列のデータは処理しきれないという課題があり、その欠点を補うために開発されました。

LSTMは長期の時系列データも処理できるため、RNNよりも実用性が高く、気象予報や株価予測など予測分野で広く採用されています。

・GAN(Generative Adversarial Network)

GANは敵対的生成ネットワークとも呼ばれ、人工知能に学習させる事柄について境界線を決めるという特徴を持つ手法です。

「これは◯◯である」「これは◯◯ではない」と明確な線引きをすることで、より精度の高い判断ができ、主に画像処理や画像生成の分野で活用されています。

ディープラーニング(深層学習)でできること

では、具体的にディープラーニングではどのようなことができるのでしょうか。主な活用方法について紹介します。

自然言語処理

自然言語処理とは、コンピューター言語ではなく、私たちが自然に使用している言語をコンピューターに学習させて処理させることです。今まで人間が会話や文章で使用する自然言語は曖昧な表現が多く、コンピューターが理解することは困難でした。

しかしディープラーニングの登場により精度が向上し、情報の処理や伝達などのさまざまなコミュニケーションにおいて活用され、利便性を高めています。

画像認識

画像認識とは、その画像に何が写っているのかを認識する技術です。画像認識の技術は以前から存在していましたが、ディープラーニングは画像の特徴を理解して意思決定までできるため、活用の場が急速に広がりました。

現在では人間の画像認識能力を超えるほどにまで発展し、身近なところではスマートフォンや空港での顔認証、防犯カメラの映像から人物を迅速に割り出す作業などで活用されています。

ディープラーニング

音声認識

音声認識とは、コンピューターによって音声を識別したり、テキストデータに変換したりする技術です。これまでの音声認識技術は、人間の話し方のさまざまなバリエーションを解析することが困難であり、精度に問題がありました。

しかしディープラーニングを用いることで、膨大な量の音声データから話し方の特徴や言語ルールを自動的に学習できるようになり、精度の大幅な向上を実現しました。音声データの文字起こしやスマートスピーカーなどに活用されています。

需要予測

需要予測とは、自社の商品・サービスが市場でどのくらい売れるのか、さまざまな方向性から予測することです。需要予測が正確であるほど、利益を最大化するための最適な計画を立てることができます。

商品・サービスが売れるまでにはさまざまな要因が絡み合います。これまでの人の勘や経験に頼った需要予測では、正確に把握することは非常に困難でした。

しかし、ディープラーニングの登場により人が処理しきれない大量のデータを自動的に処理し、正確なパターンや関係性を発見できるようになりました。また処理スピードが速いことからリアルタイムでの予測も可能で、需要変化の速い市場でも有効です。

需要の変化に迅速に対応して市場での競争優位性を確保するため、あらゆる企業で活用されています。

異常検知

ディープラーニングによる異常検知とは、正常なデータのパターンを学習することで、正常なデータと異なる部分を異常として検知することです。人間の目では確認できないようなささいな異常を検知することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

品質管理やセキュリティー分野などで広く活用されており、エラーや工数の削減、セキュリティーの強化を実現しています。

ディープラーニング(深層学習)活用のメリット・デメリット

ディープラーニングを活用する上でのメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。

ディープラーニングのメリット

従来の機械学習では原則として人間がデータにモデル(特徴)を当てはめる作業が必要でした。一方でディープラーニングは大量のデータからコンピューター自身が自動的に特徴を抽出するため、柔軟性があることがメリットです。これにより機械学習では扱いづらい、言葉で特徴を定義するのが難しい複雑なデータの場合でも、ディープラーニングであれば処理することができます。

さらにディープラーニングは人間の認識精度を超えるほどの高い精度を誇ります。そのため安全性や確実性が求められる作業でもAIに置き換えることが可能です。

ディープラーニングのデメリット

従来の機械学習は人間が理解できるものであるため、予測手法やルールを説明することができます。一方でディープラーニングはどのような手法・ルールで結果が出力されているのか人間が理解するのは困難です。これは「ブラックボックス問題」と呼ばれ、どのようなロジックでAIがその判断に至ったのか人間が説明することができません。

そのため、例えば医療現場など人の命に関わるような重要な判断が必要な場面では説明責任が果たせない可能性が出てくるため、ディープラーニングの導入は慎重に検討する必要があります。

また、従来の機械学習では学習の方向性をある程度人間がコントロールできます。しかし、ディープラーニングでは人間が学習の方向性をコントロールできず、学習させるデータの選択によっては予測していない方向へ進む可能性があります。最適な学習ができるよう、データは慎重に選択しなければなりません。

ディープラーニング(深層学習)の活用シーン

実際にディープラーニングはどのようなシーンで活用されているのでしょうか。代表的な活用シーンについて解説します。

ECサイト

ECサイトでは商品の需要予測や購買履歴・閲覧履歴の分析による商品のレコメンデーション、在庫管理などにおいてディープラーニングが活用されています。また顧客の評価やレビューを分析して商品の改善につなげたり、マーケティングキャンペーンの最適化を図ったりすることも可能です。

ディープラーニング

医療現場

医療現場では、ディープラーニングが医療画像解析の分野で活用され、疾患の早期発見や診断に役立っています。また治験データを分析して最適な治療法を提案したり、大量のカルテを読み込んで分析したりなど、医師の業務サポートに広く活用されています。

製造現場

製造現場では、画像解析による不良品検出や、センサーデータを用いた異常検知など、品質管理を向上させるためにディープラーニングが用いられます。また製品の需要予測や在庫管理、ロボットによる作業の自動化などに活用することで、生産性を向上させ利益を最大化させることが可能です。

自動運転

ディープラーニングは精度の高い認識や判断ができるため、自動運転にも活用されています。車両の制御はもちろん、歩行者や信号機、道路標識などを認識することで安全性の向上にも役立ちます。また周囲の車両の動きや交通状況を把握し、最適なルートを選択することも可能です。

セキュリティー対策

ネットワークトラフィックの解析による不正アクセス・マルウェアの検知や、電子メールの内容や送信元アドレスの分析によるフィッシング詐欺の検知など、セキュリティーの分野においてもディープラーニングが広く活用されています。顔認証や声紋認識などによるユーザー認証にも役立ちます。

ディープラーニング

ディープラーニングは多くの事業に活用できる革新的な技術

ディープラーニングは、大量のデータから機械が自動的に特徴を抽出して学習するAI技術です。従来の機械学習よりも高い精度と柔軟性が特徴で、今回ご紹介したようにあらゆる分野で活用が広がっています。

ディープラーニングは今後も技術の発展が期待される分野であり、知見を持つエンジニアの需要も増加し続けることが予測されます。興味が湧いた方は、ディープラーニングの仕組みや特徴、活用方法についてより知識を深めてみてはいかがでしょうか。

文/江副杏菜

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