「遠慮は何も生まない」という気付きからのブレイクスルー。異職種コラボレーションでの“対等さ”はどうつくる?
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「さまざまなスペシャリストと共に戦略実現へとプロジェクトを進めていくことができるコラボレーションスキルの重要性が増している」
2023年6月に公開した記事で、アバナード株式会社の代表取締役・鈴木淳一さんはそう語った。
しかし、異なる専門性を持つ者同士でのコラボレーションといっても、言うは易し行うは難し。プロジェクトを牽引していくリーダーとなれば、難易度はさらに高まる。
そこで今回、職種や会社の枠を超えたコラボレーションプロジェクトをエンジニアの立場からリードするアバナード株式会社の田島宗さんと、コンサルタントとして同プロジェクトに携わるアクセンチュア株式会社の髙橋寛和さんに話を聞いた。
他職種とのコラボレーションは、どうすればうまくいくのだろうか。そして、その先で得られる学びとは何なのか。
「エンジニア」「コンサルタント」その間に差はない
ーー現在お二人はどのようなプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか。
田島:あるクライアントに向けて、Microsoft Dynamics 365 Customer Engagementというビジネスアプリケーションパッケージを導入するプロジェクトを推進しています。
今までは個人がバラバラに管理していた営業情報を統合し、取引情報も併せて管理できるシステムを導入することで、営業活動の効率化を目指すものです。
ーーこのプロジェクトはアバナードとアクセンチュアが共同で推進しているんですよね。どのようにコラボレーションしているのですか?
髙橋:アクセンチュアはクライアントの考える方向性や業務に関する情報を整理してクライアントの発展につながる提案へと落とし込むコンサルティングを、アバナードは提案内容をシステムに反映させるエンジニアリングを主に担当しています。
システム開発の部分はモノづくりのプロである田島さんに頼りつつ、私はコンサルタントとしてクライアントの業務に関して検討するべき部分があれば率先して対応していきながら、モノ作りを含めたプロジェクト全体のマネジメントを担当しています。
ただ、アバナードとアクセンチュアで担当領域の目安はありますが、完全に分業されているかというとそういうわけではありません。
田島:髙橋さんと私もそうですが、アクセンチュアとアバナードにはコンサルタントとエンジニアのマインドを両方持ち合わせている人材が多いと思っています。
髙橋さんがエンジニア目線からアドバイスをくださったり、私がコンサルタントと共にプロジェクトの立て付けを考えたりすることもあります。
なので、「アクセンチュアがコンサルタントで自分たちはエンジニア」という立場の違いはそれほど意識していません。
もし双方の間に上下関係や極端な役割分担の意識があれば、エンジニアは言われたことをするだけに、コンサルタントは上がってきたものを見るだけになってしまい、プロジェクトとしての一体感が欠けてしまうと思っています。
お互いに対等なプロジェクトメンバーだと思っているからこそ、職種も会社も違うにもかかわらず、フラットでオープンな関係性を築けているのだと思います。
遠慮からは何も生まれない。コラボレーションの基本は本音の対話
ーー職種や会社の壁を越えたコラボレーションプロジェクトをスムーズに進行させるために、意識してきたことはありますか?
髙橋:職種や会社が違えば、考える視点や方向性も異なります。だからこそ、コミュニケーションを密に取り、相手の考えを理解することを非常に重要視してきました。
プロジェクトを進める過程で生じる課題は、田島さんと話し合いながら一つ一つ認識をすり合わせています。
田島:プロジェクトが始まってすぐコロナ禍になり、フルリモートの業務環境になりましたが、オンライン上でもコミュニケーションは取り続けました。
ただ話すだけではなく、話した内容をテキストやイメージにして共有し、認識をすり合わせるためのアウトプットもプロジェクトを進めていく中で役立ちました。
ただ、最初から今のような距離感だった……というわけではないです。プロジェクトを始めた頃は、お互いに遠慮しあっていて……。私自身、エンジニアチームとしての要望や意見を髙橋さんにあまり伝えられていませんでした。
ーー一体何がきっかけで距離感が変わったのですか?
田島:エンジニアとして、最初は「業務をしっかり把握しているコンサルタントの考えているやり方に従った方が良いのでは」と思っていました。しかし、それだとどうしても発想が受け身になりがちになり、その結果として開発しづらい点が出てくるなど課題が増えてしまうことに。
それに加えて、現場のエンジニアたちからは改善案がどんどん上がってくるので、率先してコンサルタントに意見を出し、調整していかなくてはと考えが変わっていきました。
ーーコンサルタントとしても、エンジニアとの意見交換は有益でしたか?
髙橋:もちろんです。モノづくりのプロとして、ガンガン言っていただいた方がエンジニアリングサイドの考えがよく分かりますし、こちらの思いや背景もきちんと伝えられますからね。
意見がぶつかることもしばしばありましたが、その都度お互いの思いや考え、やりたいことをすり合わせてきた結果、今の関係性にたどり着きました。
田島:表面的に話を終わらせるのではなく、深い部分でコミュニケーションを取るようになったからこそ相手の真意が分かり、自分たちの進むべき方向性も見えてきたように思います。
遠慮していても何も良いことは起こりませんし、エンジニアだけで突っ走っていては独りよがりのシステムが生まれる可能性が高い。他職種、他企業だからという理由で相手を遠ざけず、歩み寄る姿勢が大切だと思っています。
髙橋:せっかく異なる専門性を持つ者同士がプロジェクトに参加していても、それぞれの専門性の中に閉じたままでは視野は広がりません。適切な判断をするために必要な視点を養うこともできないでしょう。
エンジニアとコンサルタントが対等な目線で関わり合うことによって、お互いの強みが一番いい形で生かされるのだと思います。
信頼関係を築くためには、まずは相手に興味を持って
ーー今回のコラボレーションプロジェクトによって、お二人はどのような学びを得ましたか?
田島:コンサルタントは異なる意見を持つ人同士の間に立って調整をしたり、意見を引き出したりするノウハウを豊富に持っています。
お客さまへの説明のための言葉遣いや説明の方法、図を使って意図を伝える手法は非常に勉強になりました。
一般的にエンジニアは、自分が見えている世界の中で前提を置いて問題を解こうとする性質があると思うのですが、コンサルタントは大きな絵を描くところから入る。問題に対する視点の角度やアプローチが違います。
このプロジェクトを通じて、エンジニアという仕事だけでは得難かった新しい視点・考え方を得られたと感じています。
髙橋:コンサルタントとしても、自分たちにないモノづくりのプロとしての視点でプロジェクトを考えてくれたり、深い部分を追求してくれたりするエンジニアの存在は非常にありがたいです。
私はかつてエンジニアとして働いていた時期があるので、彼らのモノづくりに対するこだわりや熱い思いに触れて自分自身のモチベーションがかき立てられるのを感じました。
ーーお二人のようにコラボレーションプロジェクトをリードするリーダーになるためには、エンジニアは何を意識すれば良いと思いますか?
髙橋:自分が今作っているものが、本当にクライアントのニーズに合っているかどうかを意識することだと思います。
今の時代は技術の進化スピードが速く、クライアントはそれについていこうと必死です。特に長期プロジェクトにおいては、クライアントの望むものの形が時間とともに変化することはよくあります。
それを踏まえた上で、システムを作り上げていく役割を持つエンジニアリングサイドのリーダーが常に第三者的な視点を持っていると、一緒にプロジェクトを進める立場としてはとても心強いです。
今進んでいる方向が間違っていないかを一歩引いて考える習慣を身に付けることが大切だと思います。
田島:加えて、コラボレーションプロジェクトを率いるリーダーには、何があってもやり切る覚悟が必要と思っています。私は髙橋さんの「絶対に諦めない姿勢」に強く刺激を受けました。
プロジェクトをまとめる立場にいる人が旗を降ろさないことによって、メンバーの間にも覚悟が生まれます。
今回のプロジェクトで新たな工夫が次々と生み出されてきたのは、リーダーとメンバーの間にそのような関係性があったからだと思います。
髙橋:確かにマインドは、プロジェクトを率いるリーダーにとって一番大切な要素ですね。
もう一つ、私自身が他職種の人とコラボレーションをする際に意識しているのは、相手を尊重することです。
田島さんをはじめプロであるエンジニアの皆さんを、リスペクトして、相手の考えや思いに耳を傾けながら、より良い方向性に導くために一緒に考えていくという気持ちで業務に臨んでいます。
もちろんお互いの考え方が一致しない部分も時にはありますが、目指すゴールは同じ。お互いの方向性を確認しながら、相違点をすり合わせる作業はそんなに難しいものではありません。
田島:そうですね。そもそも相手を尊重する人でなければ、人を動かすことはできないと思います。多様な専門家とのコラボレーションが当たり前になりつつある時代だからこそ、関わる人との間に「信頼関係」という土台を築くことはリーダーの重要な役目です。
ただ、いきなり相手を信頼するのは難しい。なので、まずは相手に興味を持つことが大切だと思います。
考え方の異なる相手でも、「そういう考え方をする人なんだな」「こんなことができる人なんだな」という純粋な発見ができると、それを受けて自分は何をするべきかという新たな道筋が見えてきます。
専門家気質な人材が多いエンジニアだからこそ、自分自身の興味の幅を意識的に広く持ち、観察することを大切にしてほしいと思います。
取材・文/一本麻衣 撮影/桑原美樹
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