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30歳になったら技術の市場価値と仕事の満足度の最大公約数を考える時だと思う【村上福之】

働き方

    日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。

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    株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
    村上福之(@fukuyuki

    ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

    世知辛い世の中になりました。

    何かと話題が尽きないソーシャルゲームの世界だが、稼げる業界のエンジニアが満足しているかと言われれば、そうとも限らないと村上氏は指摘

    From Official Game Developers Conference
    何かと話題が尽きないソーシャルゲームの世界だが、稼げる業界のエンジニアが満足しているかと言われれば、そうとも限らないと村上氏は指摘

    30歳になったら技術の市場価値と仕事の満足度の最大公約数を考える時だと思います。ガチャが極端な例です。ガチャに対する法務的・倫理的な議論がありますが、残念ながら、カネを生み出したことは事実です。

    今やっていることの市場価値を考えて、技術者としての満足度より給料やお金を追求するか、給料が安くても技術者として満足する仕事を目指すかを、30歳くらいに決めた方が良いと思います。

    決して、ガチャエンジニアになれという意味ではないです。カネを生むテクノロジーと、技術的に満足するテクノロジーはまったく別ですと言いたいのです。そして、その市場価値は、いつかは変わってしまうと言いたいのです。

    30歳というのは、どっちか選べというより、どっちにどれくらい比重を置くのかということを考える時期だと思います。特に家族などを持つと、決断しないといけないでしょう。ガチャガチャのロジック部分の技術はあまり難しくないです。むしろノウハウが大事です。

    ただ、ガチャを企画したり、実装したりする市場価値はありました。ガチャ規制が本当に実行されたら、その市場価値はどうなるか知りません。しかし、スケーリングも、クラウドとかありますし、安くなったので、チューニングよりもスケールと鯖のスペックで何とかするという会社もあるくらいです。チューニングエンジニアにカネを払うより、クラウドにカネを払った方が効率的なケースも時々ある時代です。

    80%のビジネスにおいて、技術力と売り上げはまったく関係ないです。そして、技術力と給料も、70%の場面において関係ないです。

    市場の移り変わりが激しい時代なので、あなたが経験したスキルの市場価値はものすごい勢いで浮き沈みします。ネット以外の業界などは、もう少しゆっくりです。

    残念なことに、エンジニアの市場価値と仕事の満足度はまったく関係ないケースの方が多いのです。コピペなコードを書いていてお金をもらえる仕事も多いのです。

    世知辛い世の中になりました。

    「技術で知恵熱」を出すことが市場価値ではない

    会社規模が小さければ小さいほど、個人が生み出したモノの価値でその人のエンジニアとしての価値が決まってしまう

    From Christian Cable
    会社規模が小さければ小さいほど、個人が生み出したモノの価値でその人のエンジニアとしての価値が決まってしまう

    会社経営というものは、社員が行った営利活動からカネを生み出し、それから給料を払って、福利厚生を払って、家賃を払って、次の営利活動への投資をして、グルグル回すだけの簡単なお仕事です。

    ですから、だいたいの場合、小さい会社ほど、技術力よりも、あなたが生み出したモノの金銭的価値を問われます。大きな会社では関係なかったりします。そして、残念ながら、それらが給料につながります。

    僕は25歳の時に、組込みエンジニアは自分に向かないし、学習時間のわりに未来も市場価値もあまりないと判断しました。仕事の満足度は高かったと思います。離散コサイン変換だの、ウェーブレットだの、今や完全にライブラリ化されて市場価値がないものを勉強してました。

    ドライバやカーネルといったOSの深いところや、DSPのコードも組みました。受験勉強よりも勉強しましたし、楽しかったです。タダでも仕事していたいと本気で思ってました。コーディングしていて知恵熱が本当に出ることもありました。

    大阪で独立した後、それらの技術を使って動画コーデックを自力で開発し、経済産業省のビジネスプランコンテストでそれなりの結果を出して、当時審査員だったGMOの熊谷正寿代表(※編集部注:現会長兼社長)に誘われて、上京しました。

    しかし、東京のネット企業にとっては、動画コンテンツはインプレッションが悪い上に、有料コンテンツとしても売りにくいものでした。当時のコンテンツ業界は、どこをどう考えても動画より「着うた」の方が売れます。動画コンテンツそのものがビジネスとしてクソでした。むしろ、この技術は海外の方が評価されました。

    もっと言うと、お金だけほしければ、独自コーデックでなく、iモーションでエロ動画をバラまいた方が圧倒的に儲かる時代でした。悲しいことに。

    生涯エンジニアを目指すなら、取るべきはカネか仕事満足度か

    「技術とお金は関係ない」

    上京して、それを痛烈に感じました。痛いくらい感じました。

    そうしてムニャムニャしているうちに、ガラパゴスXHTML+Flash Lite1.0が、デジコンで最も利益率が高いという変な時代が来ました。コーディングしていて知恵熱なんて、出そうにもないです。若いエンジニアにとっては面白いのでしょうけど、30歳を過ぎるとつまんないです。すごく楽しくないです。

    脳みそを使うのは、Flash Liteのバイナリをものすごい速度で吐くところくらいだったかもしれません。うちは受託専門会社だったので、受託金額しかもらえませんでしたが、変なDSPの試作よりはもらえました。やる気ない案件だと、メインのスクリプトがindex.php一個だけで納品したものもありました。

    プロジェクトが完了したのに技術的に何も学ぶところが無かった案件は、非常にむなしいです。テクノロジーを愛する人にとって、知ることと、学ぶことは喜びです。しかし、そういったものがないのに市場価値が高いプロジェクトも多いのです。

    世知辛い世の中になりました。

    もし、エンジニアとしてメシを食べていくなら、カネを取るか、満足度を取るか、一時的にどちらかに徹するか、決めた方が良いんじゃないかと無責任に思います。

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