「わずかな改修で大きな利益」「数十万人の業務を改善」イオングループ発・小売業密接型システム開発の実態
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企業におけるIT部門は、今や“縁の下の力持ち”ではなくビジネスグロースを実現するために欠かせない存在となった。中でも小売業界は、システム活用による業務効率化や利益の最大化が特に見込まれる業界の一つだ。
では、具体的にはどの程度のインパクトが期待できるのだろうか? 今回は小売業界の大手・イオングループの事例を見ていこう。
イオングループのシステム開発を主導するイオンアイビスでは、新たなPOSシステムやAI需要予測システムの導入を推進。イオングループの成長に大きく貢献しているという。それぞれのプロジェクトの実態を、プロジェクト担当者に聞いた。
3日かかっていた研修が30分に。誰もが使いやすいPOSシステムが店舗にもたらすもの
まずは、イオングループの各店舗で約5万台が使用されているPOSシステムの開発について、プロジェクトを推進する野田さんの話を聞いた。
店頭で使われるレジの仕組みを支えるPOS。当たり前のように存在するシステムだが、イオングループのビジネスにどのような影響をもたらしているのだろうか。
ーーまずは、野田さんがプロジェクトに携わっているPOSシステムの概要について教えてください。
野田:イオンアイビスが開発を推進しているPOSシステムは、大きく分けて三種類です。一つ目は、従業員がスキャンから会計まで行う「有人レジ」。二つ目は、スキャンは従業員がして会計はお客さまが行う「セミセルフレジ」。そして三つ目は、お客さまがスキャンも会計も行う「セルフレジ」です。
これらに加えて第四のPOSシステムとして、お客さまが買い物をしながらお手持ちのスマートフォンで商品をスキャンし、お会計はレジまたはスマートフォン決済等で行う新しいレジの開発を進めています
ーーPOSと一口に言っても種類は多岐にわたるんですね。なぜ多様化を推進しているのでしょう?
野田:お客さまに向けた目的と、従業員に向けた目的があります。まずお客さまに対しては、決済の短時間化です。セルフレジやセミセルフレジの開発で満足せず、レジに並ぶ時間そのものをなくすためにスマートフォン決済の開発を進めています。
一方で店舗の従業員に対しては、レジ操作の簡易化を目指しています。
近年は、経験の浅い方や外国の方を採用するケースが増えています。そこで、誰でも直感的に操作方法を理解できるタッチパネル式のレジシステムを開発しました。
ーー新しいレジの導入効果は現れていますか?
野田:はい。現場からさまざまな声をいただいておりまして、スマートフォン決済に関しては、自分のスマートフォン端末でスキャンできる利便性がお客さまから評価されています。
店舗側からは、従業員教育に関して好感触なフィードバックを多数いただいています。以前のレジは操作方法が複雑で、使い方を覚えるために数日間の研修を要していましたが、タッチパネル式のレジに移行してからは、30分程度でレジ操作を習得できるようになりました。
「新人教育にかかる時間が大幅に削減された」と感謝の言葉をいただくこともありました。小売業の人材不足解消にも一役買えるのではないかと感じています。
目指すは「レジのない世界」。究極の利便性を追求し続ける
ーーPOSシステムが小売の現場を大きく変え得ることが分かりました。今後はどのようなアプローチを検討していますか?
野田:今開発を進めているのは、「タブレットPOS」という新しいシステムです。
例えば衣料品売り場の場合、フロアで接客中の従業員がお会計のためだけにレジコーナーへ移動し、また戻ってくる……という非効率的な作業が発生していました。しかしタブレット型のPOSを携帯できれば、わざわざレジコーナーに移動する必要なく、接客しながらその場でレジ操作ができるようになる。つまり、スタッフの業務が効率化されるようになります。このシステムは来年度から本格的に展開する予定です。
他には、決済やポイント管理、店舗情報等が集約された『iAEON(アイイオン)』というアプリとPOSシステムの連携を進めています。iAEONとPOSの連携により、お客さまの買い物がより便利になる上に、お客さまの買い物傾向に合わせたクーポン配布が可能になるなど、より効果的なマーケティングが可能になります。
「POS=レジのシステム」と思われている方が多いかもしれません。ですが、われわれはもはやレジの存在しない「脱レジ」の世界を見据えた開発を進めています。
お客さまにとって快適なお買い物を行っていただくことが、究極の目標です。
ーーとても大きな目標を掲げているんですね。野田さんは、POSシステムのようなビジネスグロースに貢献するプロジェクトに携わる醍醐味はどこにあると思いますか?
野田:当社のPOSシステムは全国約5万台のレジに導入されており、それを使う従業員数は数十万人に上ります。大きなシステムを扱うことになるため、当然責任や緊張感が伴います。しかし「日本全国で使われるものを自分たちで開発している」という自負があるからこそ、やり遂げた時の達成感はひとしおです。
それに、非常に多くの店舗・従業員に利用されているシステムだからこそ、わずかな改修が大きなインパクトを生むことになります。現場に直結するシステムなので、成果は定性・定量の両面で非常にダイレクトに返ってきます。影響範囲が広い分、怖さはありますが、いい仕事をすればきちんといい評価がもらえるのでやりがいを実感しやすいと思いますよ。
POSシステムに限らず、当社にはグループ内の事業会社からさまざまな要望が寄せられます。システムの設計からベンダーのマネジメント、システムの導入、展開まで行うのがわれわれの役目。開発案件の金額は1,000万円から億円単位に上り、一人の社員が最初から最後まで一貫してそのプロジェクトを担当します。
大変ではありますが、案件の規模も与えられる裁量も大きいため、ものづくりのコアスキルが磨かれる環境であることは間違いないですね。
億単位の売上改善に期待が寄せられる、AI需要予測システム
続いてインタビューに応じてくれたのは、店舗の商品発注管理に使用されているシステムの開発に携わる斉藤さんと井藤さんだ。
AIを用いて商品の需要を予測し、発注を行い在庫を最適化させるこのシステム。具体的にはどのような効果をもたらしているのか。詳しく聞いた。
ーーイオンアイビスではAIを用いた需要予測システムの開発をリードしているとか。このシステムの概要を教えてください。
井藤:従来人の手によって行われてきた発注業務をAIで支援するのが、私たちが携わっているAI需要予測システムです。
店舗の従業員の中には、労働時間の3〜4割を発注業務に費やしている人員もいます。しかし、それだけの時間をかけてもなお、余分な発注や欠品が生じてしまっているのが現状です。
必要以上の商品が店舗にあると、売り場とバックルームを行き来したり、商品を整理したりといった無駄が生まれる。そして欠品が生じれば、売上を上げるチャンスを逃すことになります。
こうした事態を防ぐため、在庫や売れ筋、欠品状況などを踏まえた上で未来予測を行い、最適な発注数を出すAI需要予測システムの開発を進めているんです。
斉藤:例えば工場のような職場では、スケジュールを組んで商品を作る時間をあらかじめ確保するなど「時間のストック」ができますが、小売の現場はそうは行きません。常にお客さまがいて、その場その場でやらなければならない業務がたくさんある。こうした環境では非生産的な作業が生まれがちです。
もちろん現場の従業員には豊富なノウハウがあります。ですが、何千という数の商品を扱う中では、どうしても人間が気付けないこともあります。それをAIが示すことによって、現場のあらゆる無駄をなくそうというのがこのシステムの目的です。
このシステムは、最新のAI予測モデルを使用してスクラッチで開発しています。
ーー導入の効果は表れていますか?
井藤:過剰在庫の削減に伴って在庫の回転日数は3~4日減少。その結果、定番管理商品の荒利益が約1%改善しました。欠品も大幅に解消され、中には三分の一まで減らせた事業会社もあります。
欠品の解消による売上効果をシミュレーションすると、100店舗を持つ会社であれば1年間で2,000万円、10社集まれば億単位の売上UPにつながるでしょう。現場の従業員に「在庫がどんどん減っているのに、なぜか欠品しない。しかも作業が楽になった!」と感じてもらえるような仕組みができつつあります。
ーーすでに売上につながるインパクトが表れているのですね。今後はどのようにシステムを進化させていきますか?
井藤:発注だけでなく、棚割(商品を陳列する場所)もAIで最適化する仕組みを作りたいですね。
その後は、AI需要予測システムを利用するステークホルダーの範囲を拡大していきたいと考えています。取引先やPB商品部門にもデータ連携ができれば、事前に適切な生産計画を立てられる。欠品をさらに抑止できますし、物流に連携させることでより無駄のない配送計画の策定も実現できるはずです。
「欲しいものがいつでも買える」安心を守り続けたい
ーー小売ビジネスの成長に貢献するシステムに携わっているお二人ですが、やりがいはどこに感じていますか?
斉藤:イオングループ各社が抱える課題を解決し、きちんと成果を出せたときですね。
とはいえ、システム開発をしたからといってすぐに全ての課題が解決するわけではない。システムの導入と並行して現場の運用を変えていくこともわれわれの業務の一つです。そのためには現場との対話が欠かせません。
井藤:斉藤さんの話からも分かる通り、システムの導入支援は決して簡単なことではありません。私自身、ついさっきまでイオン東北の店長と会って話していたのですが、自分の見えていなかった課題にたくさん気付くことができました。結局のところ、現場の実態は直接見たり聞いたりしなければ何一つ分からないのです。
テクノロジーありきではなく、現場ありきのテクノロジーの使い方を追求できるのは、当社ならではの面白みでありやりがいだと思います。
ーーエンジニアとして成長できるシーンが豊富なんですね。
井藤:視野は確実に広がりますね。小売というと店舗のイメージが強いと思いますが、ビジネスのスタート地点はものづくりです。業務を通じて、小売のサプライチェーン全体の仕組みを把握できるようになるでしょう。
そして、さまざまなグループ会社との交流によって、人脈も知識も大いに広がるはず。自分にない視点を得られる機会が豊富にあるのは、ビジネスに密接に関わるシステム開発に携わっているからこそかもしれません。
斉藤:私たちは「どこよりも小売に詳しいIT企業」であるべきとの信念があります。だからこそ、現場に求められる、時代にあったシステムを作る力を得ることができるようになると思いますよ。
ーーお話を聞いて、小売業界のビジネスグロースにおけるテクノロジーの重要性を改めて理解しました。
斉藤:改めて小売りの大切さを実感したのが、東日本大震災です。お店の棚から商品が消えてお客さまが混乱している状況を見たときに、商品を安定的に供給することの大切さを痛感しました。
これからも安定的に稼働し続けるシステムを作ることによって、「欲しいものがいつでもある」という安心を守り続けていきたいですね。
取材/一本麻衣・秋元 祐香里(編集部) 文/一本麻衣 撮影/桑原美樹
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