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ゲーム『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!』制作裏話! 開発者・ただすめんさんインタビュー

働き方

寿司を食べなければ死んでしまう……そんな寿司を愛しすぎた男の3Dアクションゲーム『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!』。

2021年に1作目が登場するや否やゲームファンの間で話題を集め、2023年には待望の新作『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! ユニバース』がリリース。関連グッズも多数発売されており、渋谷モディでPOP UP SHOPが開催されたほど一大ムーブメントを巻き起こしている。

このゲームを作ったのは、個人ゲーム開発者のただすめんさん。小学生の頃から「ゲームで遊ぶのと同じ感覚で、ゲーム作りをしてきた」と話すただすめんさんだが、その斬新なアイデアは一体どのようにして生み出されているのだろうか。

「僕のゲームは『本当のバカが作ったバカゲー』だと思うんです」と謙遜するただすめんさんに、開発裏を聞いた。

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ただすめん さん(@tadasumen

映画の制作会社にCGクリエイターとして新卒で入社。退職後はゲーム等の個人開発をしている。2007年から個人HP『くそいサイト』を運営。代表作のゲームに『PIEN-ぴえん-』『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!』等がある

小学生の頃のノリを今もずっと続けている

ーーまず最初に、ご経歴を教えていただけますか?

CG関連の専門学校を卒業してから、映画の制作会社にCGクリエイターとして就職しました。10年くらい勤めて退職してからは、個人でゲーム開発などをして食べています。

ーー個人開発で食べていけているのはすごいですね。

ありがたいですね。どうにか会社員時代をちょっと上回るくらいの収入はもらえるようになりました。

ーーゲーム開発はいつ頃から始めたんですか?

小学生の頃からです。当時はYouTubeもニコニコ動画もない時代で、代わりに「おもしろフラッシュ」と呼ばれる動画コンテンツが流行っていました。それで、自分も作ってみようと思って。ポケモンの偽物が出てくるような、今考えるとしょうもない動画でした。

その後、『RPGツクール』という誰でもRPGを作れるソフトの存在を知って、ゲームを作り始めたんです。

ーー最初に作ったのはどんなゲームだったのでしょう。

今僕が名乗っているのと同じ、オリジナルキャラクターの「ただすめん」を主役としたゲームです。キャラクターデザインも、僕がSNSのアイコンにしているのと同じ。ただすめんが敵を倒して世界を平和にする……みたいなゲームでした。

特にひねりはなかったけど、ゲームを作るのはすごく楽しかったんです。なので友達にも「これ絶対面白いから」って『RPGツクール』を布教したんですよ。だけど、本当にやってくれる人はほとんどいなかった。こんなに面白いのに、なんでみんなやってくれないんだろうって思っていました。

ただすめん

「ただすめん」の歴史は古く、ゲーム以前にフラッシュにも登場していた。こちらはただすめんが主役の紙芝居フラッシュのワンシーン

ーー子どもの頃からゲーム開発をしていたとのことですが、ゲームで遊ぶこともしていたんですか?

はい、ゲームは遊ぶのも作るのも昔から大好きです。

ーーただすめんさんにとって、ゲームを「作ること」と「遊ぶこと」は何が違うんでしょうか?

うーん……あまり違わないんですよね。ゲームを作るときは「『ゲームを作る』っていうゲーム」をやってる感じ。作っている時も遊んでいる時も、脳内で分泌されてるものは同じ気がします。

ーー昔から「こんなゲームを作りたい!」というこだわりはあったんでしょうか?

いやあ、特になかったんです。単純に作るのが楽しかっただけで。「誰かを楽しませよう」っていうよりも、「自分が楽しいから」という気持ちでやってました。それは今も変わらないかもしれません。

『そろ寿死』は企画書ナシ。全部作りながら考えた

ーー『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!(そろ寿死)』はオリジナル版が2021年にリリースされています。このゲームのコンセプトについて教えていただけますか?

コンセプト……。

ーーどんな発想から作られたのかな、というのが気になったのですが……。

うーん……何なんですかね(笑)。正直、自分でもよく分かってないんです。

普通、ゲームって企画書を作ってから開発を進めていくものだって聞くんですけど、企画書を書いた経験がなくて。書き方も分からないですし。

多分「寿司を食べておっさんが叫んだら面白いだろうな」ぐらいの感じで作ったんだと思います。

ただすめん

2021年にリリースされたゲーム『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!』は、主人公を操作して寿司を食べまくりながらステージをクリアすることで得られる「寿司ソウル」を集めていくアクションゲーム。タイトル通り、寿司を食べ続けないと死んでしまう

ーーなるほど……ただすめんさんも寿司がお好きなんですか?

そうですね。高い寿司は食べたことないですけど、回転寿司は行きますし好きです。

ーーそれなら、寿司を食べてるときに思いついた……とか……?

あ、セリフはたぶんそうです。あのゲームの絶叫は、寿司を食べてるときの自分の心の声かも(笑)

ただすめん

「寿司! 美味すぎるだろ! 反省しろ!」「こんなに美味いなら先に言え! 寿司ーー!!!」「この寿司ッ! 上手さの限界を超えているぜ!」

ーー企画書を書かないということは、詳細は作りながら決めていったんでしょうか?

そうです。前もって計画しすぎると、あんまり楽しくないので

「寿司に触れたおじさんが叫んだら面白いな」とか「ジャンプしたらヒューンって飛んだら面白いな」とか、思いついたことをどんどん組み合わせて作っていった感じです。

ストーリーも最初に全部決めないで、作りながら考えました。

ーー特にこだわった部分はありますか? 実況者さんの中には「操作性が独特だ」と言っている方もいました。

操作性が独特……あんまり自覚してなかったです。自分にはしっくりきているので、本当、全部「自分基準」なんでしょうね(笑)

ーーということはゲームを作るときに、あまり人に意見を求めることはしないのですか?

そうですね。自分はゲーム会社で働いていたわけでもなければ、ゲーム開発を一生懸命学んできたわけでもないので、完全に自分の考えで作ってます。

自分はただ好きなことをやっているだけ

ーー2023年に『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!ユニバース』をリリースしました。続編を開発しようと思ったのはなぜですか?

前作は「ゲーム性のあるバカゲー」ぐらいのつもりだったんですけど、もうちょっと丁寧に作りたいなと思ったので。

例えば動く床を作ってギミックにバリエーションを持たせたり、ゲームとしてもっとちゃんとしたものを作りたいと思いました。

ーー特にこだわったのはどんな部分ですか?

こだわった部分……何だろう……。

ーー……(回答を待つ取材班)

うーん……すみません、こんなふうに人に考えを伝えるのが上手くないから、会社で働くの向いてないなって思って辞めたんですよね(笑)

あ、一つ言うなら、主題歌はかっこよくしたかったんで専門の方に作ってもらいました。

ーー結構細かくディレクションしたんですか?

いえ、そういうやりとりも苦手なので、「かっこよくしてください」ってお願いしただけです。

ユニバース版は主題歌と、キャラクターの声と、BGMと、ロゴとかグラフィックの細かい部分をプロの方にお願いしたんですが、全て皆さんの才能にお任せしました。

ーーユニバース版リリース後の反響はいかがでしたか?

今まで出したゲームの中で、一番反響をいただいています。

昔『PIEN-ぴえん-』っていうゲームを出した時もいろんなところで話題にしてもらったんですけど、それと同じぐらい遊んでもらえていると思います。

ただすめん

謎の怪物「PIEN」に見つからないように、不気味な廃墟を探索する「ポップでかわいい」ホラーゲーム。続編に『PAON-ぱおん- BEYOND THE PIEN』がある

自分は中学生の頃から『くそいサイト』という個人HPをやってるんですが、それをずっと見てくださっている方からは「こいつずっとやってること変わんないな」って言われました。その通りだと思います(笑)

本当に好きなことをやっているだけなのに、こんなに皆さんが喜んでくれてうれしいです。

向上心はない。ひたすらこの生活を続けたい

ーーただすめんさんは、『そろ寿死』がヒットした要因はどこにあると思っていますか?

うーん、どこでしょうね? 自分としてはすごい面白いゲームだと思っているので、自分と似た感覚の人に届いたのかなと思います。

ただ、『そろ寿死』シリーズは制作にあたってクラウドファンディングで資金調達したので、「ちゃんと作らなきゃ」とはずっと思っていました。

お金を出してもらったからには責任がありますし、応援してくれる人がいっぱいいることも知れた。モチベーションになりましたね。

ただすめん

『そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! ユニバース』の制作のために行われたクラウドファンディング(現在は終了)。目標金額を234%で上回る300万円以上の支援が集まった

ーークラウドファンディングにはそんなメリットもあったのですね。次回作の構想は決まっているんでしょうか?

はい、作りたいゲームはいっぱいあります。でも、人に伝えられないんです。説明が下手すぎて(笑)

いいアイデアを思いついたら「こんなゲーム考えたんだけど!」って友達に話すんですけど、いつもポカンとされます。それでも作りますが。

ーー今後ゲーム開発者として挑戦したいことはありますか?

そういう向上心みたいなのは正直ないけど、好きなゲームを作ることが奇跡的にお仕事になっているので、それはありがたいな、幸せなことだなと思ってるんです。

なのでこれからも、ひたすらこの生活を続けたいですね。

取材・文/一本麻衣 編集/秋元 祐香里(編集部)

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