マネーフォワード 代表取締役社長 CEO
辻庸介(つじ・ようすけ)氏
2001年に京都大学を卒業後、ソニー、マネックス証券を経て12年に同社を起業。ファーストキャリアを世界的メーカーで過ごした後、起業家となった
マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏と、メルカリ取締役の小泉文明氏が登壇した『1st Career Summit』イベント(株式会社キャリアデザインセンター主催)。前編記事では、二人の経験談から、若手ビジネスマンが成長できる職場環境について紹介した。
マネーフォワード 代表取締役社長 CEO
辻庸介(つじ・ようすけ)氏
2001年に京都大学を卒業後、ソニー、マネックス証券を経て12年に同社を起業。ファーストキャリアを世界的メーカーで過ごした後、起業家となった
メルカリ 取締役
小泉文明(こいずみ・ふみあき)氏
2003年に早稲田大学を卒業した後、大和証券SMBCの投資部門に就職。金融業界の大手で若手時代からミクシィやDeNAといったネット企業のIPOを担当。その後はミクシィの取締役執行役員CFOなどを経て、13年にメルカリの取締役となる
後編記事では、ベンチャー企業で働くことのメリットや、若手時代に積んだ方が良い経験、“勝ち癖のある企業”の見極め方について、二人の考えを紹介していく。
満員御礼で盛り上がる会場。2人の刺激的な話に学生も興味を示していた。
辻 先ほどの内容に類似してしまうのですが、ビジネスがどう動き、どう変わっていくかという仕組みを、より身近で学べるということでしょうか。
例えば、私がマーケティングの責任者だとして、プロダクトの責任者がどういうことを考えて動いているのか、カスタマーサポートはお客さまからどんなお声をいただいて、どんな改善に取り組んでいるのか、経理が今どう動いているのかとか、そういった会社の仕組みが全部分かるんです。
大手企業だと、自分のいる部署以外の動きが全然把握できなかったりしますよね。組織が巨大すぎるから、距離が遠いというか。
ベンチャーの方が、全体感を分かった上で、自分がどこにいて、社会のどの部分に役立っているのか、という実感を得られると思います。
小泉 個人の成長という観点でベンチャーが良いと思うのは、仕事をする時、必要以上にいろんなヒントを与えられないところですね。なので考える癖が自然と付く。ひたすら考えて、それをやることによって、どんどん専門性が身に付いていくんです。
セオリー通りにやることはほぼないので、ゼロから考えなければならないですし。それはそれでつらいですが(笑)。自分で考える癖を付けて、結果それが自分の専門性になっていく、という成長パターンこそが、ベンチャーで働く良さだと思います。
あとは、自分の人生を自分の頭で考えて決定できるというところも良さですね。
僕がまだ大和証券にいて、ちょうど26歳くらいになったころ、民営化案件で「10年で10兆円のプロジェクトを任せる」という話があったんです。若手に仕事を任せてもらえるという意味ではありがたい話でしたが、同時にちょっと寒気がしたんですよ。「これを受けた瞬間に、10年間の僕の人生が決定してしまう」と思ったら、自分にかけられそうになったハシゴに寒気がしたんです。
要は、「自分の人生を会社に決められたくない」という思いです。自分で意思決定をするんだという手綱がないと怖くて、そんなんじゃ会社と心中できないと思って、結果として(IPOの)担当先でずっと「ウチに来ないか」と誘ってくれていたミクシィへジョインすることになりました。
小泉 最初はやはり経験がないので、勝ち癖の付いている会社や部門で、社内外問わずイケている人たちと一緒に仕事をしていくことですかね。
そこで自分の可能性を否定せずにトコトンやること。僕の話をすると、最初の3年間、月の残業は100時間以上は絶対やってました。仕事が楽しくて仕方なかったというのもありましたが、やった分コンペは勝てるし、提案もお客さまに喜んでもらえたので。
この3年間のタフな経験が今の肥やしになっていることもあって、「とにかくやる」という覚悟みたいなものは、ファーストキャリアにおいて一番大切なんじゃないかと思っています。そう考えると、どの会社に行っても同じという結論になるわけですが(笑)。
辻 (笑)。じゃあ、私はあえて小泉さんとは違う視点でお話しますね。多くの人が行く人気企業って、人気がある分、単純に混むというか、競争がめちゃめちゃ激しくなってたくさんの人たちとやり合わないといけなくなる。
そこで全員にチャンスが回ってくるかというと、実際はそんなことはありません。勝てる確率が低くなるんです。だから、実は人の少ないところに行った方が、自分が1番になれるし、経験もたくさん積めるかもしれない、と思うんですよ。
会場に質問を投げかける辻氏。就活生と一体化した空気感でトークセッションは終盤を迎える
最近はよく、ワークライフバランスとか、「働き過ぎるな」とか言うじゃないですか。でも、結局ビジネスは経験ありき。例えばイチローは誰よりもバットを振り続けたからイチローになれたわけで、ビジネスもビジネスパーソンとして場数を踏まないと能力なんて伸びるわけがないんですよね。
20代の走り込まなくてはいけない時期には、しっかり足腰を鍛えなきゃいけないと思うんですよ。
辻 まずは経営陣を見て、その経営者が世の中に何を果たそうとしてやっているのかを見極めることが大切です。
経営者ってメディアにいっぱい出ているじゃないですか。それをひたすら読んでみる。面白そうな会社だと感じたら、業種は特に選ばずに、とにかく会いに行ってみる。社長に直接会えなくても、担当の方とかにお会いして話を聞いてみるんです。
それだけでも会社のビジョンは伝わりますから。とにかく会いまくって判断する。ピンときたら飛び込めばいいし。自分の直感を信じて行動したのであれば、たとえ失敗しても納得のいく次のスタートも切れますよ。
小泉 僕は就活の時、全業界の1位と2位の企業に会ってみる、ということをしていました。
1位と2位の会社って、その業界を勝ち抜いているだけの強い社風があるんです。で、2位には2位に留まってしまうだけの理由もあって。簡単に言えば統率されているかどうか。1位の企業は統率されていて、2位の企業は大体自由なんですよ。
個人的には、2位の企業さんが好きだったんですけど、なるべくたくさんの企業と会う中で自分の個性や考え方を探し出すという作業をした方がいいんだと思います。いろんな人に会って、いろんな話を聞いて、1番自分が反応したところにチャレンジすればいいのかなと、そう思いますけどね。
「大手で働くメリットvsベンチャーで働くメリット、それぞれ何が違うのか」というテーマで展開されたトークセッションでは、どちらが正解という結論には至らなかった。
キャリアをスタートさせる1年目においては、今後生き残っていくために「勝ち」への執着心を根付かせ、「勝ち癖」を自身の中に定着させること。そして、自身で判断できる明確な判断軸を持ち、周りに流れない言動を心得ること。これらが将来的なキャリア形成でも欠かせない能力となるようだ。
社会人デビューを大手企業とベンチャー企業、どちらを選択するべきかという問いに正解はない。ただ、自分自身が楽しみながらも、必死に頑張れる環境を「見極める審美眼」は必要なのかもしれない。
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取材・文・撮影/蛯原啓貴(編集部)
※こちらの記事は『キャリアデザインタイムズ』より一部編集の上、転載しております
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