エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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黒歴史なんて作ってなんぼ。Meta London松岡玲音が実践してきた「成長」のコツ【聴くエンジニアtype Vol.59】
全4回に及んだ松岡玲音さんとばんくしさんの対談も今回が最終回。
聴くエンジニアtypeの聴取者である若手エンジニアに向けて、松岡さんがこれまで意識してきた「成長」のためにするとよいことを聞いてみた。
【ゲスト】
松岡玲音さん(@lain_m21)
1992年生まれ。東京大学薬学部卒業後、アメリカの大学院で宇宙工学を専攻。その後、機械学習のロボットへの応用へ興味を持ち、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空宇宙工学専攻へ転学。ロボットAIなどについて研究を重ねた。その後中退し、18年10月よりメルカリでインターンシップを開始し、19年1月に同社へ入社。機械学習エンジニアとして「出品価格推定」のモデリングや「レコメンドエンジン」の基幹システム、「エッジコンピューティング」など、メルカリの事業の中核となる技術に携わる。テックリードとしてプロジェクトマネジメントも担った後、22年5月に退社。同年夏からロンドンのMetaにジョイン
【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
成長に必要な要素は「鉄火場での経験」「語学力」そして「運」?
ばんくし:成長を目指す若手エンジニアは、何をすべきだと思いますか?
松岡:やっぱり鉄火場を選ぶことじゃないですか。成果を出さなければいけないという切羽詰まった状況で、がむしゃらに勉強すればストレッチできると思います。
あとは何でもやってみること。それによって自分が得意なことや苦手なことが分かるかもしれないです。
それと、もう既に誰かが話しているかもしれないですが、英語はやった方が良いと思います。例えば家庭の都合などでずっと日本を離れる予定がない場合は別ですけど、そうじゃない場合は英語ができないだけで機会損失になる可能性もありますから。
アメリカで就職するのはビザの関係上結構大変ですが、イギリスはビザを取得しやすいので、個人的にはエンジニアとして働きやすい国だと思います。英語ができると世界中のいろいろな仕事ができる。その点だけでも面白いですよね。
今後日本の経済がどうなるか分からないなかで、海外で仕事がしづらい状態というのはリスクが高い。例えばLinkedInでどこかの国のリクルーターから連絡がきたとして、仕事は面白そうなのに英語ができないがゆえに選考に落ちるなんてもったいないじゃないですか。エンジニアって英語だから得られる情報も多いし。
あとは、運を磨くこと。
ばんくし:お、良いワードが出ましたね。「運」ですか。
松岡:人生は運ゲーなので。私、神様にめっちゃ愛されている自信があるんです。運を強くしておくと良いことばかりですよ。
ばんくし:運を強くするにはどうすれば良いんですか?
松岡:徳を積むのが良いと思います。まずは自分の周りにいる人に気を配るとか、何かしてあげるとか。あとは神頼みをする。お気に入りの神社がいくつかあって、一時帰国する度に行ってます。ロンドンに来る直前も伊勢神宮にお参りしました。
ばんくし:徳を積むって、面白い視点ですね。
松岡:すごい大事ですよ。運は最強の武器なので。普段から徳を積む。これに限ります。
ばんくし:徳を積むのが大事というのは、分かる気がします。私は『1兆ドルコーチ』という本が好きなのですが、そこにも出てくる「他責じゃなくて利他のために動く」という話に通ずると感じました。誰かのために動くことによって救われる、救われないという話ではなくて、自分の肯定感が上がったり、それによって自信がついたりすることに近いのかなって。
松岡:マルセル・モースの『贈与論』の話にも近いですね。私は『贈与論』自体は読んだことはないですが、関連の本を何冊か読んで好きな話だと感じていました。
見返りとか関係なく、いっぱいギブするのが良いと思います。私、日本に帰ると結構お金を使っちゃうんですけど、それで周りの人が幸せになるならそれで良いかなと思ったり。自分の存在が誰かにとってプラスになればこのうえない幸せです。
……と、良いことを言いながら、それによって最終的に自分の徳が積まれて、今こんなに幸せなことになっている。「あざす」って感じです(笑)
ばんくし:良い話ですね。私自身もこの考え方はとても大切だと思います。
松岡:例えばコードを書く時も、最終的には思いやりだったりしません? 私、昔プルリクのレビューで「もっと思いやりを持ちましょう」とコメントを残したことがあります。
ばんくし:結局システムを動かすコードも人とのやりとりですもんね。1人でシステム開発をするなら好きなようにコードを書けば良いですけど。
「徳を積む」ということをベースに生きていると、善意のコミュニケーションを見抜く目というか、これ以上近付いたら苦手なゾーンに入るぞみたいな感覚が養われていくような気もします。
松岡:たしかに、仕事でもプライベートでも「この関係は健全じゃなさそうだな」という嗅覚は利くようになったかもしれないです。
ばんくし:「徳を積む」ってすごく概念的な話ですが、結局のところ「健全な場所に自分の身を置く」ということにつながっているのかも。
松岡:いつでも徳を積む行動ができるわけではないですが、今のところ結果だけ見れば私の徳はプラスになっているようです。
ばんくし:ただ、徳を積みたいと思っていても、体調など環境的な要因で積めない瞬間はありますよね。
松岡:そうそう。だから積める時に積んでおいた方がいい……って、若い人にするアドバイスとして正しいのか分からないですけど(笑)
ばんくし:でも徳は「積んでいく」ものなので、早く始めるに越したことはないんじゃないですかね。
松岡:あ、あと若い人向けのアドバイスということで、最後に一つ。「俺、最強」くらいの生意気さがあって良いと思います。若いうちから「控えめ」とか「社会性」とか気にしすぎない方がいい。周りにはいい大人がいっぱいいるでしょうし。
ばんくし:私もそういう若者は応援したくなっちゃいます。
松岡:尖っていた方が伸び幅も大きいような気がします。
ばんくし:尖っている人の方が鉄火場に送り込まれそうですしね。その分、運も掴めそう。
松岡:若い人なんて生きてるだけで徳を積んでいるようなもんじゃないですか。これからの世界を作っていく存在なわけだし。犯罪とかしない限りプラスです。
ばんくし:若い人はいきり散らかせ、と。
松岡:そう。いきり散らかして30歳手前くらいでそれが黒歴史であることに気付いて、ちょうど良い感じになると思う。
ばんくし:この番組に登場する方々からも、若い時の黒歴史についての話はよく聞きますね。
松岡:そうそう、そんなもんだと思います。私も、相手によっては大人みたいな顔をして話す時もありますが、今日はばんくしさんもいるし、安心してさらけだしてます。良い感じに編集してくださいね(笑)
ばんくし:今日は若者に刺さるワードがいくつも出てきて良かったです。玲音さんの思想も伝わりました。
松岡:ただ、私の生き方をマネしてもうまくいくとは限らないから、バランスを取らないと。『テスト駆動開発』で有名な和田卓人さんが「極端な思想にたくさん触れて、その中でいいとこ取りをすれば良い」みたいなことをおっしゃっていて。良いことを言うなあ、と思いました。
文/赤池沙希
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